建築計画基礎
内容紹介
人間の行動特性を把握して建築計画に活かす
建築計画では、建物を利用する人間の特性を把握することが求められる。本書では、寸法だけでなく、生理・心理も含めた、個体ならびに集団として行動する人間の特性を解説し、それらが建築物を計画する際にどのように活かされるかをも示した。さらに、火災や地震など災害への備えや持続可能な建築のありようについても述べた。
体 裁 A4・128.0頁・定価 本体3000円+税
ISBN 978-4-7615-3188-1
発行日 2010-10-20
装 丁 上野 かおる
序章 建築計画の役割
〈1〉建築行為の社会性
〈2〉建築計画の範囲
〈3〉建築計画の意義
第1章 人間をとらえる
〈1〉多様な人々のためのユニバーサルデザイン
〈2〉身体と能力の多様性
〈3〉姿勢の多様性
〈4〉動作の多様性とユーザビリティ
〈5〉移動の多様性とアクセシビリティ
〈6〉都市空間のユニバーサルデザイン
〈3〉建築空間のユニバーサルデザイン
第2章 人間と環境
〈1〉人間の生理
〈2〉人間の心理
〈3〉アフォーダンス
〈4〉環境のとらえ方
第3章 人間の行動を知る
〈1〉空間・環境と人間
〈2〉人間と領域
〈3〉環境と行動
〈4〉歩行行動
〈5〉群 集
〈6〉空間の知覚
第4章 建築を計画する
〈1〉建築を計画する
〈2〉寸法とスケール
〈3〉外部空間と建物の配置
〈4〉機能と空間構成
〈5〉開口部とそのまわりの計画
〈6〉通路空間の計画
〈7〉寸法・規模の計画
〈8〉安全と建築計画
〈9〉建築計画と維持保全
第5章 非常時の安全・安心のデザイン
〈1〉建築と災害
〈2〉火災に備える
〈3〉建物火災の性状
〈4〉火災の拡大を防ぐ
〈5〉煙の拡大とその防止
〈6〉安全に避難する
〈7〉地震に備える
〈8〉沿岸部における津波への備え
〈9〉風水害・雪害に備える
第6章 サスティナブル・デザイン
〈1〉地球環境問題を考える
〈2〉サスティナブル・デベロップメント
〈3〉サスティナブル・ビルディング
〈4〉環境保全
〈5〉エネルギーの消費を少なくする
〈6〉建物を長く持たせる
〈7〉リサイクルを促進する
〈8〉建築の環境影響評価
現在,建築計画のありかたが問い直されている.戦後,大きく発展した「建築計画学」は,戦後復興の一環として建築の水準を高めるうえで,多大な貢献をしてきた.だが一方で,「建築計画学」の限界や問題点が指摘され,また社会が大きく変化したこともあって,設計と「建築計画学」が大きく乖(かい)離(り)してしまい,その溝は充分に埋まらないまま今日に至っているように思える.このことがその間,人間不在の建築,安全性や耐久性を軽視した建築が多数生みだされた一因であることは,否定できないであろう.21世紀の日本が直面する大きな課題である「少子高齢化」「ユニバーサルデザイン」「安全・安心な社会」「地球環境問題」に対して,建築計画はどのように社会に関わり,貢献すべきかが問われている.
本書は,このような状況をふまえ,定型化していた従来の建築計画の教科書の構成や内容を大きく見直し,「建築計画の基礎」を「人間」「安全・安心」「環境」という視点から横断的に学び理解することを目的として企画された.本書の章構成が,「序章 建築計画の役割」「第1章 人間をとらえる」「第2章 人間と環境」「第3章 人間の行動を知る」「第4章 建築を計画する」「第5章 非常時の安全・安心のデザイン」「第6章 サステイナブル・デザイン」となっているのは,そのためである.
本書は,どこから読み始めてもよい.だが,通読すれば,各章が相互に有機的かつ緊密に関連していることに気付かれるであろう.本書が,建築計画の教科書だけでなく設計演習,さらには実務においても広く読まれるならば,筆者一同望外の喜びである.
なお,本書は企画から出版まで8年もの歳月を要してしまったが,この責任はすべて執筆代表である私にある.学芸出版社の吉田隆氏と村田譲氏には,長年にわたって根気よくおつきあいいただき,叱咤激励していただきました.ここに,両氏に対しまして心より感謝申し上げます.
2010年9月 執筆者を代表して
吉村 英祐