観光まちづくりのマーケティング


十代田 朗 編著/山田雄一・内田純一 他著

内容紹介

地域の視点から如何に取り組むべきかを解説

地域が主体性をもって観光客をどう誘致するのか、とことん地域の視点にたって書かれた初めての実践書。とりわけ多様な人々が関わる観光まちづくりにおいて、共通の認識となりうるよう、マーケティング、ブランディング、プロモーション、MICE、ホスピタリティの基礎から、地域戦略としての展開手法を事例を交えて解説。

体 裁 A5・208頁・定価 本体2300円+税
ISBN 978-4-7615-2496-8
発行日 2010-11-30
装 丁 (株)コシダアート


目次著者紹介まえがき関連ニュース関連イベント

もくじ

序章 観光まちづくりにマーケティングはなぜ必要か /十代田朗

1 これからのまちづくり―観光まちづくりの登場
2 新しい観光スタイルへの変容―オルタナティブ・ツーリズムとは
3 観光まちづくりの手法
1 オルタナティブ・ツーリズムに対応した観光資源の発掘
2 観光地づくりとまちづくりの接近
3 オルタナティブ・ツーリズム時代における国内観光地の課題
4 観光まちづくりにおけるマーケティングの重要性
1 観光まちづくりに必要なマーケティング力
2 マーケティングの本質的意義

1章 観光地マーケティング /山田雄一

1 観光地マーケティングの必要性
1 観光地を取り巻く主体と環境変化
2 観光客の獲得手法
3 マーケティングの概念と特徴
4 観光地マーケティングの役割と位置づけ
5 観光地マーケティングと観光・旅行マーケティングとの違い
2 観光地マーケティングの基本的枠組み
1 観光地マーケティングの基本要素
2 観光地マーケティングに求められる視点
3 戦略として取り組むことの必要性
3 観光地マーケティング戦略構築のポイント
1 理念・目的・目標の明確化

2 科学とセンスを融合させた意志決定
3 計画への着実な落とし込み
4 情報の収集と分析手法
1 顧客情報の読み方
2 競合地などの外部情報の読み方
3 地域情報の読み方1
Column01 「南の島」から「琉球・沖縄文化」へ/沖縄県
Column02 今来ている観光客を維持することの重要性

2章 観光地のブランディング /内田純一

1 観光地に求められる戦略的思考とは
1 地域のマーケティング
2 観光地における中核資源と補完資源
3 観光地を取り巻くミクロ環境とマクロ環境
2 観光地とメディア環境
1 メディアの役割
2 メディアがつくった地域イメージ
3 フィルム・コミッションは何をすべきか
3 地域ブランドの全体像
1 地域イメージと地域資源
2 地場産品ブランドと観光地ブランド
3 広域の地域ブランドを活かす
4 沖縄の事例から見る観光地ブランド
1 沖縄における観光地への地域イメージの転換
2 観光地イメージと地域商品ブランド
3 地域商品ブランドを支える事業システム
5 観光地ブランド・地場産品ブランド創出プラン
1 地域ブランド創出のための地域内スパイラル
2 観光地ブランディング活動を地域内で多面的に活かす
3 実践・観光地ブランディング「ワークシート」
Column03 B級グルメが中核資源になる時代
Column04 北海道観光ブームと映像メディア
Column05 地場産品ブランドから観光地ブランドを育てる馬路村
Column06 地域内外のイメージの相違
Column07 大学発の知識を地域ブランドに

3章 地域からの観光プロモーション /伊良皆啓

1 プロモーションとは
1 観光におけるプロモーション
2 プロモーションにおけるコミュニケーション・プロセス
3 プロモーションと購入の意思決定プロセス
4 観光商品、価格、流通とプロモーションの関係
2 プロモーションの方法
1 プロモーションのタイプ
2 主要プロモーション媒体
3 地域による観光プロモーション
1 観光プロモーションの留意点
2 ターゲット別のプロモーション
3 観光地の成熟度別プロモーション
4 地域による観光プロモーションの実施
Column08 ニュースリリースの例(パブリシティの活用)
Column09 観光客のプロファイル(属性)と情報収集の媒体
Column10 観光旅行者の視点によるプロモーション・エリアの設定

