都市を変える水辺アクション
内容紹介
都市の中で放置されていた水辺を楽しめる空間に変えていく動きが各地で起こっている。水辺テラス、街なかクルージング、アートフェスなど、実践者自らの経験を交えながら国内外の事例を紹介。規制緩和やマネジメントの仕組みを知り、水辺再生のアイデアを探る本。官民連携で戦略的な展開を実現した水都大阪の全貌も初収録。
体 裁 A5・192頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-2608-5
発行日 2015/10/20
装 丁 井上 能之(OPUS DESIGN inc.)
ニュース
「水都大阪のまちづくり」都市計画学会 石川賞受賞!
「水都大阪のまちづくり」の現場を支えてきた著者が、本書で、
これまでのプロセスやポイントを詳しく解説しています。
イベント
トークショー
『水辺と広場:公共空間のつくり方・活かし方』
2016.3.27 @スタンダードブックストア心斎橋 *終了しました
【出演】
・嘉名光市(大阪市立大学)
・泉英明(ハートビートプラン)
・武田重昭(大阪府立大学)
・田中智之(熊本大学大学院)
・星野裕司(熊本大学大学院)
・田中尚人(熊本大学政策創造研究教育センター)
・コーディネーター:山下裕子(全国まちなか広場研究会理事)
chapter1 水辺へのアプローチ
chapter2 水辺を変えるアクション
見つける
1 水上に出かける
2 アートで掘り起こす
3 川からまちを巡る
伝える
4 ムーブメントをおこす
5 物語を届ける
6 シンボルをつくる
設える
7 居場所にする
8 光で演出する
9 水際をデザインする
育てる
10 プロセスを踏まえる
11 ルールを共有する
12 スキームを活用する
広げる
13 境界をまたぐ
14 マネジメントの仕組みをつくる
15 水辺から計画する
chapter3 水都大阪の水辺ブランディング
0 STAGE 川を使いこなしていた都市から川に背を向ける都市へ
1 STAGE 水都大阪のスタート
2 STAGE 水都大阪2009で行政・企業・市民が一体に
3 STAGE 民間ディレクターチーム発足、市民参加推進
4 STAGE 新たな民間推進組織設立、イベントから日常へ
chapter 4 水辺が変わればまちが変わる
この本は、我々と同じく、これから水辺を自分たちの暮らしの中に取り戻したい、そして水辺から都市をワクワクするものに変えていきたいという実践者の方々に届けたい。
都市における川は人間でいう循環器のようなもので、都市の健康状態が表れる部分ではないだろうか。市民自らが使いこなし愛着を持てば、いきいきした風景が表れ、都市のイメージを左右するくらいの効果が生まれる、とても可能性のある場所だ、と最近つくづく思う。
水辺のアクションに関わるきっかけとなったのは、2002年、都市大阪創生研究会という研究会に参加し、「リバーカフェ」という川に浮かぶレストランを設置運営した体験だった。その過程で、川や船の素人である我々はかっこいい遊び好きなオヤジたちに出会う。川沿いの彼らの基地には立場を超えて官民の面白い人が集まり、この企画を実現させようと試行錯誤して下さった。本当に感謝すると同時に、この時、自分の暮らすまち大阪で、もっと身近な水辺やまちを仲間と面白くしたい!やりたい人を応援できるプラットフォームをつくりたい!と強く誓ったのを覚えている。その後の水都大阪の一連の動きはまさに、アイディアを持ち実現する人に任せて応援し、都市全体に広げる枠組みづくりであった。
公共は個からはじまる、大きなマスタープランありきでは動かない。
個々の人の顔が見える、その思いや事業成果が共感を呼び公共になる。
この数年、大阪での実践や他都市の実践者との交流の中で、従来型のビジョン⇒設計⇒工事⇒運営管理という一方通行でぶつ切りのプロセスの限界を超える複合的なアプローチの必要性を再認識した。それらの実践者のみなさまに執筆していただいた本書から、生きた働きかけの視点が見えてくる。水辺から都市へ、楽しみながら動いていこう!
