地域×クリエイティブ×仕事
淡路島発ローカルをデザインする

服部滋樹・江副直樹・平松克啓・茂木綾子・やまぐちくにこ 編著
淡路はたらくカタチ研究島(淡路地域雇用創造推進協議会) 監修

内容紹介

兵庫県淡路島で地域資源を活かした起業を支援するプロジェクト・淡路はたらくカタチ研究島。2012~2015年の4年間に農と食、観光をテーマに多数の仕事をつくりだしてきた。地域の可能性を引きだす専門家、仕事をつくるしくみをデザインする運営メンバーらがまとめた、プロジェクトデザイン、地域ブランディングの教科書。

体 裁 四六・208頁・定価 本体1800円+税
ISBN 978-4-7615-1357-3
発行日 2016/03/03
装 丁 赤井佑輔/paragram


目次著者紹介はじめにおわりにイベントイベントレポート
目次

あなたにとって“仕事”とは?
はじめに │ 藤森泰宏
淡路島の“はたらくカタチ” │ 写真:茂木綾子
淡路はたらくカタチ研究島とは

第1章 プラットフォームをデザインする

「地域活性化は誰のものか?」 │ 江副直樹
「はたらくカタチのはじまり」 │ やまぐちくにこ
「小さな経済と仕事を起こすフロンティア」 │ 鬼本英太郎
「ハードルを突破するしなやかなチームの力」 │ 平松克啓
「淡路島の仕事を生み出す、仕事の現場」 │ 藤澤晶子
「地域がはたらくしくみをデザインする」 │ 服部滋樹

第2章 自分らしい仕事づくりをカタチにする

「出会いをカタチにする」 │ 西村佳哲
「自分らしい会社のはじめ方」 │ 青木将幸
「生産者と消費者をつなぐ」 │ 堀田裕介
「まち、人、暮らしが交わる場づくり」 │ 中脇健児

第3章 地域×クリエイティブ×仕事のしくみ

プロジェクト:
[淡路島ならではの付加価値商品開発]
島の土/Suu/まちまち瓦/ギフトセット 淡路島GOTZO/樹々のはちみつ/こかげ帽/育てるほうき/縁起/淡路島産デュラム小麦のセモリナ粉/Suu BOTANICAL SOAP/島の実りのコンポート/かおりのまちのかおり/SHIMAIRO/島クリームコロッケ
[淡路島ならではの観光ツアー開発]
淡路島SHORT TOURS/花美人になるツアー/おいしい理由を探しにいこうツアー/淡路島で学再生可能エネルギースタディツアー/新シゴトビト探訪ツアー/太陽とともに巡る淡路島 朝日・夕日ツアー/食卓の向こう側を見に行こうツアー

第4章 ここにしかない仕事の見つけ方

淡路島ではたらく人:
新見久志(青空洋服店 デザイナー)
徳重正恵(株式会社フェリシモ 社員)
北坂勝(北坂養鶏場 代表取締役)
富田祐介(株式会社シマトワークス 代表)
廣田久美(廣田農園)
塩田宏紀(あめつち農園 農家見習い)
中山由佳理(S・J・S株式会社 淡路島支社)
[コラム]淡路はたらくカタチ研究島から生まれたショップ
[コラム]淡路はたらくカタチ研究島から生まれたプロジェクト

淡路はたらくカタチ研究島の記録
[コラム]「淡路はたらくカタチ研究島」から「ハタラボ島」へ

おわりに ──新しいカタチのはじめに │ 茂木綾子

編著者

服部滋樹

graf代表。「淡路はたらくカタチ研究島」スーパーバイザー。
1970年大阪生まれ。美大で彫刻を学んだ後、1998年にインテリアショップで出会った友人たちとgrafをオープン。オリジナル家具の企画・製作・販売、建築設計、グラフィックデザインから食、アートまで幅広くクリエイティブ活動を展開する。近年は兵庫県淡路島、滋賀県、奈良県天理市などの地域ブランディングにも携わる。京都造形芸術大学情報デザイン学科教授。

江副直樹

ブンボ株式会社代表。「淡路はたらくカタチ研究島」スーパーバイザー。
1956年佐賀生まれ。西南学院大学法学部中退後、米穀店店員、工場作業員、釣り雑誌編集者、コピーライターなどを経て、商品開発と広報計画を柱とする事業プロデュースの会社、有限会社ブンボ設立。農業、商業、工業、観光、地域活性など、コンセプト重視の事業戦略提案とその実現が主な仕事。主なプロデュースに「たけた食育ツーリズム」「九州ちくご元気計画」など。

