都市縮小時代の土地利用計画

日本建築学会 編

内容紹介

人口減少に対して都市のコンパクト化論が盛んだが、その後退的で否定的な印象によるマイナス思考が、地方の希望を損ねかねない。必要なのはパラダイムシフトを好機と捉え、空き地や空き家を活かして多様な都市空間を生み出し、新しい暮らしと都市への希望を創り出すことだ。計画は何ができるか、なすべきかを明らかにする

体 裁 B5変・232頁・定価 本体4400円+税
ISBN 978-4-7615-4092-0
発行日 2017/08/01
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史


目次著者紹介あとがき

序 章 都市縮小問題と土地利用計画 浅野純一郎

0・1 都市縮小とは何か
0・2 各国に見る都市縮小の要因
0・3 都市縮小問題の顕在化と土地利用計画制度の推移
0・4 本書の構成と狙い

1編 都市縮小・都市希薄化の実態と土地利用計画の課題

第1章 海外の都市縮小事情と日本の状況

1・1 シュリンキングシティ=縮小都市をめぐって
1・2 世界と日本の人口変化と都市化
1・3 主要先進国における縮小都市の状況と対応
1・4 縮小都市の都市像・計画手法・施策・マネジメント

第2章 首都圏郊外部で進む都市の希薄化
横浜市と金沢区の高齢化と地区の状況

2・1 大都市圏郊外地域における市街地の縮退
2・2 横浜市の人口動態
2・3 横浜市金沢区における縮退の分析
2・4 希薄化する住宅地の現状と具体的課題
2・5 課題対応への体制づくり

第3章 拡大しながら空洞化する首都圏近郊都市

3・1 首都圏近郊都市とは
3・2 首都圏近郊都市のリバーススプロールの実態
3・3 旧小糸町におけるスプロールとリバーススプロールの実態
3・4 リバーススプロールの実態は拡大しながらの空洞化

第4章 DID 縮小区域から見た地方都市

4・1 都市縮小をどう捉えるか
4・2 DID 指標に見る都市縮小の実態
4・3 DID 縮小区域の発生要因とその特性
4・4 DID 縮小区域と土地利用計画課題

第5章 東日本大震災被災地の空間変容の実態と新たな取り組み

5・1 震災被災地の低利用化
5・2 復興の事業
5・3 土地利用的に変容する(しない)市街地・集落:高密化と低密化
5・4 被災空閑地の利活用に関する先進的取り組み
5・5 被災低利用地の利活用から見えてきたもの

2編 計画・制度の課題と可能性

都市計画制度の課題と可能性

第6章 都市縮小に向けた都市計画法制度のあり方

6・1 本章の狙いと議論のための前提
6・2 都市縮小という現象とは何か
6・3 都市縮小に際して考慮すべき点とは
6・4 都市縮小に向けた土地利用制度とは
6・5 都市縮小を視野に入れた計画のあり方

第7章 都市計画法指定区域の縮小に向けた取り組み

7・1 市街地の器としての法指定区域
7・2 3411 区域縮小の取り組み
7・3 用途地域を縮小した線引き拡大
7・4 法指定区域の縮小が目指すもの

第8章 逆線引き制度の適用可能性

8・1 市街地縮小と逆線引き制度
8・2 地方都市における逆線引きの適用状況と計画課題
8・3 暫定逆線引き適用の実態と計画課題
8・4 市街地縮小に向けた今後の逆線引き制度とは

