一目でわかる建築計画


青木義次・浅野平八 他著

内容紹介

イラストで示した設計・計画の基本344例

設計に必要な計画の基本が一目でわかるよう、悪い例とその解決策を並べて示した画期的テキスト。全編を通じ、建築全般および各種施設を設計する際、気をつけたいことや犯しやすいミスなどを明快なイラストで表現し、何が問題で、どうすればよくなるかが直感的に理解できるよう構成した。すぐに役立つ計画・設計のノウハウ集。

体 裁 B5・200頁・定価 本体2700円+税
ISBN 978-4-7615-2290-2
発行日 2002-08-30
装 丁 上野 かおる

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紙面見本目次著者紹介まえがきあとがき読者レビュー書評

内容見本1

内容見本2

まえがき

第1部 共通事項

a 設計方法
b 安全設計
c バリアフリー設計
d 環境設計 ←←内容見本1へ
e 設計に必要な基礎知識

第2部 各種施設

1 病院
2 高齢者施設
3 住宅
4 保育所
5 学校
6 図書室
7 コミュニティ施設
8 スポーツ施設
9 事務所 ←←内容見本2へ
10 商業施設
11 複合施設
12 交通施設

用語解説

あとがきにかえて……本書作成の経緯と謝辞

青木義次(あおき・よしつぐ)

1946年生まれ.東京工業大学卒業.建設省建築研究所研究員,カーネギーメロン大学客員助教授を経て,東京工業大学教授,現在に至る.計画の基礎理論に興味を持つ.著書に『やさしい火災安全計画』(学芸出版社),“Decision Support System in Urban Planning”(E&FN SPON)など.

浅野平八(あさの・へいはち)

1945年福岡県生まれ.1971年日本大学大学院理工学研究科修士課程修了.1989年「地域集会施設の機能構造に関する研究」で工学博士取得.1994年日本大学教授,現在に至る.主な著書に『地域集会施設の計画と設計』(理工学社),『木造住宅のしくみ』(共著),『風土の意匠』(以上,学芸出版社).

木下芳郎(きのした・よしろう)

1973年北海道釧路市生まれ.1995年東京工業大学卒業.現在,東京工業大学大学院理工学研究科助手.建物や部屋の正面性,軸性がどのようにしてわかるのかといった,建築空間の理解のされ方に関心がある.

広田直行(ひろた・なおゆき)

1959年北海道生まれ.1986年日本大学大学院生産工学研究科修士課程修了.同年(株)日本工房入社.1999年「生涯学習関連施設のオープンスペースに関する研究」で博士(工学)取得.2002年日本大学専任講師,現在に至る.

村阪尚徳(むらさか・なおのり)

1977年三重県松阪市生まれ.2002年3月東京工業大学建築学科卒業.現在,東京工業大学大学院理工学研究科修士課程在学中.

建築計画学の内容は多岐にわたる.設計方法,人間工学,環境心理,空間知覚,コミュニティ論,住居論,各種建築,地域計画など,どれ一つを学ぶだけでも大変なのに,これらを一まとめにして議論することになる.教える方も大変だが,学ぶ側の学生からすると「知るべき知識や理屈が多いわりにすぐに設計が上手くなるわけでもない」と,建築計画的な内容を軽視する風潮もある.
内容の多様さの他にも,このような不幸な理解が生じることに別の原因がある.建築計画が建築を計画・設計していくための学問であるものの,大きく二つの性質の異なる面があり,これを区別しないことによる混乱が建築計画学の誤った理解へつながっているように思える.

一つは,これまでに培ってきた計画・設計のノウハウを,新たに学ぶ人に体系だって伝達するという側面である.したがって,計画・設計で知らないと困る種々雑多の知識である.教科書や講義で習うものや建築士の試験に出るのは,これである.
もう一つは,これまでにない,まったく新たな建築の可能性を追求するという側面である.建築計画の研究に携わっている人々が関心があるのが,この領域であり,ときには,これまでの常識を否定したりする.一例をあげると『分居論』がある.家族が一緒に生活する空間こそが住居なのであるという常識に対して,近年では父親が単身赴任し別の都市で生活したり,離れた都市の大学に通学する子供も下宿して家にいないということもあるので,家族が分かれて生活することもあるという前提で住居を考えておこうというものである.どのような分居がありうるか,そのためには,どのような住宅空間であるべきかなど,新たな研究が展開している.このような常識の枠の外の問題については過去のノウハウも役立たないことが多い.むしろ,新たな研究から,過去の常識にとらわれない認識枠組みが生みだされているというのが建築計画学の第2の側面なのである.