平松克啓

ヒラマツグミ一級建築士事務所代表。「淡路はたらくカタチ研究島」地域アドバイザー。
1980年兵庫県淡路市生まれ。大阪工業大学工学部建築学科卒業後、設計事務所勤務を経て、2009年ヒラマツグミ一級建築士事務所設立。設計業務の傍ら、古民家再生プロジェクト「recominca」やコミュニティスペース「233」の運営を行う。

茂木綾子

写真家、映像作家。「淡路はたらくカタチ研究島」地域アドバイザー。
1969年北海道生まれ。東京藝術大学デザイン科中退。12年間のヨーロッパでの活動後、2009年より淡路市に移住し、廃校を拠点としたアートプロジェクト「ノマド村」を展開。「淡路はたらく研究島」では立ち上げのきっかけをつくったことにより、地域アドバイザーを務める。

やまぐちくにこ

Fkeys+ 代表。「淡路はたらくカタチ研究島」地域アドバイザー。
1969年兵庫県洲本市生まれ。美術系短大卒業後、タイルメーカーを経てUターン。洲本市民工房を主宰し、2005 年NPO法人淡路島アートセンター設立。「淡路島を耕す女」としてアートイベントを企画運営し、新たな価値の創出に奮闘する。2012年「淡路はたらくカタチ研究島」発起人、同プロジェクトを継承する「ハタラボ島協同組合」を2016年に始動。

著者

西村佳哲

リビングワールド代表、プランニング・ディレクター。
1964年東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。建築分野を経て、つくる・書く・教える仕事に携わる。デザイン・プロジェクトの企画立案、チームづくり、ディレクション、ファシリテーションを手がける。主な著書に『自分の仕事をつくる』(晶文社、ちくま文庫)、『いま、地方で生きるということ』(ミシマ社)、『ひとの居場所をつくる』(筑摩書房)など。

担当講座に、2012 年度「はたらきかた研究会」、2013 年度「はたらきかた研究会」、2014 年度「“関係”を育てる場づくり研修」、2015 年度「出会いをカタチにする仕事づくり研修」。

青木将幸

青木将幸ファシリテーター事務所代表、ファシリテーター。
1976年熊野生まれ。東京農工大学農学部卒業。環境NGO、企画会社勤務を経て、2003 年青木将幸ファシリテーター事務所を設立。それぞれの持ち味が発揮される組織づくりに関心を寄せる。企業、行政、NPO、国際会議から商店街まで、さまざまな会議、ワークショップ、参加体験型研修の進行役を務める。2012年より淡路島在住。
担当講座に、2012年度「使えるデザイン研究会」、2013 年度「仕事を生みだすコミュニケーション研究会」「子供のためのファシリテーション研究会」、2014 年度「自分らしい会社のつくり方研修」、2015 年度「シゴトができる人になろう研修」。

堀田裕介

料理開拓人、foodscape! 運営。
1977年大阪生まれ。「食べることは生きること、生きることは暮らすこと」をコンセプトに、生産者に寄り添いながら食の本質を生活者へ届ける。2005 年よりgrafのシェフとして勤務後独立。商品開発や店舗プロデュースを手がける一方、「foodscape!」「EATBEAT!」など五感を通じて食に向き合う空間を創出。2015年 foodscape! のオリジナルショップをオープン。
担当講座に、2012年度「ゆたかな食堂研究会」「淡路島の海を宝にかえる研究会」、2013年度「ゆたかな食堂研究会」、2014年度「海のめぐみを商品にする研修」、2015年度「海のめぐみを宝にかえるセミナー」。

中脇健児

場とコトLAB 代表、まちづくりプランナー。
1980年大阪生まれ。兵庫県伊丹市を中心にミュージアム、商店主、行政、市民を結びつけるプロジェクトを多数展開。「遊び心」をキーワードにかかわる人全員が主役になれる場をつくりだす。代表的なプロジェクトは「伊丹オトラク」「鳴く虫と郷町」「はたら子」。近年は、衛星都市、観光地、過疎集落などで愉快なまちをつくることに寄与する。
担当講座に、2012年度「ツアー販売スタッフになる研究会」「淡路島の作物を商品にかえる研究会」、2013年度「ツアー販売をする研究会」「牧場の商品を考える研究会」、2014年度「島仕事体験ツーリズム研修」「海のめぐみを宝にかえるセミナー」2015 年度「つながりを活かした観光商品開発セミナー」。

