加藤匡毅・Puddle 著

内容紹介

本書は、世界中のカフェを集めた空間デザイン資料集。新築/リノベーションを問わず、多様な事例を紹介。ディテールを含む豊富な写真、平面図とスケッチを用い、設計者の視点から優れたデザイン的工夫を読み解き、その場にとどまらない街に波及するデザインについても考察。設計者はもちろん、カフェオーナーも必携の1冊。

体 裁 A5・184頁・定価 本体3000円+税
ISBN 978-4-7615-3250-5
発行日 2019/09/15
装 丁 赤井佑輔、清野萌奈(paragram)

推薦文紙面見本目次著者紹介まえがきあとがき

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まえがき
本書に掲載する事例

1部/場所とのかかわり

1. 環境を借りる

01 自然へのリスペクト、環境からのプロテクト ─ Third Wave Kiosk/トーキー
02 借景以上 ─ CAFE POMEGRANATE/バリ
03 オフィス街に川床をつくる ─ BROOKLYN ROASTING COMPANY KITAHAMA/大阪市
04 脱着できるカフェ ─ Skye Coffee co. /バルセロナ
05 中庭の階段を取り込む ─ HONOR/パリ
06 都会の空地に宿る ─ the AIRSTREAM GARDEN/渋谷区
07 軸線を強調する大庇 ─ fluctuat nec mergitur/パリ
08 街の動線と共存する ─ Dandelion Chocolate, Kamakura/鎌倉市
09 金融街で土着の素材と技術を使う意味 ─ The Magazine Shop/ドバイ

2. 境界をぼやかす

10 フラットな関係が開放性を生み出す ─ Seesaw Coffee – Bund Finance Center/上海
11 通りにせり出す可動式カウンター ─ Dandelion Chocolate – Ferry Building/サンフランシスコ
12 内外の一体感を生む窓際の仕掛け ─ Slater St. Bench/メルボルン
13 視線を誘い込む組み木のトンネル ─ スターバックス コーヒー 太宰府天満宮表参道店/太宰府市
14 エントランスにある余白の価値 ─ SATURDAYS NEW YORK CITY TOKYO/目黒区
15 アプローチというファサード ─ ブルーボトルコーヒー 三軒茶屋カフェ/世田谷区
16 街にひらけた小さな軒下 ─ ONIBUS COFFEE Nakameguro/目黒区

3. 外との関係を断つ

17 半地下から通りを眺める ─ GLITCH COFFEE BREWED @ 9h/港区
18 時間を閉じ込めた船 ─ 六曜社 コーヒー店/京都市
19 無窓空間におかれたバリスタの舞台 ─ KOFFEE MAMEYA/渋谷区
column1 際を設計する

2部/人とのかかわり

1. 人がつくるファサード

20 摺り上げ式窓がつくる都心の小さな縁側 ─ Elephant Grounds Star Street/香港
21 現代版パリのオープンテラス ─ KB CAFESHOP by KB COFFEE ROASTERS/パリ
22 通りにつながるサウナ式ベンチ ─ HIGUMA Doughnuts × Coffee Wrights 表参道/渋谷区
23 ストリートファニチャーがつくる通りの顔 ─ 三富センター/京都市

2. 人をもてなす距離

24 4本脚のカウンター ─ Bonanza Coffee Heroes/ベルリン
25 白い空間に、1本の「道」 ─ ACOFFEE/メルボルン
26 バリスタとの距離を近づける極浅の2段カウンター ─ Patricia Coffee Brewers/メルボルン
27 モルタルのひな壇 ─ NO COFFEE/福岡市
28 どこからでもアプローチできる細長いカウンター ─ COFFEE SUPREME TOKYO/渋谷区
29 「狭小建築」の「極小カウンター」 ─ ABOUT LIFE COFFEE BREWERS/渋谷区
30 タバコ屋に倣う、日常風景の再構築 ─ MAMEBACO/京都市
31 オーナーの小宇宙に広がるもてなしの空間 ─ CAFE Ryusenkei/足柄下郡箱根町

