グリーンスローモビリティ
内容紹介
低速公共交通が持つ力と可能性を伝える1冊
ゴルフ場を走るカートをヒントに生まれ、今や地域の「足」、観光用モビリティ、また「まちの顔」として全国で導入が進む「グリスロ」。会話がはずむ、笑顔が生まれるコミュニケーションツールとして地域を変え始めている。各地の事例から導入・運営のための知識まで、小さな「低速公共交通」が持つ力と可能性を伝える1冊。
体 裁 A5・204頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-2771-6
発行日 2021-05-20
装 丁 Iyo Yamaura
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写真でわかる!グリーンスローモビリティ
1.グリスロデザイン集
2.グリスロ運行の細かいところをお見せします
3.旅するグリスロ
4.グリスロのある風景
5.グリスロドライバースナップ
はじめに
第1部 グリーンスローモビリティとは何か
第1章 3 つの顔を持つグリーンスローモビリティ
第2章 グリーンスローモビリティ前史
すべては輪島から始まった グリスロ
「WA-MO(ワーモ)」の誕生と可能性
地域が一体となって開発したグリスロ(低速電動バス)
グリスロの普及に向けて──エコモ財団の取組み──
第3章 誕生! グリーンスローモビリティ!!
第2部 快走!グリーンスローモビリティ~走って、笑って、愛されて~
第4章 使い方は地域の数だけ!
1 まちなか公共交通
狭・坂・古の鞆の浦 念願の公共交通は笑顔がいっぱい
鞆から届ける① ~「グリスロ潮待ちタクシー」への想い~
鞆から届ける② ~鞆のグリスロは鞆っぽい~
鞆から届ける③ ~観光型・地元対応型の両輪に期待~
鞆から届ける④ ~おばあちゃんたちのグリスロ談義~
みなとオアシス沼津へ一直線! “ ゆっくり” を楽しむ気品溢れる路線バス
海の風を浴びて、復興後の小名浜を巡るハワイアンモビリティ
尾道市長が語るグリスロの魅力 ──おしゃれなモビリティが街を変える──
教えて、尾道のグリスロ!~市職員の奮闘記~
宮崎駅と商店街を結ぶ 大人気まちなか回遊グリスロ
2 観光モビリティ
IKEBUS で大都市池袋をリブランディング
IKEBUS 部長も語る 大都市池袋で低速車両IKEBUS を走らせるということ
グリスロで車を削減、人と環境にやさしい温泉まちづくり
グリスロと太陽光でスローな姫島エコツーリズム
3 住宅団地
リホープは、これからも、走り続ける
東京都町田市鶴川団地 ~グリスロを用いた買物支援事業~
首都圏鉄道沿線におけるグリスロ活用の可能性
グリスロで健康寿命も歌声もアップ
4 集落の足 152
地域福祉のフィールドで出会ったグリスロ──事業化までの2 年間を振り返る
狭い離島の道もすいすい グリスロは初めての島の足
みんなで紡ぐ銀山グリスロ
第5章 Q & A でわかるグリーンスローモビリティ
第3部 グリーンスローモビリティが拓く新時代
第6章 グリーンスローモビリティの時代
コラム1 お客さんがMAYU の使い方を教えてくれました
コラム2 米国シニアタウンにおける電動カートの活用~高齢者の自立した生活のマストアイテムに~
コラム3 「グリスロ賛歌」ができるまで
コラム4 石見銀山でグリスロの安全性を確かめてみました
コラム5 宮本町・菱町の実証実験に携わって
コラム6 なぜグリスロでは話をしてしまうのか~グリスロとパーソナルスペース~
コラム7 グリスロ先生たちのチーム座談会
コラム8 グリスロの持続可能な事業運営ってどうするんですか?
グリスロ賛歌
おわりに
この本は、「グリーンスローモビリティ」についての本です。「グリスロ」と略されるこのグリーンスローモビリティは、「時速20km未満で、公道を走ることができる4人乗り以上の電動パブリックモビリティ」と定義されて始まりました。この本では、グリスロに興味はあるもののどういうものかわからない―といった疑問に答えるために、グリスロを創った考え方や始まった経緯、日本国内の先進的に取り組んでいる事例や社会的背景をまとめている本です。
第1部では、グリスロの定義や特徴から、グリスロ車両のカート型とバス型を作るきっかけとなった石川県輪島市や群馬県桐生市での話、さらに国土交通省(以下、国交省)が政策としてグリスロを取り上げた経緯を説明しています。
第2部では、実際にグリスロに先進的に取り組んでいる地域の事例として、15地域をそれぞれ奮闘記や首長インタビュー、対談・座談など様々な形で紹介しています。また、グリスロについてよくある質問をまとめたQ&Aやグリスロの魅力を直接感じるために写真が多く掲載されています。第2部をご覧いただければ、グリスロが走ることで、地域の皆さんが笑顔になり、グリスロが愛される理由をご理解いただけると思います。
最後に、第3部ではグリスロが拓く新時代というテーマで、グリスロがこれからの時代、日本社会にどう必要なものなのかに言及しています。そのほかこの本では、随所にコラムを掲載しました。本文中では書ききれなかったエピソードやグリスロに関連する論文や調査を紹介しています。
この本の副題は、「小さな低速電動車(グリスロ)が公共交通と地域を変える」です。日本初の小さな低速交通であるグリスロが、どういうモビリティであるのか、どのように地域を変えられるのか、どうすれば変える力を発揮できるのか。この本でグリスロの基本的な理解をいただくとともに、ご自身の地域での検討に向けたアイデアやヒントとしてご活用いただき、地域をより良いものにしていただけましたら幸いです。
私はもうグリスロの担当者ではないのですが、今もグリスロの魅力に取りつかれています。
今でも「これが求めていた理想のモビリティです。お話を聞いてワクワクしました!」や「自分の地域で具体的に走っているイメージがパッと浮かびました」と仰ってくださるとその度にあの和束町で感じた胸の高鳴りを思い出し、私のグリスロ愛が一段と深まるのです。
グリスロの歌、グリスロのロゴ、グリスロの横断幕、グリスロのラッピング、グリスロのユニフォーム、グリスロの座布団。この本で紹介できたことはごく一部ですが、地域の方がグリスロのために自発的にしてくださっていることは本当にたくさんあります。ただ走るだけでなく、こうやって多くの地域で可愛がってもらえるモビリティになっていることが私には嬉しくそして驚きで、そういう地域の方のグリスロへの愛やグリスロが作り出す世界観が伝わる本を作れたらなと思っていたところ、今回多くの方のお力を得ることができ、夢を実現することができました。
本書の制作には大変多くの方にご協力をいただきました。今回執筆くださった17地域の皆様、大学の先生の皆様、写真では20の地域からご提供をいただきました。3台ものグリスロ車両を購入される等会社としてグリスロに心血を注いでくださっている復建調査設計(株)とグリスロの立ち上げを導き今も推進してくださっている(公財)エコモ財団には非常に多くのご尽力をいただきました。そして本書の出版を了解いただき様々なご指導をくださった(株)学芸出版社の岩崎さんにも大変お世話になりました。この場をお借りして関わってくださったすべての方々に深くお礼を申し上げます。
2020 年は自分の意志で自由に移動できる尊さ、幸せな人生において移動はかけがえのない基本的な要素だと改めて気が付かされた一年でした。年齢と共に移動が難しくなる方が日本社会には増えています。グリスロがどんな年齢の人でも自由で幸せな一日一日を過ごせる力となる──この本がそのような地域が増える一助になれば幸いです。
2021年5 月 三重野真代