保井 美樹・泉山 塁威・日本都市計画学会・エリアマネジメント人材育成研究会 編著

内容紹介

事例の追体験から学ぶ組織づくりと人材育成

全国に500を超えるエリマネ組織。その多くはマネジメントに課題を抱えている。本書はMBAの教育手法に倣って、全国の大都市中心部、地方都市市街地、郊外住宅地の15事例を厳選、事業プロセスを追体験する。ビジョンづくりから事業評価まで、「自分だったらどうする?」を考える。組織づくり、人材育成のノウハウを学ぶテキスト

体 裁 A5・224頁・定価 本体2600円+税
ISBN 978-4-7615-2773-0
発行日 2021-05-20
装 丁 ym design


紙面見本目次著者紹介はじめにおわりにnote連載

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序章 多様化するエリアマネジメントを踏まえたケースメソッド──本書の使いかた

1部 エリアマネジメント・ケース

[大都市中心部]
CASE1 錦二丁目エリアマネジメント株式会社──商業地における企業と地縁団体の連携
CASE2 天神明治通り街づくり協議会──エリア投資を呼び込み都心を再生する

[地方都市・郊外の市街地]
CASE3 松山アーバンデザインセンター(UDCM)──公民学連携による中心市街地再生
CASE4 多治見まちづくり株式会社──空き店舗活用によるにぎわい創出と広場の運営
CASE5 株式会社街づくりまんぼう──施設管理から震災復興を経てまちづくりの仕組みづくりへ
CASE6 若者クリエイティブコンテナ(YCCU)──大学生が引っ張る小さな活動拠点
CASE7 株式会社ジェイ・スピリット──自由が丘ブランドに込められた精神を受け継ぐ
CASE8 一般社団法人ひとネットワークひめじ──自立した黒字経営を可能にするしくみづくり
CASE9 長浜まちづくり株式会社──地域の調整役から地域ビジネスを実践する会社へ

[住宅地]
CASE10 一般社団法人まちのね浜甲子園──助け合えるつながりを育む仕組みづくり
CASE11 一般社団法人まちにわ ひばりが丘──民間デベロッパーの支援により住民主体のエリアマネジメントを計画的に育成
CASE12 一般社団法人二子玉川エリアマネジメンツ──企業・住民・行政が助け合える、つながりを育む仕組みづくり
CASE13 一般社団法人草薙カルテッド──既存組織のリ・ビルドでまちを変える
CASE14 一般社団法人北長瀬エリアマネジメント──NPO のノウハウと民間・市民団体のネットワークを活かしたエリアの開発・運営
CASE15 一般社団法人城野ひとまちネット──大学との連携で「シェアタウン」を目指す地道な取組み

2部 エリアマネジメントのすすめかた

2-1 エリアマネジメントの始めかた──スタートアップから事業構築まで
2-2 エリアマネジメントの事業内容とその効果
2-3 エリアマネジメント団体で働く事務局人材
2-4 エリアマネジメントを担う人材の育成

終章 これからの都市に求められるエリマネ人材

【編著者】

●保井美樹(やすい みき)

法政大学教授。1969 年生まれ。早稲田大学(政治学士)、NY 大学(都市計画修士)、東京大学(工学博士)。World Bank、東京大学特任助手、London School of Economics客員研究員等を経て現職。編著書に『孤立する都市、つながる街』(日本経済新聞出版社)、『新コモンズ論』(中央大学出版部)等。都市経営やまちづくりを専門とし、研究の傍ら各地で実践の支援を行う。全国エリアマネジメントネットワーク副会長。担当:序章、終章

●泉山塁威(いずみやま るい)

日本大学理工学部建築学科助教、一般社団法人ソトノバ共同代表理事・編集長、一般社団法人エリアマネジメント・ラボ共同代表理事。1984 年生まれ。2015 年明治大学大学院博士課程修了。博士(工学)。東京大学助教等を経て2020 年より現職。著書に『ストリートデザイン・マネジメント』(共著、学芸出版社)等 担当:2-1

