このイベントは終了しています

【終了】[レポート]クロストーク 『ストリートデザインから都市をプランニングする』(2019/7/29|京都)

詳細は主催団体等にお問い合わせください。

イベントレポート

7.29にタイルギャラリー京都で、出版記念クロストーク「ストリートデザインから都市をプランニングするーストリートデザイン・マネジメント × 小さな空間から都市をプランニングするー」。2冊合同の出版記念トークという珍しい形式のイベント、豪華6名のゲストということもあり、会場は満員御礼。

ストリートデザイン・マネジメント』からは、横浜国立大学助教三浦詩乃さん、山口大学准教授・宋俊煥さん、東京大学助教/ソトノバ・泉山塁威さんに、『小さな空間から都市をプランニングするからは、大阪府立大学准教授・武田重昭さん、和歌山大学准教授・佐久間康富さん、法政大学教授・杉崎和久さんにお集まりいただきました。それぞれ書籍のテーマカラーが赤/黒なので、「赤と黒の対話」です。

(左から)三浦詩乃さん、宋俊煥さん、泉山塁威さん

(左から)武田重昭さん、杉崎和久さん、佐久間康富さん

前半は、それぞれの登壇者によるミニプレゼンでスタート。

三浦詩乃さん×宋俊煥さん×泉山塁威さんの『ストリートデザイン・マネジメント』チーム(赤)からは「みち」という都市空間に見出す可能性、地域特性や適性に応じたテクニカルな活用法について、ボリューム満点な書籍の一部をコンパクトに紹介してくださいました。

武田重昭さん×佐久間康富さん×杉崎和久さんの『小さな空間から都市をプランニングする』チーム(黒)からは、魅力的な個々の都市空間の成り立ちを「帰納的」に解釈し、これからの都市に求められる「漸進的プランニング」へのバトンとした「10の手法」を、後半の議論へと続く話題提供に。

続く後半のディスカッションは執筆者チームそれぞれの書籍について質問を投げかける形式で進行。都市を捉えるアプローチや実践のプロセスの差異、共通するビジョンや着眼点について、さまざま議論しました。ダイジェストでご紹介します(以下、敬称略)。

質問/小さな空間(黒)→ ストリート(赤)

Q. ストリートが大事なのはなぜか?(武田)

小さな空間のひとつにストリートがあるが、他の空間と違うストリートならではの目標はあるか。人が来ればいい、儲かればいいという賑わい至上主義を超えていくことが必要ではないか。都市の中の“ストリート”の可能性はどこにあるのか。

  • → 私的領域と密接にかかわっているのがストリート。まちのツボを押さえることができ、自分たちのまちを「取り戻す」という感覚があり波及効果が大きい。身近な空間で変化を見せることに意義がある(三浦)
  • → エリアのイメージをつくれる。ケビン・リンチの『都市のイメージ』にあるように、ストリートは都市の顔。例えば丸の内のまちのイメージは、ストリートと密接に関係する。働きながら楽しめる空間や、公園のにぎわい軸として、ガイドラインにちゃんと位置づける意義は大きい(宋)
  • → ストリートの魅力について語るとき、賑わい以外の意味を考えたい。賑わいという「貝へん」の漢字(貯金・賄賂・賭博)はお金に絡む。日本がバブルを引きずっている象徴。賑わいだけではなくつながる場所をつくりたい。賑わい以外にも、福祉や子育てや格差、地域経済(例えば、メルボルン:ポイントクックのショッピングセンターとの連携)など向き合いたいテーマや可能性も多様にしていかなければ(泉山)

Q. 戦略的に仕掛けていく立場として、その「外側(対象エリアの周辺)」との関係をどう意識しているのか?(杉崎)

例えば五条界隈の事例でいうと、行政は何もしていない。民だけで生まれる新しい動きであり、いわゆる「計画の外側」にアクティビティの魅力の話。一方、戦略的に仕掛ける対象であるストリートデザインにも「計画の外側」への波及効果を狙ったような動きがあるならお伺いしたい。

  • → 今までの都市計画は、専門家目線でつくられていて、誰の目線からの「外側」かを考える必要があるように思う(泉山)
  • → やはり外側でも、市民に任せるだけでないプロセスデザインに可能性があるのではないか。五条もそうはいっても車が多すぎる。ストリートを取り戻すと言う意味では、グリーンインフラなどをそれこそ行政主導プランだがボトムアッププロセスで取り入れれば、幹線道路が担う役割やイメージが変わるはず。(三浦)

Q. 「都市経営」や「全体」と、ストリートをどうつないでいけるのか?(佐久間)

小さな動き(ストリート)<地域(界隈)<都市、というスケールのなかで一番大きな「都市=三層目」をどうつなぐかを議論したい。そこが見えてくれば、一歩先に行けるビジョンを描けるように思うが、そのあたりをどう考えているのか。

  • → 市民の目線のボトムアップなアプローチを含めて動的なビジョンをもつべき。今は市民のニーズと行政の施策の距離感が離れてしまっている。公と民が共有したビジョンであるべきで、3~5年で変えていけるような短期のビジョンが必要に思う(泉山)

