新版 コミュニティ・ビジネス
内容紹介
人口減少の時代、「お上」に頼っていては地域の未来はない。ぼやいているヒマがあるなら自ら行動しよう。では、どうするのか。本書は誰もが取り組め、取り組む人を元気にし、地域を豊かにするコミュニティ・ビジネス(CB)の考え方と実践例を、日本に初めてCBを紹介した著者が集大成した定本、待望の大刷新版である。
体 裁 四六・208頁・定価 本体1800円+税
ISBN 978-4-7615-1277-4
発行日 2010/12/20
装 丁 上野 かおる
はじめに
第1章 コミュニティ・ビジネスとは何か~CBを理解するための基本ポイント
①コミュニティ・ビジネスの〈定義〉
②コミュニティ・ビジネスの〈視点〉(コンセプト)
③コミュニティ・ビジネスの〈領域〉
④コミュニティ・ビジネスと〈生活者ニーズ〉
⑤コミュニティ・ビジネスの〈効果〉
⑥コミュニティ・ビジネスの〈事業化フロー〉
⑦コミュニティ・ビジネスの〈問題認識と課題〉
⑧コミュニティ・ビジネスの〈生活にかかわる14分野〉
⑨コミュニティ・ビジネスを〈支える人々や仕組み〉(ステークホルダー)
⑩コミュニティ・ビジネスの〈資金調達〉
⑪コミュニティ・ビジネスの〈発展プロセス〉
⑫まとめ《コミュニティ・ビジネスの〈特徴〉》
コラム健康な暮らしとは人間が集住することで成立するもの
ゆったりとした時間が流れるまち
第2章 事例に見るコミュニティ・ビジネスの特徴
1 先進事例に見るコミュニティ・ビジネスのポイント
①地域に密着していること
②地域の問題への気づき
③高齢者の活躍
④身近な地域資源の活用
⑤多分野にわたるビジネススタイル
⑥地域の居場所づくり
⑦女性のエンパワーメント
⑧地域雇用の創出
⑨地域貢献活動
コラム50の手習い
2 コミュニティ・ビジネスの成功ポイント
3 コミュニティ・ビジネス起業時の評価ポイント
コラム坂本龍馬と牧野富太郎
4 コミュニティ・ビジネスの評価ポイント
コラムコミュニティ・ビジネスは地域経済の自立を育む
第3章 住民の主導による地域経営
1 地域コミュニティの衰退
コラムまちづくりにはアラジン作戦を展開せよ
2 住民主導による地域経営
①飯田市上久堅地区に見るいきいきまちづくり活動
②まちにやさしい仕事の先進地・東京都墨田区
③野沢温泉村はコミュニティ産業
コラム両国のまちとコミュニティ・ビジネス
3 地域コミュニティを元気に
コラム勝ち組はやがて負け組みになる。一人勝ちのないのが自然界の法則だ
東京は日本で一番のコンパクトシティだ
第4章 新たな時代に向けたコミュニティ・ビジネスの展望と課題
1 団塊世代の地域参画によるコミュニティの活性化
①団塊世代の地域参画とコミュニティ・ビジネス
②団塊世代のためのコミュニティ・ビジネスのレクチャー
③今後も期待される参画と起業の拡大
コラム足尾で10年間継続の環境産業博覧会をやろう!
