そのまま使える 建築英語表現

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内容紹介

設計・施工のプロセスに沿う85場面の会話集

設計者が海外クライアントに設計のアイデアを効果的かつ正確に伝えるためのテキスト。「デザインの魅力の伝え方」「プレゼンテーション・テクニック」「現場のコミュニケーション」の会話例とコツを伝授。〈例文〉〈キーフレーズ〉〈ボキャブラリー〉〈咄嗟のQ&A〉から成る見開き構成、設計プロセスと場面に沿った全85項目。


山嵜一也 著
著者紹介

体裁
A5判・208頁
定価
本体2400円+税
発行日
2016-10-01
装丁
藤田 康平
ISBN
9784761526290
GCODE
2266
紙面見本試し読み目次著者紹介まえがきあとがき書評


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はじめに 英語の電話が取れますか?

STEP1 デザインの魅力を伝える Conveying Design Ideas

1 敷地・配置 Site/Location
2 周辺環境1(自然環境) Natural Environment
3 周辺環境2(街並み) Townscape
4 外構 External Work
5 庭 Garden
6 植栽 Planting
7 広場・公園 Square/Park
8 アプローチ・エントランス Approach/Entrance
9 ボリューム Volume
10 ファサード Facade
11 形状 Form
12 状態 Situation/Condition (of the site)
13 個人住宅 Private House
14 集合住宅 Housing Complex
15 オフィス Office
16 公共建築 Public Building
17 公共空間 Public Space
18 商業施設1(小規模~中規模店舗) Commercial Building (small to medium scale)
19 商業施設2(複合商業施設) Commercial Building (complex type)
20 建築テーマ1(ローコスト) Low-cost Architecture
21 建築テーマ2(エコ・サステイナブル) Ecological/Sustainable Architecture
22 建築テーマ3(リノベーション) Renovation/Refurbishment
23 部屋の機能 Function
24 平面計画 Planning
25 動線・シークエンス Circulation/Sequence
26 眺望 View
27 開口部 Opening
28 窓 Window
29 空間表現1(スケール・サイズ) Scale/Size
30 空間表現2(閉じる・開く) Close/Open
31 空間表現3(曖昧な表現) Ambiguous Expression
32 空間表現4(程度) Grade
33 色(濃淡・明度・彩度) Color/Shading/Brightness/Chroma
34 テクスチャー Texture
35 明るさ・照明 Brightness/Lighting
36 透明度 Transparency
37 インテリア1(各地のスタイル) Interior (local styles)
38 インテリア2(本物・偽物) Interior (Authentic/Fake)
39 家具とその配置 Furniture and Layout
40 仕上げ1(外装) Cladding Exterior
41 仕上げ2(内装) Interior
42 アクティビティ Activity
43 日本特有の法規 Japanese Construction Law
44 法規 Construction Law
45 構造 Structure
46 構法 Construction Method
47 設備 Services
48 防火・耐火 Fire Protection/Fire Resistance
49 断熱・換気 Heat/Insulation/Ventilation
50 防犯・セキュリティ Security
51 建築環境 Architectural Environment

コラム1 英語に直訳する前に、まず日本語をシンプルに

STEP2 プレゼンテーション・テクニック Presentation Techniques

52 プレゼンテーションを始める Starting a Presentation
53 提案する Proposing Ideas
54 根拠・理由・例を示す Giving Reasons and Examples
55 強調する・比べる・言い換える Emphasizing/Comparing/Paraphrasing
56 将来の話をする Talking about the Future
57 実現可能性 Feasibility
58 コストの説明をする Explaining the Cost
59 メンテナンスへの配慮を説明する Explaining Maintenance Arrangements
60 オプションを提示する Proposing Options
61 メリット・デメリットを説明する Explaining the Advantages and Disadvantages
62 質問をする Asking Questions
63 即答を避ける Avoiding a Quick Response
64 締めくくる Concluing Business
65 コンペティションへの応募 Entry to a Competition
66 提案書の作成 Creaing a Proposal Document
67 プレゼン用データの作成 Creating Presentation Data
68 プレスリリースで使う表現 Expressions for Press Release

コラム2 プレゼン。相手の目線で考える。

STEP3 現場のコミュニケーション Communication in Practice

69 資料の確認・受け渡し Confirming the Document and Handing it Over
70 お願いの仕方 How to Make a Request
71 請求・支払い Billing/Payment
72 契約 Contract
73 役割分担の確認 Confirmation of Roles
74 スケジュールの確認 Confirmation of Schedule
75 進行管理 Schedule Management
76 コスト管理 Cost Management
77 現地調査 Site Survey
78 基本設計 Preliminary Design
79 見積もり Estimation/Quotation
80 実施設計 Construction Design
81 施工現場 Construction Site
82 納まりの施工 Construction Details
83 納まりの表現 Expressions about Details
84 竣工・引き渡し Completion/Delivery
85 撮影・画像処理 Photo Shoot/Image Processing