質問/ストリート(赤)→ 小さな空間(黒)

Q. 民の役割をどう考えているか?(宋)

行政がやってきた都市計画も成熟社会で都市が充足するなか、どう変わればいいか。行政ができないことを民がやる小さな空間の活用事例のうち、神戸市の大和船舶土地など志のある不動産業者の動きなどに興味があるが、そうした民の活動がもっと行政の計画とつながればいい。小さな空間と行政がつながる事例を教えてほしい。

  • → 姉小路の事例は、「民」がものすごくがんばっている。いい塩梅で行政がサポートしている状況が面白い。五条は幹線道路だが、回りにヒューマンスケールは山程ある。だからむしろ「なにもしない」がゆえの居場所、という新しさがある。専門家としてまったく関与すべきでないことで生まれる価値だから、本音をいうと悔しさもある。(杉崎)

Q. 10の手法ができるとどう変わり、なにを目指しているのか。(泉山)

東京にいると知ることのない関西の事例が詳細に書かれていて、現地を訪れてみたくなった。とはいえ書籍構成の、事例編(過去)と理論編(現在・未来)両者の接続が難しい。執筆プロセスが積み上げだったからか、共著者の主張や考えが微妙に違うように読めたが、どうなのか。

  • → 先にフレームが決まっていたわけではなく、小さな空間を見て、議論をしていくことからメンバーそれぞれの視点で手法を掘り下げてきた。全員が全員同じ方向を向くというよりは、多様性を大事にしたい。10の手法については、行政にも民にも役に立つことを目指している。行政にはあたらしいプランニングマインドをもってもらいたいし、民には自分たちの手の届く範囲外(=外側)への波及効果にも関心を持ってほしい。(武田)
  • → ここ最近相次いで公共空間系の書籍が出版され、都市空間のプランニングへとつながる次の時代の萌芽が見え始めている。それが知りたい・見たいという自身の興味がある。小さな空間から「帰納的」に導かれるロジックにならざる得ないが、小さな実践の後追いで枠組みをつくるような新しい計画の役割があるように思う。(佐久間)

Q. そのうえで、行政の役割とは?(三浦)

小さく積み上げてジェントリフィケーションが起きない塩梅の各事例を通じて、余白というキーワードが見えてきた。その余白を「民」が埋める可能性について語られている本だが、そのうえで行政は何をすべきなのか。シビルミニマム、セーフガードとしての行政の役割の大切さを訴えるには、現行の指標の置き方などに問題があるのかもしれないが、どう考えているか。

  • → 行政の役割は今後ますます重要になると思う。だからこそ、行政の挑戦事例を本書ではしっかり紹介した。行政には特に、場当たり的で閉じた空間ではなく、空間の魅力を都市へつなぐプランニングが必要だと思っている。(武田)
  • → 田舎の研究では、移住という私的な行為に行政が関わる意味について議論になる。移住を強制はできないが、移住する人のための「環境」を整える、プレイヤーのアクションを支援することはできる、というのが当面の結論。二つ三つの小さな実践をつないだり、みんなの気持ち・方向性を揃えて、後から枠組みをつくる、という役割は、やはり必要では。(佐久間)

質問/会場から(一部)

都市計画家、専門家がいなくてもまちがつくれるのでは?

→ 例えば五条は、四条があるから五条があって、オモテがあるからウラがある。一定程度行政のプランニングが機能しているからこそ、五条も面白い。(杉崎)

→ まちには時間軸のフェーズがある。市民だけで一番良い状態をつくれたとしても、かならず悪くなるときがくる(ジェントリフィケーション、仲違い)。その予防医療として専門家がいる。悪くならないようにどうするかを考える。(泉山)

→ 自分たちのことは自分たちでやるという姿勢は必要だが、自分たちができることしかやらないというのは閉塞感がある。身の回りのやれることだけやるのではなく、それを都市全体につなげていく行政や専門家との連携があることが健全なのでは。(武田)

もともと歴史がないまちの沿道店舗に、小さいドンキホーテみたいなお店が並んでしまうことを行政は防げる?韓国はどうアプローチしている?

→ 韓国はトップダウンが多い。商店街の合意形成を、第三セクターの若手(20~30代)主体が調整する仕組みがうまく機能して合意形成できた。人が歩いている繁華街などは、露天商が課題だが、彼らはうまく調整しながら魅力的な屋台店舗を配置した。(宋)

→ しかし行政が良くなかったのは、完成後に第三セクターを解散させたこと。行政の担当課が担当するようになると、地域とのつながりが途絶えてしまった。また、人が増えてジェントリフィケーションが起きてしまい、チェーン店が増えてきてしまうという課題も露呈している。(宋)

ひとまず以上、6名分の話題提供はまだまだ聞き足りないほどのあっという間の二時間でした。とはいえそれぞれの立場で書籍としてまとめられたステートメントを介した対話はとても刺激的でした。パブリックスペースへの多様な視点を持ちより、立場は違えど、たくさんの共通点とビジョンの重なる部分を再確認する場として有意義だったのではないかと思います。

話足りない・聞き足りない部分もありましたが、その分は次回につないで今後もまだまだ議論を深める契機としましょうということに。ご登壇くださった先生方、参加者の皆様、ありがとうございました。

レポートで物足りなさを感じられた部分は、2冊の書籍にしっかりとまとめられております。「黒」と「赤」の読み合わせ、ぜひ楽しんでみてください!

