マルシェのつくり方、使い方

脇坂真吏 著

内容紹介

ヒルズマルシェなど6つのマルシェを10年間、運営してきた著者が紹介する、地域密着型マルシェの「運営」と「出店」のノウハウ。マルシェをまちづくりの起点にしたい運営者、マルシェをビジネスの柱にしたい出店者に役立つ、企画から開催までのオペレーション、継続するコツや成果の出し方まで、豊富な実践例から解説。

体 裁 四六・224頁・定価 本体2000円+税
ISBN 978-4-7615-2718-1
発行日 2019/09/20
装 丁 藤田康平(Barber)

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44ページ公開中!(はじめに、1章)

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はじめに

1章 マルシェが小売りビジネスを変える~コミュニケーション型移動小売業の誕生

1 日本のマルシェ誕生
2 マルシェに参戦
3 マルシェをブームで終わらせないために
4 コミュニケーション型移動小売業

2章 マルシェのつくり方~開催・運営のノウハウ

1 マルシェを始める前に知っておきたいこと
2 開催までに準備すること、スケジュール
3 マルシェ運営のオペレーション
4 マルシェは1日にして成らず
INTERVIEW 1 なぜ、ディベロッパーがマルシェを主催するのですか?
森ビル株式会社/田中巌さん

3章 マルシェの使い方~出店のノウハウ

1 「何屋」か、一言で言えますか?
INTERVIEW 2 9年前からマルシェに出店するシフォンケーキ専門店
世田谷ファームランド/小泉恵祐さん
2 マルシェで儲ける!は甘くない
INTERVIEW 3 日本唯一!?マルシェでカンボジアの胡椒を広める
篤家/佐藤敦子さん
3 いざ、出店へ!準備万端で挑め
INTERVIEW 4 マルシェで1日30万円の売上をめざす農家
百鶏園/小沢燿さん
4 インキュベーションスペースとして
INTERVIEW 5 わずか5カ月で人気バーと取引成約!
鵜殿シトラスファーム/鵜殿崇史さん
INTERVIEW 6 送料高騰からの新たな販路拡大へ
倉田農場/倉田真奈美さん

4章 マルシェというビジネスモデル~持続可能なしくみの構築

1 近江商人の上をいく、五方良し!
2 つくる側のビジネスモデル
3 使う側のビジネスモデル
4 顧客のビジネスモデル
INTERVIEW 7 10年間、毎週ヒルズマルシェに通い続けています!
ペイン・ディヴィッド&千夏さん

5章 マルシェの現場案内

1 ヒルズマルシェ─街のプラットフォームになる
2 ワテラスマルシェ─地元の大学生も運営を手伝う
3 浜町マルシェ─複数の地元商店街との連携
4 KITTE前地下広場マルシェ─日本屈指のオフィス街で実現
5 SouseiMarche─商業施設で毎日マルシェ
6 新しい流通を開拓するマルシェ

おわりに

脇坂真吏(わきさか・まさと)

株式会社AgriInnovationDesign 代表取締役。株式会社東神楽アグリラボ 代表取締役会長。株式会社DKdo 代表取締役/東京代表。一般社団法人マルシェ・マーケット研究所 代表理事。1983年生まれ。東京農業大学国際食料情報学部食料環境経済学科卒業。「小学生のなりたい職業1位を農家にする」をモットーに大学4年時に起業。その後、NPO法人農家のこせがれネットワークの設立をはじめ、農業活性に関わるプロデュースを全国で展開。2009年から「ヒルズマルシェ」の運営に関わり、以降東京で「ワテラスマルシェ」「浜町マルシェ」「KITTE前地下広場マルシェ」、北海道で「SouseiMarche」の運営に携わる。

「マルシェをやりたいと思っているんですが、相談に乗って下さい」
「マルシェを上手にやるコツは何ですか?」
「地域の農家でマルシェに出てみたいのですが、どうしたらいいですか?」

嬉しいことに、弊社、株式会社AgriInnovationDesignには、こうしたマルシェに関する相談をいろいろいただくようになりました。一つはマルシェを運営したい企業や自治体から、もう一つはマルシェを活用して事業を成長させたい農業者や事業者の方々からの相談です。こうした方々に向けて、10年間、マルシェを運営するなかで培ってきた「マルシェとは何か」という根本的な部分から、運営面でのノウハウやコツ、また出店者がマルシェをどのように使うとより早く成長へとつながるのか、そうしたものをすべてお伝えするために、本書を執筆しました。

“マルシェ”と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?

