エリアリノベーション
内容紹介
6都市の先駆者が語る、街を変える方法論
建物単体からエリア全体へ。この10年でリノベーションは進化した。計画的建築から工作的建築へ、変化する空間づくり。不動産、建築、グラフィック、メディアを横断するチームの登場。東京都神田・日本橋/岡山市問屋町/大阪市阿倍野・昭和町/尾道市/長野市善光寺門前/北九州市小倉・魚町で実践された、街を変える方法論。
馬場正尊+Open A 編著/明石卓巳・小山隆輝・加藤寛之・豊田雅子・倉石智典・嶋田洋平 著
著者紹介
体裁 | 四六判・256頁(カラー104頁) |
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定価 | 本体2200円+税 |
発行日 | 2016-05-25 |
装丁 | ASYL |
ISBN | 9784761526221 |
GCODE | 2263 |
販売状況 | 在庫◎ |
関連コンテンツ | 試し読みあり |
ジャンル | 公共空間/不動産活用・リノベーション |
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この本の目的と使い方
エリアリノベーションとは
エリアリノベーションの法則を探して
6つの街をめぐって
街の変化を比較する9つの視点
第1部 エリアリノベーションとは 馬場正尊
01 エリアリノベーションの背景
「まちづくり」という言葉からの脱却
郊外化のメカニズム
資本の流れと風景の関係
マスタープラン型から、ネットワーク型へ
02 基本構造:3つのポイント
空間ができるプロセスの逆転
職能を横断するプレイヤーの登場
街を変える4つのキャラクター
[1]不動産キャラ
[2]建築キャラ
[3]グラフィックキャラ
[4]メディアキャラ
03 ローカライズ:9つのポイント
変化の兆し/サイン
きっかけの場所/スペース
事業とお金の流れ/マネタイズ
運営組織の形/オペレーション
地域との関係/コンセンサス
行政との関係/パートナーシップ
プロモーションの手法/プロモーション
エリアへの波及/インパクト
継続のポイント/マネジメント
04 計画的都市から、工作的都市へ
産業構造の風景化
工作的都市の出現
第2部 エリアリノベーションの実践
01 東京都神田・日本橋 馬場正尊
02 岡山市問屋町 明石卓巳
03 大阪市阿倍野・昭和町 小山隆輝・加藤寛之
04 尾道市旧市街地 豊田雅子
05 長野市善光寺門前 倉石智典
06 北九州市小倉・魚町 嶋田洋平
街と観察者
この本の目的と使い方
エリアリノベーションとは
この10年で「リノベーション」という単語は建築の世界だけではなく、一般社会にも流通し定着した。最初は古い建物の再生を意味していたが、最近はよりダイナミックな価値観の変換を期待する空気を感じる。
リノベーションは単体の建築を再生することだが、それがあるエリアで同時多発的に起こることがある。アクティブな点は相互に共鳴し、ネットワークし、面展開を始める。それがいつしか増幅し、エリア全体の空気を変えていく。
いくつかのエリアで、偶然に無秩序に起こっているように見えるこの現象には、実はある基本構造が存在していることに気づき始めた。もちろん地域性や登場人物によって、立ち上がる街の風景はまったく違うが、そこには必ずいくつかの共通点がある。何が基本構造で、何がローカライズされた特殊解なのか、この本ではそれを浮かび上がらせ、新しい方法論としてまとめたい。
本書では、第1部「エリアリノベーションとは」において、エリアリノベーションをめぐる背景と理論を整理し、第2部「エリアリノベーションの実践」において、点のリノベーションが面的に展開していった6つの代表的な街をケーススタディとして分析、構造化していく。
「都市計画」という単語の下で行われてきた、行政主導のマスタープラン型の手法。「まちづくり」という単語の下で行われてきた、助成金や市民の自発的な良心に依存した手法。僕らは今、そのどちらでもない、デザイン、マネジメント、コミュニケーション、プロモーションなどがバランスよく存在する、新しいエリア形成の手法を発明しなければならない。この本ではそれを「エリアリノベーション」と呼んでみることにする。
エリアリノベーションの法則を探して
この本の最大の目的は、現段階で成功していると思われるエリアリノベーションの法則を探すことだ。
