がくげい連載「都市はどうなっていくのか会議」第5回 “都市の安全とはなにか”

主催 学芸出版社
※詳細は主催団体等にお問い合わせください。

10/9に千鳥文化さんで開催された「がくげいラボvol.8」。がくげいラボは、学芸出版社・編集部の「今これが気になる!」に答えてくれる方々をお呼びし、参加者の皆さんを交えてざっくばらんに議論したい!という企画です。

今回、がくげいラボvol.8から派生して、全7回の連載「都市はどうなっていくのか会議」がスタート!

\当日の登壇者 都市の自由研究会※)と参加者の皆さんによる、今直面している都市の問題や課題についての議論を、レポート形式で連載します。/

第5回「都市の安全とはなにか」

さて後半戦「パネル枠」のお二人目は、滋賀県庁の都市計画課で景観関連の仕事をされているという藤村さん。
普段はどちらかというと「都市の自由」を規制する側だそうですが、今回は梅田の歩道で、こたつで鍋をしている人たちの写真を持ってきてくれました。
この写真の中では、警察の方が彼らに注意をしています。(※お写真は一般の方が写っているため掲載できません)

―安全安心の中身を議論すべきである

藤村さん: 私も公園など屋外でご飯を食べることが好きですが、警察が来ることもあります。つまり、事例のように場所が道路であればもちろん交通上の問題がありますが、それとは別の理由で、道路でも公園でも警察は来ます。なぜ来るかというと、他の人からの通報があって来る。警察や行政は、通報や苦情があると、仮にその声がたとえマジョリティではなくても、まずは何らかの対応をとることが求められます。

事例の鍋のように、「食」というのは人間のコミュニケーションであり、出会いの場でありうるという面では根源的な行為ですが、一方で火気の使用や食中毒、飲酒による泥酔など、様々なリスクを伴う行為でもあります。施設管理者は、そのリスクをゼロに近づけることがどうしても求められ、どこのまちでも「安全安心のまちづくり」という決まり文句が掲げられていきます。

藤村さん:「安全安心」という考え方が、ある種のポリティカル・コレクトネスのようになっていて、それに反対するとは何事だ、というように中身を問わずに求められています。しかし、もう一つ上のレベルで都市を考えるためには、「安全安心」の意味をもう一度捉え直すことが必要ではないでしょうか。ノーリスクを追求するのではなく、リスクを受け入れた上で、どうそのリスクを社会で引き受けていくか、そのために誰がどのような役割を担うのか、という点を、具体的に考えていくことが必要だと思っています。例えば、都市での活動は一定自己責任とした上で、行政は保険を用意する、など具体案を議論していく必要があると思います。


そして研究会のみなさんのリアクションです。

―リスクの定量化・可視化

石原さん:公共空間でのリスクを定量的に可視化すべきだと感じています。安心を人任せにしているので、警察や行政が登場せざるを得ません。そういう社会の構図が、結果的にいかにリスクを抑えるかということに繋がっていると思います。

―直接的なやり取りの場

園田さん:単純に、梅田の路上で鍋を食べて気持ち良いのか?と思いました。僕だったら、芝生とか畳の方が良いです(笑)。あとは、通報した人が直接言うべきではないでしょうか。こたつに限らず、公園でのボール遊びとか、近隣の保育園建設とか、問題だと思った当人同士が話すべきだと思います。

―負のサイクル

榊原さん:近藤さんのシェアサイクルの話のように、個人の裁量と公共の自由をどう担保するか、という問題があると思います。ゼロ・トレランス的に、一部分の人だけがわが物顔で公共空間を使うことへの「やっかみ」みたいなものは日々強まっているように感じます。自分は公共空間を使う権利を行使する存在ではない、という引いた立場を決めつけ、都市で自由を謳歌する人たちを、警察という権力を通して制限する。その結果、誰も幸せになっていない、という辛いサイクルがあるのではないでしょうか。

―コミュニケーションのスキルアップ

近藤さん:園田さんが話したように、コミュニケーションをどう続けるのか考える必要があると思います。どこでお互いの落とし所を見つけられるか、という場所はきっと都市の中にあります。善悪の判断以前に、自分たちで余白を見つける方法として、コミュニケーションのスキルアップが必要ではないでしょうか。

 

議論の様子 photo by Gakugei

議論の様子 photo by Gakugei


第5回目では、参加者による都市の「安心安全」や「リスク」についてのプレゼンと、それに対する研究会のリアクションをレポートしました。
都市における他人の振る舞いや活動が頭ごなしに否定される傾向にある今日この頃、行政やNPOなどの組織こそがブラックボックス化した「安心安全」の中身についてきちんと向き合うべきなのではないか、というお話。さらには活動する側にとっても、警察や行政に一任してしまうトップダウン的なコミュニケーションではなく、現場の人々が顔をつき合わせてやりとりするべきだという意見がありました。

さて後半戦の第6回目は、最後のパネル枠の方のプレゼンと、会場全体の議論をレポートします。ご期待ください!
(次回は11月27日公開予定です!)


担当:中井希衣子

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