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ロンドン市長が市内を走る排ガス車への課金強化に意欲 2030年ネット・ゼロに向けた新たな報告結果受け

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公開日:2022/01/20

ロンドンのサディク・カーン市長は18日、2030年までの温室効果ガスのネット・ゼロ*達成への道筋をまとめた新たな報告書「Net-zero by 2030」を発表した。

この報告書は、大気汚染の削減や気候変動への対応、首都圏の渋滞緩和のために必要なアクションを明らかにすべく、市長がイギリスの環境系コンサルタント会社・エレメントエナジー(Element Energy)社に委託して制作したもの。

この中で市長は、目標達成のために特に求められる具体策として、以下の点を挙げている。

  • 200万戸以上の住宅と25万戸の非住宅用建物を適切に断熱化し、建物の総熱需要を40%近く削減すること
  • 2030年までに、ロンドンで220万台のヒートポンプを稼働させること
  • 2030年までに46万棟の建物を地域暖房ネットワークに接続すること
  • 2030年までに自動車の走行距離を27%削減すること
  • 2030年までに化石燃料の自動車とバンの販売を終了し、政府の既存の公約に沿う形で取り締まること

今回の報告書の中で注目されているのは、自動車由来の温室効果ガスの排出を抑制すべく、運転した距離・時間・場所などに応じて運転者に課金する「スマートロードプライシング**」の導入を、市長がロンドン交通局(TfL)に要請している点だ。

 

ロンドンは、2000年から2018年の間に、オフィスからの温室効果ガスの排出量を57%、家庭からの排出量を40%削減することに成功している一方で、自動車を含む交通機関からの排出量がわずか7%にとどまっている。

こうした状況から市は2019年4月から、市内中心部に乗り入れる車両のうち、一定の排ガス規制を満たしていない車両に対して最高12.5ポンド(約17ドル、約1,950円)/日程度の通行料を課す区域「超低排出ゾーン(ULEZ:Ultra Low Emission Zone)」を設定している。

ULEZ施行直後の2019年4月には、前月の同3月比で、排ガス基準を満たさない車の乗り入れが1日当たり約9,400台減少するなど効果を上げた。

また2020年4月に発表された報告書「CENTRAL LONDON ULTRA LOW EMISSION ZONE – TEN MONTH REPORT」によると、導入前との比較で、排ガスに含まれる二酸化窒素の濃度は市中心部で44%減少し、自動車の交通量は最大で9%減少したなどとする成果が判明している。

さらにコロナ禍の2021年10月25日からは、ULEZの指定区域を、セントラル・ロンドン内からインナー・ロンドン内へと18倍の規模に拡大するなど、環境負荷の高い交通量の抑制に取り組んでいる。

 

一方で依然、ロンドン市民の自動車による移動の3分の1以上が、徒歩で25分以内に可能、また3分の2は自転車であれば20分以内に可能であるとの報告もあり、十分な交通量削減には至っていない状況。また市内を走る電気自動車の割合も2%程度にとどまるとされる。

このため今回の報告書では、ULEZを32の行政区すべてに拡大することや、排ガス車から走行距離に応じた大気汚染防止料金を課すことを選択肢として示唆。

後者については、スマートテクノロジーを活用して、走行距離・時間帯・車種・公共交通機関による代替ルートを考慮した価格を徴収する方法が検討されている。

 

市長は報告書の公表にあたり、「気候変動による緊急事態は、地球を救うために炭素排出量を削減する機会がわずかしか残されていないことを意味しています。ここ数年、世界をリードする進歩を遂げたにもかかわらず、ロンドンの若者の肺に永久にダメージを与えるような有害な大気汚染が、依然としてあまりに多く残っています」とコメント。

その上で、「これは社会正義の問題でもあります。大気汚染は、最も貧しい地域コミュニティを一番苦しめます。低所得の市民ほど大気汚染の影響を最も強く受ける地域に暮らす傾向にあり、一方で自動車を所有する傾向にはありません。市民の半数近くは自動車を所有しておらず、大気を汚染する車両が引き起こしている有害な結果を不当なことと感じているのです」と、気候変動をめぐる公正や格差について指摘している。


*二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林・森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすること(出典:環境省「脱炭素ポータル」)

**ロードプライシングとは、「特定の道路や地域、時間帯における自動車利用者に対して課金することにより、自動車利用の合理化や交通行動の転換を促し、自動車交通量の抑制を図る施策」を指す(出典:東京都環境局「ロードプライシング」)

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Cover Photo by Rasheed Kemy on Unsplash

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