東京・再開発ガイド


大江 新 著

内容紹介

100箇所以上を訪ね、足元まわりのあり方を探る

街に大きな衝撃を与える大型再開発。その足元のデザインによって周辺に与えるプラス、マイナスが大きく変わる。街の価値を高めるために如何にデザインすべきか。ビルの足元での視線の通し方や止め方、アプローチと通り抜け、広場やロビー、空地や緑、店舗の構成、地形との取り合いなど、150余りの事例を訪ね320枚の写真で示す。

体 裁 A5・220頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2839-3
発行日 2023-01-25
装 丁 上野かおる

街に貢献する大型建築のあり方は?

近年の高層ビルや大型ビルは性能面での進化が目覚ましい反面、人々が住み働く街との接点、特に足元部分のつくりには、未熟で納得のいかないケースも多い。
「心地良さ」や「場所への愛着」など、人々の空間に対するヒューマンな感覚を丹念にとらえて「街らしさ」を創出し、地域に溶け込む大型建築をデザインするには、高度な技術とともに素朴な日常感覚や身近な実体験に頼るべき部分も多い。
第1部では、実際の建物構成を見ながら、長所短所を実感いただけるよう、150余りの事例を紹介する。街との接点を基本に据えながら、景観面や計画面、ビルに備わる懐(ふところ)や空地と緑、多様性の創出や歩行者と車の関係などをご覧いただきたい。
第2部では、街や建築について考える際の視点やデザイン手法について、歴史建築など過去の例も題材としながら論じている。
本書が、大型建築の長所を活かしながら、短所を軽減するうえで力になってくれることを願っている。
著者・大江新

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はじめに

第1部|東京の超高層・大型再開発を歩く

地図と口絵

視点1 広場にとっての結界

(1)透ける列柱/(2)結界がほしい広場

視点2 視線の抜けるビル

(1)建物を貫く視線/(2)空の広がりを見せる/(3)水辺空間を見通す

視点3 ビル足元の通り抜けと滞留

(1)中庭を通り抜ける/(2)アーケードを通り抜ける/(3)ビル内ロビーを通り抜ける/(4)塞がれた足元

視点4 マンション・住宅団地への接近性

(1)タワー型のケース/(2)分棟型のケース

視点 5 地形との関わり

(1)地形を取り込む/(2)微地形との関わり

視点 6 新旧対比の構図

(1)旧態(風景/街区割/建物タイプ)を継承する/(2)旧建物の保存と組み合わせる/(3)旧建物の復元(再建)と組み合わせる/(4)用途を継承する

視点7 オフィスロビーの姿

(1)オフィスロビーと店舗街/(2)特異なロビー

視点8 大型ビルの店舗街

(1)売場の構成と特徴/(2)屈曲する通路/(3)店舗街の回遊性

視点9 サンクンガーデンとアトリウム

(1)サンクンガーデン/(2)アトリウム

視点10 公園と緑

(1)再開発にともなう公園/(2)個性的な庭と緑

視点11 隣り合う敷地/建物

(1)都心における2例/(2)境界部の柵や手すり/(3)歩車共存道の導入/(4)棟どうしの間隔/(5)45度配置のメリットは?/(6)広すぎる地下歩道

視点12 大型開発9例

(1)アークヒルズ/(2)恵比寿ガーデンプレイス/(3)大川端リバーシティ/
(4)六本木ヒルズ/(5)汐留シオサイト/(6)品川駅東口地区/
(7)東雲キャナルコートCODAN/(8)東京ミッドタウン/(9)大崎駅周辺地区

