みどりの空間学
36のデザイン手法

古谷俊一 著

内容紹介

企画・設計に使えるみどりのノウハウ

植物=みどりと建築が引き立て合う空間デザインの資料集。両者の幸せな関係を追求する設計者が1)内と外の関係をつくるみどり、2)活動を誘発するみどり、3)建築化するみどりの3視点で建築・インテリアの企画・設計に使えるノウハウを写真・スケッチ・図面で解説。テーマ別植物図鑑も付いた設計者・オーナー必携の1冊

空間緑化に長年取り組んできた建築家の理論と方法が、全面的に明かされる。 住宅、店舗からまちづくりまで、同業者に知られたくない元ネタが見つかるだろう。建築家・建築史家 藤森照信氏

体 裁 A5・184頁・定価 本体3000円+税
ISBN 978-4-7615-3284-0
発行日 2022-09-10
装 丁 赤井佑輔、清野萌奈(paragram)


目次著者紹介まえがきあとがき推薦文 - 藤森照信関連ニュース関連イベント

まえがき
本書に掲載する事例

1 内と外の関係をつくる

1. 内と外をつなぐ

01 景色を呼び込むテラス空間―Lunuganga /スリランカ・ベントタ
02 農園の中の連棟長屋―スイシャハウス・スイシャオフィス/神奈川県川崎市
03 都会の喧騒にたたずむ―Raffles Hotel Singapore /シンガポール・シンガポール
04 樹幹にたたずみ木々と同調する―狭山の森 礼拝堂/埼玉県所沢市
05 風が吹き抜ける2 つの庵―高台寺傘亭・時雨亭/京都府京都市
06 遺跡のように透ける建築―東京クラシック 森のクラブハウス/千葉県千葉市
植物図鑑1-1 混ぜ垣の活用

2. 緩やかに囲む

07 みどりとともに成熟した住まい―中心のある家/埼玉県所沢市
08 建築がみどりを囲いみどりが建築を包む―泰山館/東京都目黒区
09 みどりのある暮らしを売る空間一House/shop F /愛知県名古屋市
10 庭を見る・見られるの関係―インターバルハウス/東京都大田区
植物図鑑1-2 季節ごとの表情を見せる木々

3. まちにひらく

11 垣根のない暮らし―鵠沼ヴィレッジ/神奈川県藤沢市
12 路地から広がるみどりのインフラ一花木屋/東京都文京区
13 鉢植えひとつから始まる景観づくり一みどり市/東京都大田区
14 山並みのような建築が芝庭を囲む一南池袋公園/東京都豊島区
植物図鑑1-3 育てやすいインドアグリーンを各家庭に

2 活動を誘発する

1. 居場所をつくる

15 インナーガーデンが居場所をつくる―笑門の家/東京都大田区
16 地域に共有される学舎の杜―早稲田アリーナ/東京都新宿区
17 薬草園の中の蒸留所―mitosaya 薬草園蒸留所/千葉県夷隈郡大多喜町
植物図鑑2-1 耐陰性のある樹木

2. 人と場所との関係をつくる

18 セミパブリックな宅地開発―深大寺ガーデン/東京都調布市
19 グリーンチェーンの起点となる―ロザ ヴェール/山梨県中巨摩郡昭和町
20 世田谷に森をつくって住む一経堂の杜/東京都世田谷区
21 みどりに浮かぶノアの方舟一泉南動物病院/大阪府泉南郡熊取町
植物図鑑2-2 バラで建築を覆う

3. 人を引き込む

22 Life is IDEE―IDEE SHOP 旧本店/東京都港区
23 みどりのトンネルを抜けて ― eatrip / THE LITTLE SHOP OF FLOWERS /東京都渋谷区
24 山麓に点在する草屋根一ラ コリーナ近江八幡/滋賀県近江八幡市
25 景観とともに人々を引き込む一黒龍酒造 洒楽棟/福井県吉田郡永平寺町
植物図鑑2-3 下草で足元を彩る
column1 ディズニーランドにおけるみどりの空間学

