暮らしのシーン別 照明設計の教科書


福多 佳子 著

内容紹介

実例・図解満載!手に取るように光がわかる

暮らしをいろどるシーン別照明計画のバリエーションを詳解した実践的入門書。知っておきたい基礎知識や多灯分散照明を実践しやすい照明器具の選定方法、照明手法の組み合わせ方から、直感的に理解できる3D照明計算の事例や写真までを豊富に掲載。雰囲気をつくるだけでなく、心地よさも得られる照明計画のコツを体得しよう!

体 裁 B5変・216頁・定価 本体3200円+税
ISBN 978-4-7615-3275-8
発行日 2021-09-25
装 丁 美馬智


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はじめに

┃ 1 章 ┃ 暮らしを設計する。多灯分散照明の実践

1.1 あかりを自在に楽しむ。広がる暮らしのバリエーション

●暮らしをつくる、光の3つの要素
●あかり1つでものの見え方はこんなに変わる
●サーカディアン照明とは?健康にもなれる光の効果
●知っておきたい目の機能と光の関係
●老いる体に優しく寄り添う。加齢と光の関係

1.2 コンパクトで長寿命!LED照明器具と使い方

1.3 照明による空間づくりの基本

┃ 2章 ┃ 照明計画で空間体験を増幅させる

2.1 照明計画のアプローチ

2.2 照明器具の選び方

2.3 建築照明

●建築照明の分類と特徴
ダウンライト
スポットライト
建築化照明
埋め込み照明

2.4 装飾照明

●装飾照明の分類別特徴
ブラケットライト
スタンドライト
ペンダントライト(シャンデリア)
シーリングライト

2.5 エクステリアライト

┃ 3章 ┃ 照明効果が一目でわかる!3Dで照明計算

3.1 照明計算の基礎知識

●視覚的な明るさを確認する
配光の捉え方
被照点の明るさを知るには?
配光データの活用方法
平均照度の計算方法
照度の測定方法

3.2 3Dの検証でわかる照明効果

┃ 4章 ┃ 暮らし方を生かすシーン別照明のテクニック

4.1 暮らしを支えるあかり

●行為別に考える照明計画のポイント
‐SCENE 1. 出迎える
①ほっとさせる/②飾る/③身支度ができる/④造作との調和
‐SCENE 2. 移動する
①導く/②動線を遮らない/③深夜の覚醒を防ぐ/④飾る
‐SCENE 3. 昇降する
①高所のメンテナンス/②段差の視認性/③グレアを与えない
‐SCENE 4. 調理する
①手暗がりをつくらない/②作業しやすい明るさ/演色性と食材
‐SCENE 5. 食べる
①囲みたくなる食卓/②消化を助ける光色/③美味しさを照らす/④集光はほどほどに
‐SCENE 6. くつろぐ
①安眠へ導く光色/②重心を下げる/③グレアを与えない/④フレキシブルな居場所
‐SCENE 7. 顔を見る
①顔色をチェックできる/②顔に陰影をつくらない/③肌の色をきれいに見せる
‐SCENE 8. 入浴する
①防湿性能を備える/②気分を整える光色/③動作を遮らない/④景色を楽しむ調光
‐SCENE 9. 排泄する
①影をつくらない/②狭さを生かす/③深夜の覚醒を防ぐ
‐SCENE 10. 寝る
①安眠を促す光色/②グレアを与えない/③暗さのバリエーション/④覚醒の抑制
‐SCENE 11. 服を選ぶ
①色が識別しやすい/②色温度の選択/③均一な光
‐SCENE 12. 勉強する
①集中できる/②手元を照らす/③覚醒のオン・オフ/④隣接空間との両立

4.2 暮らしを楽しむあかり

●行為を楽しむ照明計画のポイント
●くつろぎの光を演出する
‐SCENE 13. お酒を飲む
‐SCENE 14. 読書をする
‐SCENE 15. 映画を観る
‐SCENE 16. アートを楽しむ
①自然光を遮る/②色を正確に照らす/③グレアを与えない
‐SCENE 17. 緑を楽しむ
①防水性能を備える/②木の立体感を出す/③色温度の選択/④映り込みを防ぐ
●もてなしの光を演出する
‐SCENE 18. 外観を魅せる
①壁面を照らす/②緑を照らす/③漏れ光を見せる
‐SCENE 19. パーティをする
①カラーライティング/②下から照らす/③輝度を見せる
‐SCENE 20. 泊める(和室)
①和の意匠を生かす/②低色温度を使用する/③グレアを与えない/④明るさを制御する/⑤床の間を飾る

