フラノマルシェの奇跡
小さな街に200万人を呼び込んだ商店街オヤジたち

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西本伸顕 著

内容紹介

ドラマ「北の国から」で有名観光都市となるも、衰退する一方だった富良野の中心市街地。危機感を持った「まちの責任世代」と称するまちづくりの素人オヤジたちが立ち上がった! 様々な壁を乗り越え、約2万4000人のまちで200万人を集める複合商業施設「フラノマルシェ」を実現。まちを守り抜くために走り続ける男たちの物語。

体 裁 四六・216頁・定価 本体1600円+税
ISBN 978-4-7615-1329-0
発行日 2013/07/25
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史


目次著者紹介はじめに書評
はじめに―まちなか活性化施設「フラノマルシェ」の奇跡―

序章 それは「まちづくり熱血おじさん」の一言から始まった

第1章 走り出した「まちの責任世代」たち
第1話 「官」から「民」へ
第2話 まちづくりオヤジトリオ結成!
第3話 将を射んとせば、いきなり将を射よ!?
第4話 内閣府で、冷汗三斗の三時間
第5話 一味づくり
第6話 一味づくり パート2
第7話 先進地視察で「いいとこ取り」
第8話 コンセンサスづくりに東奔西走の日々

第2章 蘇る「ルーバン・フラノ構想」~ちょっとおしゃれな田舎町

第1話 お蔵入りしていたコンセプト
第2話 認定された「中心市街地活性化基本計画」
第3話 「ほんとに、駅前一等地にスーパーでいいの?」
第4話 「フラノマルシェ」計画の誕生

第3章 「新まちづくり会社」始動!

第1話 会頭乱麻の資金集め
第2話 日経事件
第3話 「まち力」が内閣府を動かす
第4話 富良野のまち力〔環境編〕
第5話 富良野のまち力〔マンパワー編〕
第6話 新まちづくり会社発足!

第4章 「壁」を越えて

第1話 「戦略補助金」をめぐる様々な出来事
第2話 つくりたいのは「道の駅」ではなく「滞留拠点」
第3話 思わぬ役所の壁
第4話 マルシェ事業計画の再検討
第5話 内閣府で、参事官と3時間
第6話 突然の人事異動
第7話 「フラノマルシェ」事業採択なる!

第5章 「フラノマルシェ」がまちを変えた

第1話 テナント募集と商品づくり
第2話 話題沸騰!個性的なテナント群と直営店
第3話 けだものカウンターで入場者をカウント
第4話 「フラノマルシェ」の波及効果と成功要因
第5話 ふらのまちづくり株式会社の現況
第6話 本丸「ネーブルタウン」事業へ

おわりに

西本伸顕(にしもと のぶあき)

1952年富良野市生まれ、富良野在住。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート勤務を経て家業の青果卸会社・株式会社北印へUターン。現在、株式会社北印代表取締役社長。ふらのまちづくり株式会社代表取締役社長。ふらの演劇工房・富良野塾・インターネット富良野・ラジオふらのなど、富良野のまちづくりに深く関わる。著書に『富良野笑市民ライフ』(フォレスト出版、2004年、ペンネーム:伏田良)、『笑説 これが北海道弁だべさ』(北海道新聞社、2010年)。

携帯メールの着信音が鳴った。帰省中の娘からだった。

娘がメールをよこすときは、おおかた金銭にからむ相談事と相場が決まっている。今日はまたどんなお願いメールなのだろう。おそるおそる読んでみると…

「今、旭川に向かう電車に乗ってるんだけど、たまたま向かいに座った観光客風の親子が、『富良野、良いところだったねえ。景色がとてもキレイで。でも…まちなかにはなんにもなかったねえ』って話してたの。パパ、まちづくりに関わってるんでしょ。頑張ってね」。

娘からの思わぬ内容のメールに心が揺さぶられた。

富良野には毎年200万人もの観光客が訪れる。だが、彼らを惹きつけているのは美しい田園風景と郊外の観光施設であって、まちそのものの魅力ではない。まちなかの商店街はと言えば、どこのまちともさして変わらぬ閑散とした状況ではないか。富良野は本当にこのままでいいのだろうか。次世代に自信を持って渡せるまちだと胸を張って言い切れるのだろうか。

子どもたちに誇れるまちをつくらなければ…。

まちづくりに懸ける私の思いは、この日の出来事を境に劇的に変化することとなった。

あれから6年。「フラノマルシェ」がオープンして早3年の月日が流れた。

衰退する一方の富良野の中心市街地をなんとか復活させたい。責任世代の一人として、子どもたちに誇れるまちを残してあげたい。行政頼みのまちづくりから、官民一体となったオール富良野のまちづくりへ。

そんな思いの中でスタートさせた富良野市中心市街地活性化計画であったが、第1期事業となった「フラノマルシェ事業」を実現するためには、乗り超えなければならない数多くのハードルがあった。新たな法定協議会の立ち上げ、活性化基本計画の作成、コンセンサスづくり、まちづくり会社の資本および組織の強化、経産省補助事業の認定作業。まちづくりの素人オヤジ軍団が、わがまちに対する熱い思いと使命感だけを心の支えとして、実現に向け必死で取り組んだ。