パリやニューヨークなどの旅先で見かけるお洒落なマルシェでしょうか? それとも、近所の農家さんが集まって開くマルシェでしょうか?

マルシェと聞いて思い浮かぶイメージは人それぞれだと思います。

東京農業大学在学中に八百屋を立ち上げ、会社を起業後は築地の青果仲卸とも仕事をするなど、常に農産物の流通に近い所で仕事をしてきた私が最初にマルシェと出会ったのは2009年。森ビル株式会社が主催する「ヒルズマルシェ」(東京都港区)に関わったことがきっかけでした。あれから10年、今では東京都内でマルシェを4件、北海道でも商業施設内で2件の通年マルシェを運営しています。

つくる側も使う側も、ビジネスとしてもっと有効活用できるはず!

そもそも”マルシェ”という選択は正しいのか?

マルシェの相談や依頼などをいただいた際、最初に考えるのがこの疑問です。

「まちづくりや賑わいづくりのために何かをやりたい→マルシェ」と思われるほど、マルシェがブームになっています。マルシェを運営する1人としてはとても嬉しいことですが、「とりあえずマルシェ」になっているのではないかとも感じます。そのため、2章で解説する「マルシェのつくり方」の前提として、まずマルシェをすることが正解なのかどうかを、つくり手に考えてもらうことが重要だと考えています。

一方で、マルシェには決まったルールや形があるわけではありませんので、どのようなマルシェを展開するかは開催地の条件や主催者の想いなどによって変わってきます。2章では、都市部でのマルシェを運営するなかで定義した「コミュニケーション型移動小売業」という考え方をもとに、実施する際の準備内容やスケジュール、運営業務のノウハウをお伝えします。

さらに、マルシェに出店する事業者目線で考えてみると、マルシェに出店する目的は、売上を上げたい、お客さんの反応を見てみたい、まずは売ることを学びたい、出店が楽しいなど、さまざまです。さらに、販売品目も、農産物から加工食品、雑貨、料理まで幅広い。

3章の「マルシェの使い方」では、「ビジネスであるマルシェ=売場」という考え方を前提とし、出店してみたい事業者へ向けた出店までの準備、出店時の注意点、過去の出店者の動向などをもとに失敗・成功のヒントなどを詳しく解説します。

マルシェなんて意味がない!と思っていた10年前の私へ

今ではマルシェにどっぷりハマっている私ですが、日本で現在のマルシェが誕生するきっかけとなった農林水産省のマルシェ・ジャポン・プロジェクトの事業目的「農家が都市で気軽に売場を持てれば所得が向上する」(2009年)を聞いた時、「そんなことで農家が儲かるわけがない」と本気で思っていました。その当時は、神奈川県の養豚農家、株式会社みやじ豚の宮治勇輔さんと共に農業支援につながる活動としてNPO法人農家のこせがれネットワークを立ち上げた直後で、マルシェの目的を聞いて「そんな馬鹿な」と思っていたのです。

実際、2009年にマルシェを始めたばかりの頃は、イベントのような感覚でしたので、東京に住む農家のこせがれに実家の農産物を販売してもらったり、若手農家に出店してもらったりしていました。もちろん、出店したすべての農家の所得が向上したとは言えません。人件費や交通費などそれなりのコストもかかります。その当時はマルシェの価値を見抜けていませんでした。あれから10年が経ち、ずっと出店し続けてくれている農家や、実際にマルシェの出店が自社経営の基盤の一つになっている農家も出てきました。

私が歩んできたマルシェを運営する日々の中で数えきれないくらいの試行錯誤や、忘れられない失敗や挫折をしてきました。一方、そんな苦労を乗り越えさせてくれた、素敵な出店者や利用客との出会いから、たくさんの気づきをもらいました。