第9章 立地適正化計画の効果的活用方策
居住誘導区域内外の土地利用制度のあり方

9・1 立地適正化計画の論点
9・2 先行する策定の取り組みに見る課題
9・3 土地利用制度との関係で考慮されるべきこと
9・4 立地適正化計画制度運用の方向性

拠点・居住地の再編

第10章 まちなか居住施策による中心回帰
北陸地方の主要都市を例に

10・1 まちなか居住と中心回帰の現状
10・2 北陸地方のまちなか居住施策の効果と課題
10・3 まちなか居住施策の今後の展望

第11章 郊外住宅団地の持続的居住と集約化の可能性

11・1 希薄化する郊外住宅団地
11・2 持続的居住に向けた課題
11・3 集約化の可能性
11・4 政策化に向けて

第12章 用途無指定区域における拠点集約の取り組み

12・1 上越市における取り組み
12・2 小さな拠点を具体化する土地利用制度

未利用地の発生と利活用

第13章 市街化区域内農地の保全と市街地縮小化への活用可能性

13・1 市街化区域内農地になぜ着目するのか
13・2 市街化区域内農地の位置づけに関する国の議論の変遷
13・3 市街化区域内農地の実態
13・4 明石市における生産緑地地区指定に向けた取り組み
13・5 市街化区域内農地の保全と市街地縮小化への活用可能性

第14章 空き地の複数区画利用と暫定利用の可能性

14・1 福井市周辺の郊外住宅地の状況
14・2 菜園利用による空き地の暫定利用
14・3 複数区画利用と菜園利用の可能性

第15章 市街地再編に向けた空き家の整備のあり方

15・2 呉市危険建物除却促進事業の概要
15・3 空き家解体除却後の跡地活用の実態
15・4 住民意識調査からみた跡地活用の可能性
15・5 空き家の総合対策と住宅地再編

他分野と連携した対応

第16章 都市の縮小と公共交通
バス路線再編を事例として

16・1 人口減少と交通計画
16・2 公共交通のダウンサイジング
16・3 公共交通の再編事例
16・4 今後の課題

第17章 自治体税制からの検討
固定資産税制度から見た望ましい市街地集約化のあり方

17・1 都市計画と税制の関係
17・2 中心市街地の衰退と固定資産税収の関係
17・3 集約型都市構造の実現と固定資産税収確保に向けた都市計画の課題

第18章 郊外市街地のマネジメント
将来人口構造およびインフラ・サービスの費用便益予測を踏まえた検討

18・1 将来像予測に基づく郊外市街地のマネジメントの重要性
18・2 地区レベルでの将来人口・世帯数予測
18・3 生活利便施設の存続可能性予測
18・4 インフラ・サービスの維持管理・更新に係る将来コストの推計
18・5 整備シナリオ案に基づく将来便益の推計

3編 欧米諸国の都市縮小の実態と対応

第19章 欧米諸国における都市縮小事情と国際的な比較研究の必要性

19・1 都市縮小問題の国際的研究の状況
? 都市縮小の国際的研究状況
? 地域的問題の統合と国際的検討の必要性
? 都市縮小への学術的理解の進展
19・2 都市縮小メカニズムの解釈モデルの検証
? マキイフカ市における都市縮小の進行
? マキイフカ市による政策的対応
19・3 都市縮小問題の政策課題と展望
? 政策的対応の比較検討の必要性
? 都市縮小問題の政策課題
? 今後の展望

第20章 ドイツにおける人口減少への都市計画的対応

20・1 ドイツにおける人口減少の様相
20・2 自治体レベルの空間形成の実態と計画
20・3 地区レベルの課題、計画とその実現
20・4 ドイツの低未利用地利活用事例からの示唆

第21章 英国における衰退住宅地管理の歴史的経緯と課題

21・1 英国における住宅需要の低下と都市縮小問題
? 英国の戦後住宅施策と都市縮小問題
? 住宅需要の低下と需要変化
21・2 ブレア労働党政権による政策的対応
? 都市再生と社会的包摂プログラム
? 空間計画とその統治
21・3 住宅市場の強靱化と都市管理の必要性
? 住宅市場の強靱性と先見性
? 都市管理と住宅ストックの変化
? 今後の展望とさらなる課題

第22章 放置されたブラウンフィールドの有効な再生方法英国と日本の取り組み方の比較

22・1 ブラウンフィールドとは
22・2 ブラウンフィールド再生に向けての都市政策
22・3 放置されたブラウンフィールドの再生事例
22・4 今後の課題

第23章 縮退状況における計画アプローチとしてのグリーン・イフラストラクチャー

23・1 縮退都市におけるグリーン・インフラストラクチャーの可能性
23・2 グリーン・インフラストラクチャーとは
23・3 グリーン・インフラストラクチャーの計画アプローチの特性
23・4 縮退という文脈におけるグリーン・インフラストラクチャー
23・5 ルール地方におけるスタディ
23・6 グリーン・インフラストラクチャーの課題

