海外でデザインを仕事にする

岡田栄造 編
川島 高・森山 茜・鈴木 元・青木 翔平・福定良佑・德島 泰・今村ひかる・長田喜晃・青木慶一・山本尚明・清水花笑・中山雄太・小林耕太・村上あずさ 著

内容紹介

自分なりのスケールで世界に確かな存在感を示す14人のデザイナーによるエッセイ。IDEOの欧米オフィスを渡り歩いた職人的仕事術、Googleのアートディレクターに至る紆余曲折、テキスタイルの可能性を探る北欧のアトリエ風景、制約に満ちた途上国のファブラボでの奮闘…。フィールドに飛び込み領域を切り拓く先駆者からのメッセージ。

体 裁 四六・272頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-2638-2
発行日 2017/02/01
装 丁 フジワキデザイン

目次著者紹介まえがきあとがき関連ニュース

鈴木 元
/London, U.K. + Boston, U.S./GEN SUZUKI STUDIO

言葉に頼らないデザイン――国境を越えるプロフェッショナリズム

森山 茜
/Stockholm, Sweden/Studio Akane Moriyama

テキスタイルで空間を変える――北欧の小さなアトリエから

青木 翔平
/Takoradi, Ghana/Keio University

途上国のファブラボで挑む、現地が活きるビジネスのデザイン

福定 良佑
/Milan, Italy/FUKUSADA DESIGN

ミラノが磨く感性――職人とともに高めるデザインの現場

川島 高
/San Francisco, U.S./Google

シリコンバレーでアートディレクターになるまで

德島 泰
/Bohol Island, The Republic of the Philippines/FabLab Bohol

だれもがデザインできる環境をつくる――メイド・イン・ボホールへの挑戦

今村ひかる
/Rotterdam, The Netherlands/MV Design and Products B.V

人に寄り添うサービスのデザイン――状況を読み解き、体験をつくる

長田 喜晃
/Shanghai, China/GK Shanghai

都市のスケールを跨ぎ越える――愛着を持てる街のデザインへ

青木 慶一
/Munich, Germany/Neomind Design Studio

造形とコンセプトを研ぎ澄ます――ブランドをつくるデザイン言語

山本 尚明
/Da Nang, Vietnam/Panasonic Corporation

最高のソーラークッカーを目指して――ベトナムで学んだデザインの原点

清水 花笑
/Amsterdam, The Netherlands

リサーチを最適化するビジュアライゼーション――動き続けることで見えてくるもの

中山 雄太
/Singapore/National University of Singapore

アイデアを育むプロトタイピング――デザインとテクノロジーの交差点で

小林 耕太
/New York, U.S./ustwo

デジタルプロダクトデザインの最前線――ニューヨークで食えるようになるまで

村上 あずさ
/London, U.K./Studio Swine

あるべき物を探り当てる――旅と研究からはじまるスペキュラティブデザイン

鈴木 元/GEN SUZUKI STUDIO

1975年生まれ。金沢美術工芸大学卒。英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)、デザインプロダクツ科修了。松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)、IDEOロンドン、ボストンオフィスを経て、2014年にGEN SUZUKI STUDIOを設立。
日用品、家具、家電など幅広い領域で、国内外の企業にデザインやコンサルティングを行っている。
金沢美術工芸大学、多摩美術大学非常勤講師。

森山 茜/Studio Akane Moriyama

2010年に Studio Akane Moriyama をスウェーデンにて設立、現在もストックホルムを拠点にテキスタイルを素材として建築空間における作品を制作する。
主な作品に〈O 邸のカーテン〉〈Cubic Prism〉など。

青木 翔平/Keio University

1986年鳥取県生まれ。2009年東京大学工学部卒業。2015年東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。
西アフリカのガーナにおけるFabLabを拠点に地域のニーズに特化した製品開発を行う起業家の育成に取り組む。
慶應義塾大学SFC特任助教。平成26年度東京大学総長大賞受賞。博士(工学)。

福定 良佑/FUKUSADA DESIGN

1979年大阪府生まれ。金沢美術工芸大学デザイン科インダストリアルデザイン専攻を卒業後、2002年よりシャープ株式会社にプロダクトデザイナーとして勤務。2007年に退社後イタリアに渡り、ミラノのドムスアカデミーにてインテリアデザインコースの修士号を取得。2008年からミラノのスタジオウルキオラに勤務、プロダクトデザイナーとしてパトリシアウルキオラのアシスタントを務める。2012年に日本へ帰国後、京都にて自身のデザインスタジオ FUKUSADA DESIGN を設立。

德島 泰/FabLab Bohol

1978年京都府生まれ。学生時代はWEBとビジュアルデザインとインターネット技術を中心に学び、大学在学中よりIT系ベンチャー企業に勤務。2004年より個人事業にてWEBデザイナー兼SE。プロダクトデザイナーへのキャリアチェンジのため2007年に大学に再入学。2009年より医療機器メーカーのインハウスデザイナーとして、医療機器のプロダクトデザイン、GUIデザインなどを手がける。2012年8月から2014年12月まで青年海外協力隊(産業デザイン)として比国貿易産業省のデザインディレクター職を務め、「FabLabを用いたイノベーション環境構築による貧困削減プロジェクト」のPMとしてフィリピン初のファブラボ立ち上げを行う。2015年より慶應義塾大学所属。

