名建築のデザインに学ぶ製図の基礎


垣田博之 著

内容紹介

ル・コルビュジエの小さな家で学ぶ製図教本

建築の初学者が、建築製図と模型製作の基礎を身につけるために必要な知識とスキルを、歴史に残る名建築で学べる教科書。ル・コルビュジエのRC造住宅「小さな家」、槇文彦の傑作複合施設「代官山ヒルサイドテラス第1期」、緑豊かな入江にたたずむE・G・アスプルンドの「夏の家」を題材にしている。写真資料も数多く掲載。

体 裁 A4変・96頁・定価 本体3000円+税
ISBN 978-4-7615-3273-4
発行日 2021-07-31
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史


目次著者紹介まえがき採用特典教材

目次
まえがき

第1章 製図用具と製図の方法

製図用具
線の引き方の要点
建築製図の文字
建築製図の線
図面表現
カップマルタンの休暇小屋(設計:ル・コルビュジエ)

第2章 小さな家(設計:ル・コルビュジエ)

作品解説
配置図・1階平面図
1:基準線、壁、開口部の順に下描き
2:壁
3:建具
4:階段、設備機器、造付家具、上部要素
5:家具、外構
6:記号、寸法、文字
2階平面図
1:基準線、壁、開口部の順に下描き
2:壁
3:建具
4:階段、見えがかり要素、造付家具、上部要素
5:家具、外構
6:記号、寸法、文字
小さな家(写真)
東西断面図
1:基準線、地盤、床、屋根、壁、開口部の順に下描き
2:地盤、床、屋根、壁
3:建具、見えがかり要素、家具、 外構の順に下描き、仕上げ
4:記号、寸法、文字
断面図 ・立面図
断面図・立面図1
断面図・立面図2

第3章 模型製作:小さな家

建築模型について
模型製作の用具
模型製作の材料
模型製作の詳細
模型写真の撮影

第4章 ヒルサイドテラス第1期(設計:槇 文彦)

作品解説
配置図・1階平面図
2階平面図
東西断面図
北立面図

第5章 夏の家(設計:エーリック・グンナール・アスプルンド)

作品解説
配置図
平面図
断面図
西立面図

巻末折図

小さな家 配置図・1階平面図、2階平面図、断面図・立面図 1、断面図・立面図 2、
(手描き )配置図・1階平面図、(手描き) 断面図・立面図1
ヒルサイドテラス第1期 配置図・1階平面図、2階平面図、東西断面図、北立面図

垣田 博之

近畿大学建築学部准教授。1968年生まれ。京都大学工学部化学工学科を経て、建築学科へ転科し、卒業(卒業設計賞受賞)、パリ、ラ・ヴィレット建築学校(文部省給費交換留学生)を経て、京都大学大学院修了、竹中工務店設計部を経て現職。垣田博之建築設計事務所主宰。第3回日本建築設計学会賞、2019年AACA賞優秀賞、日本建築学会作品選集(2001、2003、2008、2009年)他受賞。2021年大阪建築コンクール大阪府知事賞。

本書は、大学の建築学科1年生が、建築製図と模型製作の基礎を身につけるために必要な知識とスキルを学べる教科書として書かれています。建築製図は、製図の方法やルールを学ぶ、いわば語学を学び始めるときに文法や発音を身につけるような地道な学びです。その一方で、歴史に残る名建築は、その図面の中に建築作品のさまざまな生き生きした工夫が散りばめられており、それをトレースしたり、模型を製作したりすることは、それらの素晴らしさに触れる、発見に満ちた経験とも言えます。

ここに取り上げた建築作品は、いずれも建築家が自分自身で住む家であったり、住み手が建築家の親族であったり、あるいは建築家とクライアントが一緒になり、長年にわたって思いを共有してつくりあげていったものであったりします。

