強い地元企業をつくる
事業承継で生まれ変わった10の実践

近藤清人 著

内容紹介

いま地方の中小企業は、事業の衰退と世代交代に苦しんでいる。そんななか、ソーシャルマインドを持った若い後継者が、地域資源を活かし、家業を生まれ変わらせ、地元にも貢献する動きがある。本書では、製造業、建設業、酒造業など10の事例を紹介しながら、地元企業の自立を促す承継手法と、地域での連携を明らかにする。

体 裁 四六・224頁・定価 本体2200円+税
ISBN 978-4-7615-2677-1
発行日 2018/05/10
装 丁 中澤耕平


目次著者紹介はじめにおわりに乱丁本の回収について

1章 地元企業が元気になれば地域も元気になる

良いものを作っていれば売れる時代は終わった
地元企業が元気になれば、地域経済は良くなる
変わってきた地元企業の役割
変えてはいけないアイデンティティ
元気な企業の3つの条件
他人は他人と考えるべき─陥りやすい外部コンサルティングの落とし穴
現実にある企業の高齢化、後継者の役割
地元企業の「承継起業」のすすめ─地域資源を活かしたベンチャー

2章 後継者が地元企業を生まれ変わらせる

「継がなければならなかった」という言い訳を捨てる
もう一度地域で起業する覚悟で挑む「承継起業」
地域資源を活かすことで、売上げも地域も同時に良くなる
地方とデザインの付き合い方
「衰退する売上げ」と「成長する売上げ」の大きな違い
再起業のための3つのステージ
誰かがやってくれるのではない、自分がやる

3章 強みを活かして結果を出す10のケーススタディ

01 直径100mからのまちづくり 地主が自分たちで高めた地域の価値

―――― DAMAYA COMPANY㈱

02 顧客と直接つながり販路拡大 空き家問題も解決する

―――― 松岡塗装店

03 木材の地産地消で山を守り地元の経済を潤す

―――― ㈱栄建

04 島の食文化を都心と次世代に伝える食品メーカー

―――― ㈲井上商店

05 長期熟成・天然醸造の伝統の醤油造りをデザインで継承する醤油蔵

―――― 大徳醤油㈱

06 「美味しい食卓」を地域と一体化した酒造りで提案する老舗酒蔵

―――― 田治米合名会社

07 地域の自然の恵みを活かしたブランディング展開で利益300%増

―――― 銀海酒造㈲

08 アクティブなライフスタイルを世界に発信する靴下メーカー

―――― 昌和莫大小㈱

09 地場の竹産業を武器に世界へ発信

―――― 近畿編針㈱

10 地場産業の若手が創る地域ブランド

―――― 多可播州織ブランドプロジェクト

4章 地元プレイヤーたちの連携

企業が自ら走れるための連携体制
─支援機関、金融機関、コンサルタントとの関係づくり
新たな連携による承継起業に向けた取組みが始まった
地元企業こそ地域活性化の根源

インタビュー
01 多可町商工会 後藤泰樹
02 但馬信用金庫 宮垣健生

寄稿
「観光の視点から見た地域の魅力の引き出し方」
(株)日本旅行/桂 武弘

近藤 清人(こんどう きよと)

株式会社 SASI DESIGN代表。1979年兵庫県丹波市生まれ。
中小企業庁や兵庫県、京都府、奈良県商工会連合会など派遣専門家として、西日本を中心に80社を超える中小企業のブランド戦略に携わる。アイデンティティデザインという独自手法で、デザインだけでなく、経営戦略としての「しくみ」を提供し中小企業の価値を引き出す。クライアント商品のメニュー開発や異業種交流を行えるcafe DOORを経営。起業や承継起業を総合的にサポートするコワーキングスペースDOORを運営。

昨今、「地方のデザイン」や「ソーシャルビジネス」、「まちづくり」など地域に山積する課題を解決するためのキーワードを耳にすることが多い。

本書は「なんとか地元を活性化したい」「他の地方では成功例も耳にするようになったが、うちの地元はどうにかならないのか」「デザインの力を使って地方を盛り上げたい」と考えている人に読んでもらいたい。
私もその1人であったが、単に「デザイン」や「まちづくり」など魔法のような言葉だけで地方は本当に良くならないことがわかってきた。

ではどうすればよいかと聞かれると、地元企業が「自分の中や地域に存在する資源」を徹底的に考え抜き、事業者が楽しみながら仕事をして潤っていくことだと考えている。それこそが、スピードは遅くとも確実に地域が活性化していくための答えである。

