MaaS入門

森口将之 著

内容紹介

日本にもやってきたMaaSブーム。だが日本では自動車業界の新規ビジネスのネタとして紹介されることが多い。本書は、世界と日本の動きをもとに、各種の公共交通の利便性向上で脱マイカー依存を実現し、都市と地方を持続可能にする強力な政策ツールとしてのMaaSの活かし方を徹底解説。交通・ICT・地方創生関係者、必読の1冊。

第45回交通図書賞 受賞!

『MaaS入門』が第45回「交通図書賞」を受賞しました

体 裁 A5・200頁・定価 本体2300円+税
ISBN 978-4-7615-2711-2
発行日 2019/08/01
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史


目次著者紹介はじめに書評
はじめに

序章 MaaSは交通まちづくりの最強ツール

・日本にもやってきたMaaSブーム
・MaaSは単なる新規ビジネスのネタではない
・基本は「脱マイカー依存」のための政策ツール
・MaaSが都市と地方を持続可能にする
・主導するのは「民間」ではなく「公共」
・本書について

1 フィンランドから世界に広がるMaaS

・MaaSを生んだフィンランドという国
・ノキアが育んだ情報通信社会
・日本よりも10年先を行く欧州の都市交通
・1都市1組織で分かりやすい運賃体系
・まちづくりの一部としての交通整備
・米国でも進む公共交通回帰の動き

2 MaaSの源流になったスマートテクノロジー

・初めにスマートフォンありき
・マルチモーダルな経路検索の登場
・ウーバーが拓いた移動のスマート化
・音楽配信が決定づけた定額サービス

3 フィンランドとヘルシンキの政策

・国土整備に関係する組織と施策
・国の情報公開と規制緩和
・ヘルシンキ都市交通の概要
・HSLが管理しHKLが走らせる

4 MaaSが生まれた理由

・20世紀から存在していた改革のうねり
・ITSフィンランドの存在
・「MaaSの父」と呼ばれた男
・2050年のヘルシンキを考える国際コンペ
・再開発がもたらした公共交通移行への流れ

5 ヘルシンキでMaaSを体感する

・MaaSアプリのパイオニア「Whim」
・高評価の理由はオールインワン
・多数のデザイン賞を獲得した理由
・積極的な海外展開

6 世界で導入が進むMaaS

・MaaSアライアンスの発足
・MaaSレベル評価基準の誕生
・スウェーデンの取り組み
・スイスの取り組み
・米国の取り組み
・台湾の取り組み

7 自動車メーカーがMaaSに参入する理由

・自動車はMaaSに含まれるのか
・ビッグデータが移動を支配する?
・トヨタが仕掛けた2つの先進事例
・トヨタと西鉄のマルチモーダルアプリ
・トヨタとソフトバンクの新会社
・ダイムラーの超小型車スマートの展開
・ダイムラーとBMWのサービス連携

8 ルーラル地域とMaaS

・アーバンとルーラルの違い
・フィンランドが主導する地方型MaaS
・ニュータウンの足をどうするか
・東急とソフトバンクの地域移動対策
・貨客混載活用への期待
・無人運転+MaaSが最終到達点

9 日本でのMaaSの取り組み

・国土交通省の対応
・経済産業省の対応と両省合同プロジェクト
・八戸市のバス改革
・京丹後市の複合交通政策
・JR東日本と東急の取り組み
・電動車いすWHILLの取り組み

10 日本でMaaSを根付かせるために

・MaaSの拡大解釈を危惧する
・BRTの二の舞にならないために
・ビジネス重視のまちづくりの弊害
・MaaSに留まらない交通改革を
・地方こそMaaSに向いている

おわりに

森口 将之(もりぐち まさゆき)

1962年東京生まれ。早稲田大学卒業。出版社勤務を経て1993年にフリーランスジャーナリストとして独立。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・テレビ・ラジオ・講演などで発表。2011年には株式会社モビリシティを設立し、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担当する。グッドデザイン賞審査委員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会、日本福祉のまちづくり学会会員。

元号が平成から令和に変わっても、モビリティシーンを取り巻く変革の波は留まることを知らない。中でも注目を集め続けているのがMaaS、モビリティ・アズ・ア・サービスである。

MaaSは北欧フィンランドで生まれた、新しいモビリティサービスの概念である。筆者は2018年9月にフィンランドを訪れ、行政担当者やMaaSオペレーターから説明を受け、意見を交わした。その成果をメディアやセミナーなどで披露しながら、MaaSについての理解を自分なりに深めていくうちに、日本でのMaaSを取り巻く状況が異質だと感じるようになった。

我が国ではMaaSを、巨大マーケットを背景とした新しいビジネスと捉える人が多い。しかしMaaSとはICTを用いてマイカー以外の移動をシームレスにつなぐという概念であり、現在の公共交通の財務状況を考えれば、それ自体で大きな利益を上げることは難しい。

フィンランドにおけるMaaSは、背景に欧州の長年にわたる公共交通改革があり、ここに同国が推進するICT(情報通信技術)が融合する形で生まれたと認識している。誕生の理由も新規ビジネスの創出ではなく、人口集中がもたらす交通問題を解決するためだった。

我が国では新しいモビリティサービスが登場すると、導入すること自体を目的とする動きが生まれるが、モビリティとはそもそも人間の移動のしやすさを意味する言葉であり、個々の交通は都市や地方の中でスムーズな移動を実現するための手段にすぎない。

MaaSもまた、それ自体が目的ではない。都市や地方の移動に関するさまざまな課題を解決すべく、既存の交通をICTを駆使してつなぎあわせ、便利で快適な移動に変身させるための概念であり、他のモビリティ同様、まちづくりの一環として考えるべきである。

フィンランドでの展開事例は、国や都市による長期的なビジョンのもと、10年という時間を掛けて練り上げており、都市のみならず地方での展開も始まっている。交通まちづくりのためのツールというMaaS本来の目的を日本の多くの人々に理解していただければと思っている。

運輸、観光・旅行、自動車などの業界で注目を集めるMaaS(Mobility as a Service)への正しい理解を促すため、発祥の経緯と現状、用語解説など基本事項を丁寧に分かりやすくまとめた作品。トレンディーなビジネスモデルとして取り扱われることが多いMaaSについて、その真の姿、目的などを伝えようとしている。交通図書賞選評(交通新聞(2020年3月31日付)掲載)より
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