第24章 米国における空き家・空き地問題への対処
市場メカニズム活用とランドバンク

24・1 米国における空き家・空き地問題
24・2 空き家・空き地の再利用に際する課題
24・3 米国における空き家・空き地問題への対応
24・4 ランドバンクによる空き家・空き地問題への対処
24・5 市場性メカニズム型施策と公的施策のバランスのとれた活用の必要性

終章 多様な都市空間の創出に向けて

1 都市縮小現象の何が問題なのか
2 多様な都市空間の創出に向けた都市再構築の必要性

索引
あとがき
略歴

浅野 純一郎(あさの じゅんいちろう)

豊橋技術科学大学大学院教授。
1968年生まれ。豊橋技術科学大学大学院修士課程修了、積水ハウス株式会社、長野高専助手・准教授等を経て、2015年4月から現職。博士(工学)。一級建築士。主な著書に、『中心市街地再生と持続可能なまちづくり』(共著、学芸出版社、2003年)、『戦前期の地方都市における近代都市計画の動向と展開』(単著、中央公論美術出版、2008年)、『人口減少時代における土地利用計画』(共著、学芸出版社、2010年)。

海道 清信(かいどう きよのぶ)

名城大学都市情報学部教授。
1948年生まれ。京都大学大学院博士課程単位取得満期退学。地域振興整備公団20年間勤務を経て現職。博士(工学)。専門分野は都市計画。主な著書(共著)は、『コンパクトシティ』(学芸出版社、2001年)、『シリーズ地球環境建築・専門編1・地球環境デザインと継承』(彰国社、2004年)、『創造都市への展望─都市の文化政策とまちづくり』(学芸出版社、2007年)、『コンパクトシティの計画とデザイン』(学芸出版社、2007年)、『デンマークのヒュッゲな生活空間─住まい・高齢者住宅・デザイン・都市計画』(萠文社、2014年)

中西 正彦(なかにし まさひこ)

横浜市立大学准教授。
1970年生まれ。東京工業大学大学院博士課程修了、日本学術振興会特別研究員、東京工業大学大学院社会理工学研究科助教等を経て、2013年4月から現職。博士(工学)。専門分野は都市計画・土地利用計画。制度論・計画論研究の他、近年は郊外住宅地の活性化に取り組む。主な著書に『成熟社会における開発・建築規制のあり方─協議調整型ルールの提案』(共著、技報堂出版、2013年)。

秋田 典子(あきた のりこ)

千葉大学大学院園芸学研究科准教授。
東京大学大学院博士課程修了、東京大学国際都市再生研究センター研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科研究員等を経て、2008年12月から現職。博士(工学)。専門分野は土地利用計画、緑地計画。主な著書(共著)に、『都市計画の理論─系譜と課題』(2006年、学芸出版社)、『住民主体の都市計画』(2009年、学芸出版社)、『自分にあわせてまちを変えてみる力』(2016年、萌文社)。

姥浦 道生(うばうら みちお)

東北大学大学院准教授。
1973年生まれ。東京大学大学院博士課程満期退学、豊橋技術科学大学COE研究員、大阪市立大学助手等を経て、2008年4月から現職。博士(工学)。専門分野は都市計画・土地利用計画。主な著書(共著)に、『人口減少時代における土地利用計画』(2010年)、『東日本大震災 復興まちづくりの最前線(東大まちづくり大学院シリーズ)』(2013年)、『白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか』(2014年)、『都市・地域の持続可能性アセスメント』(2015年、いずれも学芸出版社)。

苅谷 智大(かりや ともひろ)

株式会社街づくりまんぼうまちづくり事業部。東北大学大学院工学研究科教育研究支援員兼務。
1985年生まれ。東北大学大学院工学研究科博士課程後期修了、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2015年4月から現職。博士(工学)。専門分野は住民主体型まちづくり、中心市街地活性化。著書に、『シティプロモーション:地域創生とまちづくり』(共著、同文舘出版、 2017年)。

中出 文平(なかで ぶんぺい)

