オールシーズン美しい庭

オールシーズン美しい庭 ピートとヘンクの夢の宿根草図鑑
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内容紹介

世界的造園家が厳選した宿根草と組合せの手法

ニューヨークの空中庭園「ハイライン」などを手がけ、「植物の魔術師」とも呼ばれるピート・アウドルフと、生涯「庭の自然性」を探求したヘンク・ヘリッツェン。宿根草の魅力に注目し、植栽デザインに新しい流れを作り出した世界的ガーデンデザイナーが贈る、一年中美しい庭を叶える植物とその組合せの手法。待望の日本版。


ピート・アウドルフ(Piet Oudolf) 著 ヘンク・ヘリッツェン(Henk Gerritsen) 著 田辺 沙知 訳
著者紹介

体裁B5変判・288頁(オールカラー)

定価本体4200円+税

発行日2023-11-05

装丁加藤賢策(LABORATORIES)

ISBN9784761540999

GCODE2336

在庫◎
目次著者紹介あとがきレクチャー動画関連イベント関連ニュース

はじめに

PART Ⅰ 植物の紹介

宿根草  一年をとおして表情を変える草花
オーナメンタルグラス  庭にナチュラルな印象を与えるグラス

PART Ⅱ 植物の使い方

序章
灼熱  日差しと乾燥に強い植物
蒼翠  半日陰で瑞々しく育つ植物
軽快  軽やかで透け感のある植物
静謐  庭に安らぎを生む植物
躍動  庭にエネルギーを与える植物
銀色  色をテーマに庭を彩る
草深  風にそよぐオーナメンタルグラス
憂鬱? 草紅葉と冬のシルエットを楽しむ
秋麗  情趣溢れる秋の植物
骨格  モノクロの世界で映える植物
点在  自然なリズムとアクセントを生む植物
個性  特別な性質をもつ植物

PART Ⅲ 植栽図と植物の組み合わせ

植栽図
相性の良いご近所さん
植物の植栽密度

植物名の索引
世界のナーサリー
参考文献
おわりに  日本語版によせて

著者

ピート・アウドルフ(Piet Oudolf)

1944年生まれ。オランダを代表するガーデン・デザイナー、プランツマン、著作家。
現代の園芸界・ランドスケープデザインの分野において最も革新的な人物の一人として知られている。妻のアンニャとともに、ランドスケープ&ガーデンデザインのスタジオと、苗生産のナーサリーを営む(現在はデザインスタジオのみ)。宿根草を主体としたナチュラリスティックなアプローチが特徴で、建築デザインや自然風景などからインスピレーションを受け、花色や鮮やかな彩り以上に、植物の骨格や草姿、シードヘッドなど、四季を通して美しい庭づくりと、信頼性の高い植栽に着目する。
代表作(プロジェクト)には、ニューヨークのハイライン、シカゴのルーリーガーデン、イギリスのサマセットにあるハウザー&ワースギャラリーのアウドルフ・フィールドなどがある。

ヘンク・ヘリッツェン(Henk Gerritsen)

1948年生まれ。オランダ人のプランツマン、ガーデンデザイナー、環境活動家、著作家。
1977年にオランダの女性造園家として当時から有名だったガーデンアーキテクト、ミーン・ルイスに出会い、野草を用いた植栽プロジェクトに多数携わる。1978年には、パートナーのアントン・シュレパーズの家族が所有するオランダ東部にある農地を利用して、プリオナ・ガーデンズの植栽デザインに取り掛かる。1983年にピートと出会い、即座に意気投合。盟友の仲となる。1986年にはスクイネスロートに永住し、一般の人も訪問できるオープンガーデンとしてプリオナ・ガーデンズを公開。庭を生きがいとし、生涯「庭の自然性」を探求しながら、2008年の自身の死まで庭に手をかけ続けた。

編著者

ノエル・キングスベリー(Noel Kingsbury)

ガーデニング、植栽デザインに造詣が深いガーデンライター、ガーデンデザイナー、教育者、イノベーター。
1994年に発行された著書New Perennial Gardenをきっかけに、現在注目される「ナチュラリスティック・プランティング・デザイン」が欧米で広まる。2007年には同テーマを題材に、シェフィールド大学ランドスケープ学科にて研究博士取得。これまでに園芸関連の書籍を25冊執筆し、うち4冊がピートととの共著。現在はガーデンデザイナーのアニー・ギルフォイルとともに多様なワークショップを開催するGarden Masterclassを主催。