4章 観光地のMICE戦略 /太田正隆

1 MICEとは何か
1 従来のコンベンションマーケット
2 MICEの開催効果や地域との交流創出
3 MICEのマーケティング
2 MICE誘致とコンベンションビューロー
1 コンベンションビューローとは
2 受け入れ機能と役割
3 地域の企業、大学、NPOなどによるMICE開催支援
1 企業や大学等の地域における支援組織や支援機能
2 地域の連携と開催支援
4 戦略的な地域発MICEの企画と手法
1 地域資源を活用したMICEの開発
2 MICEの企画と手法
Column11 マンガと地域振興とコンベンション
Column12 これまでのリスク、これからのリスク

5章 観光地のホスピタリティ /丹治朋子

1 観光地全体で考えるホスピタリティ
1 観光地マーケティングとホスピタリティの接点
2 観光客に対する一般市民の反応
2 観光地のホスピタリティとは
3 観光地におけるホスピタリティの表現
1 ヒトによるホスピタリティ
2 その他のホスピタリティ
4 人的ホスピタリティ向上のためのステップ
1 事業所におけるホスピタリティ向上のステップ
2 一般住民のホスピタリティ向上
5 ホスピタリティのさらなる向上に向けて
1 理念の共有
2 受け入れ側の満足
3 地域全体でホスピタリティを向上させる難しさ
Column13 日本の流儀の伝え方/澤の屋(東京都・谷中)
Column14 方言を活かしたもてなし(秋田県・湯沢雄勝)
Column15 住民のための取り組みが観光客を呼び込む(長野県・小布施町)

終章 持続可能な観光まちづくりに向けて /十代田朗

1 これからの観光まちづくりの課題
1 観光的課題―観光的魅力を持続させるには
2 まちづくり的課題
3 観光地としての持続的発展とまちづくり
4 地域経営能力の向上
2 観光まちづくりの深化の方向性
1 これまで―観光のためのまちづくり(観光振興を目的としたまちづくり)
2 いま―観光によるまちづくり(観光振興を手段としたまちづくり)
3 これから―国の光を高めるまちづくり

執筆者紹介

十代田朗(そしろだ あきら) 序章、終章

東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻准教授。博士(工学)。
東京工業大学大学院理工学研究科社会工学専攻修士課程修了。株式会社三菱総合研究所、新潟大学などを経て、現職。
著書:“Change Management in Tourism―From‘Old’to‘New’Tourism ”(共著、Erich Schmidt Verlag GmbH & Co.)、『たのしみを解剖する―アミューズメントの基礎理論』(共著、現代書館)、『日本別荘史ノート』(共著、住まいの図書館出版局)など

山田雄一(やまだ ゆういち) 1章

財団法人日本交通公社観光調査部主任研究員。
筑波大学大学院環境科学研究科修了、三井建設株式会社を経て、1998年財団法人日本交通公社入社。2001年同財団研究調査部主任研究員を経て、2009年より現職。2008年より立教大学観光学部兼任講師、2009年セントラルフロリダ大学ローゼンカレッジ客員スカラー。
著書:『観光読本』(共著、東洋経済新報社)

内田純一(うちだ じゅんいち) 2章

北海道大学観光学高等研究センター准教授。博士(国際広報メディア)。
北海道大学大学院経済学研究科現代経済経営専攻修士課程修了、2007年より現職。
著書:『地域イノベーション戦略―ブランディング・アプローチ』(芙蓉書房出版)、『観光の地域ブランディング―交流によるまちづくりのしくみ』(共編著、学芸出版社)、『グローバル環境における地域企業の経営―ビジネスモデルの形成と発展』(共編著、文眞堂)など
訳書:『トリプルヘリックス―大学・産業界・政府のイノベーション・システム』(共訳、芙蓉書房出版)

伊良皆啓(いらみな ひろの) 3章

公立大学法人名桜大学国際学群観光産業専攻准教授。
ハワイ州立大学マノア校旅行産業経営学部修士課程修了。ツアーガイドや財団法人沖縄観光コンベンションビューローなどでの勤務を経て、2010年より現職。