長岡技術科学大学副学長。
1957年生まれ。東京大学大学院博士課程満期修了、東京大学工学部助手、長岡技術科学大学工学部助教授、2001年4月に同教授、2012年4月より現職。工学博士。専門分野は都市計画・土地利用計画。主な著書に、『消滅してたまるか!』(共著、文藝春秋、2015年)、『人口減少時代における土地利用計画』(共著、学芸出版社、2010年)、『中心市街地活性化─三法改正とまちづくり』(共著、学芸出版社、2006年)、『中越大震災・前・後編』(共著、ぎょうせい、2006年)。

松川 寿也(まつかわ としや)

長岡技術科学大学大学院助教。博士(工学)。
新潟県生まれ。同大助手、国土交通省国土交通政策研究所客員研究官等を経て2007年より現職。著書に『ラーバンデザイン─「都市×農村」のまちづくり』(共著、技報堂出版、2007年)、『人口減少時代における土地利用計画』(共著、学芸出版社、2010年)。

眞島 俊光(ましま としみつ)

株式会社日本海コンサルタント社会事業本部計画研究室リーダー。
1981年生まれ。金沢大学大学院博士課程修了、2006年4月から現職。博士(工学)。技術士(建設部門、農業部門)。専門分野は都市計画・土地利用計画。 著書に『地方都市の再生戦略』(共著、学芸出版社、2013年)。

藤田 朗(ふじた あきら)

日建設計総合研究所主任研究員。
早稲田大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。技術士(建設部門・都市及び地方計画)、一級建築士。専門分野は都市計画、政策分析。

竹田 慎一(たけだ しんいち)

新潟県上越市都市整備部都市整備課計画係長。
1989年上越市役所入所、農林水産、産業、道路、河川、砂防、都市計画関連部署、上越市土地開発公社、新潟県を経て2012年から都市計画の土地利用や開発業務に従事。主に上越市都市計画区域のあり方、上越市総合計画、上越市都市計画マスタープラン、上越市立地適正化計画などに携わる。

柴田 祐(しばた ゆう)

熊本県立大学環境共生学部教授。
1971年生まれ。大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。造園コンサルタント、大阪大学大学院工学研究科助教、熊本県立大学環境共生学部准教授を経て、2017年4月から現職。専門は地域計画、農村計画。主な著書に『都市・まちづくり学入門』(共著、学芸出版社、2011年)、『はじめての環境デザイン学』(共著、理工図書、2011年)、『都市計画とまちづくりがわかる本』(共著、彰国社、2011年)などがある。

原田 陽子(はらだ ようこ)

福井大学大学院准教授。
1975年生まれ。神戸芸術工科大学大学院博士課程修了、(株)HEXA、コペンハーゲン大学客員研究員などを経て、2013年7月から現職。博士(芸術工学)。専門分野は、居住地計画・環境デザイン。主な論文に、「大阪市空堀地区における路地単位特性と接道不良長屋所有者の居住改善実態」(日本建築学会計画系論文集、2011年)、「デンマークにおける地区を基盤にした市民参加の都市再生事業に関する研究」(日本都市計画学会論文集、2016年)

篠部 裕(しのべ ひろし)

呉工業高等専門学校教授。
1962年生まれ。豊橋技術科学大学大学院修士課程修了、呉工業高等専門学校助手、文部科学省教科書調査官等を経て、2003年4月から現職。博士(工学)。技術士(建設部門)、一級建築士。主な著書に『中国地方のまち並み─歴史的まち並みから都市デザインまで』(共著、中国新聞社、1999年)。

吉中 美保子(よしなか みほこ)

西日本鉄道株式会社。
福岡市役所勤務ののち、九州大学大学院博士課程を修了し、2008年4月より現職。博士(工学)。専門は持続可能性の評価、コンパクトシティ政策、都市・地域計画。これまで、沿線のまちづくりや不動産事業、新規事業などに従事。主な著書に、『景観法と景観まちづくり』(共著、学芸出版社、2005年)、『持続可能な低炭素都市の形成に向けて(九州大学東アジア環境研究機構RIEAE叢書Ⅶ)』(共著、花書院、2015年)。