コラム3 会議には70%の気持ちで望む(事前準備は120%で)

英語索引
日本語索引

山嵜一也(やまざき・かずや/Yama)

建築家・山嵜一也建築設計事務所(Yama Architects)代表。
1974年東京都生まれ。2000年芝浦工業大学大学院建設工学修士課程修了。2001年渡英。英語を話せない中、観光ビザで就職活動(500社以上にコンタクト、断りのレター59通を受け取る)を始める。数社を経て、2003~2012年に勤務したアライズ・アンド・モリソン・アーキテクツでは欧州最大級となるハブ駅、キングスクロス・セントパンクラス地下鉄駅改修計画の現場監理を担当(2007~2010)。ロンドン五輪プロジェクトでは、招致マスタープラン模型(2004)、レガシーマスタープラン(2010~2011)、グリニッジ公園馬術競技場の現場監理(2012)に関わる。
2013年に帰国し、東京に事務所を設立。個人の設計活動の傍ら、講演、執筆、インタビュー、メディア出演多数。新国立競技場コンペティション最優秀賞者、故ザハ・ハディド氏の日本での最後のロングインタビューをする(日経アーキテクチュア 2013/04/10号)など、イギリスの成熟社会や五輪における建築の役割について伝えている。
著書に『イギリス人の、割り切ってシンプルな働き方』(KADOKAWA)。女子美術大学非常勤講師。一級建築士。

英語の電話が取れますか?

2001年に私は単身渡英したのですが、実務経験も英語力もほとんどありませんでした。何とか就職先の設計事務所を見つけたものの、すぐに電話恐怖症に陥っていました。デスクの電話を取り上げれば、当たり前ですがネイティブの相手は容赦ない英語でまくしたててきます。私はしどろもどろになり、なんとかやり過ごし、受話器を置くと落ち込みました。それを繰り返しているうち電話恐怖症になり、電話が鳴ると急に書類を探すふりをしたり、トイレに立ち上がったりしてごまかしていました。しかし、一人留守番をして、いよいよ受話器を取らざるを得ない状況では背中に冷たい汗を感じながら対応したものです。

こうやって始まった私の海外勤務経験は12年間にわたりました。渡英前の英語力は所詮日本の英語教育によるものでしかありません。ですから本書に紹介される英語は建築の実務を通して培ったものと言えます。

本書を手に取った方は、既に日本から海外プロジェクトに携わることで現地の設計事務所と協働して仕事を進めているかもしれません。また、留学や海外就職という野望を胸に秘めているのかも。あるいは最近ではネットを通じた海外メディアへの情報発信に向けてプレスリリース作成に迫られているのでしょうか。いずれにせよ、言語は具体的な必要に迫られてこそ身に着きます。

このような本を出版していて逆説的ですが、英語を身に着けるには仕事の現場で嫌な思い、悔しい思い、そして冷や汗をかく経験を積み重ねることが大切だと思います。それでは、現場で英語を活用する機会がなければ永遠に身につかないのでしょうか。私自身を振り返ってみれば、やはりその時に備えて準備をしておくに越したことはない、と感じます。

英語のコミュニケーションスキルである「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つのうち、独学が可能なのはインプット系の「聞く」「読む」でしょう。まずこの2つのスキルをある程度身に着ければ、アプトプット系の「話す」「書く」に対しても多少余裕を持って対応できる。電話の受け答えだって、少なくとも当時の私よりは自信をもって臨めるはずです。

本書では建築の実務現場、設計からプレゼンテーション、施工の現場までプロセスに沿った85の場面を想定し、私自身の経験をもとにできる限り具体的な会話例を集めました。

読者の皆様が世界の建築現場で活躍するときに寄り添うお守りのような本を目指しました。

2016年8月 山嵜一也

異なる言語を手に入れることは、異なる考え方を手に入れること

異なる言語を手に入れるということはどのようなことなのでしょうか。

母国語ではない外国語を身に着ける過程には「自分が本当に言いたいことは何か」を問い直す瞬間や、日本語でコミュニケーションしているときには気付かなかったことを発見します。同様に外国語を身に着けることでコミュニケーションできる相手の数も増えます。私自身、渡英前には予想しなかった考え方、働き方、そして生き方が世界にあると気付かされました。

実務経験も英語能力もほとんどない中で渡英した当時、もし本著のようなコンセプトの本があったら、私の英国での英語力や仕事の経歴は違ったものになっていたのではないかと思います。そのような一人の日本人が海外の建築現場で肌で感じた疑問やそこから身についたコミュニケーションスキルを本著には多く盛り込みました。

