寶田 陵 著

内容紹介

海外50都市、200以上のデザインホテルを訪れた著者のスケッチ集から、41ホテルを厳選、実測図・写真・文章で設計のポイントを解説。ライフスタイルやコンセンプトを間取り、素材、ディテールの隅々に反映させた、最先端の設計をプロの目線がとらえた。“オンリーワンホテル”を目指すホテル事業者、企画・設計者必携の一冊。

体 裁 A4変・96頁・定価 本体3200円+税
ISBN 978-4-7615-3247-5
発行日 2019/08/10
装 丁 赤井佑輔(paragram)


目次著者紹介まえがきあとがき試し読みホテルマップ

アメリカ圏|America  絶えず変化するホテルデザインの発信地

01 1 Hotel Central Park(アメリカ・ニューヨーク)

02 The James New York – SoHo(アメリカ・ニューヨーク)

03 Viceroy Central Park New York(アメリカ・ニューヨーク)

04 NoMad New York(アメリカ・ニューヨーク)

05 PUBLIC Hotel New York City(アメリカ・ニューヨーク)

06 MADE Hotel(アメリカ・ニューヨーク)

07 Wythe Hotel(アメリカ・ニューヨーク)

08 1 Hotel Brooklyn Bridge(アメリカ・ニューヨーク)

09 Ace Hotel Palm Springs(アメリカ・パームスプリングス)

10 The Keating Hotel(アメリカ・サンディエゴ)

11 Palihouse West Hollywood(アメリカ・ロサンゼルス)

12 Ace Hotel Downtown Los Angeles(アメリカ・ロサンゼルス)

13 W Mexico City(メキシコ・メキシコシティ)

[コラム]実測スケッチへの没頭の原点

アジア圏|Asia  アジア的DNA―突然変異を予感させる知恵と工夫

14 Banyan Tree Bintan(インドネシア・ビンタン)

15 PARKROYAL on Pickering(シンガポール)

16 The Fullerton Bay Hotel(シンガポール)

17 The Warehouse Hotel(シンガポール)

18 Heritance Kandalama(スリランカ・カンダラマ)

19 W Hong Kong(香港)

20 99 Bonham(香港)

21 Mira Moon Hotel(香港)

22 HOTEL QUOTE Taipei(台湾・台北)

23 The PuLi Hotel and Spa(中国・上海)

24 Aman Tokyo(日本・東京)

[コラム]海外のデザインホテルに学んだ2つのこと

ヨーロッパ圏|Europe  本物の質感をコンパクトにまとめあげる実力派たち

25 Ace Hotel London Shoreditch(イギリス・ロンドン)

26 citizenM London Bankside hotel(イギリス・ロンドン)

27 Rosewood London(イギリス・ロンドン)

28 The Ned(イギリス・ロンドン)

29 Nobu Hotel London Shoreditch(イギリス・ロンドン)

30 The Hoxton, Holborn(イギリス・ロンドン)

31 Room Mate Giulia(イタリア・ミラノ)

32 Hotel VIU Milan(イタリア・ミラノ)

33 Bvlgari Hotel Milano(イタリア・ミラノ)

34 Conservatorium Hotel Amsterdam(オランダ・アムステルダム)

35 Sir Adam(オランダ・アムステルダム)

36 B2 Boutique Hotel + Spa(スイス・チューリッヒ)

37 Casa Camper Berlin(ドイツ・ベルリン)

38 W Paris – Opéra(フランス・パリ)

39 C.O.Q. Hôtel Paris(フランス・パリ)

40 OFF Paris Seine(フランス・パリ)

41 Mama Shelter Lyon(フランス・リヨン)

[コラム]日本のデザインホテルを進化させるために

寶田陵

the range design INC. 代表取締役
ホテル、旅館、共同住宅、商業施設、オフィス等、幅広い分野で建築設計及びインテリアデザインを手掛ける。近年ではプロジェクトにおける企画プロデュースやデザインディレクション、家具や照明器具などのプロダクトデザインにも活動の幅を広げ、新しいライフスタイルを生み出す建築・空間づくりにチャレンジしている。
1971年 東京都墨田区生まれ。1993年 日本大学理工学部海洋建築工学科卒業、(株)フジタに入社し、 その後設計事務所や大手ゼネコンを経て、2016年 the range design INC. 設立。

