フラノマルシェはまちをどう変えたか
「まちの滞留拠点」が高める地域内経済循環

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石原武政・加藤 司・風谷昌彦・島田尚往 著

内容紹介

衰退する一方だった富良野市の中心市街地に登場した「フラノマルシェ」と「ネーブルタウン」。まちなかへの来街者数を年間6万人から120万人に拡大させ、富良野市全体に絶大な経済効果を与え続けている。「まちの滞留拠点」が地域に与えた影響を検証し、地域経済のしくみを持続的につくり変えることができた要因を探る。

体 裁 A5・184頁・定価 本体2500円+税
ISBN 978-4-7615-2658-0
発行日 2017/10/20
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史


目次著者紹介はじめに

序章 なぜ人口約2.3万人弱の町で年間約100万人の人が集まるのか

1 小さな都市の大きな実験
2 本書の構成

第1章 フラノマルシェの軌跡

1 富良野のまちづくりの背景
2 まちづくりの体制固め
3 中間的総括

第2章 フラノマルシェ事業をどう評価するか

1 前計画の目標・指標・評価
2 前計画総括を受けた新計画の必要性とその概要
3 事業評価の新しい指標

第3章 産業連関表で見るフラノマルシェ事業の経済波及効果

1 波及効果見積もりの範囲
2 直接効果と間接効果
3 間接1次効果
4 間接2次効果
5 総合効果
6 見積もり範囲外の影響
7 経済波及効果の比率
8 地域への経済波及について

第4章 フラノマルシェ事業が不動産市場に与えた影響

1 フラノマルシェ周辺の地価動向
2 幸町の地価上昇による影響
3 不動産の取引状況
4 中心市街地の土地利用状況
5 不動産の視点で見たマルシェ事業の影響

第5章 フラノマルシェ事業は地域内経済循環をいかに高めたか

1 地域内経済循環における「三段ロケット」
2 中心市街地のダイナミズム
3 デベロッパーとしてのまちづくり会社
4 ふらのまちづくり株式会社の役割
5 残された課題

第6章 フラノマルシェが目指したもの

1 フラノマルシェはマルシェだけではない
2 フラノマルシェ事業を振り返る

終章 小さい都市だからできること

1 小さい都市でもできた
2 大きな組織の落とし穴
3 小さな都市だからこそできることがある

石原武政(いしはら たけまさ)

(序章、1章、6章、終章 担当)

大阪市立大学名誉教授・前流通科学大学特別教授
1943年京都市生まれ。神戸商科大学、神戸大学大学院経営学研究科を経て、大阪市立大学、関西学院大学、流通科学大学各商学部に勤務。主著に『商業組織の内部編成』(千倉書房、2000年)、『小売業の外部性とまちづくり』(有斐閣、2006年)、『商業・まちづくり口辞苑』(碩学舎、2012年)、編著に『タウンマネージャー 「まちの経営」を支える人と仕事』(学芸出版社、2013年)などがある。

加藤司(かとう つかさ)

(2章、5章 担当)

大阪商業大学総合経営学部教授
1954年生まれ。1980年福島大学経済学部卒業。1983年神戸商科大学大学院前期博士課程修了。1985年神戸商科大学大学院後期博士課程中退。博士(商学)。大阪市立大学大学院経営学研究科教授を経て現職。著書に『日本的流通システムの動態』(千倉書房、2006年)、『商業施設賃料の理論と実務-転換期の不動産鑑定評価-』(共著、中央経済社、2015年)、『地域商業の競争構造』(共著、中央経済社、2008年)、『産業の再生と大都市』(共著、ミネルヴァ書房、2005年)、『商業・まちづくりネットワーク』(共著、ミネルヴァ書房、2005年)など。

風谷昌彦(かぜたに まさひこ)

(4章 担当)