5章 実務の知識と器具の選択

5.1 知っておきたい照明のポイント

●設置からメンテナンスまで
吹き抜けの考え方
照明器具設置の注意点
LED電球(電球型LEDランプ)の選び方
照明制御の考え方
照明設計における施工管理

5.2 暮らしをいろどる照明器具

索引
参考・引用文献
おわりに

福多 佳子

1965年福島県生まれ。1988年横浜国立大学工学部建築学科卒業、1990年同大学院博士課程前期修了後、2008年同大学工学府社会空間システム学専攻博士課程後期修了。博士(工学)。1998年中島龍興照明デザイン研究所設立に参画、共同代表。一級建築士。照明プロフェッショナル(照明学会認定)。IALD(国際照明デザイナー協会)アソシエート会員。主な著書に『超実践的住宅照明マニュアルLED完全対応版』(2016、エクスナレッジ)、共著に『高齢者のための照明・色彩設計』(1999、インテリア産業協会)、『Q&A高齢者の住まいづくりひと工夫』(2006、中央法規出版)、『図解入門よくわかる最新LED照明の基本と仕組み[第2版]』(2012、秀和システム)、『住宅照明設計技術指針』(2018、照明学会技術指針JIEG-009)ほか。おもな受賞に国宝白水阿弥陀堂新緑+紅葉ライトアップ(2015)、星野リゾート 界 鬼怒川(2016)、JPタワー名古屋SEASON(2016)、英照院(2018)が北米照明学会のIllumination Awards “ Award of Merit ” を受賞

2011年の東日本大震災以降、照明業界は大きく変化しました。電力需給の逼迫による省エネルギーの要請でLED需要が急速に高まった当初は、蛍光灯や白熱灯より性能が劣っていた過渡期でも、やむなく使用する状況でした。そこから10年を経てLED照明の進化は目覚ましく、今では省電力や長寿命というだけでなく、光源部や器具の小型化、家具や建材との一体化も進んでいます。LEDは、光色と光の広がりのバリエーションも豊富です。白熱灯なら光色は暖色光のみ、蛍光灯なら光の広がり方は拡散光のみと、光源によって限定されていた照明効果も、調色・調光機能やフルカラー可変のLED器具の登場で選択肢が広がりました。無料で使用可能な3D照明計算ソフトも普及し、明るさや雰囲気などの照明効果をだれもが手軽に予測できるようになっています。

こうしたLED器具や照明計算ツールの進化は、ヒトの行為に寄り添う照明計画を一気に身近にしました。くつろいで本を読んだり、勉強したり、食事や入浴をしたり、眠りについたりと、部屋の明るさを確保するだけでなくシーンに適したあかりを設えることは、明日への活力を養う住宅にとって大切な選択です。ヒトの生理や心理に影響を与える光の効果は、暮らしをもっと豊かで快適なものにするからです。

コロナ禍で在宅時間が増えた今、住宅の環境設計は一層重要な社会テーマになりました。しかし技術の進歩に反して、私たちの生活様式はそう簡単に変わらないようです。夜景を見ると、部屋の天井中央に大型のシーリングライトが取り付けられた“ 一室一灯照明”の窓明かりや、オフィスと同じ白色光の多さにも驚きます。疲れて帰った自宅でも職場と同様の明るい照明では、しっかりと体を休めることはできません。こうした問題意識から、照明デザイナーとして培ってきた日頃の経験を生かし、少しでも豊かで快適な住空間をつくりあげる知恵と工夫をまとめたのが本書です。

1章では“ 一室一灯照明”から脱却し、“ 多灯分散照明”を実践するための照明計画の基本をおさえます。2章では器具の種類ではなく配光で選択するための知識を整理しました。3章は照明計算の基礎知識と3D照明計算ソフトの操作方法をコンパクトにまとめました。4章はヒトの行為ごと、つまり「暮らしのシーン別」の照明テクニックを列挙しています。例えば“食べる”という行為に適した照明はカフェやレストランの照明に応用可能なように、住宅の照明計画にはあらゆる施設用途の基礎が詰まっています。最後の5章では照明器具の選定における注意点をまとめました。

照明の教科書というとおこがましいのですが、建築やインテリアの設計者はもちろん、照明が好きな方、住宅の新築や改修を考えている方に多様な魅力を伝えることを目指しました。この本が、暮らしを楽しむための照明手法を使いこなす一助となれば幸いです。

2021年8月吉日
福多佳子

振り返ってみると本書の出版企画を打診いただいたのは、2016年の秋でした。約5年の月日が経ってしまいましたが、学芸出版社の岩切江津子氏の多大なるサポートで、最後までまとめることができました。中島龍興照明デザイン研究所の中島龍興氏には写真提供や助言をいただき、太田篤史氏には本書内の図や3D照明計算の作成など多大なる尽力をいただきました。この場を借りて心からお礼申し上げます。

2020年から続くコロナ禍によって生活スタイルも変化するなかで、住宅も多様化が求められています。ヒトの行為の基本は住宅にあります。行為別の照明計画をマスターすることで、多くの施設の照明計画にも応用できることが本書の特徴です。1つの空間でも行為に応じて照明を変化させることで、仕事をするオフィスにも、食事をするレストランにも、心地よい眠りにいざなうホテルにも応用が可能です。近年のコロナ禍がもたらした新たな生活スタイルにも対応しました。

最後になりましたが、本書内で事例写真を掲載させていただきました設計者および関係者の皆様、また器具写真や事例写真をご提供いただきました照明メーカーの皆様には感謝申し上げます。本書を手に取った多くの方が、照明計画の現場で本書を活用してくださることを願っています。

2021年8月吉日
福多佳子

河原武儀 × 菅原千稲 × 小山憲太郎 × 福多佳子「照明デザイナーが教える、光を使いこなす3ポイント」