建築製図 基本の基本
この書籍には後継版があります
『改訂版 建築製図 基本の基本』
内容紹介
初めて建築製図を学ぶ人のテキスト。縮尺1/100図面を1/50の大きさで描くことで、基本となる描き方やルールがしっかり身につく。各種図面は作図手順を丁寧に示し、他図面と関連付けて解説することで、理解しながら図面が描ける。屋根、開口部は特に丁寧に説明して、演習課題も随所に入れることで作図力アップも目指した。
体 裁 A4変・128頁・定価 本体3200円+税
ISBN 978-4-7615-3189-8
発行日 2010/11/30
装 丁 KOTO DESIGN Inc.
1 建築製図の基本
(1)製図用具
(2)製図用具の使い方と線の描き方
(3)製図のルール
(4)図面の種類
課題1線の練習
課題2文字の練習
2 立体の理解
(1)正投影図(平面図(屋根伏図)、立面図)
(2)等角図(アイソメトリック)・不等角図(アクソノメトリック)・キャビネット図
(3)展開図
課題1等角図(アイソメトリック)
課題2正投影図
課題3展開図
課題4不等角図(アクソノメトリック)
3 木造平家建図面の描き方
(1)平面図
平面図練習シート
(2)屋根形状の種類と表現
(3)L字平面の屋根伏図と立面図の関係
(4)開口部表示における平面図・断面図・立面図の関係
(5)断面図
(6)立面図
(7)配置図
(8)配置図兼平面図・屋根伏図・断面図・立面図
(9)矩計図
写真を見ながら矩計図を理解しよう(軒先まわり)
(10)基礎伏図
(11)床伏図
(12)小屋伏図
(13)軸組図
(14)平面詳細図・部分詳細図
(15)階段の寸法と種類
(16)通し柱と管柱
木造2階建住宅
4 鉄筋コンクリート造図面の描き方
(1)平面図
(2)断面図
(3)立面図〈南立面図〉
(4)立面図〈東立面図、北立面図〉
付録
(1)設計データ
(2)建築物の面積の求め方と建ぺい率・容積率
面積算定の例題
(3)模型製作
わたしが「建築製図」の勉強を始めたのは、大学1年生のときでした。大学でだされた最初の製図課題は、大学内に実際に建っている学生会館の図面をそのまま模写するというもので、手描きで非常に読み取りにくい図面だったと思います。
それまでに線や文字の練習をはじめ、図面の描き方やルールなど、一切教わらない状態で、いきなりその図面を渡され、どこから描いていいのか、どうやって描いていいのか、まったくわからず困惑していたことを記憶しています。
結局、本屋さんに行って、「建築製図の基礎〇〇」などという類の入門書を購入し、独学で勉強し、その課題をなんとか仕上げたような気がします。大学は高校までと違って、先生からいろいろ教わるのではなく、先生が教えてくれないことも自分で調べて自分で学ぶという気持ちがなければ落第すると痛感したものです。
それから数年後、わたしは工業高校の建築科の教師になりました。そこで初めて、今までに見たことのない丁寧な建築教育に触れることになります。教科書も初心者にわかりやすく、授業も基礎をしっかり積み上げていく内容で、うらやましく思えたくらいです。しかし、中学を卒業したばかりの高校生には、それでもまだ難しい内容であるということがわかってきました。特に、今まで正確に線を描いたことのない生徒にとっては、建築製図の細かくて接近した線を、太さや線種を使い分けて正確に描くことは至難の業です。
夢を抱いて「建築」の世界に飛び込んできた人が夢半ばにして挫折してしまうのは、製図の緻密さに嫌気がさしてしまうのがほとんどのように思えます。
そこで、本書は緻密な建築図面をいきなりまともに描くのではなく、実際の縮尺よりも大きくして描くことで、基礎をしっかり固めながら、正確にそのコツを身につけることができる仕掛けになっています。
本書の特徴は以下のとおりです。
①本来、縮尺1/100で描く図面を倍の1/50で描くことにより、図面の描き方やルールをしっかり身につけることができる。
②各種図面について、丁寧な作図手順を示すことで、理解しながら図面が描けるようになる。
③各種図面は、それぞれ他の図面と関連付けながら作図できるようになっている。
④「屋根」「開口部」は特に理解しにくいので、解説がより丁寧になっている。
⑤演習課題を随所に入れ、作図練習ができる。
(必要に応じて本書をコピーして使いましょう)
ぜひ、最初から最後まで、一通り目を通されたあと、すべての演習課題に取組んでみてください。必ず力がつくと思います。
本書は初めて「建築製図」を学ぶすべての人に贈ります。本書で勉強して、建築を好きになってください。
2010年11月 櫻井 良明
何となく自己流に「写図(模写)」することにより読図し表現する技術を会得して来た人たちが、建築士の資格取得の講習会に参加して初めて「図面の描き方(ルール)」を意識し、納得いかない部分があっても資格取得のためのテクニックとして、深く考えることなく通り過ぎてきた部分であろう。
しかし、筆者は自己の指導経験から縮尺1/100で描く図面を同じ表現で1/50で描く(拡大して描く)ことにより、図面の描き方やルールを身につけるという独特の視点で編しており「建築製図」を学ぶためのまさしく入門書として活用できるものとなっている。
また、筆者は工業高校の教員として設計製図の指導実績を持ち、特に各種「設計競技(設計コンペ)」では毎年多くの入賞者を排出させている指導者である。初めて「建築」を学ぼうと夢を抱いて来る若者達が、「製図」の緻密さに嫌気がさし夢半ばにして挫折してしまう現状を少しでも改善し、「わかる」ことの楽しさを伝えようと教材開発に苦心されている様子がうかがえる。
矩計図と施工実例写真を並記して説明している頁は、線1本の意味をしっかりと理解することが大切であるとの筆者の思いが伝わってくる。同様に、2色使いによる作図手順(描順)の指示を全ての箇所に数値を示し、「解らない!」と投げ出しそうになる気持ちを助けてくれる構成は筆者の建築を志す若者たちへの優しさの現れであろう。
特に、「木造図面の描き方」の章においては、平面図と立面図の関係や平面図と断面図の関係、さらには各種伏図に至るまで丁寧な作図手順を示し、理解しながら図面が描けるよう工夫され、特に「屋根」と「開口部」に関してとても丁寧に解説されている。
本書は、まさにタイトルの通り建築製図を学ぶ(指導する)上での基本の基本を示した書である。
(千葉県立東総工業高等学校/小島 聡)
「1本の線に、どんな意味があるのか! 建築製図を学ぶ学生にぜひ教えたい」。現場で指導にあたる先生方から、たびたびお聞きする声です。そんな声にピタリとはまる製図テキストが本書です。
図面のなかでそれぞれの線は何を指し示しているのか、関連付けて、スケールも拡大して説明しています。
著者が、教育現場で幾年もかけて試行錯誤し、そして効果をあげてきた成果を、ぜひ皆様もご利用ください。
(MY)