鬼本英太郎

ひょうごボランタリープラザ所長代理、淡路地域雇用創造推進協会参与・前会長。
1956年愛知県生まれ。関西学院大学卒業。兵庫県に勤務し、県復興推進課長、県民生活課長、淡路県民局副局長(協議会会長兼務)を経て現職。長年、生涯学習や地域づくり活動・震災復興に携わる。現在、ボランティアセクター全般や災害ボランティア・東北被災地を支援。特定非営利活動法人 震災リゲイン理事。

藤澤晶子

森果樹園、「淡路はたらくカタチ研究島」事業推進員・実践支援員。
1982年滋賀生まれ。大阪工業大学工学部建築学科卒業後、設計事務所に勤務。一級建築士。2012年春、「淡路はたらくカタチ研究島」で働くため淡路島へ移住。研修事業を2年、ツアーと商品開発を2年、現場担当として計4年間勤める。淡路島民と結婚、2016年春から家業の果樹園を継ぐべく準備中。

監修

淡路はたらくカタチ研究島(淡路地域雇用創造推進協議会)

瀬戸内海最大の島・兵庫県淡路島で、島の豊かな地域資源を活かした家業・生業レベルの起業や商品開発をサポートするプロジェクト。厚生労働省の委託事業(2012~2015年度)として島内外からデザイナー、ファシリテーター、料理家など多彩な講師陣を迎え、多様な講座や商品開発を実施。「農と食」と「観光」をテーマに、島ならではの仕事を数多くつくりだしてきた。

水清く 山美しく 土肥えて 家並[やなみ]整う 淡路しまかな
この尾崎咢堂[がくどう](行雄)の短歌にうたわれたように、淡路島は、豊富で良質な食材の宝庫として、農水畜産業を中心に栄えてきました。しかしながら現在は、若者が大学進学や就職で島外に出ていき、人口減少や高齢化という大きな課題を抱えています。そのような背景のもと、雇用の受け皿の少ない淡路地域での雇用創出を目指して、2012年度から「淡路はたらくカタチ研究島」をはじめました。

あなたにとって「はたらく」とは何ですか? そう尋ねたとき、ある人は生活するための手段と答え、ある人は夢を叶えるための過程と答え、ある人はまわりにいる人と笑顔でつながること、と答えるかもしれません。100人いれば100通りの答えがあります。100通りの「はたらくカタチ」があります。自然と人に恵まれ、可能性の種が詰まっている淡路島というフィールドで、あなたの「はたらくカタチ」を見つけてみませんか、というコンセプトでスタートしたわけです。

この取り組みは厚生労働省からの委託による実践的な地域の雇用創出を目指す事業であり、全国で相当数が採択されていますが、淡路島における取り組みは、仕事を探している方に対する就職のためのスキルアップ支援や、商売をされている方の新商品開発や事業拡大による雇用創出といった、従来の就職・雇用支援に留まることなく、島の豊かな地域資源を生かした家業・生業[なりわい]レベルの起業をサポートするプロジェクトとして運営されてきたところに大きな特徴があります。

本書『地域×クリエイティブ×仕事 淡路島発ローカルをデザインする』では、プロジェクト運営のメンバー、講座などの講師を引き受けていただいた専門家、このプロジェクトから実際に淡路島で起業した方など、多角的な視点から、地域でクリエイティブな発想や方法を使って仕事をつくりだすしくみを紹介していきます。

このプロジェクトが目指してきたビジョンや成果には、淡路島に限らずさまざまな地域で小さな生業[なりわい]をつくりだすヒントが溢れています。本書が全国各地で雇用創出に取り組む人々のお役に立てば幸いです。

末筆ながら、「淡路はたらくカタチ研究島」の展開の機会を与えていただきました厚生労働省、そして洲本[すもと]市、南あわじ市、淡路市、洲本商工会議所、五色[ごしき]色町商工会、南あわじ市商工会、淡路市商工会、淡路地域雇用開発協会、淡路島観光協会をはじめ、「淡路はたらくカタチ研究島」の運営に対し、格別のご支援をいただきました多くのみなさまに感謝申し上げます。

