牧村 和彦 著

内容紹介

モビリティ革命からスマートシティの実装へ

多様な移動を快適化するMaaS。その成功には、都市空間のアップデート、交通手段の連携、ビッグデータの活用が欠かせない。パンデミック以降、感染を防ぐ移動サービスのデジタル化、人間中心の街路再編によるグリーン・リカバリーが加速。世界で躍動する移動×都市DXの最前線から、スマートシティの実装をデザインする。

体 裁 A5・224頁・定価 本体2300円+税
ISBN 978-4-7615-2767-9
発行日 2021/03/10
装 丁 ym design


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はじめに

1章 MaaSの本質とは

1 MaaSの本質とは
2 日本版MaaSの始動
3 MaaSの先進的な取り組み
4 ライドシェアリングの誤解
5 実証実験の目的は人々の移動を変えること
6 オープンデータによる政策立案

2章 都市が抱える根本的課題

1 毎年130万人以上が交通事故で亡くなっている
2 車は1日の95%は動いていない
3 自動車の所有者と非所有者の移動格差
4 外出しなくなった若者
5 地方の交通を見える化してみると
6 運転手不足・高齢化を解決するオンデマンド型交通

3章 MaaSが都市空間を再定義する

1 MaaSが都市に与えるインパクト
2 駐車場の再定義
3 街路空間の再定義
4 駅前広場の再定義
5 高まる結節点の価値

4章 アメリカのMaaS先進都市

1 シアトル:モビリティ革命を体感できる街
2 ロサンゼルス:奏功するデジタル時代向け交通戦略
3 コロンバス:MaaSで地域の課題を解決するスマートシティ

5章 欧州のMaaS先進都市

1 パリ:デジタルとフィジカルの両輪で人間中心の街に再編
2 ベルリン:行政が移動サービスのプラットフォーマーに
3 ハノーバー:交通事業者が主導する欧州初のMaaS
4 ウィーン:行政が設立したスタートアップがMaaSを推進

6章 日本での実装をデザインする

1 MaaS時代の交通まちづくりに向けて
2 街路の階層をデザインする
3 速度をデザインする
4 街路空間をリデザインする
5 ハブをデザインする
6 データ連携をデザインする
7 データ駆動型で街をデザインする
8 都市開発と移動サービスを一体でデザインする

7章 withコロナ時代のMaaS

1 パリ:グリーン・リカバリーの先進都市
2 高雄:コロナ禍でMaaS利用が急増
3 感染症リスクを考慮したMaaSが始まる
4 人間中心に都市をアップデートする
5 withコロナ時代のMaaSに向けて

おわりに

牧村 和彦

一般財団法人計量計画研究所理事、研究本部企画戦略部長。モビリティデザイナー。東京大学博士(工学)。1990年一般財団法人計量計画研究所(IBS)入所。筑波大学客員教授、神戸大学客員教授、南山大学非常勤講師。一般社団法人JCoMaaS理事、一般社団法人日本モビリティ・マネジメント会議理事。
将来の交通社会を描くスペシャリストとして活動。内閣官房未来投資会議、官民連携協議会等に参加。経済産業省スマートモビリティチャレンジ推進協議会企画運営委員、国土交通省MaaS委員会の臨時委員、国土交通省ユニバーサル社会におけるMaaSの活用方策についての研究会委員、国土交通省バスタプロジェクト推進検討会委員等を務める。
代表的な著書に『MaaS-モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』『Beyond MaaS-日本から始まる新モビリティ革命」(以上共著、日経BP)など多数。

筆者も策定に参加した政府の成長戦略「未来投資戦略2018 ―Society5.0』『データ駆動型社会』への変革」(2018年6月)では、MaaS(マース)やスマートシティが国家のフラッグシッププロジェクトとして位置づけられた。それからわずか2年半の間に日本各地でMaaSの実装が始まり、2020年12月にはスーパーシティ型国家戦略特別区域の指定に関する公募も始まった。2021年2月にはトヨタ自動車がウーブン・シティの建設を開始するなど、交通産業や都市分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)は着実に前進している。

また、2020年12月25日の成長戦略会議においては、経済産業省が関係省庁と連携し、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定した。カーボンニュートラル実現のための具体的な施策としてMaaSが位置づけられており、特筆すべきは、今後の取り組みに「自家用自動車に過度に依存することのない移動手段を確保し、日常生活における車の使い方をはじめとした国民への行動変容を促す」と明記されたことだろう。自動車を中心とした移動産業に加えて、もう一つ、カーボンニュートラル実現のために新たな移動産業を創出していくものだ。