●日本都市計画学会・エリアマネジメント人材育成研究会

公益社団法人日本都市計画学会が、都市計画・まちづくりに関する産・官・学・民の連携による全国各地の活動を支援するために行う研究交流事業で、本研究会は、エリアマネジメントに関する研究交流のなかで、とりわけ人材育成に着目して、調査、啓発、研修プログラムの開発等を行ってきた

【著 者】(執筆順)

●葛西優香(かさい ゆか)

㈱百年防災社代表取締役社長。1986 年大阪生まれ。同志社大学卒業後、㈱リクルートを経て防災を専門とする仕事に転身。葛飾エフエム放送㈱で放送業務に携わる。2020年法政大学人間社会研究科修士課程修了。2021 年4月より東京大学大学院情報学環・学際情報学府社会情報学専攻修士課程在学 担当:1-1、1-12

●山中佑太(やまなか ゆうた)

(一社)地域価値共創センター理事。1985 年生まれ。早稲田大学卒業後、NTT 都市開発㈱、多治見まちづくり㈱、豊島区役所、㈱リビタを経て2016 年広島にU ターンし現職。カミハチキテル、広島都心会議の事務局に携わる。担当:1-2、1-6

●宋俊煥(そん じゅんふぁん)

山口大学大学院創成科学研究科准教授。1981 年生まれ。2013 年東京大学大学院博士課程修了。博士(環境学)。東京大学大学院特任研究員、山口大学助教を経て2019 年より現職。宇部市若者クリエイティブコンテナ(YCCU)代表や広島市カミハチキテルディレクターも務める。著書に『ストリートデザイン・マネジメント』(共著、学芸出版社)等。担当:1-3、2-2、2-3

●前川誠太(まえかわ しょうた)

名古屋市住宅都市局企画経理課。1987 年生まれ。中京大学法学部卒業。住宅都市局都市整備部まちづくり企画課では地域まちづくりの推進業務を担当し、地域まちづくりに取組む団体の支援等にも携わる。担当:1-4

●谷村晃子(たにむら あきこ)

㈱プランニング・プラス ディレクター、一般社団法人エリアマネジメント・ラボ理事、一般社団法人武蔵小杉エリアマネジメント理事。1983 年群馬県生まれ。京都造形芸術大学芸術学部卒業後、首都圏を中心に、全国のエリアマネジメントに関する仕組みづくりや人材育成に関するプロジェクトに携わる。担当:1-5、1-8

●松下佳広(まつした よしひろ)

1979 年静岡県生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、㈱国際開発コンサルタンツ入社。社会人の傍ら2018 年東京大学まちづくり大学院卒業。地域まちづくり、パブリックスペース、官民連携、健康まちづくり等のキーワードで全国の都市計画やまちづくりに関わる。担当:1-7

●大西春樹(おおにし はるき)

倉敷市職員。1993 年生まれ。福山市立大学都市経営学部卒業後、㈱エイト日本技術開発に入社し、自治体の防災計画やPPP(官民連携)に携わる。2018 年7 月の西日本豪雨災害が転機となり、東京から岡山にU ターンし現職。高梁川志塾1 期生。担当:1-9、1-14

●小川将平(おがわ しょうへい)

名古屋市住宅都市局都市整備部まちづくり企画課。1992年生まれ。関西学院大学法学部卒業後、2015 年名古屋市役所入庁。2019 年より現職。地域まちづくりに取組む団体の支援等に携わる。担当:1-10

●秋田憲吾(あきた けんご)

一般財団法人都市みらい推進機構開発調査部勤務。1972年兵庫県生まれ。中央大学理工学部土木工学科を卒業後、都市計画や市街地整備等まちづくりに関する調査・研究とともに、国・地方公共団体・民間事業者等の調査、計画づくり等の支援に従事。近年はエリアマネジメントや都市のスポンジ化関連の業務にも携わる。担当:1-11

●堀江佑典(ほりえ ゆうすけ)

昭和㈱営業開発室室長、京都大学経営管理大学院官民連携まちづくり研究会民間委員、日本都市計画家協会理事等。認定都市プランナー。1978 年生まれ。アトリエ建築設計事務所にて店舗や公共施設等の設計経験を経てコンサルタントへ。アーバンデザインや官民連携・PPP/PFI 等を中心に持続的なまちづくりやエリアマネジメントに関わる。担当:1-13