株式会社アズマネジメントコンサルティング代表
1954年大阪市生まれ。大阪市立大学大学院経営学研究科修了。建築・不動産会社を経て、1993年独立。センテクス総合開発株式会社代表取締役。中小企業診断士、公認不動産コンサルティングマスター等の資格を有する。現在、一般社団法人大阪中小企業診断士会理事長。著書には『商業まちづくり・ネットワーク』(共著、ミネルヴァ書房、2005年)などがある。

島田尚往(しまだ なおゆき)

(3章 担当)

株式会社あかしべ代表取締役
中小企業診断士・博士(工学)・ソフトウェア開発技術者。2003年大阪大学大学院工学研究科修了。三菱電機株式会社を経て、2013年技術・経営コンサルタントとして独立開業。主に製造業を対象に企業支援業務を行う。2016年、株式会社あかしべを設立。

商店街の空き店舗に注目が集まるようになったのは1990年代初頭であり、それ以降、各地で空き店舗対策事業が取り組まれた。しかし、90年代の後半期には、特に地方都市を中心に、もはや単なる商店街の問題ではなく中心市街地全体が疲弊していることが問題だと認識されるようになった。1998(平成10)年の「まちづくり三法」体制は、そうした時代の流れを象徴していた。それからおよそ20年の時が経過した。まちづくり三法は2006(平成18)年に大幅な見直しが行われ、2013(平成25)年には中心市街地活性化法の再見直しも行われた。

こうした大きな流れを受けて、多くの都市で中心市街地の活性化に向けた取り組みが行われてきた。それによって、実際に活気を取り戻した都市がないわけではないが、懸命の努力にもかかわらず、なかなか成果をあげることのできない都市が多いのも現実である。そして、2014(平成26)年、政府はついに問題は地方都市そのものの衰退にあるとして、地方創生に本格的に取り組む姿勢を打ち出した。地方都市の活性化は今や国をあげての課題だと言っても過言ではない。

しかし、地方都市の活性化はかつてのような大規模な開発や工場誘致によって達成できるものではない。人口の減少に歯止めがかかるめどは立たず、超高齢社会がさらに加速していく中では、かつてのような経済成長の継続を期待することは難しい。その中で地方都市の活性化を図ろうとすれば、地域における経済循環の仕組みそのものを作り変えていく必要があるのではないか。私たちの身体と健康になぞらえて言えば、大きな外科的手術を施すよりも、地味ではあるがじっくりと体質改善をはかり、免疫力のある体づくりを進める必要があるということである。問題は多面的であり、成果が現れるまでには相当の時間が必要かもしれない。それでも、それに取り組まなければならない。それが私たちの共通の認識であった。

多くの都市が模索を続ける中で、北海道富良野市の取り組みは間違いなく大きな成果をあげたと評価してよい。人口2万3000人にも満たない小さな都市で、まさに奇跡とも呼べるような成果が現れた。一体、富良野では何が行われたのか。富良野が成功事例だとすれば、そこから学ぶことはあるはずだ。では、私たちは一体、何を富良野から学ぶべきなのか。表面的な事業内容や事業手法を真似してみても始まらない。学べるものは都市によって違ってくるとしても、富良野から何かを学び取ろうとすれば、富良野の取り組みの深部に深く立ち入る必要がある。多くの複雑に絡み合う要因を解きほぐし、どのようにして体質改善を成し遂げることができたのかを、正確に理解することが欠かせない。

富良野は数少ない成功事例として注目を集めているため、多くの賞を受けているし、すでに多くの紹介記事等も存在する。そんな中で、あえてここに1冊の書物としてまとめようとした意図は、ただこの1点に尽きている。本書で分析しているのは富良野の事例だけである。しかし、富良野がどのような経過の中で、どのように体質を改善していったのか。その神髄は全国の地方都市に広くあてはまる問題を投げかけていると信じている。本書が、地方都市の活性化に真剣に取り組もうとしている多くの関係者に少しでもお役に立つことを心から願っている。

2017年9月
執筆者を代表して
石原武政

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