2 高齢社会を支える顔の見える関係を築く
①小さな「街」の大きな取り組み
②高齢者向けコミュニティ・ビジネスの発展段階
③多様なニーズに応じた柔軟性のあるサービスづくり
コラム草刈が一億円をこえる事業になる/経済生活の友愛と「空と風」
3 地域のニーズにこたえる社会起業と社会起業家
①社会起業の動きとコミュニティ・ビジネス
②社会起業の具体例
③コミュニティ・ビジネスがもたらす地域への効果
④ソーシャル・インクルージョンと働き方のユニバーサル・デザイン
コラム奇兵隊の諸君!われ草莽の民とならん
自立した市民社会に向けて、今日で社会人生活30年
第5章 新たな公共に向けて
1 自立型地域社会モデルの創出に向けて
2 地域社会における多重多層の戦略コミュニティの構築
3 コミュニティ・ビジネスの普及に向けた六つの改革の視点
①視点1 中間支援組織(インターミディアリー)の充実
②視点2 市民主体の地域自治組織の構築に向けた法制面の柔軟な対応
③視点3 寄付税制等の再構築
④視点4 行政財産の効果的な活用と管理・運営面に関する創意工夫
⑤視点5 行政および自治体職員の役割の変化と拡充
⑥視点6 地方自治体の自主財源の確保に向けた自主課税権および自主起債権の確立
コラムコミュニティ・ビジネスの根幹にあるのは『地域学』である
4 21世紀の新たなコミュニティとは
コラム地域に活かされる寺
ワーク・ライフ・バランスを実践するいい男
初出掲載一覧・参考引用文献・参考情報
おわりに
21世紀もすでに10年が経過し、ますます地球規模で共に絆を確認し、手をたずさえ、助け合う時代を迎えています。「共に」というのは英語のコミュニティ、コープ、コラボレーション、コミュニケーションなどに代表される「Co」から始まる言葉の接頭語で「共に分かち合う」ことを意味しています。人間関係がとかく希薄になりがちな世の中ですが、「共に分かち合う」ことが求められ、現代社会の諸問題を解決する基点のキーワードになっています。私はそうした「共に分かち合う」時代を意識して、その基点になる“コミュニティ”に注目し、いまから23年前に研究を始めました。そして今でも、コミュニティが人々の注目を集めていることを真摯に受けとめようとしています。
日本においては、多極分散、地方分権、市民・住民自治など、地方の時代が叫ばれて久しいですが、東京一極集中は一向に改善されません。コミュニティはますます衰退し、住民の顔がまったく見えてきません。コミュニティの存在自体が希薄なのです。しかし一方、阪神・淡路大震災以降、NPO法が成立し、コミュニティの基礎集団としての役割や機能が、良い方向で見直されてきています。市民・住民が安全で快適な環境のもとに自立して生き生きと暮らしていくには、コミュニティが大切な要素なのです。コミュニティの活性化なくして、わが国の市民・住民自治は成立し得ないといっても過言ではないでしょう。
コミュニティという言葉自体は領域が広く、しかも奥行きが深く、アメリカの社会学者・マッキーバーの定義以来、その意味や定義については百家争鳴しています。私はそうしたコミュニティの定義を学問的に極めるのではなく、むしろ現場を歩く中で目のあたりにしたコミュニティの現実、たとえばそれは、空洞化する町工場、基礎集団としての機能が失われていく町内会や自治会、後継者問題で廃業や業種業態転換を迫られている駅前の商店街、若者が流出し高齢化率の高い農山漁村の過疎地など、コミュニティが抱えるさまざまな現場の問題から取り組んでいきたいと考えています。それらの解決に向けて、コミュニティの活力を生み出すコミュニティのための事業、すなわち『コミュニティ・ビジネス』を導入し、新しい時代のイノベーション手法として、実際の地域コミュニティを再生したいと考えるのです。
本書は、コミュニティにおける地域社会創造の方策を集大成したものです。各地で地域活性化に取り組んでおられる方、商店街や中心市街地を地域コミュニティの生活基点にしたいと考えている方、社会起業家をめざしてコミュニティの現場で社会的な問題を解決するための仕事起こしをしたいと考えている方には、特に読んでいただきたいと思います。
旧版の『コミュニティ・ビジネス』を1999年10月に中央大学出版部より上梓してから、すでに11年が経過しました。このたび改訂するにあたり中央大学出版部の承諾を得て、京都の学芸出版社よりあらたに出版する運びとなりました。その後11年間の全国各地を巡る地域探訪への厚みも加わりました。日本各地における講演やコミュニティ・ビジネス起業塾は、とうとう1100回をこえました。最近は、韓国をはじめ海外からも講演依頼が来るようになりました。私の地域コミュニティの活性化や再生に関する考え方と行動に、あらためて熱いご批判を賜りたいと思います。
