アルネ・ヤコブセン

和田菜穂子 著

内容紹介

デンマークが生んだモダンデザインの巨匠アルネ・ヤコブセン。建築家、デザイナーとして、今なお世界中で愛される名作を世に送りだした。本書では、シンプルで遊び心のあるユニークな建築、家具、プロダクトの創作の足跡を辿り、完璧なまでの機能美の追求、未来を見据えたものづくりの信念から生まれたデザインの魅力に迫る。

体 裁 A5・160頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-1269-9
発行日 2010/02/10
装 丁 坂東 慶一

目次著者紹介まえがき読者レビュー

Timeless Design

Chapter 1 ヤコブセンの生涯 Jacobsen’s Life

1 わんぱくな少年時代

2 頭角を現したアカデミー時代

3 成功と引き換えの孤独な家庭

4 スウェーデンへの亡命

5 戦後の目覚ましい活躍

Chapter 2 ヤコブセンの仕事 Jacobsen’s Works

1 斬新なアイディアに満ちた住宅

未来の家……ヤコブセンの原点
自邸……西欧モダニズムへの初の試み
ヤコブセンのサマーハウス……ランドスケープとの融合
シモニー邸……困難な条件をクリアしたミニマリズム
コックフェルト氏のサマーハウス……ポップな色彩
レオ・ヘンリクセン邸……円形へのこだわり

2 海辺に映える白の建築群

ベラヴィスタ集合住宅……海浜にそびえたつ白亜の殿堂
ベルビュー・シアター&レストラン……波をイメージした夏のレジャー施設
ベルビュー・ビーチの施設……ストライプで統一
マットソン乗馬クラブ……かまぼこ型のスポーツ施設
テキサコ・ガスステーション……アントチェアの原型

3 風土に根ざした集合住宅

スーホルムⅠ、Ⅱ、Ⅲ……戦後初の低層集合住宅
アレフースネ集合住宅……伝統素材への回帰

4 周囲に馴染んだオフィス・商業施設・工場

ノヴォ社増築……既存建築との連続性
ステリング・ビル……歴史的景観への配慮
魚のスモークハウス……断崖絶壁にそびえたつモニュメント

5 開かれた公共建築

オーフス市庁舎……物議をかもしたモダニズムの傑作
スレルズ市庁舎……控えめな合理主義
ロドオウア市庁舎……カーテンウォールのモダンなデザイン
ロドオウア図書館……水平線を強調したフラットなデザイン

6 採光を駆使した学校建築

ホービー小学校……光も人も集まる集会場
ムンケゴー小学校……ハイサイドライトの開口部と中庭
ニュエア小学校……センター・コリドーシステムでの工夫

7 トータルデザインの傑作

SASロイヤルホテル……徹底した完璧主義
デンマーク国立銀行……究極の芸術作品

Chapter 3 ヤコブセンのこだわり Jacobsen’s Manner

1 細部にこだわるデザイン

ドアノブ
階段
暖炉
灰皿
水栓金具
照明器具
テーブルウエア
時計

2 量産化のためのミニマム・デザイン

家具の量産化:アントチェア、セブンチェア
住宅の規格化:クーブフレックスハウス

3 同時代のモダニストから想を得たデザイン

白い箱型建築:
ル・コルビュジエの機能主義×トーヴァル・ペーダーセン邸
開放的なインテリアデザイン:
アスプルンドのヨーテボリ裁判所×オーフス市庁舎
近未来的な屋根の開閉システム:
プルーヴェのクリシー人民の家×ベルビュー・シアター
サマーハウスに見る北欧モダニズムの真髄:
アスプルンド×アールト×ヤコブセン

4 静なる緑のデザイン

水彩画に描かれた樹木
テキスタイル・デザイン、壁紙に描かれた植物
インテリアとしての緑の植栽
エクステリアとしての緑の植栽
注釈/年譜/主要作品リスト/地図
あとがき
図版出典・参考文献

和田 菜穂子(わだ なほこ)

1969年新潟県生まれ。東北芸術工科大学准教授、慶應義塾大学非常勤講師。学術博士(ph.D.)。1992年青山学院大学卒業、2006年慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得退学、2006~2008年デンマーク政府奨学生としてコペンハーゲン大学留学。2009年より現職。大学卒業後、一般企業、黒川紀章建築都市設計事務所に勤務。大学院在学中より神奈川県立近代美術館にて学芸員を兼ね、その後ドイツ・ヴィトラ・デザインミュージアムと共同で「ジャン・プルーヴェ展」、スイス・プロヘルヴェティア文化財団と共同で「スモール&ビューティフル:スイス現代デザイン展」の日本巡回展を手掛ける。建築・デザイン分野でのキュレーションが専門。世界各地のミュージアムを巡るのが趣味。著書に『近代ニッポンの水まわり』(学芸出版社)。オフィスDA Network(http://www.da-network.com)共同主宰。

