つながるカフェ

山納 洋 著

内容紹介

コミュニティカフェを開けば、イベントで人を集めれば、「場づくり」になるのか? 人が出会い、つながる「場」は、どのように立ち上がるのか? 著者自身が手掛け、また訪ねた豊富な事例をもとに考える、「人が成長する場」、「他者とつながる場」、「創発を生む場」としての「カフェ」を成立させるための機微と方法論。

体 裁 四六・184頁・定価 本体1800円+税
ISBN 978-4-7615-1361-0
発行日 2016/06/01
装 丁 森口 耕次


目次著者紹介はじめにレクチャー動画
はじめに

1 カフェにおける“場づくり”とは?

1 失われつつある“場”
2 人が集まれば“場”はできるのか?
3 人が出会うときの機微

2 成長する場所としてのカフェ

1 不良中年とつながった場 ──どさんこ大将
2 僕の人生を変えた場 ──RINO POINT
3 社会への入口としてのカフェ ──永井宏さんのこと
4 不思議に人がつながっていく場 ──Common Bar SINGLES
5 試し打ちのための場 ──common cafe

3 他者とつながる場としてのカフェ

1 “まちづくり”と“まちあそび”──慈憲一さんの実践
2 子どもたちでつながる場 ──r3(アールサン)
3 場の文化を育む場 ──芝の家
4 教わるのではなく、学ぶ場 ──三田の家
5 アートによる包摂の場 ──ココルーム
6 共有空間の獲得 ──小山田徹さんの取り組み
7 国籍を越えて出会う場 ──comm cafe(コムカフェ)
8 地域の問題を自分たちで解決する場 ──おしゃべりサロン
9 戻ってくることのできる場 ──淡路屋
10 ホームからアウェーへ

4 創発が起こる場としてのカフェ

1 扇町Talkin’About(トーキン・アバウト)
2 扇町クリエイティブカレッジ!(OCC!)
3 開かれた場が閉じる時
4 伝説としてのカフェ
5 場に求めるのは楽しさか、意味か?
6 博覧強記という道
7 公論形成の場としてのサロン
8 ファシリテーションの手法
9 創発のための場とは
10 いかなる個人より全員のほうが賢い

おわりに

山納 洋(やまのう・ひろし)

1993年大阪ガス入社。神戸アートビレッジセンター、扇町ミュージアムスクエア、メビック扇町、大阪21世紀協会での企画・プロデュース業務を歴任。2010年より大阪ガス近畿圏部において地域活性化、社会貢献事業に関わる。一方でカフェ空間のシェア活動「common cafe」「六甲山カフェ」、トークサロン企画「Talkin’About」、まち観察企画「Walkin’About」などをプロデュースしている。著書に『common cafe』(西日本出版社、2007年)、『カフェという場のつくり方』(学芸出版社、2012年)がある。

今から20年前、神戸の新長田に住んでいた時のこと。

行きつけのバーで一人で飲んでいると、お店のマスターが「山納君やったら、話合うんちゃう」ぐらいの軽いノリで、居合わせたおじさんを僕に紹介しました。そのおじさんは、漢詩の話題をおもむろに僕にぶつけてきました。

僕が「高校の時には、白楽天の『長恨歌』を覚えてました」と返すと、そのおじさんは、得がたい友を見つけたという感じで、その後漢詩トークをどんどん繰り出して来られました。
初めのうちは面白いかな、と相槌を打って話を聞いていたのですが、だんだんと面倒になってきて、話が途切れたタイミングで、僕はそのおじさんの前で本を読みはじめました。

するとおじさんは、「会(かい)すれど見(まみ)えず、ちゅうやつやな」と、さびしそうに独りごちました。さすがに悪いことをしたなと思いましたが、その後、そのおじさんとは話をしませんでした。
今にして思うと、大人気ない振舞いだったと思います。また、マスターの紹介もだいぶ雑だったなと。そしておじさんが言った通り、おじさんと僕とは、会話を交わしたけれど、本当に出会ったわけではなかったな、とも。

僕は2000年に、「扇町Talkin’About(トーキン・アバウト)」というトークサロン企画を始めました。

これは、あるテーマについて、興味ある人が集まり、集まった人たち自身が語り合う“しゃべり場”です。大阪・キタの扇町界隈の飲食店・バー・カフェなどを会場に、演劇・映画・現代美術・音楽・文学・ポエトリー・お笑い・漫画・ 哲学といったさまざまなジャンルのテーマで集まりを開いていました。

2001年には、「Common Bar SINGLES(コモンバー・シングルズ)」という日替わりマスター制のバーを始めました。「扇町Talkin’About」の会場にもなっていた「Bar SINGLES」の閉店後、その場所を維持するために、40人のマスターを集めて立ち上げたものです。

2004年には、大阪キタ・中崎町の一角で、「common cafe(コモンカフェ)」を始めました。ここも日替わり店主によるお店で、カフェとしての営業をベースに、演劇公演、音楽ライブ、映像上映会、展覧会、トークイベント、朗読会、セミナー、ワークショップといった多彩なイベントを、日々開催しています。

人と人とが出会い、刺激を受け、そこから何かが生まれる。そんな場所への憧れから、僕はこれらの取り組みを続けてきました。

一方で、僕は今も、人との出会いをいくらか億劫に感じています。そう、矛盾しているのです。だからこそ、それでも人がつながるとはどういうことだろう、どうすればそういう場をつくれるのだろう、僕にとって“場づくり?とは、そういうアンビバレントな問いとしてありました。
前著『カフェという場のつくり方』では、個人でカフェを始めて、続けていくために知っておいた方がいいと思うことをまとめ、最終章で「カフェが担う公共性」について触れました。

今回は、その最終章を広げ、本一冊分にしました。この本では、カフェを“場”として成立させるための方法論について掘り下げています。
ここでお伝えしたいのは、コミュニティカフェのつくり方や、カフェイベントの企画の仕方ではありません。

そうではなく、場が力を持つとはどういうことか、行かずにはいられない場とは、人が成長する場とはどういうものか、公的なミッションで場をつくるとはどういうことか、場における創発はどうすれば起きるのか、といった問いについての、自分なりの考えをお伝えしたいと思っています。

どうぞ最後までお付き合いください。

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横浜コミュニティカフェネットワーク代表の齋藤保さんによるエッセイ「外出自粛要請のなかで、 コミュニティカフェの意義を再考する」を公開しました

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