リノベーションまちづくり

清水義次 著

内容紹介

空室が多く家賃の下がった衰退市街地の不動産を最小限の投資で蘇らせ、意欲ある事業者を集めてまちを再生する「現代版家守」(公民連携による自立型まちづくり会社)による取組が各地で始まっている。この動きをリードする著者が、従来の補助金頼みの活性化ではない、経営の視点からのエリア再生の全貌を初めて明らかにする。

体 裁 A5・208頁・定価 本体2500円+税
ISBN 978-4-7615-2575-0
発行日 2014/09/01
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史


目次著者紹介はじめに書評
はじめに

第1章 リノベーションまちづくりとは何か

01 リノベーションまちづくりは、何のために、何を使って、何をするのか
02 まちづくりのプレーヤーは誰か
03 民間主導型・小さいリノベーションのプロセス
04 公民連携のプロセス
05 リノベーションまちづくりの5ヶ年計画
06 まちを変えるプロジェクト
column 01 結果よりもプロセスに着目する

第2章 フィールドワークに基づくエリアマーケティング

01 まちに出て観察する
02 リノベーションまちづくりの可能性を見極める
03 考現学の手法を応用する
04 スモールエリアを定量的に把握する
05 スモールエリアと周辺のまちを定性的に把握する
06 エリアマーケティングとは
07 ストーリーを編集する 仮説・読解からエリアプロデュースへの展開
column 02 考現学をまちづくりに応用する

第3章 まち再生のマネジメント 自立型まちづくりの進め方

01 現代版家守とは何か
02 リノベーションまちづくりの具体的な手順
03 プロジェクトを実行する 事業計画・実施・検証・実行のPDCA
column 03 まちづくり会社マネジメントのための三種の神器

第4章 公民連携型・小規模なリノベーション

CASE01 北九州市小倉家守プロジェクト リノベーションまちづくりの典型
CASE02 千代田SOHOまちづくり 現代版家守事業の始まり
CASE03 神田RENプロジェクトとCentral East Tokyo
CASE04 家守塾
column 04 HEAD研究会

第5章 公民連携型・大規模なリノベーション

CASE01 歌舞伎町喜兵衛プロジェクトと吉本興業東京本部の廃校活用
CASE02 3331アーツ千代田 廃校を活用した民間自立型アートセンター
CASE03 岩手県紫波町オガールプロジェクト 公民連携で新しいまちの中心をつくる
column 05 エリアイノベーターズブートキャンプと公民連携事業機構

第6章 公民連携型の都市経営へ

01 公だ民だと言っているヒマはない
02 0を1にする/小さく生んで大きく育てる
03 公民の不動産オーナーが連携すれば都市は変わる
04 都市再生に補助金は要らない
05 民間主導のまちづくりは何が違うのか
06 行政の役割は何か
07 民間の役割は何か
08 リノベーションまちづくりで都市・地域経営課題を解決する
09 都市政策と5ヶ年計画の重要性
10 老朽化した公共施設をどうするか
column 06 稼ぐインフラ
おわりに ──家守事業はどこでもできる

清水義次(しみず よしつぐ)

都市・建築再生プロデューサー。
神田・裏日本橋、新宿歌舞伎町、北九州市小倉などで現代版家守業の実践に挑む。岩手県紫波町では、まちの中心をつくるオガールプロジェクトに携わっている。株式会社アフタヌーンソサエティ代表取締役、公民連携事業機構代表理事、3331 Arts Chiyoda代表、東洋大学経済学部大学院公民連携専攻客員教授。

人口減少、高齢化、中心市街地の空洞化、増え続ける空き家、自治体の財政破綻、コミュニティ崩壊、世の中がどんどん悪くなってしまうのではないかと懸念される方も多いと思います。実は、私は今あるものを使って創造的にまちを変えていけば、もっと楽しく暮らせる世の中にしていけるのではないかと考えています。ピンチはチャンスです。

『リノベーションまちづくり』は、 大都市、中核都市、小都市内に増大し続けている遊休化した不動産という空間資源をリノベーションして、都市・地域経営課題を解決する方法を書いたものです。すなわち、今あるものを使って、停滞している、衰退しているまちに変化を生み出すプロセスをどうつくり出していくか。自分のまちが手の付けようがないような状態であっても、自分たちの考え方次第、工夫次第でもっと暮らしやすく、もっと楽しいまちになる、自分たちの手でそれをやっていくんだ、そんなプロセスをつくっていくことを記したものです。