淡路地域雇用創造推進協議会会長/兵庫県淡路県民局副局長

藤森泰宏

──新しいカタチのはじめに

小さな小さな思いつきとひらめきからはじまったイメージが、一人の心から一人の心に伝わり、二人の心に新たなイメージが煌めいた。二人の新たなイメージを別の誰かに伝えると、さらに何人かの人々の心に小さなイメージと可能性が煌めきはじめた。

しばらく経つと、そのイメージそのものがエネルギーを自ら持ちはじめたかのように加速度を増し、倍々と協力者が集いはじめ、気づけばもう後戻りできないほどの勢いでエネルギーの渦は動きはじめた。多少の抵抗や反発にあっても挫けるどころか余計に情熱をかき立てられ、押せ押せムードは留まることを知らず、流行病の熱病にでもかかってしまったかのように、この事業は絶対に実現させてみせる、という信念と熱情とにすっかりとりつかれてしまった。初期の立ち上げメンバーたちはこんな心境だったのかもしれない。何の報酬もないどころか自腹を切って動き回り、ネットワークを築き上げ、企画書を何度も書きかえて、負担の大きい事業に慎重な反応を示す行政担当の方々を無理矢理説得していった。今思えば、あれはいったい何だったのだろうか?と首を傾げてしまうほど、何か大きな力に突き動かされていたとしか言いようがない。きっと淡路島がそのような新しい風を必要としていたのかもしれない。とりあえずそういうことにしておく。

そして事業が採択され、多くの人々を巻き込み、この四年にわたる大プロジェクトが展開し、たくさんの成果や人々のつながりを生み出した。そして今、「淡路はたらくカタチ研究島」プロジェクトは終りを迎えようとしている。私たちがはじめに感じた熱を持った小さな煌めきが伝染し、これほどたくさんの人々のそれぞれの煌めきに火をつけて、育み、色とりどりの美しい花々となった様子を見ていると、本当に嬉しくて楽しくて、かかわってくださったすべての方々に深い感謝の気持ちが溢れてくる。

強い想いと情熱とともに協力しあう仲間がいれば、このようなことが可能なのだと知ることができたのはすばらしい経験であった。行政と民間という垣根を越えてともに事業を成功させようとフラットな関係で切磋琢磨できたことも大変嬉しい経験だった。

この「淡路はたらくカタチ研究島」を通して、ビジネスや仕事のサポートという実質的役割以上に、通常の立場や業種の枠を超えて知識やスキルを共有し、刺激しあい、互いの成長を願いあう、人と人との温かくエネルギッシュなつながりが大きく大きく膨らんでいったことは、何よりも貴重な成果だったように思う。

これからの淡路島が、さらにどんな流れを生み出していくのだろうか。たくさんの煌めきの種は至る所にまかれ、どんどん成長し、変化し、多様な動きを見せていくだろう。そしてこの地に美しくユニークで多彩な未来を花開かせてくれることを願っている。

この豊かな淡路島の恵みに感謝し、みんなの小さな煌めきが大きな光になっていきますように。

2015年12月

淡路はたらくカタチ研究島・地域アドバイザー

茂木綾子

4年間の活動をまとめた書籍『地域×クリエイティブ×仕事 淡路島発ローカルをデザインする』の出版を記念して、トークイベントを開催します。
スーパーバイザ―としてこのプロジェクトを牽引してきた、graf代表・服部滋樹さん、ブンボ株式会社代表・江副直樹さんに、地域プロデュースの現場の話をお聞きします。

東京

  • 日時 : 2016年3月4日(金) 19:00~20:30(開場18:30)
  • ゲスト : 江副直樹、服部滋樹
  • 会場 : 東京ミッドタウン・デザインハブ インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター
  • 参加費 : 無料
  • 申込み
    http://peatix.com/event/148026

大阪

  • 日時 : 2016年3月17日(木) 19:30~21:30 (開場18:45)
  • ゲスト : 服部滋樹、江副直樹
  • 会場 : スダンダードブックストア心斎橋店
  • 参加費 : 1500円(ワンドリンク付き)
  • 申込み
    http://www.standardbookstore.com/archives/66208220.html

