影山裕樹 著

内容紹介

鈴木菜央さん(greenz.jp編集長)推薦!!

「笑って泣いてつながって・・・面白すぎるよローカルメディア!!」

地域はローカルメディアの実験場だ。お年寄りが毎月楽しみに待つ『みやぎシルバーネット』、福岡にある宅老所の面白雑誌『ヨレヨレ』、食材付き情報誌『食べる通信』他、その地に最適な形を編み出し根付いてきた各地の試みを3つの視点「観察力×コミュニケーション力」「新しい形×届け方」「地域の人×よそ者」で紹介する

体 裁 四六・208頁・定価 本体2000円+税
ISBN 978-4-7615-1362-7
発行日 2016/06/01
装 丁 UMA/design farm


目次著者紹介まえがきあとがき試し読みイベント
Prologue つながりを生み出すローカルメディア

Part 1 観察力×コミュニケーション力

1 『みやぎシルバーネット』(宮城県仙台市)
──お年寄りが表現し、語り合う場所
2 『ヨレヨレ』(福岡県福岡市)
──現実を真剣に描くからこそ面白い
考察 時間をかけて見つめることでコミュニケーションが生まれる
──無明舎出版、『kalas』

Part 2 本・雑誌の新しいかたち×届けかた

1 『東北食べる通信』(岩手県花巻市)
──生産者と消費者の関係を深める食べ物付き情報誌
2 本と温泉(兵庫県豊岡市)
──”地産地読”という届けかた
考察 その地に最適なかたちと方法がある
──「十和田奥入瀬芸術祭」「宿命の交わるところ──秋田の場合」ほか

Part3 地域の人×よそ者

1 『雲のうえ』(福岡県北九州市)
──平凡な場所が素敵に見えてくる
2 『La Collina』(滋賀県近江八幡市)
──地元の再発見が愛着と自信を育てる
3 『せとうち暮らし』(香川県高松市)
──クリエイターがつながり、応援する人がいて、メディアが成長する
考察 地域の人とよそ者の情熱が広がりを生む
──issue+design、『離島経済新聞』

Epilogue ローカルメディアはいつも実験場だった

──『谷根千』、せんだいメディアテーク、『フリースタイルな僧侶たちのフリーマガジン』『飛騨』『TO magazine』

あとがき

影山裕樹(かげやま・ゆうき)

編集者、プロジェクト・エディター
1982年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、雑誌『STUDIO VOICE』編集部を経てフィルムアート社に入社。『ヨーゼフ・ボイス よみがえる革命』『じぶんを切りひらくアート』『横井軍平ゲーム館 RETURNS』『野外フェスのつくり方』などの美術書、カルチャー書を多数手がけた後に独立。2010年に「OFFICE YUKI KAGEYAMA」を立ち上げ、書籍の企画・編集、ウェブサイトや広報誌の編集、展覧会やイベントの企画・ディレクションなど幅広く活動している。プロデュース・編集した書籍に『地域を変えるソフトパワー』『秘密基地の作り方』など。近年は「フェスティバル/トーキョー」(2012、13)「十和田奥入瀬芸術祭」「札幌国際芸術祭2014」など各地の芸術祭やアートプロジェクトに編集者、ディレクターとして携わる。著書に『大人が作る秘密基地』、共編著に『決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば』『十和田、奥入瀬 水と土地をめぐる旅』など。「NPO法人芸術公社」設立メンバー/ディレクター。

OFFICE YUKI KAGEYAMA:
http://www.yukikageyama.com/

著者・影山裕樹さん連載記事
ウェブマガジン「マガジン航」
〈ローカルメディアというフロンティアへ〉

第1回 モビリティの時代のメディアを探して
第2回 人と地域がつながる機会を生み出す
《以降継続》

マガジン航連続セミナー
「ローカルメディアで〈地域〉を変える」

7月28日(木) 第1回「持続可能なまちづくりにメディアを活かす」
9月9日(金) 第2回「メディアが地域にビジネスを産み出す」
モデレーター:影山裕樹、仲俣暁生

Prologue

東京で編集の仕事に携わっているなかで、最近、ローカルメディアがよく目につくようになった。実際手にとってみると、予想以上に面白いものが多く、メディアや編集の新しいフィールドが東京から地方へと広がりつつあるように感じた。

ローカルメディアとは文字どおり、フリーペーパー、雑誌、新聞、テレビ……など地域で発行されるさまざまな情報発信媒体のことを指すが、本書では主に、紙媒体のつくり手たちにフォーカスを当てている。インターネット全盛の時代に、なぜ紙モノばかりを取り上げるのか、という向きもあるかもしれない。

でも、ブログやさまざまな企業が運営するオウンド・メディアなどのウェブサービスの複雑な収益システムや、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を用いたコミュニティ支援の仕組みを考えるよりも、もっと万人に馴染み深い、手に取って読めるもののほうが、「地域の情報発信」の可能性をストレートに追求できるんじゃないか、と僕は思っている。

インターネット全盛の時代にこそ、地域活性化やシビックプライドの誘発にメディアを用いる場合、古くからある印刷物の仕組みを活用したほうが、より面白いことができる。すでに確立された印刷・流通の仕組みを最大限活用したり、あるいは読み替えて、自分なりのメッセージを効果的に内外に伝える。その方法として、紙メディアはいまだにさまざまな可能性を秘めていると思う。