本書は10年前の私のように、「マルシェって何だろう?」「どう使えばいいのだろう?」「どんな魅力や可能性があるんだろう?」という疑問を持っている人に向けて、私なりの実践に基づいた答えを紹介しています。

本書が、日本全国で素敵なマルシェが開催され、そんなマルシェが人々の暮らしを豊かにする一助となることを願っています。そして、いつの日かそんな各地のマルシェを行脚することを楽しみにしています。

2002年に最初の会社を立ち上げた時から「小学生のなりたい職業1位を農家にする」という夢があります。それを達成するべくさまざまな農業支援事業に取り組んできました。農業支援と言いながらも、生産はしない、生産支援はしない、流通はしない、産地にもいないという、どこが農業支援なのかと疑問に思われる方法をあえてとってきました。

マルシェには四つの楽しみがあるといつも言っています。「見つける楽しみ」「会話する楽しみ」「食べる楽しみ」「また会う楽しみ」です。

自慢の野菜を持参して販売する農家にとっては、「提案する楽しみ」「聴いてもらえる楽しみ」「食べてもらう楽しみ」「もう一度会って、美味しかったと言ってもらえる楽しみ」です。お客さんから応援してもらうと、次に作物をどうつくろうか、どんな作物を販売して喜ばせようかと考えを巡らせるようになります。そうしてマルシェを楽しみながら奮闘する親の姿は子どもに伝わっていきます。そうすると、後継者不足と言われる農業にも小さな変化が起きてくると思います。

マルシェの常連のお客さんは、マルシェ以外で野菜が買えなくなります。マルシェで買った鮮度の高い食品が日々の食事を充実させると、舌は肥え、食事の楽しみ方がどんどん広がります。出店者と出会って家族で畑に遊びに行くようになり、農業や食材の美味しさを学ぶようになります。都会のマルシェで育った子どもたちの中から農業に興味を持ち、農家を目指したり農業を応援したりする人が出てくるかもしれません。

マルシェは、農家の子どもも都会の子どもも農業に憧れるきっかけとなる一番の舞台ではないでしょうか。マルシェは農業の素敵な未来をきりひらいてくれると私は信じています。

日本には、本書で解説してきた「コミュニケーション型移動小売業」のマルシェがまだまだ少ないと思います。イベントとして開催するマルシェや、農家が対面販売をしないマルシェは増えていますが、地域密着型のマルシェはあまり増えていません。

コミュニケーション型移動小売業としてのマルシェづくりには最低3年はかかるため、それなりの忍耐やリスクも覚悟する必要があります。それでもこうしたマルシェが日本に増えてほしいと願っているため、今回、そのノウハウを一冊にまとめました。

本書をきっかけに、全国に素敵なマルシェが増え、ロンドンのように行政がマルシェに対する指針や支援を表明してまちづくりの一環として取り組む自治体が現れてほしいです。マルシェが日本人の生活に定着し、商店街のように専門店が集まり、買う人が集まり、笑顔が溢れ、交流が生まれ、そこから新しい価値がたくさん生みだされ続ける場所になってほしいと思います。この思いに共感してマルシェをやってみたいと思う方は是非ご連絡下さい。一緒に素敵なマルシェをつくりましょう。

私は農業プロデューサーとして、マルシェを日常化させていきます!

最後になりますが、マルシェの運営に関わる機会を与えて下さった森ビル株式会社の田中巌さんはじめ歴代の担当者の皆様、本書の出版でお世話になった学芸出版社の宮本裕美さん、インタビューに協力して下さった皆様には感謝申し上げます。そして東京で一緒にマルシェを運営してくれているマネージャーの佐藤千也子さん、札幌で新しいマルシェの業態に挑戦してくれている成田恵さんと竹村果夏さん、そしてこれまで一緒にマルシェを運営してくれたスタッフや出店者の皆様、本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。そして、本書をお読み下さった皆様、ぜひマルシェに遊びに来て下さい。

2019年9月
脇坂真吏

マルシェのつくり方、使い方~インタビュー編~

https://note.com/wakisakamasato/m/m57645a6cb173

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