今、日本は空前のホテルラッシュを迎えている。訪日観光客が年々増加する中、ラグジュアリーホテルからビジネスホテル・バジェットホテルまでの全てのカテゴリーにおいて、10年前と比較しても日本のホテルはデザインもコンテンツも大きく変わりつつある。

私がホテル設計を始めたのは2002年頃。「日本にビジネスホテルとは違う新しいスタイルのホテルをつくらないと!」という思いは強くあったが、そもそも当時は共同住宅しか設計していなかったから、ホテル設計のスタンダードもわからない。スタンダードはお手本ホテルを勉強すれば一定のクオリティには届くかもしれないが、その先には決して辿り着けない。ゆえにスタンダードを学びながらそれを超えるために何が必要なのか?という自問自答に、「これは死ぬ気で勉強しなければ…」という気持ちで始めたのが二つの行動だった。

一つは自分が計画しているホテルの周辺にある既存競合ホテルに全て泊まること。これはホテルのスタンダードがわかるだけではなく、競合ホテルはどのような人たちをターゲットにしていて、価格帯の設定はどのくらいで、どんな面積でどういう機能でどういうデザインなのか。そして、それがどの程度ゲストに受け入れられているのかを知ることで、自分のホテル設計にスタンダードをしっかりとつくることができると思ったからだ。

もう一つは当時次々と話題になっていた海外のデザインホテルを泊まり歩くこと。日本ではデザインホテルという言葉は流行していたし、様々な本も出版されていたが、実際日本にデザインホテルはほとんどできていなかった。だから海外に何度も足を運び、スタンダードなホテルと一体何が違うのかを知ることで、スタンダードの守るべき部分は守り、時代にあわせて変化させるべきところは新しいアイデアと見え方を提案する。そのスタンダードを超える化学反応的な変化を自分のホテル設計に取り入れることが必要だった。

その二つを意識して徹底的に行動すれば、スタンダードを超えたデザインホテルは必ずできると信じていた。その時無意識に描きはじめたのが海外デザインホテルのスケッチである。本を出版することなど全く想定もしていなかったし、あくまでも自分の記録用である。写真では収まりきらない感動した情報量をふと残したくなったのだろう。気がつけばいつの間にか20カ国50都市以上を訪れてスケッチしていたことになる。設計打ち合わせの時に、稀にスケッチを取り出してクライアントの前に提示しながら説明すると、ほぼ全員が前のめりになってスケッチを見はじめてくれる。そのうちこのスケッチが独り歩きしはじめて、ありがたくもホテルスケッチ展を開催することにも繋がった。

ただ、私は絵がお世辞にも上手ではないので、スケッチは芸術的でもなければ美しくもない。 ただひたすら「数字と構成」にこだわってスケッチしてきている。寸法を徹底的に測って基本を学び、形状・材料とディテールを徹底的に描きながら、スタンダードを超えた世界観を学んできた気がする。今までの海外のデザインホテルの宿泊累計日数は200泊を超えているが、実はスケッチしているのは100ホテル程度で、泊まったホテル全てではない。WEBなどの情報から目星をつけても、実際に行ってみるとがっかりすることも多いからだ。つまり実物がWEBの写真負けをしている、もしくは完成予想CG負けをしているホテルが半分以上あるということなのだ。ここに紹介するホテルは、写真負けやCG負けとは無縁であり、さらに言うならば基本がしっかりありながらも独特の世界観を持っていて、想像を超えた発見や感動があった41ホテルということになる。

正直、ホテルスケッチは好きか?と問われると答えに詰まるだろう。わざわざデザインホテルに泊まって楽しく過ごすこともなく、ひたすら図面を描くなんてしんどいだけだし、記録写真だけで良いはずなのに、自分がなぜホテルスケッチを描いているのかわからなくなる時もしばしばある。東京下町育ちのもったいない気質が、「高いお金を払って泊まるのだから元取るぞ!」と脳に命令を出しているのだろうか。今となってはそんなことすら考えずに、何かに取り憑かれたように測って描きはじめている自分がいるから、理屈抜きでそれでいいのだ。字が読みづらかったり、適当に描いて誤魔化していたりする部分も多々あるが、このホテルスケッチが新しいホテルづくりにチャレンジしているホテル業界全ての人、またホテルが大好きでたまらない全ての人に、ほんの少しでも何か貢献できるのであれば、とても光栄であり嬉しく思う。