さて,前おきが長くなったが,本書が目指したのは,前者の常識として知っておくべきすぐに役立つ計画・設計のノウハウの方である.わかりやすくするために,第2の新たな知見の方については一切議論していない.読者はまず本書の内容を確実に理解し,設計する際に無意識のうちにできるようになっておいて欲しい.本書は,学習者が直感的に一目で理解し,設計段階でその知識が活用できるようになることに主眼を置いた.そのため,「不都合なこと」と「こうした方がよいこと」を左右にイラストで表示し,イラストだけで基本的には理解できるようにした.
著者らが,最終的に期待しているのは,本書の内容をマスターし,常識的ノウハウを身につけた読者が,いつの日か,その常識を疑っていただきたいということである.常識や流行に流されずに自分自身で真摯に考えることこそが建築を創造するということだからであり,そのときに,先に述べた建築計画学の第2の側面の意義が理解できると信じている.

著者一同
平成14年7月

本書のきっかけとなったのは,次の図書と著者との出合いから始まる.

G. C. Barkley, D. D. Autore, T. L. Patterson ;
Architectural Drawing and Design, Macmillan Publishing Company, 1984

アメリカの大学の建築設計製図教育のための本である.この本では初学者が建築設計に必要な建築知識が一通り述べられている.鉛筆の持ち方から始まって図学,建築史,美学,設計方法,構造,環境設備など必要事項がぎっしりつまっている.アメリカの大学では,建築学科というのは芸術学部にあり,工学は必要最低限の範囲に絞られており,その点ではこの本の水準で建築の全体をカバーしているといっても過言でない.しかし,この本の注目すべき特徴は,徹底的に初学者向けに書かれている点である.たとえば,透視図法の説明では,廊下の左右の幅木のような平行線がグラビア写真の中では,延長すると1 点に集まることを確認し,それが焦点であることから具体的な説明が始まる.著者が注目したのは,日本の大学で建築計画学として教えられている内容についてである.この本では,主にThe functional consideration in designという章の中で説明されている.その説明の仕方が,文章の他に,不都合なプランと推奨すべきプランを並べて図示してあり,何が問題でどうするとよくなるのかがはっきりと,また,一瞬にしてわかるように表現されている.

東京工業大学青木研究室でゼミの一環として,建築計画,建築設計に必要な知識を,『一目でわかる』ように「不都合なこと」とそれを改善した「こうした方がよいこと」を左右に並べて表現することを試みてみた.参加した学生も最初のうちは,『一目でわかる』ように描くことの難しさに戸惑っていた.しかし,ゼミの回を重ねるに従い学生の表現力が目ざましく向上してゆくのがわかった.同時に学生が建築計画の知識を楽しみながら学んでいるように見えた.1学期が終わる頃には,『一目でわかる』図集が製本して2分冊にもなった.

そこで,日本大学浅野研究室と一緒に同じことを試みようということになり,合同ゼミを数回にわたって行った.合同ゼミの終わった後のアルコール入りのパーティも和やかに,ときには騒々しく行われ,両大学の学生交流の場としても盛り上がっていた.本書は,このようにして学生達が,アイディアを出して表現したものをべースにしている.この意味で,下記の,ゼミに参加した学生諸氏に最初に感謝の意を表したい.

その後,成果を出版したいということになり,学芸出版社の吉田隆さんに相談をしたところ快諾していただき,出版へ向けてのアドバイスもいただいた.表現がわかりやすいことがポイントであるため,編集者の越智和子さんには,文章,図表現の細部にわたってのご指摘いただいた.このご指摘のおかげで,『一目でわかる』ようにしたいという著者らの希望により近づけることができた.お礼と感謝の意を表したい.

