土木の仕事ガイドブック


柴田久 編著

内容紹介

現場から届ける、19分野35人の日々の挑戦

毎日のあの道、みんなが集う公園、地下に潜む上下水道、災害時に欠かせない貯水ダム──。
さまざまな形で私たちの日常生活を支えている土木を、つくり維持する19分野35人の日々の仕事。業務内容ややりがい、業界に望むことなど、とことん現場の声でまとめられた、土木業界の「リアル」を知るための一冊。

体 裁 四六・208頁・定価 本体2000円+税
ISBN 978-4-7615-2772-3
発行日 2021-06-10
装 丁 北田雄一郎


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はじめに ─柴田久

1  国家公務員(総合職)

  • 政策と実践の相互フィードバック
    ─新屋 千樹/国土交通省都市局都市計画課施設計画調整官
  • 現場で、霞が関で、明日の国土をかたちづくる
    ─鈴木 彰一/国土交通省道路局企画課海外道路プロジェクト推進官

2  国家公務員(一般職)

  • ダムの調査設計から工事発注まで
    ─山﨑 健司/国土交通省近畿地方整備局河川部河川工事課ダム係長
  • ジェネラリストとして土木に携わる
    ─平野 礼/九州技術事務所総務課研修係長

3  地方公務員(都道府県)

  • 命をつないだ道路整備
    ─土佐 勝洋/岩手県県土整備部県土整備企画室主任主査
  • 無電柱化事業と下水道事業によるインフラ整備
    ─吉丸 俊和/福岡県建築都市部下水道課技術主査

4  地方公務員(市町村)

  • 市民の安心安全を守りながら目指す、持続可能なまちづくり
    ─桟敷 美帆/横浜市都市整備局都市交通課担当係長
  • 市民とともに歩む地方都市づくりの楽しさ
    ─上薗 怜史/大分県津久見市役所まちづくり課(現在は大分県庁都市まちづくり推進課へ出向中)

5  ゼネコン

  • 女性が活躍する土木の現場
    ─村上 麻優子/鹿島建設(株)東京土木支店 工事課長代理
  • 構造物の製作責任者として、現場を動かす
    ─末永 怜士/前田建設工業(株)九州支店土木部主任
  • 国際プロジェクトで現場を先導する技術者
    ─吉田 吉孝/西松建設(株)国際事業本部土木統括部設計課長

6  メーカー

  • 素材を知り尽くしまちづくりに携わる、アルミエンジニア
    ─御手洗 恭平/日軽エンジニアリング(株)設計技術部 構造物チーム
  • 800人 20万個のパーツが関わる現場
    ─髙橋 優介/(株)IHIプラント

7  鉄道会社

  • 訪れたくなる駅とまちを目指して
    ─石田 充朗/東急(株)渋谷開発事業部開発推進グループ都市基盤整備担当

8  建設コンサルタント(調査・構想・計画系)

  • 市民の安全・安心・快適な生活を守る河川計画
    ─筌瀬 明日香/(株)建設技術研究所九州支社河川部主幹
  • 技術とデザイン思考をかけ合わせ、空間の質を考える
    ─八木 弘毅/(株)日建設計シビル 景観•環境部 公共空間デザイングループリーダー
  • モビリティ大変革期に最適な「移動」をデザインする
    ─中込 浩樹/パシフィックコンサルタンツ(株)東北支社社会イノベーション事業部技術課長

9  建設コンサルタント(設計・施工・維持管理系)

  • 美しい橋をデザインする
    ─丹羽 信弘/中央復建コンサルタンツ(株)構造系部門技師長
  • 誠意と技術で海外橋梁事業に挑む
    ─今田 進平/日本工営(株)ミャンマー国バゴー橋建設事業開発事務所所長代理
  • 維持管理時代における土木構造物のマネジメント
    ─坂口 浩昭/(株)オリエンタルコンサルタンツ関東支社アセットマネジメント推進部副主幹

10  シンクタンク、インハウス・エンジニア

  • 官民連携時代における土木の政策提言
    ─佐藤 俊介/(株)日本総合研究所リサーチコンサルティング部門 地域・共創デザイングループ コンサルタント
  • 国土交通行政を支える頭脳集団
    ─中村 圭吾/土木研究所 河川生態チーム 上席研究員

11  不動産デベロッパー

  • 都市づくりのフロンティアとしてまちの顔をつくる
    ─田中 草平/森ビル(株)設計部設計監理部外構担当

12  都市再生機構

  • 多様な世代が安心して住み続けられる屋外環境づくり
    ─高橋 和宏/独立行政法人都市再生機構技術・コスト管理部都市再生設計課

13  調査会社、測量会社

  • 公共事業における地質調査
    ─山田 優子/国際航業(株)公共コンサルタント事業部 中部統括部
  • すべての土木事業を下支えする基盤データ整備
    ─古本 真也/(株)パスコ 東日本事業部 主任技師