川島 高/Google

1981年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2004年に渡米。文化庁が主催する新進芸術家海外研修員として、カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) にてメディアアート修士課程修了。アーティストとして作家活動を行う傍ら、アートディレクターとして Crispin Porter + Bogusky や AKQA などの広告代理店での勤務を経て、日本人として初めてGoogleのクリエイティブラボに参画。サンフランシスコ近郊に在住。

Web: http://www.takashikawashima.com
Facebook: https://www.facebook.com/takashi.kawashima
Twitter: https://twitter.com/kawashima_san

今村 (庄司) ひかる/MV Design and Products B.V

1980年東京都生まれ。2003年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。2003~2007年KMD/ Kei Miyazaki Design勤務。2011年Design Academy Eindhoven BA Man and Activity学科卒業。2013年からMV Design and Products B.V. 勤務。
主なプロジェクトに〈Schisis App / Radboudumc〉〈Hepatitis C Plan / AbbVie Care NL〉他。
作品掲載書籍に〈Looks good Feels good is Good. How Social Design changes our world〉他。

長田 喜晃/GK Shanghai

1982年神奈川県生まれ。2005年東京大学工学部社会基盤学科卒業。2005年リスボン工科大学建築学部に短期留学後、2008年東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻修了。2008年よりGK設計勤務。2012年よりGK上海。
主な設計作品に〈上海万国博覧会サイン〉〈北京豊台科技園ストリートファニチュア〉〈台湾マツダ新世代店舗デザイン〉ほか。

青木 慶一/Neomind Design Studio

1981年京都府生まれ。2002年山梨大学工学部を休学後、桑沢デザイン研究所夜間部プロダクトデザイン専攻に転学。2004年~2012年株式会社デザインオフィスバックス在籍。2012年夏、渡独。2013年春よりNeomind Matthias Fischer Mirko Kiesel GbR在籍。

山本 尚明/Panasonic Corporation

1978年兵庫県生まれ。2001年慶應義塾大学環境情報学部卒業。
2001年より松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)入社、スペース&メディア創造研究所勤務。新興国・途上国での新規事業コンサルティングを経て、現在は、産地(原産国)と職人と顧客を繋ぐIoTを活用した事業に取り組む。

清水 花笑

2006年、学習院大学文学部哲学科美学美術史専攻卒業。2008年、KIDI PARSONS Product Design demaprment卒業。2011年、デザインアカデミーアイントホーフェンMan&Well-Being卒業。2012~2016年、Studio Joost Grootens勤務。

中山 雄太/National University of Singapore

1979年東京都生まれ。2003年慶應義塾大学環境情報学部卒業。2005年慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修了。2006~2007年 南カリフォルニア大学訪問研究員。2008年 シンガポール国立大学ECE学部助手。2010年よりシンガポール国立大学インダストリアルデザイン学科デザインインキュベーションセンター勤務。

小林 耕太/ustwo

1983年愛知県生まれ。デジタルプロダクトデザイナー。15歳で単身渡米し高校・大学を卒業後、関西で不動産業界でサラリーマンになるために帰国。2009年に再渡米しシカゴでデザインの専門学校へ。修了後はニューヨークの会社で勤務。
主な仕事に〈TED.com〉〈Nike Soccer App〉など。エージェンシーのデザイナーとして働く傍ら、チャリティビールブランド・一本松ビールの発起人でもある。

村上 あずさ/Studio Swine

1984年愛知県生まれ、ロンドン在住。ロンドン大学バートレット校で建築学科を卒業後、英国王立芸術学院(RCA)デザイン・プロダクツ専攻修士課程を修了。2011年独立、Studio Swine(スタジオ・スワイン)を立ち上げる。地域の文化や工芸に伴ったデザインを作り、グローバル化や環境問題など、素材のイノベーションとともに考える作品を作る。
これまでに、「Wallpaper*」誌、カンヌ映画祭受賞、スワロフスキー・デザイナーオブザフューチャー受賞。オブジェクト、映像、インスタレーションを制作。
主な展覧会に「What is Luxury?」ヴィクトリアアンドアルーバート博物館(V&A)、第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展覧会など。

本書は、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカの10ヶ国を拠点に活動するデザイナー14名が、自らの体験を綴った本である。日本を飛び出し、海外で仕事を獲得し、キャリアを積み重ねながら独自の働き方を見出していく過程は、現在進行中のビビッドなものばかり。読んでいると、彼らと一緒にデザインの広い世界を探検しているような気持ちになる。