太田正隆(おおた まさたか) 4章

コンベンション総合研究所所長(株式会社ICSコンベンションデザイン)。
明治大学大学院政治学研究科博士前期課程修了。国際会議、イベント、展示トレードショー、インセンティブ等の企画・運営およびコンベンション誘致、MICE振興、イベントプロモーション計画策定等。マーケティング部長を経て、2005年より現職。国際交流拡大のためのMICE推進方策検討会委員(観光庁)をはじめMICE関連分野の各種委員歴任。

丹治朋子(たんじ ともこ) 5章

川村学園女子大学人間文化学部観光文化学科准教授。
立教大学大学院観光学研究科博士課程後期課程単位取得満期退学。大阪明浄大学(現大阪観光大学)講師を経て、2005年より現職。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科兼任講師を兼務。
著書:『ホスピタリティ・マネジメント』(共著、立教大学観光研究所)、『観光事業論』(共著、くんぷる)、『観光実務ハンドブック』(共著、丸善)、『観光学入門』(共著、有斐閣)、『大江戸東京の歩き方―東京シティガイド検定公式テキスト』(共著、ダイヤモンド社)など

はじめに

私にとって、待望の本である。

編著者がこう言うと、「書き手」として、書きたいことや言いたい主張が存分に盛り込まれている書という意味だと思われるかもしれないが、そうではなく、「読み手」としてである。なぜなら、ここ10年余り、特に「観光まちづくり」が1つのブームのように盛り上がっているなかで、漠と考えていた疑念に答えをくれ、そして観光まちづくりの課題に1つの解答を提示してくれているからである。

本書はタイトルからもわかるように広い意味でのマーケティングに関する本であるが、その特徴は地域を総体として捉えて各章を論じていることである。マーケティングやブランディング、プロモーションに関しては、個々の旅行商品や観光施設に関する議論はよく目にする。またMICE戦略やホスピタリティに関しては、旅館や会議場といった施設単位での議論をよく目にする。しかし、1つの個性を持った地域として、観光まちづくりのなかで、地域の側が、主体性を持って、観光客を誘致するのか、来訪者を確保するのかといった視点が書かれている点に本書のユニークさがある。

本書が想定している主たる対象は、各地で観光まちづくりに携わる方々、およびこれから観光まちづくりを始めようとする地域の方々ではあるが、なかでも特に、まちづくりとマーケティングという異なる職能を持った方々がお互いに連携や調整を図る上で必要となる「ベーシックな共通認識」、すなわち「観光まちづくりにおけるマーケティングの基本的なものの見方・捉え方」を共有できることを第一のねらいとしている。

前半部の1~3章では、観光地の「マーケティング」「ブランディング」「プロモーション」を取り上げている。どの章も、基本的な概念や必要性を明確化した上で、地域戦略としての展開手法について事例を交えながら解説している。4章では「観光地のMICE戦略」を取り上げている。なぜマーケティングの本に、と感じられる方もおられようが、通読してみると、MICE誘致と通常の観光誘致との共通点、相違点が浮き彫りになりその大切さが実感できる。締めくくりは「観光地のホスピタリティ」と題して、観光まちづくりを進めるためにはどんな地域でも不可欠となる「ホスピタリティ」のあり方を解説している。
執筆していただいたのは、現在その分野で最も先を行っている方々である。多忙ななか、時間を割いて、日頃の研究成果の一端を著していただいた各執筆者には敬意を表したい。

なお、本書は、経済産業省が2005~2007年にかけて実施した「集客交流経営人材のあり方に関する調査研究事業」(調査委託先:財団法人日本交通公社)での成果作成に関わったメンバー有志が集い、新たな議論を加えて、組み立て直し作り上げたものである。本事業に関わった関係者の皆様に、この場を借りて謝意を伝えたい。

最後に、出版に際し、本書の構成を考えていく段階から丁寧なご指導と助言をいただいた学芸出版社の前田裕資氏と編集の労をおとりいただいた森國洋行氏に心から感謝申し上げる。

2010年10月

十代田朗

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