第2部|都市デザインの新しい視点と手法

1章 都市の視点から

1 ビルの景観
2 容積率
3 再開発
4 混在と多様性

2章 歴史の視点から

1 広場と建物
2 中 庭
3 列 柱

3章 敷地と道路

1 公開空地
2 ビルの懐
3 隣り合う開発
4 表と裏

4章 建築と街の接点

1 歩道と店舗
2 大型ビルと街の接点
3 大型住宅団地と街の接点

5章 建築のつくり

1 建築のプロムナード
2 オフィスと店舗街
3 大型複合店舗と街らしさ
4 アトリウムとピロティ
5 高層ビルの盲点

6章 広場、緑、自動車

1 広場の居心地
2 緑の扱い
3 人と車/駐車場
4 駅前開発とデッキ

おわりに

大江 新

建築家、法政大学名誉教授。1943年生まれ、1968年東京大学工学部都市工学科卒業、大江宏建築事務所にて建築設計にたずさわる。その後同大学工学系大学院都市工学博士課程を経て、1989年に大江宏建築事務所を継承(主宰)、1998年大江建築アトリエに改称(代表)。宏の没後に深く関わった設計として、平櫛田中彫刻美術館(東京都小平市)、三渓園「鶴翔閣」保存再生設計(横浜市)、金剛能楽堂(京都市)、増戸保育園(東京都あきる野市)など。
1984年から2013年まで法政大学工学部(現デザイン工学部)建築学科にて建築教育に従事。1990年代以降は世田谷区、千代田区、江戸川区において、環境、景観、街づくり等の審議会委員を歴任。著書(共著)は 『都市の復権と都市美の再発見』(法政大学出版局) 、『エコロジーと歴史にもとづく地域デザイン』(学芸出版社)、『FutureVisionの系譜-水の都市の未来像』(鹿島出版会)など。

本書は、大型建築や再開発についての全般的な知識や技法を説くものではなく、それが備えるべきマナー(先述)について、街との接点を基本に据えながら、景観面や計画面、ビルに備わる懐ふところや空地と緑、多様性の創出や歩行者と車の関係などを論じるもので、さらに大型建築の功罪(長所と短所)や建物の中身に関わる考察までを含んでいる。
読者層としては、設計者とその予備軍なる計画系学生のほか、計画に際して重要な鍵を握る建築主や直接利用者、建物の影響を大きく受ける近隣者や周辺者までを視野に入れ、特別な専門知識がなくてもご理解いただけるよう心掛けた。

設計者については、仕事量に比して人材が不足気味のため未熟なまま作業に組み込まれるケースは多いだろうし、養成の一端を担う大学や大学院の設計・計画系の授業で、大型建築に費やすことのできる時間は限られている。また建物の実現に際して大きな力を持つはずの建築主は、往々にして採算性の追求や準備スケジュールに追われるあまり、街との融合にまで配慮が及ばないケースは多い。さらに建物利用者や周辺近隣者にとっても、大型建築が生み出す功罪についての知見は重要と思われる。それによって建物への理解が深まるだろうし、行政や事業者へ向けての適切な発言や行動も可能になるに違いないからだ。

第1部では、地域へおよぼす影響の大きい建築物、すなわち超高層ビルやマンションのほか、敷地の広がりが大きい中低層集合住宅や多数の店舗が集積する大型商業ビルも対象とし、著者自身が見て回り考察した東京の事例について、写真と共にご紹介したい。

第2部では、最近の事例とは別に歴史建築など過去の例も題材に入れながら、「都市景観や街の多様性」、「広場の性格や建築内部のつくり」、「緑の扱いや人と車の関わり方」などについて論じており、併せてお読みいただくことで、前半(第1部)の理解も深まることと思う。

大江 新

第1部の具体事例を選び出す際に役立ったのは、Googleほかの航空写真だ。直接現地へ行って見るのが必須だと分かっていても、東京には高さ100mを超えるビルが400以上もあり、すべて訪れることは難しい。突出して高い建物や大きく広がる建物群を拾い出し、クローズアップによって足元周りを眺めながら狙いを定めて現地を訪れるといった手順をとることになった。それでも実際に行ってみて、期待はずれのため諦らめたケースも多いが、結果的に150余りの事例を選ぶことができた。

現地の移動に際して役立ったのは東京都が発行するシルバーパスだ。すべての路線バスと都営地下鉄に乗れる気楽さに加えて、これまで電車で動いていた時には気づくことのなかった街の雰囲気をより身近に感じたり、思わぬ街角の風景に出会うことができた。鉄道が網目状に完備している東京だが、地下鉄から街を眺めることはできないし、地上の路線もあくまで線上での移動だ。その点、きめ細かく巡らされたバスのネットワークと適度のスピードは、面として街をとらえる上でたいへん都合が良かった。

写真撮影については当然とは言え、光の難しさを改めて痛感した。光と被写体の向きと周辺建物の関係から、撮影の時期や時間については苦労が多い。いつ行っても陽のまったく当たらないケースは諦めざるを得なかったが、太陽の高い時期にもう一度撮り直したいシーンもいくつか残ってしまった。

撮影の際にもう一つ頭を悩ませたのは、歩行者と自動車だ。もちろん歩行者は街の主役として歓迎すべき対象なのだが、あまりに多いと肝心の被写体が隠れてしまうので、タイミングを待たねばならない。通行量の多い自動車についても同様だが、搬出入のトラックがいつまでも立ちはだかって動いてくれないケースには閉口した。

こんな経緯を経て完成した本だが、編集に際して、時には昼夜問わずのやりとりにもお付き合いいただいた前田裕資氏に深く感謝申し上げたい。

大江 新

大江新×藤村龍至「再開発のグラウンドレベルのデザインを考える」『東京・再開発ガイド』出版記念トーク

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