これから海外に出ようとする人たちにとっては、14人がそれぞれに異なるロールモデルとなるだろう。留学先の選定からインターンシップの仕組み、ビザの取得や、給与水準、住宅事情や生活費など、他では得にくい有用な情報が豊富である。仕事の具体的な進め方や同僚たちとのコミュニケーションなども、読んでいて学びが多い。自力で道を切り開いている者たちらしい爽やかで熱気に満ちた文章も、読む者を駆り立てるに違いない。

「デザイン」の仕事の範囲はこの20年で加速度的に拡張した。20世紀には形あるものに止まっていたデザインの対象が、無形のあらゆる「こと」にまで大きく広がった。今やデザイナーは、モノをデザインしているように見えても、実際にはそのモノがひとつの要素に過ぎないサービスやビジネスをつくるか、あるいはモノが媒介するある種の物語を紡いでいるのであり、そうでなければ、職能の価値を社会に訴求することができない。そのために、デザイナーは旧来のスキルに加え、経営学や工学、民俗学といった分野の知識や技術を駆使しなければならない。造形的なスキル教育を中心にしてきたデザインの教育機関はどこでも、限られた時間で現在のデザインに必要な広範な能力を養う方法を模索している。

本書に寄稿した14名は、このような時代に、デザイナーの新しい職能を模索する過程にある。彼らの多くが学校で学んだ分野とは異なる領域で活動しているのはそのためだ。建築を学びながら今はテキスタイルをデザインしている者や、美術史とプロダクトデザインを学んだあとグラフィックのデザインスタジオに飛び込んだ者。プロダクトデザイナーになるためにあえて建築学科に進んだ者もいる。海外に出たタイミングはそれぞれだが、一度就いた仕事を中断してでも、その都度必要な技術を学びなおすことに前向きな点は皆共通している。彼らは国境を超えると同時に分野の境界も超えることで、身をもってデザインの仕事を現代にふさわしいかたちに再構築しているのだ。

ミラノのスター・デザイナーのアトリエから、世界一大きなデザイン会社のボストン・オフィス、果てはアフリカのファブラボまで、働く場所と内容の大きな振れ幅が、本書の特徴である。それらをひとつの職能に括ってしまうにはあまりにも多様なのだが、それでも全てをやはりデザインの仕事と呼べるのだとしたら、私たちは「デザイン」を、今どのように定義できるだろうか。この本から、読者それぞれが答えを見出してくれたら嬉しい。

2016年11月 岡田栄造

私の海外経験は、20代のころに語学留学を兼ねてロンドンに4ヶ月ほど滞在しただけ。海外で働くことに憧れはあったものの、実現する行動力がなかった。本書の編者を引き受けるべきか自問もしたが、むしろ、日本を飛び出ることを逡巡しているかもしれない読者の気持ちがわかると開き直った。若い時の自分を、いや今の自分をも海外に駆り立てる本にしようと考えたわけである。

かつて、デザインの仕事を海外で得るにはヨーロッパかアメリカに行くのが一般的だったと思う。新興国に渡るにしても、キャッチアップの途上にある産業に対してデザインの技術を提供する意味合いが強かった。10年ほど前から、途上国の人々が抱える様々な課題を解決する手段としてデザインが認識されはじめた。現在では、先進国を追うのとは異なる成長の方法を地域の人々と共に試行することが、デザイナーの役割になりつつある。

本書を企画するにあたっても、デザインの役割が大きく変化する今の状況を反映すべきことは明らかだった。そのため、できるだけ多くの地域で、それぞれに異なる役割を得ているデザイナーに参加してもらう必要があった。執筆者の選定にあたっては、私が持っていた情報とネットワークではとうてい追いつかず、何人かの方に候補者の紹介をお願いした。中でも慶応義塾大学准教授の水野大二郎氏には、本書に参加した複数の執筆者を紹介いただいた。

デザイナーが専門誌や書籍に寄稿する機会は、建築家に比べると圧倒的に少ない。ほとんどがB to Bの仕事であり、守秘義務等の問題から情報公開に気を使わざるをえない職能の性格によるところ大きく、またデザイン分野のメディアが貧弱であることも問題である。執筆を依頼するにあたっては、デザイナーたち自身が言葉で語る動機をあまり持たないのではないかという不安があった。しかしながら、本書への参加を依頼するや、全ての方が書籍の趣旨に大いに賛同し、寄稿を了承くださった。そして、どの執筆者も忙しい中、当初から本当に生き生きとした、臨場感のある文章をお寄せくださった。これは良い本になる、という確信を持つと同時に、デザイナーには書く機会が与えられていないだけだということも、よく分かった。

海外での貴重な体験を本書のために共有くださった執筆者の方々、素晴らしい執筆者を推薦くださった方々、姉妹編『海外で建築を仕事にする』の企画・編集者で、デザイン版をつくりたいという私の願いを形にしてくださった井口夏実編集長、専門的で冗長になりがちな原稿を、粘り強く丁寧に執筆者とやりとりしながら、わかりやすく読み応えのある本に仕上げてくださった編集担当の岩切江津子氏、松本優真氏に、心より感謝の気持ちを捧げたい。

2016年11月 岡田栄造

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