瀬戸内海最大の島・淡路島で、豊かな地域資源を活かし起業や商品開発をサポートするプロジェクト「淡路はたらくカタチ研究島」。2012~2015年の4年間に、島内外から多彩な講師を迎え、多様な講座を実施。「農と食」「観光」をテーマに、島ならではの仕事を数多くつくりだしてきました。

集大成となる今年、4年間の活動をまとめた書籍『地域×クリエイティブ×仕事 淡路島発ローカルをデザインする』が出版されました。この出版を記念し、スーパーバイザーを務めた、ブンボ代表・江副直樹さんとgraf代表・服部滋樹さんに、地域をプロデュースするというお二人の仕事について語っていただきました。

事業プロデュースという仕事

江副 僕はBunbo(ブンボ)という会社をやっています。もともと広告の世界でコピーライターをやっていたんですけど、コピーはどうしてもモノができてからの仕事なので、モノが生まれる段階から関われないというストレスがありました。そこで、今から20年前に事業プロデュースの会社を立ち上げました。

ブンボとは分数の分母で、ジャンルは問わず、企業や地域の事業の活性化をプロデュースしています。常に分母のところを担いながら、分子にあたるいろんな業種や職種とチームをつくって、通分、編集をするという意味合いを込めて、こういう社名にしました。

僕の仕事のメインは、コンセプトと到達イメージを提示して、その管理と実行に集約されます。一番最初にプロデュースしたのは、佐賀県にある建具屋「住まいの木工房むっく」の仕事。まず、2代目の若手職人たち集まっていたその建具屋の売りは何だろうと考えた。建具屋だからいい建具をつくって売ることだというのは表層的な発想で、僕は彼らの売りはその木工技術だと考えました。

彼らの技術を使えば、建具だけでなく、家具もできるし住宅もできるに違いない。ただデザインが足りなかった。技術はデザインによって価値を増す。そこで家具をつくる際にプロダクトデザイナーに参加してもらい、技術とデザインがバランスよく施された家具シリーズが生まれ、とうとうオリジナル住宅まで手掛けるようになりました。

次に紹介するのは、福岡の柿農家さんのプロデュースです。「富有柿」は、実は福岡県が全国一の産地。その中心地の農家さんがJAを通さずに、産直でやりたいということで、お手伝いしました。この10年間で売上は1.5倍くらいに上がっています。

農家さんが収納小屋をつくるときも、どうせなら茶室のようにしたて、農作業の合間にお茶を飲める空間にしました。そこで発信力のある人たちを呼んで茶会を催したら、この農家さんの取り組みが全国的に発信されていきました。

この農家さんはほとんど農薬を使わない柿を生産をしているんですけど、これを豚に食べさせると肉質が劇的に良くなり、それを「柿豚」という商品にしました。これは商標をとって、プロモーションのための料理会を東京でもう10年近くやっています。

総合デザインという方法論

江副 僕はどんなジャンルの仕事をするときも、原則は決まっていて、「総合デザイン」と言っています。商品(商品とサービス)/情報(広報と広告)/空間(建築と環境)を同じコンセプトに則って全体を形づくっていきます。

総合デザインという原則

 

この中で商品が一番重要です。商品は換金物で、有形の商品もあるし、無形のサービスもあります。商品をないがしろにするとすべてが停滞します。逆に商品が良すぎて、胡坐をかくこともよくありますね。

次に情報発信。知らないものは買えないし、知らないところには行けません。よく食べ物だったら食えばわかると言いますけど、裏を返せば、食わないとわからないわけですよね。それを事前にパッケージで期待させたり、ウェブ、印刷物、イベント等様々な方法で、情報発信を戦略的にデザインしていきます。

さらに空間は、店舗はもちろん宿泊施設はそれ自体が商品でもあり、空間の整備は商品やサービスのイメージを醸成するうえでとても重要です。

これらは俯瞰すると同時に磨いていくことが大事だと考えています。さらに重要なことは、それらを司る中心にあるコンセプト。まず与件や課題を整理し、進むべき方向を見極め、プロジェクトの背骨をつくる作業をします。これがコンセプトワークです。