3 建築化する

1. 室内環境を整える

26 気の巡る町屋―ひとともり奈良本店/奈良県奈良市
27 親密な建築を目指して―東京クラシック馬主クラブ棟/千葉県千葉市
28 木陰をつくるような建築―名護市庁舎/沖縄県名護市
植物図鑑3-1 灌木類でシーンをつくる

2. 建築エレメントになる

29 街角をつくる立体の庭―渋谷モディ/東京都渋谷区
30 みどりのカーテンが領域をつくる.ホテルムーンビーチ/沖縄県国頭郡恩納村
31 人工の樹冠がつくるハイパーな景観一
Gardens by the Bay /シンガポール・シンガポール
32 ランドスケープ化する建築一Heritance Kandalama /スリランカ・ダンブッラ
植物図鑑3-2 フェイクグリーンを組み合わせる

3. まちに根付く仕組みをつくる

33 山のような建築―アクロス福岡/福岡県福岡市
34 ケヤキの森と同調する屋上テラス― 東急プラザ表参道原宿/東京都渋谷区
35 ストリートを縦に積む一HAMACHO HOTEL&APARTMENTS /東京都中央区
36 みどりの流通で景観をつくる一eM/PARK BLDG. /神奈川県川崎市
植物図鑑3-3 下垂する植物が建築と融合する
column2 ジブリ作品におけるみどりの空間学

 

あとがき
掲載事例情報

古谷 俊一(ふるや・しゅんいち)

1974 年東京都生まれ。1997 年明治大学理工学部建築学科卒業、2000 年早稲田大学理工学研究科建築専攻 石山修武研究室修了。IDÉE、都市デザインシステム(現UDS)を経て、2009 年古谷デザイン建築設計事務所設立。2022 年みどりの空間工作所設立。2020 年~京都芸術大学客員教授、2021 年~共立女子大学非常勤講師。主な受賞に、「深大寺ガーデン レストランMaruta」で日本空間デザイン賞2020 大賞、日本経済新聞社賞、「深大寺ガーデン」で第18 回環境・設備デザイン賞都市・ランドスケープデザイン部門最優秀賞、JIA 環境建築賞 入賞。「インターバルハウス」でKMEW DESIGN AWARD 2019 最優秀賞 竹原賞。「東京クラシッククラブ森のクラブハウス・馬主クラブ棟」で2017 年 日本建築設計学会賞など。著書に『みどりの建築術』(2018 年、枻出版社)。

「古谷さんのところは建築とランドスケープ両方ができるアトリエとして希少ですよね」と多くの方々に言っていただける。そのように至った経緯は過去の経験によるものなのかもしれない。

東京都中央区で生まれ千葉県船橋市の新興住宅地で幼少期を過ごした私は成人した頃、みどりと界隈性のある暮らしを求め東京都台東区谷中に転居をする。そこで書中にも登場する「花木屋」さんで初めて植物を購入し、みどりの空間づくりがスタートした。

ゴルフ漬けの学部生時代、参加した古建築実習で様々な建築と庭の関係性を見て、それまでなんか難しいなと思っていた建築理論が氷解し、素直にこういった内外の関係が曖昧なものをつくりたいのだなと気付かされるに至った。念願の石山修武研に入りもがいた大学院時代。建築史の講義で園城寺勧学院離宮書院にある濡れ縁一本柱の周囲に「揺蕩う(たゆたう)空間」があるという言語化に接し衝撃を覚える。就職をしたIDÉE(当時はインテリアの販売・デザインまで手掛けていた)では店舗空間そのものをつくってほしいという要望に応えるため、家具、インテリア、建築、庭と通貫してものづくりに励む中、建築が主で他はそれに従うものという概念は薄れ、家具を考え、庭のみどりを考えた結果、空間(建築)が立ち現れるという感覚を身につけた。その後、まちづくりにつながる事業計画・設計・運営を一挙に行うUDS に移り、IDÉE で得た考え方を実際のまちに拡大実装するための実践的なノウハウを学んだ。肩身の狭いみどりやデザインを懲りずに提案し続けた結果、みどりにおける資産価値の向上や環境貢献を言語化し、みどりの空間づくりに投資してもらう手法を学んだ。それらの経験を活かし独立。現在まで多くのみどりの空間づくりに携わらせていただいている。