東京工業大学ゼミ参加学生

石原久一郎  金子 牧子  納富 大輔  百々海 大  村阪 尚徳

日本大学ゼミ参加学生

金  潤煥  秋庭竜太郎  池田紗与花  傳法 一成  星  裕樹
樋口 英輔  直井 宏樹  山崎 裕子  山田 直樹

人は言葉をいつの頃から覚えるのであろう。赤ん坊の頃、まず「まんま」を覚えるという。「ママ」なのかそれとも「ごはん」なのかわからないが自分にとって大切であり、身近なものである。一語でわかるのがいい。成長するに従い、単語をつなぎ合わせて文にし、発音と意味を付加していく。

このように、赤ん坊が言葉を学ぶように、建築計画を学べるような本があるといいなと思っていた。文字を読んで理解するデジタルでなく、イラストですぐに理解できるアナログがてっとりばやい。

この本は、まさに、身近な住まいや建物をつくることに関心をもつ人々や建築を志す者にとって必要な言葉(設計にあたって考えるべきこと)を、イラストと簡単な文章で示したものである。建築設計の際に必要な基礎的事項を表す「言葉」をわかりやすく説明したものであるといえよう。後、これに解釈をつけ、つなげて建築(「文章」)に意味を持たせ、自分の興味にあわせて、付加していけばよい。

この本の内容は、「設計に生かす計画のポイント」である。二部で構成され、第一部を共通事項、第二部を各種施設としている。第一部の共通事項の最初に、「想像力が第一」と書かれている。建物を使用する人々がどのように活動しているかまたは、利用しているかを具体的に想像することが重要であるといっている。次いで、「プランの中を自分が歩くイメージ・シミュレーションで考える」をあげている。

ここで、建築を学ぶ者は、利用する人々が建物の中や外を歩いてどのように感じるかを想像して使い勝手や自分の描いた図面の的確さを確認することの重要さを感じとって欲しい。そのためには、様々な建物を実際歩いて感じてその肌触りを自分のものにすることが必要であるといっているのだ。

このようにひとつひとつ掲げられている事項には、人々の体験の積み重ねがあることを知っていただきたい。共通事項として、設計方法、安全設計、バリアフリー設計、環境設計と設計に必要な基礎知識を、各種施設として病院、高齢者施設、住宅、保育所、学校、図書館、コミュニテイ施設、スポーツ施設、事務所、商業施設、複合施設、交通施設をあげている。人と空間との関係から建築のおもしろさを読み解く一冊と思う。

(国立米子工業高等専門学校建築学科教授/熊谷昌彦)


2年前、私が所属する大学でカリキュラムの大幅見直しが行われた。当然、建築計画に関わる科目も見直された。現在の建築のおかれている状況から、建築計画が担うべき内容も豊富になってきており、科目を細分化し担当範囲をより明確にした内容にするべきであるということは他の計画系教員とも共通した認識であった。そもそも美術学部の建築学科であることから、工学部系の建築学科と比較すると担当教員数等の理由でどうしても弱い部分でもあった。カリキュラムの再編成作業が進み、自分の担当する科目もほぼ決定した時、テキストをどうするかで悩んだ。これまで担当してきた科目では、テキストを指定してこなかった。そのかわり自分で作成した資料をもとに授業を行ってきた。その資料は、多くの先輩諸氏が書かれてきたテキストも参考に、毎年修正を加えながらつくりあげてきたものである。担当科目のスタートを目前にテキストの問題が解決していなかった時、この「一目でわかる建築計画」をご紹介いただいた。

まず「まえがき」に書かれていることに惹かれた。建築を設計する際に、最低限(常識的に)知っておかなければならない内容のみを扱っているということ。この「知っておかなければならないこと」が重要なのである。これを学生に伝えるため、あの手この手を駆使してきた。資料の他に、実際に利用されている建築を例にした写真のコピー、OHP、スライド、ビデオなどなど。言葉や文章だけでは十分に伝わらないこともある。しかし撮影する側の能力やタイミングも関係し、写真やビデオにも限界があった。「不都合なこと」を実例から探すのも案外と大変である。だから「知っておかなければならないこと」を的確に表現しているイラストをみて、探していたものが見つかったと思った。まさに、私にとって喉元まで出かかっていたものがこのイラストであり、このテキストである。病院をはじめとする12項目の各種施設も現代社会のニーズに合致した選択である。現在、私にとって最適のテキストである。