リノベーションとは、リフォームと違ってただ元通りの新しい状態に戻す行為ではありません。リノベーションは、遊休不動産などの空間資源をイノベイティブな新しい使い方で積極的に活用することにより、まちに変化を生み出すことを言います。

縮退する都市・地域には様々な都市・地域経営課題が存在します。中でも、産業の疲弊は地域を衰退させる主要因と考えられます。産業が疲弊すると生活が成り立たず、人が住めなくなるからです。

また、自治体の財政難という大きな課題が重くのしかかってきています。そう考えると民間主導の自立型地域再生が必要になってきている、すでにその時代を迎えていると感じるのは自然なことかもしれません。
本書の中身は、私自身が地域再生の現場に入って実施したプロジェクトの体験をもとにして地域を再生するノウハウを紡ぎ出したものです。

衰退している地域に変化を生み出すプロセスをどう構築していったらよいか、そして地域がどのように再生していったらよいか、次世代、次々世代までも継続する地域にどうやってしていくかをこの本から体得してもらえたら幸いです。

リノベーションまちづくりは、決して難しくありません。やり方の手順、段取りを1段ずつしっかりと組んでいけば、必ず道が開けていきます。先が少しずつ見えてきます。そして、気づくと共に歩む仲間が傍らに増えています。

そのためには、これまでの常識を捨て去ることが大切です。道元の言葉で「放てば手に満てり」という言葉があります。今までの考え方やこだわりを捨て、自分自身が現実の社会に真っ正面から向き合って考え行動することが大切です。どんな小さなことと思えることでも、その小さなことからやってみること、そしてその結果をよく観察し、次のステップに進んでいくこと、これが大事です。

リノベーションまちづくり、楽しいですよ。

清水義次

評:竹内昌義 (建築家/みかんぐみ)

この本はリノベーションとありますが、建築の専門書ではありません。人口減少、高齢化に伴い、自治体の収入が減り、中心市街地が衰退して行くなかまちづくりに関わる全ての人のための本です。でも、現状維持を考えている商店主のための本ではありません。人通りが少なくなっている町を見て、漠然となんとかしたい人、あるいはお店(カフェとか雑貨屋さん)をやってみたい人のための本です。あるいは、役所でなんとなく今までのやり方に疑問を持っている人のための本です。

人口増加時代には制度をゾーンごとに網がけをする都市計画の手法がうまく機能していましたが、現在はうまくいきません。再開発をしてもテナントが入りづらくなっています。この状況のなかで重要なのはコンテンツ。筆者は風俗や流行を観察する考現学の手法を応用して、まちをつぶさに観察し、この手法を編み出しました。そのノウハウが詰まっています。

現在、人口減少の時代に対する理解はすでに全国的に共通なものとなっていますが、それに対する方法論は、実はどこにも示されていません。その方法が実にわかりやすく解説されています。具体的には「パブリックマインドをもった民間が補助金に頼らず、小さな事業を起こしつつ、その敷地だけではなく、スモールエリアを変えていく。行政がその事業に協力し、それを応援していく。」ことを目指します。これは、後に負担になる無駄な投資をする再開発でもなく、まちづくりを外部委託し思考停止、あげくに悪平等を徹底する行政のスタンスでもありません。また、未だに人口増加時代からの方法を捨てられない専門家とも無縁のものです。

そして、それらの取り組みは現在、確実に成果をあげつつあります。この本はそれらの事例を交えつつ、物語としても楽しめます。ただ、単なる物語ではなく、この本をガイドブックとして具体的に使い、まちづくりを実践することが求められています。

担当編集者より

補助金漬けの「まちづくり」はもうダメ。よく聞く言葉です。
この本は「では、どうすればいいのか」に真正面から答える本です。
本書で、「現代版家守事業」という、ビジネスとしてのまちづくりの最先端をご確認ください。

(岩崎)

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編集部より

『なぜ僕らは今、リノベーションを考えるのか』刊行記念イベントへのご来場ありがとうございました

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