2019年7月
寶田 陵

日本にも最近面白いホテルが徐々に増えてきている。今までは有名チェーンホテルも含めて、以前からホテル運営を継続してきたところが圧倒的に多かったが、最近の傾向は新規参入のオペレーターが増えていることだ。ターゲットは国内の若いツーリストとインバウンド。新規参入ホテルは既存ホテルチェーンとの差別化を図ることに注力し、海外デザインホテルをしっかり勉強してそこにオリジナルなアイデアを加え、チェーンホテルにはないデザインやホスピタリティーを体感できる日本版デザインホテルをリーズナブルな価格で展開してきている。

ここで興味深いのは、今までデザインホテルに興味を示しながらも、自分たちが築き上げてきた老舗ブランドの殻からなかなか抜け出せずにいた既存チェーンホテルの動きである。新規参入ホテルのデザインとそこに市場があることに目を向けたチェーンホテルは、将来のホテル競争に勝てるロードマッピングを念頭に、既存ホテルブランドを残しながらデザインホテルカテゴリーの新ブランドを立ち上げて、全国で横展開を始めている。チェーンのデザインホテルによる新ブランドが狙っているのは、国内ツーリストとインバウンドのアッパーミドル層である。デザインホテルがこれだけ増えていることに比例して、使う側の見る目も肥えてきているから、新規参入ホテルのリーズナブルな価格帯のデザインとホスピタリティーでは、アッパーミドル層が満足できないからだ。そこにチェーンホテルの既存ブランドで築いてきたノウハウと心地良いホスピタリティーは、アッパーミドル層が求めるデザインホテルに活きてくるということなのだろう。

一方で近年“ライフスタイルホテル”という言葉も登場した。デザインホテルから派生しており、宿泊だけではない個性的な共用部を持ち、ユニークなサービスと体験を提供しているホテルという位置づけだ。英語で”Life Style Hotel”をGoogle検索しても、海外の有名なデザインホテルはほとんどヒットしない。「衣・食・住」の充実した生活スタイルをトータルに提案している「ライフスタイルショップ」という言葉が日本人に定着したように、「ライフスタイルホテル」という言葉も日本人の耳に心地よく響く。日本ではデザインホテルの前にデザイナーズホテル(建築家やデザイナーが入ってコンセプトからデザインしたホテル)という言い方が世に広まっていたため、デザイナーズホテルとデザインホテルの違いが明確でなかった。これに対してライフスタイルホテルは定義が明快で、テーマ性のあるデザインと宿泊以外の充実した付加価値が滞在自体を楽しませてくれるホテル、ということなのである。そこを建築家やデザイナーがデザインしているのはすでに当たり前であり、「ホテルはどこでも良い」から「ここに泊まりたい!」と思わせる“ディスティネーションホテル”(滞在そのものが旅の目的になるホテル)に変わりつつあるのだ。

また、そこには今までのラグジュアリーホテルとかビジネス・バジェットホテルのカテゴリーは存在していないのが特徴である。どんなに小さいホテルでも共用部が充実していて、ホテルラウンジはデザインホテルのようにダイニングやバーを併設し、そこでしか飲むことができないクラフトビールなどのお酒やホテルテーマに合わせた定期的なイベントを仕掛けたり、あるいはルーフトップバーを設けて夜景を堪能できるイベントを開催したりするなど、ソフトサービスを提供するための器がしっかりできている。一方で客室もゲストの滞在をワクワクさせるような新しいデザインと新しい発見が散りばめられ、ゆったり2人で過ごす客室から大人数で泊まれる2段ベッドを備えた客室まで、幅広いバリエーションを持って様々なゲストのニーズに対応できるようにしている。

あるフランス人の経営者が「日本はいろんなものを組み合わせ、それを独自に進化させて新しいものをつくりだす力がある。その能力は世界でも日本が一番長けている」と言っていたのがずっと頭の片隅に残っている。ライフスタイルホテルが今後日本で定着するかどうかは未知数だが、こういう面白いホテルが日本で増え続け、私が海外のデザインホテルで感動したように、日本発のデザインホテル・ライフスタイルホテルで国内外のホテルゲストの日常がもっとエキサイティングになると信じたい。だから時代をタイムリーに捉えるためにも、今後も面白いホテルが完成したらすぐに泊まりに行き、ライフワークとしてホテルスケッチを描き続けるだろう。今後は日本のデザインホテル・ライフスタイルホテルでのスケッチも徐々に増えていくことを自ら期待したい。そのためにも、ホテルづくりに携わっている人たちと協力しながら、総力を挙げて日本のホテルをもっと独自に進化させていきたい。

2019年7月
寶田 陵


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