MaaSや自動運転、モビリティサービスの電動化は、いずれもカーボンニュートラル実現のための手段である。重要なのは、決してこれら手段の実装が目的ではなく、国民の行動変容を促したその先の都市や道路の姿を描き、カーボンニュートラル実現のための先行投資を国家戦略として立案しロードマップを描いていくことだろう。国土交通省では将来のビジョンとして、「2040年、道路の景色が変わる」を2020年6月に発表、2040年の日本社会を念頭に、道路政策を通じて実現を目指す社会像、その実現に向けた中長期的な政策の方向性を提言した。

今後、CASE(ケース)やMaaSに代表されるモビリティ革命が都市や道路にどのような影響を与えていくかを総合交通政策の観点から考察し、「道路の景色が変わる」ための実装を具体的にデザインしていくことが求められている。MaaSやスマートシティは、バーチャル/デジタルに関わる議論が先行しがちであるものの、併せてリアル/フィジカルに関わる議論を踏まえた事業や制度の設計(デザイン)が重要であることは言うまでもない。

本書は、このような問題認識の下、「MaaSが都市を変える」と題して、スマートシティやMaaS、新たなモビリティサービス、まちづくりに取り組んでいる行政や民間の実務者の方、研究開発に取り組んでいる方、新たなビジネスにチャレンジしたいと考えている方などに向け、実践的な交通まちづくりの専門書として執筆したものである。また、自動車産業は100年に一度と言われている大転換期を迎えており、移動だけでなく、移動の先にある産業や目的地との連携が必須の時代となった。自動車産業に従事する方にもモビリティ革命の先にある都市の姿を構想するためのレシピとして手にとっていただければとの思いで執筆した。

本書は、7章で構成している。
1章では、モビリティ革命やMaaSの本質を解説している。自動車産業に従事している方の中にはMaaSを脅威だと誤解している方が未だに多くおり、交通事業者の方からはMaaSの前にやることがあるという話もよく耳にする。ライドシェアリング=白タクという誤った認識も今なお日本では蔓延している。MaaSの本質を正しく理解することで、初めてそれが都市に与える真のインパクトが想定でき、プラスの影響やマイナスの影響に対する備えや先行投資の議論が始まると考えている。

2章では、都市が抱える移動に関する根本的な課題について各地のエビデンスをベースに解説している。たとえ電動化や自動化が進展したとしても、都市の根本的な課題は解決しない。都市を経営していく観点から、MaaSの意義や役割を考えていく上での問題認識や気づきをわかりやすく提示するよう心がけた。地域ごとに抱える課題や政策目標は異なっており、地方都市や中山間地では、移動サービスを設計する前に、まずは自分の地域で供給されているあらゆる移動サービスを把握し、見える化することをお勧めしたい。

3章では、MaaSに代表されるモビリティ革命が都市に与えるインパクトについて、筆者なりの実務経験を通して、先進諸国の最先端の取り組みも交えながら解説した。欧米では4~5年前からCASEやMaaSの進展が都市にどのような影響を与えるかといった議論が活発に行われており、世界最先端の研究者や実務者がさまざまなシミュレーションにより、これらの影響評価に取り組んできている。自動運転技術は、交通事故の減少に大きく貢献するだけでなく、駐車場や街路などの計画の再定義を余儀なくするだろう。beyond MaaSの時代には、移動とさまざまな産業との連携が進み、結節点の価値を再定義すると思われる。これは10年、20年先の話ではなく、まさに世界中で今起きつつあることばかりだ。

4章と5章では、それぞれアメリカや欧州の各地で起こっているモビリティ革命の最新動向を紹介している。いずれの国や地域においても、政策目標を掲げ、MaaSの実装を目的とするのではなく、政策目標を実現するための一つの有益な手段としてMaaSを位置づけている。バーチャルなデジタルの世界だけでなく、フィジカルな空間、リアルな政策も合わせ、両輪で交通戦略を着実に進めている。4章や5章を通して、総合的な交通政策の中期ビジョンを掲げ、移動産業のDXにおいて官民が連携し、法制度や財源と一体となったスキームで取り組むことがいかに重要であるかをご理解いただけるのではないかと考えている。

6章では、行政や民間の実務者が具体的に取り組むべきポイントについて、筆者が重要と考える七つのポイントを取り上げ、「日本での実装をデザインする」と題してとりまとめた。スマートシティは構想から街が完成するまでには、それなりの時間を要する。モビリティ革命のスピードは都市づくりのスピードよりも速く、将来に備えた勘所を押さえた都市のデザインが求められる。これからスマートシティのビジョンづくりに携わる方やスマートシティの事業に関わっている方々に向け、先進的な取り組みも交えてポイントを提示した。なお、MaaS時代においては、車両のデザイナー、交通管理者、道路管理者、都市計画家、情報技術者など、多様な領域の専門家がこれまで以上にビジョンを共有し、利害を超えた連携が求められる。