14  設計事務所

  • 土木をデザインする
    ─崎谷 浩一郎/(株)EAU代表取締役
  • 空間づくりを主戦場とし、まちや社会を構想する
    ─吉谷 崇/(株)設計領域代表取締役

15  高速道路会社

  • 道路をつなげるための道筋をつける
    ─川島 陽子/中日本高速道路(株)名古屋支社四日市工事事務所北勢工事区工事長

16  電力会社

  • ライフラインを担う土木構造物の維持管理
    ─小川 信行/九州電力(株) エネルギーサービス事業統括本部 水力発電本部 水力開発総合事務所 地域コミュニケーション部 総括・業務グループ 副長

17  NPO(非営利法人)

  • まちを使いこなし、まちと人をつなぐコーディネーター
    ─天野 裕/岡崎まち育てセンター・りた事業企画マネージャー

18  研究職

  • 理論と実践の距離を近づける
    ─羽藤 英二/東京大学工学部社会基盤学科教授
  • 研究と社会貢献を橋渡しする地域実践
    ─石橋 知也/長崎大学大学院工学研究科准教授

19  新たな専門的職能

  • (長崎市景観専門監)自治体職員として、長崎のまちのデザインを監修する
    ─高尾 忠志/一般社団法人地域力創造デザインセンター代表理事
  • (石積み職人)伝統を再解釈して伝える
    ─真田 純子/東京工業大学准教授

おわりに ─柴田久

柴田 久

1970年福岡県生まれ。福岡大学社会デザイン工学科教授。博士(工学)。2001年東京工業大学大学院情報環境学専攻博士課程修了。専門は景観設計、土木・公共空間のデザイン、まちづくり。カリフォルニア大学バークレー校客員研究員等を務め、南米コロンビアの海外プロジェクトや九州を中心に四国、中国、東北を含む約60の公共空間整備、土木構造物の計画、設計、施工監理等に従事。主な受賞にグッドデザイン賞、土木学会デザイン賞、防災まちづくり大賞など多数。著書に『地方都市を公共空間から再生する 日常のにぎわいをうむデザインとマネジメント』(単著、2017、学芸出版社)など

「土木の仕事」と聞いて、皆さんはどのようなイメージをお持ちだろうか?さらに土木が実際どのような仕事をしているか、ご存じの方はどのくらいおられるだろうか?
道路や橋、トンネルなど、社会基盤施設(インフラ)に関する仕事という認識くらいはあるかも知れない。あるいは男性ばかりの職場で、土木のみならず建設業界全体に対し3K(きつい、汚い、危険)のイメージをお持ちの方もおられるかもしれない。確かにそういう側面が少しもないとは言いがたい(というよりそれは土木の仕事に限った話ではない)が、先人達の汗と努力の結晶が今の私たちの生活を支えている。つまり、土木にはもっと前面に出て然るべき仕事像があることを強調しておきたい。

例えば、新型コロナウィルス感染拡大によって改めてその価値に気づかされた「日常」。その生活を支え、つくり、守るのは、他でもない土木の仕事である。災害が激甚化する今日、人々が安全かつ安心して暮らせる国土をつくること、また被災後の復旧、復興、そして再び被災しないためのまちづくりも、土木が担う重要な仕事である。蛇口をひねれば水が出る、スイッチを入れれば電気がつくのも、ダムや水道、発電所や送電線が支え、会いたい人に会うための移動、ネットで注文した商品が届くのさえ、道路や橋、鉄道や空港が整備されているからこそである。そうした当たり前に思える生活の基盤を整備し、維持管理しているのも土木の仕事である。また豊かな自然や生態系を保全し、共存していくための地球環境をどう持続していくか、人間が生活を営む環境すべてが仕事の範囲といっても過言ではない。時間軸のスパンが長く、スケールの大きい構造物をつくるのも土木の特徴だ。だからこそ、よく言われる「地図に残る」仕事であり、「まちの風景の骨格をつくる」仕事でもある。

また土木の仕事は、私たちの日常を守るだけでなく、まちや地域における未来の暮らしを魅力あるものに変化させる力を秘めている。「通り過ぎるだけだった道路がより安全かつ笑顔であふれる交流の場になったら…」「川沿いに堤防がつくられ、休日には清々しい水辺を散歩できたら…」「近道となるトンネルができればもっと早く病院に行けるのに…」「使いやすく、雰囲気の良いまちなかの広場や公園でデートしたい!」。これらはすべて土木の仕事しだいで実現できる。そこに住む人の暮らしが豊かで魅力あるものに変化すれば、よそからの来訪者、移住者の増加につながるかもしれない。人口減少が深刻化する地方都市、精神的なストレスを抱えやすい過密都市においても、土木の仕事が果たせる役割は大きい。逆に言えば、土木の仕事が与えられる未来へのインパクトの大きさに気付いていない方々も大勢いるように感じる。