少年探偵団のような異業種集団をつくりたい

服部 僕らはgraf(グラフ)というデザインのユニットをやっています。ちょうどバブルが崩壊した頃、僕らの1つ上の先輩は就職もままならなくなり、自分たちで生きていく術を考えなくてはいけない時代になりました。当時、社会の経済システムや、ものづくりの仕組みみたいなことも、同時に崩壊したように僕には見えていました。そこで行き着いた結論は、縦型の構造じゃない、横のフラットな繋がりで生きていくこと。それを実現するために18年前に始めたのがgrafという集団です。

それまではインテリアデザイナーとかグラフィックデザイナーとか一つの職能で集まるチームは多かったけれど、僕は少年探偵団みたいなチームをつくって仕事をしたかった。探偵の仕事じゃないですよ(笑)。異業種の人それぞれのスキルが生きる集団、それを目指して仲間とつくったのがgrafです。最初は、大工、家具職人、プロダクトデザイナー、映像作家、シェフ、そして僕がデザイン監修の役割をしながら、6名でスタートしました。今ではグラフィックなど別のカテゴリーも増えて、22名くらいのチームで活動しています。

grafのメンバー、スタジオの前で。

 

仕事は様々な業種のメンバーがプロジェクトごとにチームをつくって進めています。

最初は店舗の設計とかインテリア系の仕事から始めて、そのうち自分たちでオリジナル家具のデザインも手掛けるようになります。ただ、家具をつくっているだけでは人には伝わらないということを、その当時から感じていて、その家具がどのように生まれて、どのように使われるべきなのかといったプロセスからそれを使いこなしていくまでをソフトの力で伝えていくことが大事だろうと考えていました。

そこで、grafのショールームやカフェをつくったり、ワークショップやイベントを開催したりして、モノづくりとコトづくりを同時に届けるようにしてきました。後から、僕らのそいう取り組みを「ブランディング」と呼ぶんだとメーカーさんたちから教わりました。

現在ではものづくりや商品開発だけでなく、企業や地域のブランドを構築していくような仕事や、瀬戸内国際芸術祭にアーティストとして参加したり、仕事の領域は年々広がってきています。

地域をブランディングするということ

服部 今取り組んでいる仕事に、「MUSUBU SHIGA(むすぶ滋賀)」という滋賀県のブランディングがあります。とても社会的な意義のあるプロジェクトで、それを少し紹介します。

滋賀県のブランディングプロジェクト「MUSUBU SHIGA」

 

地域のブランディングというと、たとえばキャラクターをつくったり、個々の商品のブランドをつくっていく手法などがありますが、このプロジェクトではリサーチからブランディングを始めるという方法でやっています。どういうことかというと、47都道府県、有名な場所や特産物の情報はみんなイメージをすでに持っている。たとえば滋賀なら琵琶湖、名古屋ならシャチホコといったように。こうした多くの人が今まで見聞きしてきた情報以外のことがこれからのブランディングには必要なのです。

それは何かというと、観光でもなく、メジャーな産業でもなく、むしろ、そこにある暮らしを伝えることが強力なブランドになるのではないかと考えています。たとえばテレビ放送のメジャーチャンネンルとローカルチャンネルと似ています。けっしてメジャーチャンネルで取り上げらない、その土地ならではのこだわりのポイントだけをドキュメントしていくことで、新しい点を線にし面にしていく手法です。

ブランドとは「ものがたり」なんです。「もの」と「語り」がないと成立しない。単にものをつくるだけでなく、その土地ならではのつくり方をリサーチして語ってみる。そのプロセスの中で新しいつくり方を発見できるんです。

またリサーチには、歴史、ツーリズム、クラフト、食、地域産業、ランドスケープという、6つのカテゴリーを用意しました。カテゴリーごとに、僕らが「リサーチャー」と呼んでいる専門家に参加してもらって一緒にリサーチをしています。地域産業ならD&DEPARTMENTのナガオカケンメイさん、クラフトならランドスケーププロダクトの中原慎一郎さん、ランドスケープなら写真家の濱田英明さん、食ならフードディレクターの野村友里さんといった方々に来てもらいました。彼らとよそ者の視点で地域の人々に話を聞きながら、地元では日常になっている固定概念を少しずつ崩しながら、そこにある魅力を発見していきます。

たとえば、野村友里さんは、訪れた酒蔵の米麹を使って、有機栽培のイチゴと掛け合わせてイチゴジャムをつくることを提案したり、僕らは触媒のような役割を果たしながら、今まで想像もしなかった商品開発の発想が生まれてくるのです。

