松岡 聡・田村裕希 著

内容紹介

80余りの名作建築を広大な敷地周辺と共に、木の葉や屋根の表情まで微細に再現した図集。敷地周辺図に占める建物図の割合を0.1%から50%へ徐々にズームアップし、地形図から詳細な間取りへと見せ所を変えながら、建物と敷地の関係を多様な広がりで捉え直した。見方のヒントとなる課題を解きながら新たな発想を得るワークブック。

体 裁 B5変・256頁・定価 本体3600円+税
ISBN 978-4-7615-3201-7
発行日 2013/02/01
装 丁 刈谷 悠三

目次著者紹介まえがきあとがきサンプルページ推薦文イベント

ZOOM 1| 点として見る| as a dot

01 サマーハウス

コエ・タロ[夏の家]/アルヴァー・アールト
夏の家グンナー・アスプルンド
サマーハウス・フェイレン・ステュアート邸/ヘリット・トーマス・リートフェルト

02 川

ファンズワース邸/ミース・ファン・デル・ローエ
フィッシャー邸/ルイス・カーン

03 カモフラージュ

サン・クルーの週末住宅/ル・コルビュジエ
イームズ・ハウス/チャールズ&レイ・イームズ

04 付属室

カップ・マルタンの休暇小屋/ル・コルビュジエ
シュレーダー邸/ヘリット・トーマス・リートフェルト

05 仮設

エスプリ・ヌーボー館/ル・コルビュジエ
ソンスベーク彫刻パヴィリオン、アルンハイム・パヴィリオン/ヘリット・トーマス・リートフェルト/アルド・ファン・アイク

06 パヴィリオン

ガラスの家/フィリップ・ジョンソン

ZOOM 2|自然の一部として見る| as a part of nature

07 ブリッジ

ブリッジハウス/アマンシオ・ウィリアムズ
ヴェネツィアの会議場計画案/ルイス・カーン

08 アクシス

バングラデシュ国会議事堂/ルイス・カーン
モティ・マスジド[パール・モスク]/─

09 小屋

ユダヤ・コミュニティー・センターバスハウス+デイキャンプ/ルイス・カーン

10 眺望

キャン・リス/ヨーン・ウッツォン
母の家[小さな家]/ル・コルビュジエ
ベラヴィスタ集合住宅+スーホルムⅠ・Ⅱ・Ⅲ/アルネ・ヤコブセン

11 稜線

ストックホルム市立図書館/グンナー・アスプルンド
吉備津神社/─

12 バッファー

アロットメント・ガーデン/カール・テオドル・ソーレンセン
ザ・エーカーズ/フランク・ロイド・ライト

ZOOM 3| 要素をとり出して見る|mapping the element

13 主室

コムロンガン城/─
ペンシルバニア大学リチャーズ医学研究棟/ルイス・カーン

14 柱

マイレア邸/アルヴァー・アールト
サヴォア邸/ル・コルビュジエ

15 壁

ロンシャンの教会/ル・コルビュジエ
フィリップ・エクセター・アカデミー図書館/ルイス・カーン

16 ピロティ

リナ・ボ・バルディ邸/リナ・ボ・バルディ
バカルディ・オフィス・ビル/ミース・ファン・デル・ローエ

17 テラス

落水荘/フランク・ロイド・ライト
シュミンケ邸/ハンス・シャロウン

18 床

ソーク生物学研究所/ルイス・カーン
ヴェネツィアの病院計画案/ル・コルビュジエ

19 天井

ヴォクセニスカの教会/アルヴァー・アールト
バウスヴェア教会/ヨーン・ウッツォン

20 屋根

キンベル美術館/ルイス・カーン
テキスタイル工場 デ・プルッフ/ヘリット・トーマス・リートフェルト

21 トップライト

ヴェネツィア・ビエンナーレオランダ館/ヘリット・トーマス・リートフェルト
ファーストユニタリアン教会/ルイス・カーン
ブリンモア大学エルドマン・ホール/ルイス・カーン

