自転車コミュニティビジネス

近藤隆二郎 編著/五環生活・輪の国びわ湖推進協議会 著

内容紹介

空前の自転車ブームを受けて新しい自転車ビジネスが次々におこり、地域を変え始めている。「自転車の移動力を活かす」「自転車の楽しみ方を提案する」「よりよい自転車社会をデザインする」の切り口で、多彩に展開する全国の自転車ビジネスの現状と可能性を一挙紹介。「自転車で社会を変えたい」アナタのための初のガイド。

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体 裁 四六・184頁・定価 本体1900円+税
ISBN 978-4-7615-1320-7
発行日 2013/03/15
装 丁 KOTO DESIGN Inc.


目次著者紹介おわりに
はじめに

1 広がる自転車コミュニティビジネス

2 自転車の移動力を活かす

〔はこぶ〕自転車タクシー
〔かりる〕レンタサイクル
〔とどける〕自転車便

3 自転車の楽しみ方を提案する

〔ひろげる〕自転車ガール!
〔つながる〕自転車観光ネットワーク
〔いざなう〕自転車イベントの場
〔のせる〕サイクル+トレイン・クルージング・バス
〔あつまる〕サイクルカフェ
〔うる〕自転車屋台
〔こだわる〕サイクルスタイル

4 よりよい自転車社会をデザインする

〔ひろげる〕新しい自転車の開発
〔とめる〕駐輪空間ビジネス
〔さがす〕自転車マップ!
〔まもる〕自転車保険+走行空間
〔よみがえる〕自転車のリサイクル

5 自転車ビジネスの未来

おわりに

近藤隆二郎(こんどう りゅうじろう)

滋賀県立大学環境科学部准教授(専門:環境社会システム、環境計画)、NPO法人五環生活代表理事、輪の国びわ湖推進協議会会長。1965年生。大阪大学大学院工学研究科博士後期課程単位取得退学(1994年3月)。和歌山大学システム工学部環境システム学科講師・助教授を経て、滋賀県立大学環境科学部環境計画学科助教授(1999年~)。

NPO法人五環生活

2006年設立。自転車タクシー・レンタサイクル・まっくらカフェ・エコツアー・ワークショップ・人材育成などの事業を実施。

輪の国びわ湖推進協議会

2009年設立。びわ湖一周サイクリングを通した自転車利用促進関連の事業を展開。13のNPO・企業等で構成。

自転車という題材に取り組み始めたのが2002年だから、すでに10年が過ぎたことになる。思い返せば、自転車には通勤で乗っている程度で、研究テーマとかまちづくり実践のテーマとして取り組もうとは思ってもいなかったのだ。ところが、ひょんなことから自転車の委員会に巻き込まれる中で、「あれ?自転車ってけっこう面白いし、すごく可能性を秘めているな」と思ったのがきっかけだった。そして自転車好きの方々が、あれこれ議論する前に動いて調査したり実践するというタイプであることに惹かれていった。今思えば、身体から計画するということも無意識ながら楽しんでいたのかもしれない。議論はするけれど、この自転車というテーマはなかなかマクロ的にならないのである。放置問題にしてもレンタサイクルにしても、他のごみ問題や環境基本計画や公共交通活性化会議とは違って、あくまでもミクロなヒトと自転車と空間との関係からずれることはない。机上の空論になりにくいのだ。パタンランゲージを提唱するアレグザンダーは、マスタープランは失敗すると言いきっている。自転車計画も、そういったマスタープランではなかなかに市民のカラダとはつながりにくい。そこで、本書は言わば、自転車版パタンランゲージをつくってみようという試みでもあった。自転車にとって居心地のよい空間をパッチワークのように組み上げる試みである。
この試みが成功したかどうかはわからない。もしかしたら、自転車で一儲けしようとした方には拍子抜けであったかもしれない。決して儲かるコツを述べているわけではないからだ。ただ、取材をしている皆さんに共通するのは、自転車がもつ等身大性、身の丈発想ということである。この身の丈コンセプトこそが自転車コミュニティビジネスのぶれない大事な点であろう。
本書の企画をはじめたのは2011年11月のことであった。五環生活が5周年を迎えて、今一度自分たちのことを振り返ってみたいということと、若いスタッフにむしろ国内のさまざまな事例を取材する中で学んで欲しいという意図も持っていた。学芸出版社の岩崎さんに相談しながら、新しい自転車コミュニティビジネスの動向を広く紹介する趣旨で企画を立て、その後は五環生活ならびに輪の国びわ湖のみんなに取材と執筆を怒濤の勢いで進めてもらった。執筆が初めての若いスタッフもいて、それらをリライト的に支えてくれたのが目片雅絵さんである。遅々として進まない私の執筆を後押ししていただいて、何とか2013年春には間に合うことになった。
取材に応じていただいた各地の皆さんには、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。また、NPO法人五環生活は、歴代の理事・スタッフそして会員さんはじめさまざまな皆様に支えられてきました。そういったつながりの中にあってこそ、自転車コミュニティビジネスを続けさせていただくことができていると思います。ありがとうございました。

近藤隆二郎