(道都大学美術学部建築学科助教授/安藤淳一)


担当編集者から

私どもが最初に見せていただいたのは、“basic consideration in architectural planning and design”と題され、外見はまるでアドビソフトのユーザーマニュアルのようだが、頁をあけるとどこか外国の絵本のようなイラストが満載され、思わず頁をめくってみたくなる二分冊の冊子だった。

東工大青木研究室・日大浅野研究室の合同ゼミで制作されたというこの手づくりの冊子は、アメリカの大学で建築設計製図教育に使われているテキストの一部にヒントを得て、建築計画、建築設計に必要な知識を、「問題点を含んだ悪い例」と「こうした方がよい例」を並べて表現した画期的な図集である。ゼミの学生さんたちが頭をひねって描いたイラストを見ることによって、建物の計画上の短所やその解決策にハッとさせられたり、ユーモラスな表現や凝った製本にニヤリとさせられたり……、楽しみながら建築計画を学ぶホットなゼミの情景が浮かんでくるとともに、〈計画〉教育に新風を吹き込むものだと直感的に感じた。

さて、この成果を広く計画の現場にいる専門家や学生に伝えるにはどうしたらよいか。掲載するポイントの厳選と整理、よりわかりすくするための全てのイラストの描きなおし、内容にふさわしいレイアウトの検討等、原石を磨くための著者たちのさらなる情熱によって本書はできあがった。こうして「設計をするために最低限知っておかなければならないこと」というシンプルなテーマを、徹底的にコンビニエンスに提供した待望の書が誕生したのである。

(O)

『建築士事務所』((社)日本建築士事務所協会連合会) 2002.12

意匠設計のみが設計と考え、せっかく学んだ建築計画の基本を生かし切っていないことはないだろうか。本書は、設計に必要な建築計画の基礎を全編イラストで表現することによって、楽しく、着実に身につけようとした東京工業大学青木研究室と日本大学浅野研究室の新しい試みの成果である。一目で分かるように「問題点を含んだ都合の悪い例」とそれを改善した「こうした方がよい例」を明快なイラストを左右に並べて表示し、何が問題で、どうすればよくなるかがイラストを見るだけではっきりと理解できるように構成されている。すぐに役立つ計画・設計のノウハウが直感的に理解できる画期的、待望のテキスト。

『建設通信新聞』(日刊建設通信新聞社) 2002.11.19

知っておくべきすぐに役立つ計画・設計のノウハウを、安全やバリアフリー、環境など共通事項と、病院や住宅、学校などの各施設に分け、体系立てて説明している。

タイトル通り一目でわかるように、すべてのテーマについて1ページの左側に悪い例、右側に良い例をイラストで示している。たとえば、「狭い部屋の開き扉は外開きとする」の項目では、トイレが内開き扉だと倒れた人がじゃまになってドアが開かない絵を左側に、外開き扉だとすぐに救出できる絵を右側に載せている。

テーマごとの説明文は、3、4行と簡潔にまとめた。また、人間観察の勧め、住まいのカタチなどのコラムもあって楽しく読める。

学習用シートを本書の作り方に沿って自作すれば、左側の悪い例をもとに、どのようにすれば解決できるかを考えることができる。

『室内』(㈱工作社) 2002.10

東京工業大学の青木研究室、日本大学の浅野研究室のゼミの成果をまとめた一冊。建築計画のためのノウハウを、イラストで解説したものである。第一部は、どんな建物にも応用できる、安全、バリアフリー、環境に配慮した設計のポイント。第二部からは、住宅、病院、スポーツ施設、事務所、学校など、建物ごとにある問題点をまとめてある。例えば避難階段の取合い、車椅子利用者にとって使いやすい取手の位置、病院を設計する際に霊安室の位置をどう考えるべきか。本書はこういった設計者として知っておかねばならないことを、イラストで一問一答している。イラストは一問に対し2点。右が成功例、左が失敗例という組合せ。

(呆)