Timeless Design

デンマークでは大切な人と過ごす「ゆったりとした時間や空間」を一番に考えています。それは辛く長い冬を快適に過ごすための生活の知恵から生まれたものでした。照明器具や家具などのインテリアデザインが発達したのもそこからです。孫の代まで末長く愛用される製品には、時代を経ても美しいデザイン、つまり〈Timeless Design〉が潜んでいます。機能性を保持したシンプルなデザインこそ、時代や国を超えて愛されるものなのです。

ミッドセンチュリーに活躍したアルネ・ヤコブセンは、家具デザイナーとしてその名が知られていますが、彼の名を知らなくても「アントチェア」や「セブンチェア」を目にしたことがあるはずです。これらの椅子は、究極なまでに無駄を削ぎ落し、機能美を追求した〈Timeless Design〉でした。

実はヤコブセンの本業は建築家で、彼の建築は今見ても驚愕する画期的なアイディアにあふれています。当時は斬新さゆえ、批判が多かったのも事実です。しかし今改めて見ても、新鮮な輝きを放ち続ける〈Timeless Design〉であることに気がつきます。そして「遊び心」を忘れていません。

本書は日本語初のヤコブセンの書籍となります。第1章ではヤコブセンの人物紹介をします。頑固一徹で、完璧主義者だったヤコブセン。その一方で、植物を愛するやさしい心の持ち主でもありました。第2章は主要作品の紹介です。デンマーク初の高層建築「SASロイヤルホテル」など、新しい挑戦を続けました。第3章はヤコブセンのこだわりについてです。彼のこだわりを4つに分類し、独自の視点から分析を行います。

筆者は2006年から2008年までの2年間、デンマークの首都コペンハーゲンで暮らしていました。住所はなんと偶然にもアルネ・ヤコブセン通り。「ヤコブセンについて、しっかり学びなさい!」という神様のお告げだったとしか思えません。いつか将来、ヤコブセンの展覧会を日本で開催することが夢ですが、その前にまず実際に訪れた数々の建築を写真や文章で紹介することが、私に課せられた使命だと思いました。

さあ、あなたもヤコブセン・ワールドの扉を開けてみませんか? きっと〈Timeless Design〉の虜となるはずです。

本書は、デンマーク人建築家アルネ・ヤコブセンの残した様々な仕事を伝える日本語版では初めての書籍である。画家を目指して水彩画に興じた少年時代、完璧主義者ゆえに生じた所員との衝突、忙しさのあまり顧みられなかった家族との生活、ガーデニングに興じる晩年など、ヤコブセンを等身大で浮き彫りにした今までにない著作である。

著者は2年間のデンマーク留学中に、ヤコブセンの設計した様々な建物を訪れ、住み手へのインタビューを行っており、建物の単なるデザインの良し悪しだけではなく、数々のエピソードとともにその使いやすさや快適さが紹介されているのが、本書の最大の特徴でもある。

本書を通して「Timeless design」とは何なのか、改めて考えさせられた。建築家はついついヤコブセンのデザインした立面や開口部の美しいプロポーション、自然素材の美しい色やテクスチャー、階段・手摺・窓枠などの繊細なディテールなどに目を奪われがちであるが、そこに警鐘を鳴らしている書でもある。建築家はもとよりプロダクトデザイナーの入門書としてもお薦めしたい。

ヤコブセンは建築以外に椅子・照明器具・食器・テキスタイル・壁紙・ドアノブ・灰皿・水栓金物のデザインを行い、トータルデザインを常に志していた。いずれもシンプルで、どこか可愛げのある、使い勝手の良いデザインである。トータルデザインを志向したプロダクトが、結果としてデファクト・スタンダードとして人々に愛され続けているのは「Timeless design」であることの証明だろう。

本書ではヤコブセンのデザインした成形合板椅子を製造するメーカー、フリッツ・ハンセン社の工場内の様子なども紹介している。著者は、現在、山形県にある東北芸術工科大学の准教授を務めている。柳宗理の成形合板椅子の製造も手掛ける家具会社「天童木工」のある山形県で、どのような活動を展開していくのか楽しみでもある。

(建築家/松本 淳)

担当編集者より

なぜ、アルネ・ヤコブセンのデザインは、半世紀以上も愛され続けるのか。著者はデンマークで、ヤコブセンが設計した多くの建築を訪れ、アーカイブで彼の描いた図面やスケッチに触れ、元所員や住まい手へのインタビューを通じて、その答えを探し続け、一冊の本にまとめました。日本では椅子のデザイナーとして人気がありますが、本書は、建築家として、建物からカトラリーまで様々なものをデザインしたヤコブセンの多面的な魅力、デザイナーという職業のサガについても読ませる一冊となっています。

(MH)

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2023年10月30日

『アルネ・ヤコブセン 時代を超えた造形美』(和田菜穂子 著)が「カーサ ブルータス」で紹介されました

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