仕事現場のシーンを想定した本著は学生の読者にとっては少しイメージしづらかったかもしれません。しかし、お金を払って生活する海外留学と、お金をもらって生活する海外就労では世界の見え方が180度変わります。英語が通じなければクビになるという緊張感の中で働くことに是非チャレンジしてみてください。職場のリアルな様子はイギリス人の働き方について述べた拙著『イギリス人の、割り切ってシンプルな働き方』(KADOKAWA)に詳しく綴ったので、実際に海外の事務所で働く機会や協働する時には本書と一緒に参照してみてください。接し方や考え方のヒントになるはずです。

本書の始まりは「海外で働く日本の建築業界の方に向けた本を作りませんか?」という学芸出版社・編集室長である井口夏実さんからのメールでした。作業は建築実務の現場を思い浮かべながら日本文を書き出し、そこに英文を加えるという、気の遠くなるものでした。しかし、敏腕編集長の繊細な手綱さばきと大胆な校正によって本書は完成しました。お礼申し上げます。

はじめにでも書いたとおり、やはり外国語を身に着けるには建築の現場でのコミュニケーションを通して嫌な思い、悔しい思い、そして冷や汗をかくのが一番の近道になるはずです。世界を相手に働く日本人建築士たちにとって本著がその役に立つのならば、著者としてこれほどの喜びはありません。

2016年8月 山嵜一也

評 : 吉田 知剛 (光井純&アソシエーツ建築設計事務所)

「設計業務における英語でのコミュニケーションの必要性」

ビジネスのグローバル化が進み、日本でも企業の英語公用語化が社会的な関心を集めていますが、この建築業界においても英語を使った業務の必然性が高まっていると実感しています。今後の国内需要の伸び悩みと、2020年の東京オリンピックを契機としたインバウンド需要の高まりを考えると、建築英語の必要性はますます高まると推測しています。
わたしが勤務している光井純&アソシエーツ建築設計事務所においても、外資系企業からの引き合いやアジアを中心とした業務が年々増加しつつあり、外国籍スタッフも多く在籍しています。プロジェクトやチーム編成によっては、英語でのミーティングをおこなうことも日常的になりつつあり、突然、海外のクライアントとのプロジェクトに参加することになったり、国際電話の対応をしなければならなかったりと状況は様々です。

アメリカ事務所でのシーザーペリ(左手前)との打ち合わせ 中央が弊社代表の光井純

わたしがこの設計事務所で働き始め、3年目の昨年にはじめての海外現場を韓国で経験しました。このプロジェクトでは、デザインの提案から施工に至るまでの時間が極端に短く、レスポンスを素早くおこなう必要があります。しかしその一方で、デザインの意図が正確に伝わらないとそのまま施工されてしまうといったリスクもあり、英語表現でのスケッチや図面の作成には非常に苦労しました。

このプロジェクトがはじめての海外経験だったわたしは、およそ1ヵ月の滞在の間、英語、韓国語、日本語を駆使して業務をおこないました。連日現場やミーティングで発生するわからない単語や言い回しは、なるべく形とセットで覚えるようにスケッチを残し、業務終了後に繰り返し見返すなどしてなんとか乗り切りました。

韓国での打ち合わせの様子

自身の海外現場での経験から、英語でのやり取りでは、日本語で発想したことをすべて伝えようとするのではなく、多少稚拙な表現になったとしても、シンプルにコアイメージを伝えることが必要だと感じました。また、日本人同士であっても、専門的な内容を意思疎通させることは難しいですが、海外では施工における正確さの深度が日本とは大きく異なるため、やや過剰と思われるくらいのデザイン確認が施工後の出来につながると実感できました。

韓国のプロジェクト中には、山嵜一也さんの『そのまま使える 建築英語表現』という書籍の制作にも協力しました。実際に現場で必要性を感じた納まりや素材など、現場で頻出の表現については、図解付きで盛り込んでもらっています。現在実務で建築英語が必要なビジネスパーソンはもちろん、これから海外を目指す学生にも良書であり、著者が現場でのお守りのような本と述べているように、是非、海外現場にも持っていってもらいたい一冊だと思います。

担当編集者より

英会話は現場で身に着けるのが手っ取り早いとはいえ、「なんだそんな簡単に言えたのか!」「この一言が言えれば、うまく伝わったのに!」という、シンプルで役立つフレーズもたくさんあると思います。そんなフレーズを、役立ちそうな場面設定から一つ一つのフレーズ選びまで、著者山嵜さんがご自身の10年以上の海外経験を振り返りながら積み上げてできたのがこの本です。コンペやプレゼンテーション、あるいは交渉や施工の現場で、ぜひご活用ください。

(井口)