私は大嫌いであった田舎を出て進学、デザイン事務所に就職し、10年ほどインテリアを中心としたデザイン業務に従事してきた。

しかし、その時「地方とデザイン」に対して、このままではいけないと考えさせられる出来事があった。

それは国内需要の減少から元気のなくなりつつあった全国の伝統工芸地に、補助金を使い有名デザイナーが入り、新たなデザインを施すことで世界に販売していくプロジェクトに営業企画として参加したことだった。

私が関わっていた産地は、デザイナーの才能により当初はヒットしたものの、その後すぐに売れなくなった。ここだけでなくほかの多くの産地でも、デザインされた商品在庫が売れ残り、補助金が切れればデザイナーはそこにはいなくなるという悲惨な状況が起こっていると容易に想像できる。

デザイナーたちが素晴らしいデザインをし、伝統工芸や地方の可能性を示してくれたことに関して、尊敬と感謝の念はあるが、自分の地元がそうであったらと考えると正直嫌であった。

田舎の地元は決して好きではなかったが、自分が生まれ育った場所を誰かにデザインでかき回されてしまうような気がして、やりきれない気持ちになった。

考えれば考えるほど、「自分の地元を自分でデザインしたい」という気持ちが強くなっていった。

そこで都市部と地元をつなぐ交流人口を増やすことが重要だと考え、イベントを行おうと決意した。

しかし、我が地元には都市部から人を呼んでくる強力な観光資源がそれほどなかった。あったとしても、一つ一つが車での移動が不可欠なほど離れており、目の前には田園風景がひたすら広がるという状況。地元の人も「何もない」と言う中で、神社仏閣、景勝地だけに頼らず、山や川、田園やそこに注がれる日光やそよぐ風など、「何もないと言われている目の前に広がる景色こそが資源」と捉えた。そこで、田園風景に音楽やアートやマルシェなど、今楽しみたい文化のエッセンスを付け加えた「歌とピクニック」というイベントを2010年から計画し、地元新聞社や市役所などを駆けずり回ってプレゼンテーションした。

大変苦労したが、想いを共にした実行委員の助けもあり、「何もない」と言われていた地元の山の中の会場に、都市部からの来場者を含め予想をはるかに超える2000人もの方々が来場し、自分の想いが通じたと感涙した。

狙い通り都市部と地元との交流が促され、社会課題を解決するソーシャルデザインの注目の事例として、メディアに取り上げられるようになった。

確かに地元を良くする活動として評価をされ、来場者数を含め、想像を超える結果となったことからも一定の成功を収めたと言える。だがそれを続ける気力がなくなってしまった。非常に労力がかかる上に、その労力に対する対価がどうしても捻出できないということが大きな原因である。

イベント自体の収支は黒字だったが、それは私を含む実行委委員、サポートスタッフのすべてがボランティアであったために成り立っていた。人件費を考えると大赤字であった。

具体的に計画を始めた2010年から、イベントの調整や準備に予想外の時間がかかった。会社勤めであった私の休日で補えばなんとかなるという甘い考えはもろくも崩れ、退社を余儀なくされた。イベントの準備や設営に毎日奔走し、何ヶ月も無給状態が続いていく現状に限界が見え、これをずっとやり続けることは不可能だと感じた。自分がまちをデザインすると宣言して始めたイベントではあったが、恥ずかしながら続けることができなかった。

自らの力不足に落ち込みながらも、まだ地元を良くしたいと考える中、地元の商工会から声がかかった。これまで売れていた商品が売れなくなり、売上げの減少に悩む地元企業を支援してほしいという依頼であった。それは地元の特産でもある黒枝豆のパッケージデザインであったが、デザインを支援した商品が運良くヒットした。

そのやり取りで事業者と様々な話をしていく中で、あることに気づいた。それは、地元の事業者の武器は地域に存在する資源そのものであるということだ。その武器を使い、売上げを伸ばすことで雇用を増やし、さらに設備投資を行い、さらなる地域資源を作っていた。自分のまちの資源を最大限に活用し、時流に見合う商売として売上げを伸ばし、新たな雇用だけでなく、地域の誇りを生んでいる。この事業者は、農業を通じて交流人口を増やしたいと言っていたが、実際に観光いちご園などで都市部との交流人口も増やしている。

事業者としては売上げ向上のために当たり前のことかもしれないが、自ら地元をデザインしようと躍起になっていた私から見ると、当然のように経済活動として地元を良くするその姿に学ぶところがあった。