少し前まで、個人の表現欲を満たす個人制作のジンやフリーペーパーのブームがあった。もちろん、それは今に始まったことではなくて、歴史を通してあらゆるところで個人出版や雑誌が現れては消えてきた。バンドが盛んな地域にはライブ告知を兼ねた冊子がたくさん生まれたし、学生運動の時代には立て看板がメディアのようなものだったかもしれないし、手づくりのマメ本がマニアックな個人書店で取り扱われていたこともあった。

でも、本書で語られる「ローカルメディア」は、そうした自己表現のツールとは少し違う。ジンやフリーペーパーは、自分の趣味が合う人たちとつながるためのメディアだが、本書が紹介するローカルメディアは、地域の人と人がつながるためのメディアという側面が強い。だからこそ、本書で取り上げているメディアは、その発行元のバリエーションが豊かだ。民間団体発行のもあれば、地元企業がPRのためにつくっているもの、自治体が観光客誘致のためにつくっているものまでさまざまにある。

もちろん、強烈な個性が発揮された、抱腹絶倒の個人メディアは各地にあるし、地域で発行されるという意味ではそれもローカルメディアなのかもしれない。でも、ローカルメディアの本当の価値は、できあがったものそのものよりも、つくるプロセスがどれほど豊かであったか、ということに尽きると思う。

雑誌や本を読むという経験は、どちらかといえばつくり手→受け手という一方通行のものでしかない。でも、メディア(媒介物)の本質を考えると、それは完成されたものを受け取るという非対称な関係性ではなくて、つくり手と受け手の相互交渉、つくり手たちどうしの試行錯誤が発生する過程にこそ価値があると思う。それは、僕自身が行政や企業、出版社などさまざまな思惑が交錯するセクターと協働し、メディアや出版物の編集を行ってきた経験から実感していることでもある。

そのプロセスを豊かなものにするために、ローカルメディアのつくり手たちは、コンテンツ、デザイン、読者とのコミュニケーションなどさまざまな面で工夫をしている。ここでは取材したローカルメディアを「地元の魅力の発見」、「発行形態の実験」、「よそ者と地元の人との関わりかた」という三つの論点に分け、それぞれ「観察力×コミュニケーション力」「本・雑誌の新しいかたち×届けかた」「地域の人×よそ者」という章立てで紹介している。今後、地元で本や雑誌をつくって地域の情報発信や交流に関わりたい人々や、自治体の地域振興を考える担当者、地元企業の経営者や広報部の人々のヒントになれば幸いである。

二〇一六年五月 影山裕樹

本書を執筆するため、僕は約一年かけてリサーチと取材で全国のメディアのつくり手たちに会いに行ってきた。その過程で、これまで繰り返し述べてきたとおり、できあがったものそのものよりも、その制作の過程にこそローカルメディアの魅力が詰まっている、ということに気づいた。

現在、各地で生まれつつあるローカルメディアは、内外の人にメッセージを伝える目的ではなく、地域の人と人がつながるための手段になった瞬間に、その本領を発揮していた。いわゆる観光パンフレットや企業広報誌と、本書が言うところのローカルメディアの違いはそこにある。

極端な言い方をすれば、メディアに取り上げられた情報が、都市に住む人々にどれだけアピールするか、なんてことは考えなくていいと思う。あくまで、地元の人々のあいだで交換される、些細な日常やローカルなニュースで構わない。大事なのは、自分たちが住むこの土地が、広漠としたものではなく、豊かで楽しみに満ちたフィールドだと自覚するための媒介物(メディア)になっているか、ということ。大都市で起こるようなドラマチックな事件はないかもしれない。でも、それでいい。それこそが面白いのだ。地域を本当に豊かにするのは、都市の文化を輸入したりそれに追従することではなく、その地域ならではの物語を、その地域に住む人たちで活発に交換しあうことにあるのだから。

地域発信のメディアを紹介する本をつくってみたい、という話を出版社に持ちかけたのは二年ほど前だろうか。その時はまだ取材・リサーチに取り掛かることもなく、ただ一枚のA4の企画書があるだけだった。

実際にどんな話が聞けるかわからないし、紙のローカルメディアがインターネットに押しやられ衰退することなく、今後も増え続けるという確証もなかった。そんな不確かなアイデアを拾い上げ、取材や執筆のプロセスに長い期間寄り添っていただいた学芸出版社の井口夏実さん、神谷彬大さんに感謝の気持ちを伝えたい。

この二年のあいだでも地域発信のフリーペーパーや雑誌、個人出版社が増えてきたように思う。それは東京のメディアが相対的に窮屈な状況に置かれているからかもしれないが、一方で、本を愛する、志のある個人書店が各地に増えたことも大きい。業界の隅っこで編集業を生業とする僕らのような人間、あるいはローカルメディアのつくり手たちは、こうした人々の存在に支えられているからだ。

それから、本書の装丁を手がけてくださったUMA / design farmの原田祐馬さん、僕があくせく集め続けてきたローカルメディアをまとめて撮影してくださり、福岡まで取材に同行してくれた喜多村みかさん、膨大な取材音声の文字起こしを手伝ってくれた加藤千香士くんに御礼を申し上げたい。

古くはラスコーの洞窟壁画や二条河原落書のような匿名の人による発信にまで遡る、と言ったら言い過ぎだろうか。とにもかくにも、誰もが知っている、しゃぶりきったスルメのように味のしない観光地をことさらに取り上げるよりも、匿名の人々のユーモアある語り合いこそが、急速に失われつつある地域の人々のつながりを育んでいるように思う。ローカルメディアは、ささやかだけれどあたたかい、現代版“寄り合い”の場(プラットフォーム)なのである。

二〇一六年五月 影山裕樹


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