ZOOM 4| 都市の配置を見つける| nature of city

22 袋地

ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸/ル・コルビュジエ
オープン・エア・スクール/ヨハネス・ダウカー

23 ニッチ

サント・スピリト聖堂/フィリッポ・ブルネレスキ
ドゥカーレ広場/─

24 ロット

バーバンク・ヴィレッジ/ウィリアム・タンブル
サントップ・ホームズ/フランク・ロイド・ライト

25 人工池

桂離宮庭園/─

ディア・カンパニー本社/エーロ・サーリネン

26 ブロック

サグラダ・ファミリア贖罪聖堂/アントニオ・ガウディ
シーグラム・ビル/ミース・ファン・デル・ローエ

27 角地

カサ・ミラ/アントニオ・ガウディ
フリードリヒ通り駅前高層建築案/ミース・ファン・デル・ローエ

28 展示場

ヴァイセンホーフ・ジードルンク/ミース・ファン・デル・ローエ+リヒャルト・デッカー

29 パーキング

ジョンソン・ワックス本社/フランク・ロイド・ライト

30 ガレリア

ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガレリア/ジュゼッペ・メンゴーニ

ZOOM 5| 関係のルールを見いだす| form of relations

31 フェイジング

森の墓地/グンナー・アスプルンド

32 クラスター

シーランチ・コンドミニアム/MLTW
キンゴー・ハウス/ヨーン・ウッツォン
フレデンスボーのテラスハウス/ヨーン・ウッツォン

33 モデュール

ムンケゴー小学校/アルネ・ヤコブセン
インド経営大学/ルイス・カーン

34 増築

コルドバの大モスク[メスキータ]/─
ルイジアナ近代美術館/ヨーン・ボウ
桂離宮書院/─

35 ピボット

ヴィラ・アドリアーナ/─
パイミオのサナトリウム/アルヴァー・アールト
ミクヴェ・イスラエル・シナゴーグ計画案/ルイス・カーン

36 中庭

ル・トロネ修道院/─
フォートウェインの舞台芸術劇場案/ルイス・カーン
オコティラ・デザート・キャンプ/フランク・ロイド・ライト

37 マスタープラン

イリノイ工科大学キャンパスのマスタープラン/ミース・ファン・デル・ローエ

ZOOM 6|境界を見分ける| boundary

38 基壇

新国立ギャラリー/ミース・ファン・デル・ローエ
エコノミストビル/アリソン&ピーター・スミッソン

39 切土・盛土

ムーンレイカー・アスレティック・センター/MLTW+ローレンス・ハルプリン
二条城/─

40 塀

バワ邸/ジェフリー・バワ
サン・クリストバル/ルイス・バラガン

41 生垣

ミラー邸/エーロ・サーリネン+ダン・カイリー
スーホルムⅠの庭園/アルネ・ヤコブセン
キングス・ロードの自邸/ルドルフ・シンドラー

42 庇

ソーレンセン自邸/エリック・クリスチャン・ソーレンセン
カウフマン邸/リチャード・ノイトラ

43 家具

バルセロナ・パヴィリオン/ミース・ファン・デル・ローエ
フィン・ユール自邸/フィン・ユール

44 中心

ベルリン・フィルハーモニック・コンサート・ホール/ハンス・シャロウン
ストックホルム市立図書館/グンナー・アスプルンド

松岡聡(まつおか さとし)

1973年愛知県生まれ。
1997年京都大学卒業、2000年東京大学大学院修了、2001年コロンビア大学大学院修了後、UN Studio、MVRDV、SANAAを経て2005年松岡聡田村裕希を共同設立。現在、近畿大学准教授。

田村裕希(たむら ゆうき)