3. 営みの掛け算

32 生業と住まいの関係 ─ FINETIME COFFEE ROASTERS/世田谷区
33 カフェの顔を持つ歯科 ─ 池渕歯科 POND Sakaimachi/岸和田市
column2 誰のための空間か

3部/時間とのかかわり

1. 古い建物を生かす

34 大空間をまとめる6つのスキップフロア ─ Higher Ground Melbourne/メルボルン
35 演出されたキッチン ─ Lune Croissanterie/メルボルン
36 和室に配したキューブ状キオスク ─ OMOTESANDO KOFFEE/渋谷区
37 すべてを白く染める ─ walden woods kyoto/京都市

2. プロセスのデザイン

38 所作を美しく見せる仕上げと素材 ─ artless craft tea & coffee / artless appointment gallery/目黒区
39 体験のデザイン ─ Dandelion Chocolate, Factory & Cafe Kuramae/台東区
column3 時間を視覚化する

あとがき ― 空間の記憶
掲載店舗情報

加藤 匡毅(かとう・まさき)

一級建築士。工学院大学建築学科卒業。隈研吾建築都市設計事務所、IDEEなどを経て、2012年Puddle設立。現在、同事務所共同代表。横浜市金沢区で幼少期を過ごし、歴史的建造物と新造された都市計画双方から影響を受ける。これまで15を超える国と地域で建築・インテリアを設計。各土地で育まれた素材を用い、人の手によってつくられた美しく変化していく空間設計を通し、そこで過ごす人の心地良さを探求し続ける。

Puddle(パドル)

2012年設立。東京を拠点に、ホテル、オフィス、住宅、商業施設において、照明・家具・音響・植物など空間にまつわるすべての要素を設計する。すでに存在していた美しさや価値に目を向け、職人技術に敬意を払い、独自の視点から新たな体験をつくり出していくことを目指す。活動範囲は国内にとどまらず、アジア、中東、ヨーロッパ、北アフリカ、北アメリカ各国に広がる。主な作品に「IWAI OMOTESANDO」、「Dandelion Chocolate」など。
〈Web〉
puddle.co.jp

この本が出版される2019年秋は、歴史上最もバラエティに富んだカフェがこの世界に存在しているだろう。金太郎飴のようにどこでも同じ顔をしていたチェーン店も旗艦店ではまったく違う空間をつくり出している。僕の住む街の周辺だけで見ても個性豊かなカフェが次々と生まれている。

現代の人々はスマートフォンやPCによりどこからでもアクセスできるバーチャルな場でのコミュニケーションを手に入れた反動か、以前にも増してリアルな場での営みを必要としている。どこでも同じ顔をしているアプリのインターフェイスやウェブサイトのデザインとは違う、その場その場に根付いた個性豊かなカフェを、である。

では個性豊かなカフェとはどのようにしてつくることができるのであろうか。美味しいコーヒー、人、ホスピタリティ、様々な要因がかけ合わさって存在しているカフェであるが、この書籍では特に空間という建築的側面から考察していくことにしたい。

今日まで僕は、それぞれの場に相応しい「個性」を生み出すことを目指して、15を超える国と地域でカフェを設計してきた。

よそ者としてお邪魔し、その地の良さを見つけ出し、核をつくり、磨き、人々の前に「個性」ある空間を引き渡すのだ。

……と言えば聞こえは良いが、決まった方程式があるわけでもなく、プロジェクトごとにもがきながら、答えを探し続ける終わりのない旅のようでもある。

2018年の春先、そんな旅の軌跡を振り返る機会をいただいた。それがこの本である。

この本は、僕が仕事やプライベートで訪れ、印象に残ったカフェを中心に、国内外計39件をカメラ、スケール、紙、ペンを持って再訪、取材し、まとめたものだ(2件は現存せず。3件は僕自身が設計者としてかかわった)。客として何気なく訪れていた時に感じた居心地の良さ、記憶に残る体験は一体どこから来ていたのか。オーナーや設計者へのインタビューからわかったことに僕の解釈を加え、それぞれのカフェがどのような意図で「個性」を構築し得たのかを読み解いてみた。