地元を良くする活動にボランティアで取り組んでいた私からすると、地域の資源を活かし、経済活動を通して持続的に地元に還元するその姿はまさに、「自分のまちは自分でデザインする」ことにつながると感じた。これがきっかけとなり、地域の資源を活かし、これからの地元企業を作っていくことが、継続的に地域を良くすることになると信じるようになり、それを支援するデザイン会社を立ち上げ、活動を続けている。そこでは「事業者が自分らしくある」ことがポイントになる。

地域の人や、特有の地形や、そこから生まれてくる特産などの地域資源を、後を引き継いだ事業者が自らのパーソナリティを活かして、楽しく事業を展開する。どこにも真似のできないアイデンティティを明確化し、伝わりやすくデザインしていくことが、地元を継続的に良くしていくプレイヤーを作ることにつながると確信した。地方創生は、役所や支援機関だけの仕事ではない。

「自分のまちは自分でデザインする」。それは、誰かが良くしてくれるのを待つのではなく、目の前に広がる変えがたい資源を、自分の夢の達成に活用することだ。
それが地元の活性化につながり、日本全体に血流を促す第一歩であることは間違いない。

㈱SASI DESIGN 近藤清人

最近「SASI DESIGNはどのような会社ですか?」と尋ねられると、迷わず「地方創生をする会社です」と答えるようにしている。私自身の事業も地元を良くしたいという想いで始めたが、地域資源と事業者のやりたいことを結びつけるアイデンティティデザインという独自の手法で様々な地域を訪れ、様々な事業者と話をする中で、その確信も生まれた。

毎日のように事業者の相談を受ける中で、「御社のやりたいことはこういうことですよね?」と話すと、目の輝きが変わってくる。そこでは決してアドバイスはしない。経営者の思いの丈を受け止め、引き出した情報を整理し「こういうことがしたい」と自覚してもらうだけでも、やる気に満ち溢れることが多い。

私はいつも経営者に「私の中には成功の答えはありません。今は苦しいかもしれませんが、その答えは必ずあなたの中にあります」と伝える。
苦しくても、自分自身と、その置かれた地元の環境と向かい合って出した答えが、必ず売上げへと結びついていく。そしてその経営者は大切な地域に還元する。

まちづくりの観点から考えると、地元を継続的に良くしていくプレイヤーは間違いなく地元企業である。

私の力では広くてなんともならない日本全国に、アイデンティティデザインという地元企業の覚醒を促すメソッドで、日本全体を地元企業から良くするために仕事人生を捧げたい。

本書の制作にあたり、忙しい日々の業務の中、インタビューを通し実体験をお話しいただいた企業の方々、但馬信用金庫の宮垣健生氏、多可町商工会の後藤泰樹氏、本庄尚哉氏、また観光の観点から本書に寄稿いただいた日本旅行総研の桂武弘氏、㈱日本旅行の久下浩明氏に感謝したい。

最後に本書出版のきっかけを作ってもらった深水浩氏、そして初めての執筆に辛抱強く指導くださり、企画をまとめあげてくれた学芸出版社の中木保代氏と松本優真氏に心より感謝申し上げたい。

まだまだ理想にはほど遠いが、今からやらないと間に合わない。
すべての企業が変わると、日本全体は確実に変わる。

自分のまちは、自分でデザインする。

㈱SASI DESIGN 近藤清人

ご購入いただいた皆様へ

『強い地元企業をつくる 事業承継で生まれ変わった10の実践』をお求めいただき、誠にありがとうございます。

本書について、一部商品の97ページ~128ページにおいて、印刷工程のミスによる乱丁(ページの乱れ)が発生していることが判明いたしました。お手持ちの商品に乱丁を発見されましたら、お手数ですがご連絡先を明記の上、弊社宛に着払いでお送りください。すぐに代替品をお送りいたします。

該当する読者の皆様におかれましては、ご迷惑・ご不便をおかけいたしまして申し訳ございません。どうぞよろしくお願いいたします。

学芸出版社編集部
〒600-8216
京都市下京区木津屋橋通西洞院東入
TEL 075-342-2600 / FAX 075-343-0810

関連記事

『実践から学ぶ地方創生と地域金融』著者・江口晋太朗さんがnoteマガジン「『地方創生と地域金融』のこれから」を公開されています

『強い地元企業をつくる 事業承継で生まれ変わった10の実践』著者・近藤清人さんがPodcast「Bookcafe DOOR」をスタートされています

『伝統の技を世界で売る方法』が経済産業省「ふるさとデザインアカデミー」研修参考図書に指定されました

関連イベント

開催が決まり次第、お知らせします。