訳者

田辺 沙知(Sachi Tanabe)

北海道在住のランドスケープデザイナー。
幼少期より海外で育ち、植物生態学、ランドスケープデザインを学び、株式会社イコロの森に勤務。現在は、これまでの経験や受けた影響をもとにした野趣ある庭づくりとともに、専門知識を活かしたオンライン講習や翻訳にも携わる。

日本語版によせて

初版が出版されて以来、本書は宿根草を使った庭づくりの世界的な発展に大きく貢献してきた。ここに紹介した植物のほとんどは日本でも育つため、今回の出版を喜ばしく思う。
宿根草は、ときにガーデナーやランドスケープデザイナーを混乱させることがある。種類の豊富さはもちろんのこと、庭を長期的に楽しむための植物選びをするうえで、重要な植物のカテゴリー分けが難しいからだ。
本書では、科学的・システマチックとは呼べないかもしれないが、植物の多様性を体現し、植物を育てる人の理解に役立つようなグループ分けに著者たちは挑戦している。「静謐(Tranquility)」や「銀色(Silvery)」といった各章のタイトルは、植物について考えるとき、私たちはクリエイティブな発想を持つべきだということを直接語りかけてくる。たとえ主観的であっても、このような言葉は植物の使いみちや組み合わせについて考えるうえで、良いきっかけとなる。

庭づくりに励む人や植物愛好家は、必然的に庭植物の材料として自生するフロラ(植物相)に目を向けるようになってきている。その理由の一つとして、動物相(特に昆虫)と植物の密接なつながりが明らかになっていることが挙げられる。また、人々が自然の美しさをあらゆる場面で見出すようになり、植栽デザインに取り入れたいと考えるようになったことも理由の一つだろう。
日本のフロラは、じつは宿根草ガーデンの大部分を構成するヨーロッパや北アメリカのフロラに近しい。読者の皆さんはきっと、国内の森林や林縁、崖の上といった自然環境で、本書で取り上げたものと似た植物に遭遇するだろう。近縁種でなくても、似たようなフォルムや骨格、質感、個性をもつものをたくさん発見していくはずだ。

本書のPARTⅠでは、そういった植物の特性を掘り下げてきたが、PARTⅡではそれらの組み合わせ方を導いてくれている。実際にピートは植物を組み合わせることを生業にし、ときにはニューヨークのハイラインやドイツのヴィトラ・キャンパスといった、世間の注目を集める大規模なプロジェクトを通してキャリアを成功させている。彼の作品は、原種や品種を小さなグループで組み合わせ、タペストリーのような効果を生むことに特徴づけられる。

植栽デザイナーとしてのピートの仕事は、「自然主義的」や「生態学的」と表現される宿根草を扱った(近年では樹木も見直されている)幅広い作品の一部である。独特な植栽手法であり、自然の中で育つ植物のふるまいに見習って、植物同士を組み合わせたり調和させたりすることを追い求める。さらには自然・半自然環境に変化をもたらす過程を取り入れたダイナミックな植栽をデザインすることを目指している。
これは、植物群落の生態学的関係の入念な研究に基づいているが、根底にある審美眼は、この本や彼の他の著書でも触れる植物への理解に根ざしていることは間違いない。

ピートをはじめ、この分野の著名なデザイナーたちの作品に見られるとても直感的な植物の配置や、自然風な植栽の中に目を引く植物をバランス良く分布させるテクニックは、日本の読者の皆さんにも特に関心があるところだろうと想像する。伝統的な日本庭園における石の配置の美学と類似点や共通点があるに違いない。このような気づきや根底にある考え方を応用しながら、庭づくりに挑戦してみてほしい。
ピート・アウドルフの作品が新たな読者の皆さんに届き、欧米と日本のガーデン文化を融合させるような考えを持つ、新たな世代のプランティング・デザイナーのインスピレーションになることを切に願っている。将来がじつに楽しみだ。

ノエル・キングスベリー

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