本書はこうした「土木の仕事」をよりリアルに知ってもらうことを念頭に書かれたものである。特にこれから土木を学ぼうと思う、または土木業界に就職を考えている学生諸君、仕事に就き始めたばかりで今後のキャリア形成に悩む若手職員や、近年注目を集める土木マニア他、一般の方々にも、現場の生の声を届け、土木の業界や仕事の本質について知っていただきたい。そのため本書では、日常をつくる土木の仕事19分野35人のプロフェッショナルに、日々の業務内容や「やりがい」などについて具体的に、かつ熱く語ってもらった。

さらにもう一つ本書の特徴として挙げたいのが、随所に出てくる「コラム」である。実は執筆に先立ち、土木業界で働く多くの方々を対象に、普段聞けない仕事の実情に迫るアンケート調査を実施している。コラムでは、調査結果から得られた回答をもとに「業界本音トーク」を、さらに土木の仕事に役立つ「資格」についても執筆した。

最後に、本書の理解を助けるべく、土木の「ものづくり」に関する流れを簡単に紹介しておこう。図1は一般的な土木の「ものづくりプロセス(立案、調査、構想、計画、設計、施工、維持管理)」で、各執筆者の仕事内容をもとに、本書で登場する19分野をプロットしてみた。また図2は土木の仕事がどのような体制のなかで行われているかを模式的に示したものである。前述したように、土木の仕事は多面的かつ広範囲に及び、業務形態の多様化も進んでいることから参考程度に見てほしい。ただ行政、公益、民間企業など、それぞれが互いの役割を発揮しながら、協働によって仕事が進められるチーム戦であることをご理解いただきたい。
本書は前述した19分野を章ごとにまとめており、読者の興味のあるところから読み進めていただいても一向に構わない。ややお節介なことを言えば、学生諸君にはできるだけすべての仕事内容を読み通してもらい、自分との適性や将来を思い描いていただくことを期待したい。

この本を読み終えた後、土木へのイメージが冒頭で述べた3Kではなく、本来の仕事像3KM「暮らしを守り、快適なまち、国土づくりをマネジメント」する仕事として広く認識されますように。

2021年5月 柴田 久

日常をつくるプロフェッショナル達の仕事ぶりはいかがだっただろうか? 最後まで読んでいただき、まずは感謝の気持ちでいっぱいだが、同時に社会貢献をやりがいとする土木技術者の魅力をリアルに感じていただけたならば大変嬉しい。日常を支え、つくり、守る土木の仕事は一人ではできない。高度な専門性とともに多くの技術者と協働し、臨機応変に務められる総合力と調整力が求められる。プロフェッショナルであることは勿論、プロフェッショナル・チームとしての成果が問われる仕事だと、すでに読み取っておられるだろう。

よく子ども達や若い学生と話をしていると「憧れの仕事」というものには、共通する条件があるように感じる。それは「顔が見える」あるいは「仕事ぶりがイメージしやすい」という点だ。土木の仕事の多くは長期にわたり、しかも大規模なプロジェクトを対象とするため、たくさんの人々が携わる。つまり、プロフェッショナル一人ひとりの顔や仕事ぶりが目立ちにくいのも、土木業界の宿命と言える。本書が少しでも前述した条件のクリアに役立つことを願うしだいである。

一方、野球やサッカーなどのプロスポーツ界では、顔をよく知る選手だけでなく、チーム自体を愛してやまない熱烈なファンがいる。またそれまで知らなかった選手を、好きなチームに入団した途端、応援している経験を読者の皆さんもお持ちではないか? 愛郷心からか、地元のチームを応援する人が多いことを考えると、自分たちが住むまちや地域の「土木」に対して、いかに愛着や誇りを持ってもらえるかは、今後の土木の仕事一つひとつに対する関心や理解を促すうえでも大切ではないか。地元に愛され、誇りに思ってもらえる仕事を一つでも、二つでも成し遂げていくことは、本書で登場した職能すべてに共通するテーマだといえる。

なお本書で取りあげた19分野の職能は、同じく学芸出版社から出ている「ようこそドボク学科へ!」という本を参考に選定させていただいた。まだ読んでいない方、特に学生諸君には大変お勧めの本なので是非そちらも読んでみて欲しい。また各分野における執筆者の方々には、多忙ななか原稿の作成に応じていただき、心から感謝を申し上げたい。さらに紙幅の関係で書き尽くせないが、執筆者の選定作業においても関係団体の多くの方々にご協力をいただいた。特に福岡大学工学部社会デザイン工学科道路土質研究室助教の藤川拓朗氏には複数の分野にわたってご協力をいただき、同学科景観まちづくり研究室助手の池田隆太郎氏、アシスタントの原田麻里氏には、資格に関するデータの最終チェックをお願いした。ここに記して謝意を表したい。

また本書の編集を担当していただいた学芸出版社の中井希衣子氏には煩雑な編集作業を丁寧かつ円滑に遂行していただいた。心から感謝を申し上げたい。

これにて私の編著者としての仕事は「終わり」だが、本書によって多くの若者が土木を志し、プロフェッショナルとしての仕事の「始まり」を迎えてくれれば幸いである。

2021年5月 柴田 久

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