著 者
日本が戦後65年にわたり営々と築いてきた社会経済構造が音をたてて崩壊しています。それと同時に新しい社会経済の創造が始まっています。創造的な破壊を繰り返しながら新しい仕組みに創り変えられつつあるというのが、いまの日本社会の現状でしょうか。それは、インターネットなどに代表されるICT(情報通信技術)を活用した高度情報社会、すなわち(自立分散型の)知価社会に向かっていくことを示しています。大量生産、大量消費、均一社会をめざしてきたわが国も、ここで大きく方向転換をし、市民・住民自らの発意と工夫によって知価を産み出す社会経済構造に創り変えていかなければならないのです。
それにしても、そのことがもたらす市民の生活、暮らしへの影響はあまりにも大きすぎます。国内を見渡せば地方都市の中心街はすでに衰退しきっており、次代を担う後継者が育っていません。中小・零細の製造業も、いままでの大企業系列から解き放たれ、真の自立が求められています。そうした生業への変化が求められているのは零細事業者や自営業の方ばかりではありません。いままで企業に従順だった中高年のサラリーマンまでが、企業から放り出され、職を失って、家庭へ、そして地域コミュニティへと還ってきているのです。
そのような地域コミュニティでは、彼らが自己雇用を創りだすために仕事を起こしやすい環境を整備しなければなりません。このことは、わが国が明治維新以来の大変革期を迎えていることを意味します。明治維新時は身分と職を失った多くの武士が、自己雇用として農業に活路を見出して帰農し、地域へと還って行きました。現代社会に視線を戻せば、団塊世代のサラリーマンや派遣社員が企業から大量に放出され、職を失って家庭、地域に戻ってくるというのが現状です。
彼らが地域コミュニティで自らの発意と工夫によって知価を産み出す方法の一つに、本書の命題であるコミュニティ・ビジネスがあります。このコミュニティ・ビジネスは、自己雇用によって生きがいや働きがいを生み出す効果とスモール・ビジネスを通して地域コミュニティに多少なりとも貢献できるという利点があります。行き場を失った(社会的排除にあった)人たちの受け皿として、地域コミュニティがその基点になることで、再び彼らを地域社会に取り戻すことに繋がるのではないでしょうか。等身大で無理をせず、“なりわい”を生む小さな仕事が本当に必要になってきているのです。コミュニティ・ビジネスは、そうした時代の要請から生まれ、市民・住民が等身大で自立して暮らしていく方法の一つとして、今後ますます必要とされることでしょう。
本書を上梓するにあたっては、初版の拙著『コミュニティ・ビジネス』(中央大学出版部)発行以来、多くの方々にご教示、ご支援、ご協力をいただきました。地域コミュニティの現場では、多くの方から暖かい励ましと適切なアドバイスをいただきました。再びここにその改定版を出せることに望外の喜びを感じます。
編集作業は、筆者が代表を務めるコミュニティビジネス総合研究所の有償ボランティア・スタッフであった横山梓(当時東京大学大学院生)さん、そして現在も強力な支援スタッフである東海林伸篤(コミュニティ・ビジネス・ネットワーク事務局長)さん、山下琴恵(コミュニティ・ビジネス・ネットワーク・スタッフ)さんの両君にも手伝ってもらいました。この場を借りまして多くのみなさまに深く感謝の意を申し上げます。なお、今回大幅な改訂を行いましたが、文意の都合上、初版時のまま掲載した箇所もあります。そうしたこともお含みおきいただければ幸いです。最後に、出版の機会を与えてくださった学芸出版社の前田裕資さん、小丸和恵さんにあらためて感謝を申し上げます。
二〇一〇年 実りの秋
江ノ電走る鎌倉高校前駅のプラットホームにて
細内 信孝
- 著者によるセミナー(2011.4.6京都)
- 著者によるセミナー(2011.2.1東京)
- 著者インタビュー
- 生産性新聞2011/2/15号「識者の眼」への寄稿(細内信孝)
- 日本政策金融公庫「AFCフォーラム」2011年5月号への寄稿(細内信孝)
著者連絡先変更
本書巻末に掲載の著者連絡先(E-mail)が変わりました。
新しいアドレスは下記です。
hosouchi188(@)gmail.com
(@)は@に置き換えてください