ノートパソコン片手に、様々な団体に出向きプレゼンする日々。賛成派と反対派が相半ばする状態からのスタートだったが、頑張りの甲斐あって次第に理解者も増え、またマスメディアの好意的な後押しもあって、市民からの期待の声は徐々に高まっていった。

2010年4月22日、市民対象にプレオープン。まちなかは、新しい施設を一目見ようという市民たちでにぎわった。

そして、4月28日、待望の本オープン。ゴールデンウィークまっただ中の5月3日、マルシェ周辺は1万人近い観光客でごった返すこととなった。国道38号線にはあの「北の国から」以来の大渋滞が生まれ、市内のガソリンスタンドでは燃料切れとなる店まで出た。インターネットのツィッターでは「救世主現る!」と最大限の賛辞で評価する声もあった。

初年度入場者数は、当初経産省と約束した年間入場者数30万人をはるかに超え、55万5000人強にのぼった。震災の影響が心配された2年目も66万8000人、3年目も74万5000人(106・4%)と右肩上がりの状況が続いている。「フラノマルシェ」が誕生する以前、まちなかを観光する人々はわずか8万人足らずだったことを思えば隔世の感がある。

「フラノマルシェ」の成功は単なる商業施設としてのそれではない。

「まちづくり」という文脈の中で生まれた本施設誕生の背景には、富良野を愛する多くの人々の英知と情熱と行動があった。

ここに記すのは、「フラノマルシェ」開設に向けて寝食忘れて取り組んできた、責任世代を自覚する中年オヤジ軍団と、それを支えてくれた数多くの仲間たちの涙と笑いのストーリーである。

本書が、まちづくりに取り組んでいる全国のみなさんの、活動の一助、心の支えとなることができれば幸いである。

“遊休地イコール駐車場ではさみしい”と誰もが感じているだろう。地方中心部に遊休地が増え、その多くは建物を取り壊した後の使い道がなく、ただ駐車場になっているところを散見する。街に界隈性が無くなることで人は街から離れ、以前はごく当たり前にあった人と地域とのつながりが薄れ、さらに街なかが荒廃する悪循環から抜け出せない。そんな中心部の遊休地に、都会的スマートさと、地方特有の人間味と優しさが融合したのが、フラノマルシェという新業態であった。

業態とは、モノの売り方のこと。本施設は産直所でも観光物産館でも道の駅でもスーパーでもコンビニでもなく、人と人、人とモノ、人と情報を繋げることで活力を生み出すコミュニティ型ローカル業態であり、地域にある資源と人材をフル活用した事業である。本来、街なかで過ごすということは、ただモノを買うだけではなく、街を歩き、人と出会い、お茶を飲み、街の生活文化に触れるなどの楽しみや発見をもたらすはずなのに、何故か人々が拡散し閉ざされた方向に社会が脆弱化してしまった。

「街なかにはゆっくり過ごせる魅力ある滞留拠点が必要」と説く著者は、道の駅ではない、毎日訪れたくなるようなサードプレイスの施設づくりにこだわった。昨年、拙著『最高の商いをデザインする方法』(エクスナレッジ)を上梓した際、地域再生事例としてフラノマルシェを取り上げ、日常と観光の重なる楽しさの祝祭空間と紹介したが、日常の中に自分を開放できる空間や仲間と過ごせる場所があることは、定住人口や交流人口促進の大きな原動力になると感得した。

本書は地域再生ストーリーをドラマ仕立てに綴ったドキュメントであり、肩ひじ張らずにストンと頭と心に地域経営術の極意を授けてくれる。例えば、文中で「世代を超えて集い楽しく交流する“まちの縁側”」のフレーズには、よく見かける補助金でつくられた使われない公園や、総合設計制度でおまけにできた公開空地とは違う、人の溜まり場が大事であることを教示し、「成功事例のうわべだけを真似て、似たような施設をつくっても、当事者の熱い思いが入らなければ、それは単なる箱モノで終わる」と、自身の経験則からの真の言葉が続く。

本書はまちづくりに関わる行政関係者だけではなく、建築家やコンサルタント、商業者にも薦めたい良書である。

(株式会社商い創造研究所代表取締役/松本大地)

担当編集者より

本書の原稿を初めて読み終わった時の読後感はまさに「プロジェクトX」を見終わった時のようでした(頭の中をあのテーマソングが流れていました…)。まちづくりの理論と事例を紹介する他の本とは異なり、本書は「携帯メールの着信音が鳴った。」から始まる、「まちづくりの物語」。『富良野笑市民ライフ』『笑説 これが北海道弁だべさ』という前作を持つ著者のユーモアと文才は本書でもいかんなく発揮されています。

加えて、これだけの成功を収めている「フラノマルシェ」が、著者を含む「まちづくり口角泡飛ばしオヤジたち」の進めるタウンマネジメントの第一歩に過ぎないということに驚かされます。

まちづくりに関わる人、富良野が大好きな人、「責任世代」としてこれから進む道を考えたい人に「おすすめの一冊」です。

(岩崎)

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