これからご紹介する事例は自作も含め、私が関係性の未来を感じる事例である。それらはみどりの空間が生む見えない価値が状況をつくり、モノ、コトすべてを包み込み、ずっとここにいたいと思う親密性が獲得されている。

章立ては、みどりを建築やまちづくりに活かし、みどりの空間をつくりたい!と考えている方々にとって実務的であるように考えたつもりである。本書がそうした方々の一助となれば幸いである。

古谷 俊一

多くの方々の協力を得て出版に漕ぎ着けることができた。まずは関係者の方々に感謝を伝えたい。また遅筆であるが故、取材から大分時間がかかってしまったこともここでお詫び申し上げる。

特に学芸出版社の古野咲月さんは、風に吹かれてふらふらと思考が行き来する私を的確な目で見守り続けてくれた。みどりの空間というと気持ちがどうしても観念的な方向に傾いてしまって、「ほら、このオオモミジの木陰のドウダンツツジがつくるこの辺りの木漏れ日の感じがいいでしょう!」といった情緒的な論調になる度に、「その木漏れ日は具体的にどういいのでしょうか?葉の大きさや形なども影響しているのでしょうか?」と指摘され、渋々書き直していると、いままでならできなかった言語化ができた。

また、この本がなければ会うことのなかった方々との出会いは本当に宝である。多くの方々が「ここを取材してくれるならあそこも行ったほうがいいよ」とご紹介くださり、みんながみどりの空間が好きで共有したいと考えてくれていることを勝手に嬉しく感じていた。この楽しさがあるのなら大変さはひとまず置いておき、続編にもチャレンジしたい。まだまだ解説すべきみどりの空間がたくさんあり、いまもこの瞬間もその発想のタネは生まれていると感じるからだ。

そこで我々はこの出版を機会に「みどりの空間工作所」を立ち上げることにした。古谷デザイン建築設計事務所という建築家アトリエとしての設計活動とは別軸で、本書で得たような自分以外の建築家、クリエーターが考えていることに寄り添い協業で場づくりを行なって行きたいという思いが募ったためでもある。様々な建築家の要望に寄り添い建築に骨格を与えていく構造設計家の立ち位置に近いものかもしれない。

建築家同士の切磋琢磨も良いものだが、みどりの空間づくりに協力することで価値観を共有し、それによってデザインが点、線、面へと展開していく未来も感じている。

最後にフワフワしたした私についてきてくれる事務所スタッフに感謝を伝えたい。今回特に細かな編集作業を手伝ってくれた毛綱康三くんはお父様が著名な建築家で、なぜかうちの事務所に漂流し、設計業務の傍ら尽力してくれた。この作業も楽しいと言ってくれたことはとても励みになった。また、今回は自分の絵一本で頑張ると決めていたが、“植物図鑑” では弊社一番の古株・宮脇久恵さんのイラスト力が目を引く。ほかにも私の拙い文章力を補強してくれた植物愛好家の豊島香代子さん。そして休日は執筆に明け暮れる私を支え続けてくれた家族に最大の感謝を述べて結びとしたい。

2022年8月 古谷 俊一

たてものの中にどうみどりを取り込むか、たてものを外のみどりとどうつなぐか、こうしたテーマに長年取り組んできた建築家古谷俊一の理論と方法が全面的に明かされる空間緑化の図入り事典。

住宅、店舗からまちづくりまで、自作を中心に他の印象深い作例を含め、これから建築空間の緑化に取り組もうというデザイナーや学生にとって、同業者や仲間に知られたくない元ネタが見つかるだろう。

藤森照信/建築家・建築史家

公開され次第、お伝えします。

開催が決まり次第、お知らせします。