●小林敏樹(こばやし としき)

北九州市立大学地域戦略研究所・地域創生学群准教授。1975 年山梨県生まれ。芝浦工業大学大学院博士後期課程修了。博士(工学)。九州大学大学院工学研究院助教、慶應義塾大学SFC 研究所上席所員、(一財)土地総合研究所研究員等を経て2016 年より現職。都市計画、まちづくりを専門とし、様々な視点から持続可能な都市・地域づくりに携わる。担当:1-15

●籔谷祐介(やぶたに ゆうすけ)

富山大学学術研究部芸術文化学系講師。1986 年三重県生まれ。筑波大学大学院博士前期課程修了。札幌市立大学大学院博士後期課程修了。博士(デザイン学)。一級建築士。茨城県デザインセンター、㈱河野正博建築設計事務所、札幌市立大学特任助教を経て2018 年より現職。主な受賞歴に日本都市計画学会論文奨励賞など。担当:2-3、2-4

【協力者(挿絵)】

●古谷栞

法政大学大学院人間社会研究科修士課程2 年/グラフィックレコーダー

本書は、本格的な人口減少時代の都市・地域を官民連携で支える「エリアマネジメント」のユニークな事例を集め、それを推進する組織や仕組みとともに整理したケースブックである。

近年、行政だけでなく民間企業や市民が一緒になり、いわゆる官民を超えた連携を通じて、公共的な施設や場の運営を行う取組みが本格化している。道路、公園、図書館など、公共的な都市施設で再整備に向けた取組みが複数セクターの連携のもとで進められ、社会実験として、公共空間を用いたカフェやマルシェなどの活用が進んだり、新たな空間管理の方法が実現したりしている。そこでは、これまでにないイノベーティブな発想が求められ、前例に囚われない取組みを推進する人材や組織が求められる。

こうした取組みのパートナーとして期待が高まるのが、エリアマネジメント団体だ。エリアマネジメントとは、「地域の価値を維持・向上させ、また新たな地域価値を創造するための、市民・事業者・地権者などによる絆をもとに行う主体的な取組みとその組織、官民連携の仕組みづくり」と定義され、全国各地で組成されている。

本書は、特に商店街、住宅地、地方都市といった最も暮らしに身近でありながらこれまで必ずしも書籍などで取り上げられなかった地域に焦点を当てる。
序章で本書全体の視点とエリアマネジメントの意義、地域特性や活動に応じたエリアマネジメントの分類を示す。前半に当たる第1 部では、15 の具体的ケースを取り上げ、その地域やエリアマネジメントの組織や事業の概要、エリアマネジメントのユニークネスが生まれたストーリーとその要因を述べる。第2 部では、エリアマネジメントのすすめかた、事業内容とその効果、そこで働く人材の実態と育成について総合的な論点整理を行う。

企業や非営利団体のマネジメントの分野では、このようなケースブックが普及しており、それぞれのケースにディスカッションの問いが用意され、それを題材に、授業や研修で議論を展開できるように工夫されている。しかし、エリアマネジメントが注目される都市計画の分野では、こうした学習方法はあまり普及していない。
そのため、関連する書籍においても、事例を通じた組織や役割分担の整理、制度分析、国際的な取組みの紹介が行われるとしても、それを通じて読者が考え、議論すべき論点の提示がなされることは少ない。そもそもエリアマネジメントは、建築・都市計画というよりは地域経済の再構築や循環の想像、社会関係の構築など、分野横断的な知識・経験が求められることが多く、何より自ら考えて動く力が求められる。

本書を執筆分担したエリアマネジメント人材育成研究会(通称)は、都市計画学会の研究交流分科会A の位置付けを得て、2017 年に活動を開始した。まず、エリアマネジメントに求められる人材像を明らかにするとともにその育成方法について検討するため、エリアマネジメント団体の全貌を把握することを目指しそれらの団体に向けた調査を行い、一体、どのような能力・経験を有する人がエリアマネジメント団体で働いているのか、どんな人材が求められているかを検討した。次に、その結果を踏まえた研修プログラムを実際に試行して、その有効性の検討を進めてきた。