コンセプトはつくるものではなく、見つけ出すもの

江副 僕は今九州の大分にいるんですが、淡路のプロジェクトが立ち上がった当時は福岡にいて、「九州ちくご元気計画」という非常に大きなプロジェクトの総合プロデュースをしていました。かなり成果が上がったプロジェクトで、それと同じような仕組みで淡路でもやりたいと、この「淡路はたらくカタチ研究島」のプロジェクトの発起人が福岡に訪ねてきてくれました。

僕は若干腰が引けながらも、結果コミットすることになった。ただ、九州から淡路島は遠いので、密なプロデュースは難しい。近場の関西圏は人材が豊富なはずだから、たとえばgrafの服部さんがやってくれるといいねと発起人の彼女に話をしたら、もう繋がっていると言うので、即会いに行きました。初めて会ってすぐに服部さんはこちらの意図を理解してくれて、意気投合しました。

服部 それまで僕は地域の仕事でも、ものづくりの産地に呼ばれることが多かったんですけど、江副さんから話を聞いて、地域で仕事自体をつくりだすプロジェクトなんてすごく面白そうだと思って、参加したんですね。でも、この淡路のプロジェクトに参加していなかったら、多分、今の僕はいないと思うくらい感謝しているんですよ。

やっぱりそれまでは、モノをつくることにすごく専念してきたんですが、このプロジェクトをきっかけにコミュニティの中でそれをどうやって育んでいくべきなのかということを、より深く考えてやれるようになりましたね。

淡路はたらくカタチ研究島の立ち上げメンバーと江副直樹さん(右)

 

江副 僕は多いときはこの10年で、6~7か所、大小のああいうプロジェクトをやってきたんですが、どこに行っても必ずみんな同じことを言うんですよ。「ここには何もない」って。でも、それは日常に慣れすぎていて見えていないだけなんですね。

原石はどこにでもあるというのはいろんな地域に行けば行くほど思えるようになりました。だから地域間で差がつくのは、その原石に気づいて、磨くかどうかだけなんです。その磨き方の最たるものはデザインで、客観性を持ち込むのが僕らの仕事なんです。

服部 僕はコンセプトはつくるものではなく、見つけ出すものだと思っています。コンセプトはいわば種みたいなもので、土の上に落ちて芽が出ているんだけど、時代の流れでどんどん落ち葉が覆いかぶさって見えなくなっているのが今の状況です。その落ち葉を1枚ずつ剥がして、コンセプトを見つけ出す作業がデザインじゃないかと思っています。

江副 なるほど。

服部 その芽が見つかったら、いつどのように栄養や水や光をあげたらよいかを考えます。栄養というのはその場を育む力を上げることで、水は流通させるための手段をつくっていくこと、光は発信すること。こんなふうに捉えるようになりました。

江副 各地の伝統も、時間が蓄積することで、その中間の部分だけが表に見えすぎてしまっていて、本質が見えなくなっています。僕らが外からやってきて、それをほじくり返す作業をしているようなところがある。さっきの建具屋さんの話でも、あえて建具をつくらなかったのも、守るべきものと変えるべきものを選別する必要があると思ったからです。すべてを守ろうとするから、伝統産業は硬直するんです。

服部 最近気づいたんですけど、伝統ってね、変えたらいけないものと変えてもいいものがあるんです。伝統には思想、技術、習慣の3つの要素があって、思想は変えたらいけなくて、技術は代々替わることによってブラッシュアップされていく。唯一変えていいものは習慣で、デザインは習慣を変える作業でもあると思います。

効率から感覚へ、人々がアクションを起こす原動力

江副 この「淡路はたらくカタチ研究島」は厚生労働省の事業です。僕はもともと行政の仕事はあまり信用していなくて、やったことなかったんですが、大分の竹田という山間部の街で同じ厚労省の事業を採択して、僕が呼ばれたんです。その事業の内容について尋ねると、みんなで勉強をしスキルアップして、雇用を促進するための制度だと聞かされました。

でも竹田の山の中に雇用をどんどん確保してくれる企業なんてほとんどないんですよ。これじゃ制度自体が絵に描いた餅じゃないですか。雇用のためにはその前段で、人の手が必要になるくらい繁盛する商売やビジネスがないとうまくいかない。地元の人は自分がやっているビジネスをもっと繁盛させたいと当然思っているから、そこを刺激した方がいいと、僕は厚労省で自信を持って説明したんですよ。そうしないと雇用が絶対生まれないと。それが「ちくご方式」として全国に広まりました。