本書を執筆している間に、新型コロナウイルス感染症が世界に蔓延し、今なお世界で猛威を振るっている。最後の7章では、パンデミックと闘う人々や移動サービスに焦点を当て、withコロナ時代のMaaSに向けた取り組みと今後重要となる事項を提示した。コロナ禍においては、さまざまな交通が統合されたMaaSの価値が世界中で一層高まっている。移動サービスの運行頻度の縮小、営業時間の短縮などが生じるなか、代替手段や代替ルート、疎密情報をワンストップで提供し、非接触でトレーサビリティ(追跡可能性)を確保した移動サービスが、ライフラインを維持していく業務に従事するエッセンシャルワーカーにとっても重要な役割を果たしてきた。

また、行政が移動回復計画(リカバリープラン)を策定し、暫定自転車レーンや暫定バスレーン、歩車共存道路や歩行者天国などを確保する取り組みが世界中で拡がった。コロナ禍においては、「移動」が高リスクと認識されるなか、安心して移動できるフィジカルな都市空間を確保し、デジタルな情報空間であるMaaSと融合し、危機におけるレジリエント(強靱)なモビリティサービスが誕生したと言っても過言ではないだろう。

なお、地域ごとに感染症の状況や対策、移動サービスの運用状況がさまざまであることから、本書ではヒアリング時点や原文の発表時等を極力文中に記載するように心がけた。そのため最新の状況とは異なる点に留意いただければと思う。

本書が、読者の皆様にとってスマートモビリティサービスだけでなく、次世代の交通まちづくり、スマートシティに関心を抱く機会となり、それぞれの行政政策やビジネス、研究開発に役立つものとなることを願いつつ、日本の再興の一助になれば幸甚である。

2021年1月 牧村和彦

全国各地のMaaS事業やスマートシティ事業に筆者が本格的に関わり、8年以上が経過した。その多くは実証実験にとどまらず、本格運用や事業化に結びついた取り組みとなっており、多くの方々とのご縁や尽力があって成しえたものばかりだ。

MaaSに取り組むことは、これまで我々が目を伏せてきたあらゆる不都合にいやが応でも直面することとなる。東急ほかが手掛ける観光型MaaS「Izuko」の立役者である森田創氏のベストセラー『MaaS戦記』のタイトルが、まさにそのことを物語っている。MaaSに携わるということは、それなりの覚悟と矜持が必要だ。理想と現実とのギャップに葛藤し、利害が輻輳するなかで苦労も多い。
一方、これまで一緒に事を成し遂げることなど想像すらできなかった人たちと共に同じ目標に向かってチャレンジしていく過程で、想像を超えた化学反応が起きる瞬間に立ち会えたことは、MaaSとの出会いがなければ経験しえなかったものだ。

モビリティ革命はこのコロナ禍で加速しており、今後の都市づくりにもさらに大きなインパクトを及ぼしていくこととなるだろう。本書で繰り返し述べてきたように、MaaSを単なる異なる移動手段を統合したサービスとして 捉えるのではなく、都市や移動産業のDXとして、人々の行動変容を促していく新しい技術として、スマートシティを牽引する手段として、その本質を理解し、エコシステムを市民と共生していくことが大切だ。

本書は数多くの有識者や経営者、実務者の方々との出会い、議論や共働がなければ成しえなかった。ここに深く感謝を申し上げたい。
特に、政府の未来投資会議でプレゼンをする機会をいただいた石田東生氏(筑波大学名誉教授)、都市工学の理念をいつもご教示いただいた中村文彦氏(横浜国立大学教授、JCoMaaS代表理事)、MaaSという新しい旅の出会いをいただいた日高洋祐氏(MaaS Tech Japan代表取締役)、井上岳一氏(日本総合研究所シニアスペシャリスト)、井上佳三氏(自動車新聞社代表取締役、LIGARE編集長)、勝俣哲生氏(日経クロストレンド副編集長)、欧州の最新動向調査にご一緒する機会をいただいた丸川裕之氏(日本プロジェクト産業協議会専務理事)には、改めて感謝の念をお伝えしたい。
また、日々まちづくりの本質を指導いただいている黒川洸氏(計量計画研究所会長)、岸井隆幸氏(計量計画研究所代表理事)にも感謝申し上げたい。

本書の出版・編集にあたっては、筆者の抱いている次世代の交通まちづくりの価値を筆者以上に理解いただいた学芸出版社の宮本裕美氏および森國洋行氏に感謝を申し上げたい。そして、コロナ禍で移動とは何か、家族とは何かを共に考え、献身的に支えてくれた家族にも感謝したい。 日本再興のため、今も現場でMaaSやスマートシティに果敢に取り組んでいる方々、交通崩壊を抑止するために全力で取り組んでいる方々がいる。本書とともに彼らにエールを送りたい。最後まで読んでいただきありがとうございました。

2021年1月 牧村和彦

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