この過程で見えてきたのは、エリアマネジメントに求められるのは都市計画にとどまらない知識や経験はもちろんのこと、何より、地域を愛し、他人とのコミュニケーションを図り、問題に対して自ら考え、動くことのできる人材像であった。

自ら考え、動くことのできる人材を育てるための研修はどのように行ったらいいか。そこで参考にしたのは、経営学大学院(MBA)の授業で行われるケースメソッドであった。経営学大学院では、しばしば、実際に起きたビジネス・ケースを題材にしながら、テキストや授業を通じてそれを追体験し、自分だったらどう考えるか、どう動くかを議論する。

本書は、こうしたスタイルこそエリアマネジメントに求められるのではないかという考えのもとで企画、編集された。それぞれのケースにおいて、どのような問題に直面し、どのように対応したかをまとめると共に、自分だったらどう対応するかを検討できるようにディスカッションの論点を提示している。読者はこの論点について、後半の総括議論を参照しながら、主体的に考え、仲間と議論できる。自学に使うだけでなく、研究会、授業や研修などで活用いただきたい。
この初のケースブックを通じて、これからのエリアマネジメントを牽引する人材が輩出されることを、研究会メンバー全員、願ってやまない。

2021年3 月
エリアマネジメント人材育成研究会(都市計画学会研究交流分科会A)を代表して
保井美樹

2021 年1 月、新型コロナの感染は収まらず、主要な大都市圏で2 度目の緊急事態宣言に入った。このとき、真冬にも関わらず、密を避けるために人々が向かったのは屋外空間だった。筆者宅に近い公園では、例年なら見られない冬のピクニックが多く見られるようになり、思い思いに音楽を奏でる人、スポーツを楽しむ人が明らかに増えた。

自分たちが暮らす地域の風景は、自分たちで創り出す。ともに取組む小さい輪が生まれ、お互い様の気持ちが生まれる。エリアマネジメントの原点も、ここにある。地域の力が育まれれば、明日に向かって一緒に取組み、困っている人を見つけようとする優しさ、助ける勇気も生まれる。本当に困っている人は見えにくい。地域が見つけられない人を、お上(行政)が見つけられるはずがない。
反対に、お上に全てを委ね、社会に無関心になると、どうしても「管理社会」になる。結局は、お上につくってもらったルールに自分たちががんじがらめになり、うまくいかないと文句を言い、ルール違反者を通報し、互いに排除する社会になる。どっちがよいだろうか。
多少の問題はあっても前者の方が心地よい。少なくとも、筆者はその方が好きだ。本当の民主主義は国ではなく、地域からしか生まれない。
しかし、自分たちで地域を運営するには市民力が問われる。現状を観察し、自ら考え、対話を通じて多様な人たちが互いに理解し合う経験が必要である。上の世代になればなるほど圧倒的に足りないのが、こうした経験ではないか。その結果が、戦後日本の縦型社会だと思う。

筆者は、担当する大学のゼミでこの力の育成を最も大事にしてきた。実際に地域に出向き、対話や実験的活動をデザインし、やってみる。振り返ると、空き店舗の前で七輪を囲んだり、焼き芋を焼いたり、廃校の調理室で一緒に食事をつくったり。会議室での話し合いだけでなく、地域住民と学生たちが一緒に汗を流し、知恵を出し合い、微笑みあった。
実体験を積み重ねた彼らの世代が引っ張る近未来は、オンラインツールも手伝い、人が縦横無尽につながり、身近な活動の積み重ねが、社会を変化させる姿が一般化しているはずだ。多様な価値観がぶつかって起きる問題も、自分たちで解決する自浄能力を持ちたい。

人は一人では生きていけない。エリアマネジメントは、人と一緒に暮らす技法を学び、地域経営のみならず民主主義の練習をすることができる。
この本の執筆作業も佳境に入った頃、筆者は、予想もしていなかった病気を発症して入院することになった。代表を欠いた中でも活発に研究会を続けてくれた仲間たちには、感謝の気持ちしかない。心配をかけてばかりだった私に、やりたいことをやったらいいと背中を押してくれた夫、娘、息子、母にもこの場を借りて感謝の気持ちを伝えたい。

保井美樹