服部 今まで効率よく生産することが推進され、効率よく社会もつくられてきました。でも効率というのは「五感」という要素を削っていく作業なんです。機械生産をすれば人を減らします。人を減らすことは人のための環境を整えなくていいわけなので、心地のいいライティングとか、心地のいい壁の色といった五感に訴える要素は排除されます。

江副 たしかに、感覚を排除する、直感を禁止するという状態が絶対起こるんです。物事がスタートした時は曖昧であやふやでみんな手さぐりだったものが、具体化して可視化されると、そういうことだったのかと誰もが参入してきて、その頃に物事の手続き化が始まるんですよ。それがまさに効率化の落とし穴。

服部 そうそう。プロジェクトが始まる時に揃っていた、面白い発想や楽しいメンバーが、都合のいいプログラムに成長したときには、なくなってしまうんです。

江副 僕は世の中は感情と欲望で動いていると考えています。実はプロデュースは説得業みたいなところがあって、仕事の中で人を説得し突破しなければならない局面がたくさんあります。人を説得するときに意識しているのは、感情と欲望なんです。理屈で正論を言って合理的に説明したからといって、みんながわかるかというと、絶対そんなことはないんですよ。相手にとってどんな風に心地いいか、面白いか、そのあたりをうまく言語化して伝えたり、想像させると、やっとみんなが動き始めるんですよ。

淡路はたらくカタチ研究島の講座、右が講師の服部滋樹さん

 

服部 今回の淡路のプロジェクトでは、みんなで仕事をつくろうという意欲のある人たちが集まって、どんな仕事にするかという目標はあまり決まっていなかったけど、目的は仕事をつくることだと明快だった。

江副 実は同じように厚労省のお金を使った事業をこれまでいくつかやったんですけど、淡路のプロジェクトはかなりうまくいっている方なんですね。厚労省の事業の制約が厳しくなった時期でしたが、きちんと商品をつくり、本までできたというのは、すごく珍しい。さらに、期間が決まっている事業なので、事業が終わると解散してしまうんですが、淡路では事業を継承する人が現れた。これも他の地域ではなかったことですね。それができたのは、行政の中にも地域にも熱い人がいて、彼らの熱がうまく噛み合った結果ですね。

服部 そういう地域の中でアクションを起こせる人と、行政と、よそ者、この三者が揃った瞬間にプロジェクトの動きは一気に加速しますね。

江副 一方で、意図的に、戦略的にその状況がつくれると、本当はもっといいと思うんですよね。助成制度が必ずしも全部いいとは思いませんが、活用の仕方によっては地域の役に立ちますし、もっと使いやすいものになるようにプロデュースしたいくらいです。

これまでいろいろな地域で事業をお手伝いしてきて、行政が変わらないと地域が変われない状況を見てきました。ようやく最近は行政も少しずつ変わってきて、今僕がいる大分県では、知事が産業のクリエイティブ化を打ち出し、来年から具体的に動き始めますし、佐賀県でも「さがデザイン」というセクションができたんですよ。

服部 行政の30代の職員にも、地域をなんとかしたいと思っている熱い人が増えているように思うし、20代の若者も地元に戻って何かやりたいと考える子たちが増えましたね。

江副 都会に暮らしていても、農的なものに憧れたりとか、たとえ経済指標では衰退している地域でもどこか本能的なもの、直感の部分で、価値を見いだしている人が増えているんでしょうね。この現象は偶然じゃなくてこれまでの社会の反動だと思います。そんなムーブメントの中で、僕らのような職能の人間が何か一緒に手伝えるといいなと思っています。

服部 僕にとっては、こういう仕事をやりながら、第2、第3の故郷が生まれていくのがすごく幸せなことですね。今、地域でアクションを起こそうとしている人たちは全国にたくさんいる。彼らがネットワークを組めば、日本はもっと面白くなるんじゃないでしょうか。

2016年3月4日「地域×デザイン~まちを編みなおす20のプロジェクト」展
(主催:東京ミッドタウン・デザインハブ、企画運営:日本デザイン振興会、事業構想大学院大学)にて開催。

 

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