もちろん、街の事情はさまざまで、人口や産業、街を構成する人々のキャラクターや積み重ねられた歴史など、まったく違う背景や条件を持っている。しかし、それを超えて、成功の要因となる骨格が存在するのではないだろうか。本書では、それを「基本構造」と呼ぶことにする。そして、地域ならではの事情や条件によって左右される要因を、「ローカライズ」と呼んでみる。エリアリノベーションは、その組み合わせによって起こっているというのが僕の仮説だ。
6つの街をめぐって
この本では、6つの街を具体的な素材対象/モデルケースとして探し当てた。職業柄、日本中の街を訪れる。そして時々、「この街の変化は本物だな」と感じる街に出会う。骨太で、着実で、しっかりとした経済活動が行われている。しかも、かっこいい(これが重要)。ここならしばらくの間、住んでみたいと思える街。
そこには何か、理由や法則みたいなものがあるのだろうか? きっとあるはずだ。それは何なんだろう。そんなことを考えながら、この本を書くにあたり選んだのは以下の6つの街だ。
・東京都神田・日本橋(CET)
・岡山市問屋町
・大阪市阿倍野・昭和町
・尾道市旧市街地
・長野市善光寺門前
・北九州市小倉・魚町
これらの街を選んだ基準は、およそ以下の通りだ。
・目に見えて風景が変化していること。
・変化が継続し、日常化していること。
・経済的に自立していること。
・デザインがかっこいいこと。
最初から確信があったわけではないが、気になる街を並べてみると、このような共通点があった。すでに起こっているそのリアルな状況にこそ、まちづくりの次の概念が潜在しているのではないだろうか。
街の変化を比較する9つの視点
6つの街の取材にあたり、その街のエリアリノベーションをドライブさせたキーパーソンに、改めて現場を案内してもらいながら、長いインタビューを行った。
一見、バラバラな6つの街の変化を、できるだけ構造的に把握するため、同じ質問を、同じ順番で投げかけた。それによって、共通項と差異がわかりやすくなると考えたからだ。質問項目は下記の通り。
・変化の兆し
・きっかけの場所
・事業とお金の流れ
・運営組織のかたち
・地域との関係
・行政との関係
・プロモーションの手法
・エリアへの波及
・継続のポイント
ヒアリングを通して3つの基本構造と9つのローカライズのポイントが浮かび上がってきた。この方法論を新しく変化する街のヒントにしてほしい。
馬場正尊
街と観察者
僕は仕事でたくさんの街を訪れる。プロジェクトでしばらく根をおろすときもあれば、旅人のように短い滞在で移動してしまうこともある。
時々、変化する街特有の違和感のようなものを感じることがある。出会った人との会話から、リノベーションされた小さな建物から、街角で見かけたフライヤーの束から。その兆しを発見したときの高揚感が好きなのだと思う。
そんなとき、観察者となって変化の理由とメカニズムを解き明かしたくなる。僕の仕事のスタイルは観察と実践を交互に繰り返すこと。取材からインスピレーションを受けて、それが次の仕事のモチベーションになっている。
この本の企画を持ちかけてくれた学芸出版社の宮本裕美さんは、この習性を見抜いていたのだと思う。いつも本という乗り物で新しい世界に連れて行ってくれるから、一緒に仕事をしていて楽しい。
忙しいなか、街を歩きながら長い取材に丁寧に付きあってくれた皆さんにも、この場を借りて感謝したい。見せていただいた変化の風景は、この国の未来を示している。それが読んでくださった方々の活動の何らかのヒントになってくれれば嬉しい。
今回もOpen Aのみんなには忙しい業務のなか、多くの協力を強いてしまった。この事務所に入った宿命として諦めて欲しい。特に加藤優一くんは取材、編集、執筆まで多岐にわたって活躍してくれた。
みなさんにとても感謝しています。ありがとう。
2016年4月
馬場正尊
『エリアリノベーション』出版記念トークイベント(終了しました)
馬場正尊×前田有佳利/2016.6.19@大阪
『エリアリノベーション』出版記念トークイベント(終了しました)
馬場正尊×本郷紘一/2016.6.29@仙台
トークセッション in TAU(終了しました)
馬場正尊×豊田雅子/2016.7.9@東京
これからの都市の使い方 ~「エリアリノベーションする人」馬場正尊と「都市をたたむ人」饗庭伸~(終了しました)
馬場正尊×饗庭伸/2016.10.3@東京