平成27年9月 泉 英明
この本の出版に至る水辺のゲリラ活動や水都大阪に尽力されてきた皆様に感謝します。
リバーカフェの実現や水辺や船の遊びを教えていただいた山崎勇佑さん、伴一郎さん、まちへの働きかけを学んだ都市大阪創生研究会の鳴海邦碩先生やメンバーの皆さま、ご来光カフェ・北浜テラスなどのプロジェクトをともに妄想し実現させたNPO仲間や山西輝和さん山根秀宣さんはじめ建物オーナーの皆さま、水都大阪全体の大枠をつくられた先生や府市経済界の方々、水都大阪2009実行委員会の室井明事務局長や皆さま、2011年~ディレクターチームとして若手に任せる体制をつくられた先生や府市経済界の皆さま、ディレクターや協力事務所の方々、市民が市民をもてなすサポーターレポーターの皆さま、アートで都市を使いこなすおおさかカンヴァスの皆さま、大型から小型船までの舟運事業者の皆さま、長町志穂さんなど照明デザインや設備設計の皆さま、水都大阪パートナーズの仕組みを生み出し調整し実現させた皆さま、仕事を辞めてパートナーズの代表になる決断をされた高梨日出夫さん、推進会議の事務局で様々な調整やPJ支援をされた大阪商工会議所の中野亮一さん、パートナーズと二人三脚のオーソリティの府市の皆さま、各管理者の皆さま、多大な応援をいただいている経済界企業の皆さま、中之島公園・中之島漁港・道頓堀をはじめ17水辺拠点の事業者や管理者のみなさま、藤井政人さんなど全国の水辺アクションをつなぐミズベリングの皆さま、全国各都市の水辺活動家の仲間の皆さん、パートナーズのメンバーの皆さま、1年を超える長丁場で編集に付き合っていただいた学芸出版社の中木保代さん。ありがとうございます!
評:紫牟田 伸子 氏
(編集者、デザインプロデューサー)
魅力的な都市の個性を考えるために
本書は「水辺を使い倒そう!」という人のためのガイドブックである。海に囲まれ山から流れる水の豊かな日本において、水辺はもっと豊かでワクワクするものなのではないか。いや、絶対そうだ。それなら、真正面から水辺を楽しむアクションに取り組んでみようという人に最適の書である。実を言えば、国交省は水辺をもっと利活用できないかと、2004年に「河川敷地専用許可準則の特例措置」を出し、社会実験としてカフェテラスやイベントなどの利用を可能にした。さらに2011年、準則改正により特例が一般化され、河川敷地でも民間営業が可能になった。つまり、公共空間として積極的に利用できるようになったのだ。
しかし、法が変わったといっても、「じゃあ、どうする?」「でもね、どこに話せばいいの?」といった困惑がまだまだ多いのが現状だ。そこで本書の出番である。ここでは、水辺の楽しさを見つける→伝える→設える→育てる→広げる→成果をはかると順序だてて取り組み方を説明してくれる。
中でももっとも重要なのは、水辺のマネジメントの部分が詳述されているところだと思う。管理者-使用者という単純な対立項で捉えるのではなく、多様なステークホルダーが連携して水辺を周辺のまちづくり、雇用の創出、管理、イベント実施などといった多様な役割を担うものとしての水辺のスキームづくりとして、質の高いエリアマネジメント組織をいかにつくるか。ここに「楽しむアクションを誘発する」仕組みが生み出される。
本書ではパリやセビージャ、サンアントニオをはじめとする国内外の取り組みが紹介されているが、なんといっても2001年から始まった「水都大阪」は、足掛け15年の間、ありとあらゆる角度から水辺にアクションを仕掛けている。その足取りがまとめられているのが嬉しい。
水辺は魅力的だ。ビールもうまい。水辺の魅力は都市によって異なる。だからこそ、さまざまなアクションが都市の個性を生み出す。魅力的な都市を考えるとき、水辺を再考することは日本の都市には不可欠だろう。
担当編集者より
いま、水辺でさまざまな動きが起きている。制度や権利関係が複雑で手を出しにくかった水辺に対し、地道にアクションを重ねてきた人たちの努力により、心地よく楽しい空間が各地に繰り広げられてきた。
オール大阪で都市を盛り上げてきた「水都大阪」をはじめ、パリやシンガポールといった海外の水辺の使いこなし方まで「こんなこともできるんだ!」という驚きに満ちている。それぞれの地域で実践するにあたって参考にできる話も多い水先案内本である。
(中木)