1977年東京都生まれ。
2000年日本大学卒業、2004年東京芸術大学大学院修了後、SANAAを経て、2005年松岡聡田村裕希を共同設立。

この本は、建築物をさまざまな広がりの配置図の中でとらえ直すものです。

建築の分野では、配置という言葉が、いたるところで使われます。建物の敷地内での配置や、敷地のコンテクスト(敷地の配置)も含んだ建物の配置、また、一つの建物内部の空間単位や柱や窓等の構成要素の配置まで、建築では、ほとんどが配置の問題と言ってもいいかもしれません。すべてが配置であると言うと急にとらえがたく、厄介な問題のように思えてきますが、実際に配置図を見てみれば、少しはとりつく島があるように感じます。

配置図には限界がありません。平面図や断面図は建てようとする対象の建物を描きますが、配置図は周囲をどこまで描くかは定まっていません。ある建物が関係する(と思われる)範囲や、敷地や地域が関係する範囲、または、それらがもはや周囲と関係していないことが分かる範囲までを示そうと考えると、そのズーミングには際限がありません。

対象の建物をとりかこむ周辺をどこまで描くかについては、配置図を描く設計者の配慮に任されています。配慮、気配り、目配り、配意…「配」という字はそういう意味を含んでいることに気づきます。周囲のものの存在を認めて、それらとの関係の中で、みずからを定位し、関係を築こうと試みることが配置するという行為です。

この配置図集は、際限のないズーミングをなんとか暫定的に定め、その中に建築における新しい関係の多様性を提示しようとするものです。

本書の使い方|How to use

[平面図兼配置図]

この本の中では、ほぼすべての配置図は「平面図兼配置図」と表記されます。平面図で描かれているのが対象とする建物で、それ以外の建物が配置図、つまり屋根伏図の集合として描かれています。

[作品のならび方]

ズーミングの順に作品はならんでいます。またそれぞれのズーミングによって認知できる事象をキーワードで表現して、いくつかの建築作品をまとめました。建物を上空のかなたから引いて見ている状態から、だんだんと近づいて寄っていくように、ズームインしながら順序どおり読むことも、あるいは逆に最後からズームアウトしながら読んでも楽しめるでしょう。

[解説と問い]

配置図の見方のヒントになる問いを設けています。漠然と眺めているだけでもさまざまな発見がありますが、問いに導かれて初めて気づく見方もあるはずです。また、配置図では十分にわからなかったり、表現しきれない部分を解説ページで示しています。
なお、問いの答えは1つではありません。<www.haichizu.org>に投稿されたさまざまな意見や関係図書へのリンクを参考にして自分だけの答えを見つけてください。

設計のためのワークブックとして、「引いて見る」というテーマにしぼって、その引き方の遠近だけで1冊の本をつくろうと考えたのは、有名な建物の周囲に広がるさまざまな世界に対する素朴な興味がきっかけでした。描きはじめて見ると、熱狂のうちに訪れた印象の強い建築物であっても、配置図のなかでは、設計の瞬間に立ち会うような少し「引いた」感覚を覚えることが何度もありました。

私たちが選び出した建築物をあらためて概観してみると、実施に至らなかったり、仮設であったものを除いて、ほとんどが今も残っています。建築が短命になってきていることを思い知らされていたなかで、少し意外なことでした。

配置図に描いた周囲の状況は、まさに現在のものです。場所によっては大きく様変わりした環境にあっても、これらの建物は朽ちるどころか、今でも、また、現在なおさら、際立った存在として、はるか上空に向けてその配置の妙を示しています。

時間をかけて土地固有の配置のかたちを現している集落を、この本の対象にするかどうか、途中、迷いましたが、結果的にとりあげなかったのは、純粋な関心を含めて、設計者が一つの建物を環境のなかに置くという行為の中で、何をしようとしたのかということを、一人称のリアルな問題として共感することが、「配置」が含意する他者への意識を浮かびあがらせてくれると考えたからです。

ここに、いってみたい。 この建物を、正面から見てみたい。 そんな気持ちになってくる。 専門書だけれど、いろんなふうにたのしめる本だと思う。 建築学、建築史、人の営みの歴史、そして、名だたる建築を俯瞰する、壮大な旅の指南書としても。作家・角田光代さん