建築作品は、建築家の論理的な思考と、住人や利用者の生き生きした体験への洞察の中で構想され、さまざまな工夫が、空間構成や家具の選定や配置まで作り上げられていくものです。これらの作品には、建築家が自分や自分に近い人のために設計しているために、繊細な心配りや、ほほえましい工夫が随所に見られます。それらの工夫を知り、味わってもらうために、それぞれの建築家がデザインしたり選び抜いたりした家具や照明の配置も図面に表現しました。

また、敷地がそれぞれに魅力的であって、その魅力が設計に生かされていることも特長です。それらの敷地の魅力がどのように建築の配置や構成に生かされているのかも、読み取れるような図面とすることにも留意しています。

それらのねらいを実現するには図面にある程度の大きさが必要でした。また、製図は小さくてもA3の製図用紙で行われることが多いことを考えると、 図面の大きさはA3であることが望ましいと考えられます。一方、教科書は、学生のみなさんが鞄に入れて大学と自宅の間を頻繁に移動する必要から、あまり大判にすると不便であるという宿命を持ちます。それを両立するために、本の綴じ方を工夫し、各ページをできる限りフラットに開きやすくし、一部の図面を折り込みとしました。これによって、住宅作品が多かった今までの建築製図の教科書にはほとんど取り上げられてこなかった中規模の建築作品、本書では、ヒルサイドテラス第1期を掲載することができました。

各作品の敷地環境も含めた魅力をできるだけ味わいながら製図や模型製作をしてほしいという想いから、写真を多く掲載したことも本書の特長です。著者自身がスイス、レマン湖畔に、小さな家を訪ねたり、あらためて代官山にヒルサイドテラスを訪れることは、新たな発見に満ちた楽しい旅でした。素晴らしい名建築は、訪れる度に発見があると言われますが、そのときのいきいきした感覚をみなさんにも共有してもらうために、著者自身が撮影した写真を中心に掲載しています。そのために、レマン湖畔は、曇りの日で光に満ちた建築写真ではありません。しかし、当日の刻々と変化する天候が内部空間に反映する様子は圧巻で、この建築作品の凄さを感じることができる体験でした。ヒルサイドテラス第1期は、夏の緑に包まれて、ファサードの一部は緑に隠れた写真になっています。このことが豊かな街路樹や、隣接する奥の庭園の緑豊かな環境を生かしたこの建築作品の特質を感じさせるとも言えます。

建築設計においては、CADによる製図が主流になり、大学教育の中でもCADやCGを使うことが年々進んでいます。しかし、図面表現の方法や、線種の使い分け、さらに図面に表現された空間構成の読み取りなどを学ぶのに、自分の手で図面を引くことに勝る方法はなく、そこで学んだ内容をCADでの製図に生かすことができるという意味でも、建築教育の中で占める重要性は失われることはないと考えます。また、CAD、CGの発達によって、模型は作られなくなるのではないかと言われていた時期がありました。実際には、我々は今、以前より模型を多く作るようになり、それによってイメージを形にし、クライアントに伝える重要性は、むしろ増しているように思います。

本書を通じて建築学生のみなさんが学ぶことは、建築のほんの入り口です。その意味では、建築設計だけでなく、構造設計やまちづくりなど、建築設計以外の分野を目指すみなさんにも建築に関わる上で必要な基礎を身につけてもらうための教科書であり、建築設計を目指すみなさんには、これから広く自分の設計を行うための基礎となるようにと考えました。

本書をまとめるにあたり、槇総合計画事務所、建築写真家の吉村行雄氏をはじめ多くの方々のご好意とご協力を賜りましたことに感謝いたします。また、学芸出版社の知念靖廣氏の助言と尽力のもと、この本ができたことにもお礼を申し上げます。

著者 垣田 博之

本書は、教科書としてご採用くださった方に、著作権者様のご了解のもと、以下のデータを特典としてご提供いたしております。
1)文字・線・図面表現の練習用A3判PDFデータ提供
2)図面データ提供(3事例分)
お問い合わせはこちらをご覧ください。

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