設計の仕事に就く前から続く趣味である「スケッチ」と「写真」を中心にしているので、設計者はもちろん、建築の専門家でなくても読みやすい内容になっていると思う。

事例は、僕が設計で常に意識している以下の三つのカテゴリーに分けて紹介する。

1部 場所とのかかわり
2部 人とのかかわり
3部 時間とのかかわり

1部では、カフェのデザインが場所そのものや周辺環境からどう影響を受け、またどう影響を与えているか。2部では、カフェを利用する人とデザインのあり方について。そして3部は、カフェに流れる様々な時のあらわれ方について考えてみた。

先頭から順に読み進めていただいても良いし、好きなページから読んでいただいても良いと思っている。

本書を通して、カフェの空間設計が人の営みや街の個性をつくる大切な行為であることを再認識していきたい。

加藤匡毅

空間の記憶

1996年、隈研吾氏の元でスタートした僕の設計キャリア。当時、青山一丁目ホンダ本社ビルの裏にあった小さな2階建ての昭和木造建築に、隈氏と15名ほどのスタッフが働いていた事務所はとても印象的だった。ある先輩は浴槽を取り除いた風呂場をワークスペースに改造し、隈氏のデスクも元押し入れであったと記憶している。その後、その木造建築は解体され事務所は近所のビルに移転したが、〈場所〉の記憶は今でも強く残っている。

当時、両手をひろげたくらいの小さな空間に興味があった僕は、家具を取り扱うブランドIDEEと出会った。

その旗艦店であるIDEE SHOPは異彩な輝きを放っており、表参道駅から少し離れた4階建ての建物は、単なる家具を売るショールームではなく、古本小屋、花屋、ギャラリーなどの生活要素が混在していた。

その中心にカフェCAFE @ IDEE(カフェ・アット・イデー)があった。

休憩をする買い物客、ランチを楽しむ近所のワーカー、設計を依頼してくれた施主など様々な人で賑わっていた空間の中心には、カフェのスタッフがいた。

今思えば、その光景こそが、空間はそこに長く居る〈人〉が主役なのだと感じるきっかけであった。

こうした出会いもあり、1999年からはIDEEで空間デザイナーとしてキャリアを積むことになった。

職場はクライン・ダイサムアークテクツとIDEEのデザイナーがリノベーションした元ガソリンスタンドで、社会の変化に合わせて幾度かの改装を繰り返していた。

その中で僕は、それまでショールームだった職場を「IDEE サービス・ステーション」というカフェへとコンバージョンするプロジェクトの担当となった。それまでポリカーボネイトで覆われていた既存建築をあらわにすることでガソリンスタンドの〈時〉の記憶を呼びさまし、新たに生まれるカフェと視覚的に融合することを目指した。結果、スタッフや近所の人たちに日常的に利用されるカフェが誕生した。

まえがきで、僕にとって設計活動は「答えを探し続ける終わりのない旅のようでもある」と記したが、旅を始めた頃の記憶をたどってみると、やはり原点には〈場所〉〈人〉〈時〉という本書で取り上げた三つのテーマがある。

これからも設計活動を通して学び、実践を繰り返しながら、これらのテーマへの答えを探る旅を続けていきたい。

最後になったが、僕の活動を発見していただき出版という貴重な機会をくださった学芸出版社の古野咲月さん、メルボルンでの取材全般を導き協力してくださった山倉礼士さん、途切れそうになる僕の心を支え、様々な作業をサポートしてくれた吉本淳さんと廣瀬蒼くん、ご協力いただいたすべてのカフェのオーナーと設計者とお客様に感謝を伝えたい。

そして、すべてにおいて、いつも僕を励まし信じ続けてくれたパートナーの奈香にこの本を捧げる。

2019年9月 加藤匡毅

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