 

 

出版記念クロストーク「ストリートデザインから都市をプランニングする」

●趣旨:
――いま、都市に求められるのは、敷地やエリアに現れた価値を都市全体の魅力へとつなぐためのプランニングだ――今年出版された、まちを変えるアプローチを提言する「小さな空間から都市をプランニングする」と「ストリートデザイン・マネジメント」
2冊の著者陣でクロストークを行います。小さな空間からまちの営みを豊かにする方法とは?そしてそこで本来、地域をつなぐための空間・ストリートが果たす役割と課題について議論しながら、これからの都市の可能性を探ります。

 

●日時:2019年7月29日(月)19:00~21:00(開場/18:30)

●会場:タイルギャラリー京都(学芸出版社3階)

●登壇者:
三浦詩乃(横浜国立大学 助教)
宋 俊煥(山口大学准教授)
泉山塁威(東京大学助教/ソトノバ)
武田重昭(大阪府立大学准教授)
佐久間康富(和歌山大学准教授)
杉崎和久(法政大学教授)

●主催:学芸出版社

●参加費:

▽一般
いずれかの書籍をご購入またはご持参の場合:1000円
書籍のご購入・持参なしの場合:1500円

▽学生
いずれかの書籍をご購入またはご持参の場合:500円
書籍のご購入・持参なしの場合:1000円

●申込み: イベントは終了しました

●プログラム
19:00~19:05 イントロ
19:05~20:05 ミニプレゼン

「ストリートデザイン・マネジメント」

三浦詩乃(横浜国立大学 助教)
宋 俊煥(山口大学准教授)
泉山塁威(東京大学助教/ソトノバ)

「小さな空間から都市をプランニングする」

武田重昭(大阪府立大学准教授)
佐久間康富(和歌山大学准教授)
杉崎和久(法政大学教授)

20:05~20:55 ディスカッション
20:55~21:00 まとめ

 

●登壇者プロフィール

三浦 詩乃(みうら・しの)
横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院助教。1987年生まれ。東京大学大学院新領域創成科学研究科修了。博士(環境学)。2015年より現職。専門は都市デザイン、公共空間のデザイン・マネジメント。国際交通安全学会特別研究員を兼務。日本都市計画学会論文奨励賞受賞。

宋 俊煥(そん・じゅんふぁん)
山口大学大学院創成科学研究科助教。1981年生まれ。2013年東京大学大学院博士課程修了。博士(環境学)。東京大学大学院特別研究員(JSPS)を経て2015年より現職。株式会社にぎわい宇部取締役や若者クリエイティブコンテナ(YCCU)代表も務める。地方都市の再生やエリアマネジメントの研究や実践に従事。

泉山 塁威(いずみやま・るい)
東京大学先端科学技術研究センター助教/一般社団法人ソトノバ共同代表理事・編集長/アーバンデザインセンター大宮ディレクター。1984年生まれ。2015年明治大学大学院博士課程修了。博士(工学)。明治大学助教等を経て2017年より現職。著書に『市民が関わるパブリックスペースのデザイン』(共著)など。

武田重昭(たけだ・しげあき)
大阪府立大学大学院生命環境科学研究科准教授。1975年生まれ。UR都市機構、兵庫県立人と自然の博物館を経て現職。博士(緑地環境科学)。技術士(建設部門)。登録ランドスケープアーキテクト。共著書に『いま、都市をつくる仕事』(2011、学芸出版社)、『都市を変える水辺アクション』(2015、学芸出版社)ほか。

佐久間康富(さくま・やすとみ)
和歌山大学システム工学部准教授。1974年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程単位取得退学。㈱環境と造形、早稲田大学教育・総合科学学術院助手、大阪市立大学大学院講師などを経て現職。博士(工学)。共著書に『田園回帰の過去・現在・未来』(2016、農文教)、『無形学へ』(2017、水曜社)、『住み継がれる集落をつくる』(2017、学芸出版社)ほか。

杉崎和久(すぎさき・かずひさ)
法政大学法学部教授。1973年生まれ。東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程単位取得満期退学、(財)練馬区都市整備公社練馬まちづくりセンター、(公財)京都市景観・まちづくりセンターを経て、2014年より現職。

 

●関連書籍

https://book.gakugei-pub.co.jp/wp/book-small_planning/

https://book.gakugei-pub.co.jp/wp/%e3%80%8e%e3%82%b9%e3%83%88%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%88%e3%83%87%e3%82%b6%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%bb%e3%83%9e%e3%83%8d%e3%82%b8%e3%83%a1%e3%83%b3%e3%83%88%e3%80%80%e5%85%ac%e5%85%b1%e7%a9%ba%e9%96%93/

 

記事をシェアする