榎本 拓真(えのもと たくま)

Local Knowledge Platform LLC。
横浜国立大学大学院博士課程修了後、九州大学大学院学術研究員等を経て、2016年4月より現職。博士(工学)、技術士(都市及び地域計画)。これまで、大手私鉄事業者による交通戦略策定のコンサルティングやエリアマネジメント組織の運営、各種プロジェクト評価等に従事。その他、国連ハビタット(国際連合人間居住計画)コンサルタント等。専門は都市交通計画、都市・地域計画、都市政策、交通政策。

樋口 秀(ひぐち しゅう)

長岡技術科学大学大学院准教授。
1966年生まれ。長岡技術科学大学大学院建設工学専攻修了、島根県立出雲工業高等学校建築科教諭、長岡技術科学大学助手、同助教授を経て、2007年4月から現職。博士(工学)・一級建築士。専門分野は都市計画・市街地整備。主な著書に、『中心市街地再生と持続可能なまちづくり』(共著、学芸出版社、2003年)、『定常型都市への模索─地方都市の苦闘(「シリーズ都市再生」第3巻)』(共著、日本経済評論社、2005年)、『日本建築学会叢書9 市民と専門家が協働する成熟社会の建築・まちづくり』(共著、日本建築学会、2014年)。

勝又 済(かつまた わたる)

国土交通省国土技術政策総合研究所都市研究部都市開発研究室長。
1967年生まれ。東京大学大学院修士課程修了、同博士課程中途退学、建設省建築研究所を経て、2014年4月から現職。博士(工学)。専門分野は都市計画・住環境整備。主な著書に、『暮らし・住まい ─大都市の戸建住宅に住む』(共著、日本統計協会、2001年)、『まちづくりのための建築基準法集団規定の運用と解釈』(共著、学芸出版社、2005年)、『人口減少時代における土地利用計画』(共著、学芸出版社、2010年)、『地域再生 ─人口減少時代のまちづくり』(共著、日本評論社、2013年)。

Katrin Grossmann

エルフルト応用科学大学建築都市計画学部教授。
1972年生まれ。フィリップ大学マールブルクでPh.D、UFZ都市環境社会学学科ヘルムホルツ環境調査センター助手を経て、2014年より現職。主な著作に、
Grossmann, K., Buchholz, J., Buchmann, C., Hedtke, C., Höhnke, C., Schwarz, N.(2015): Energy costs, residential mobility, and segregation in a shrinking city. Open House International 39, 14-24.
Haase, A., Rink, D. and Grossman, K.(2016): ‘Shrinking cities in post-socialist Europe: what can we learn from their analysis for theory building today?’, Geografiska Annaler: Series B, Human Geography 98 (4): 305-319.

Vlad Mykhnenko

オックスフォード大学セントピーターズカレッジ継続教育学科准教授。
1975年生まれ。ケンブリッジ大学でPh.D、グラズゴー大学都市研究学科研究員、ノッティンガム大学地理学部研究員、バーミンガム大学人文地理学部講師を経て、2017年より現職。主な著作に、
Haase, A., Rink, D., Grossmann, K., Bernt, M., Mykhnenko, V.(2014)Conceptualizing urban shrinkage. Environment and Planning A, Vol. 46(7) pp. 1519-1534.
Haase, A., Bernt, M., Grossmann, K., Mykhnenko, V., Rink, D.(2016). Varieties of shrinkage in European cities, European Urban and Regional Studies, Vol. 23 (1), pp. 86-201.

Annegret Hasse

UFZ都市環境社会学学科ヘルムホルツ環境調査センター上級科学者。
1972年生まれ。ライピツッヒ大学でPh.D、IfL(地域地理研究所)科学協力員を経て2002年より現職。主な著作に、
Bernt, M., Cortese, C., Couch, C., Cocks, M., Grossmann, K., Haase, A., Krzysztofik, R.(2014): How does(n’t) urban shrinkage get onto the agenda? Experiences from Leipzig, Liverpool, Genoa, and Bytom, In: International Journal for Urban and Regional Research 38(5), 1749-1766 (DOI:10.1111/1468-2427.12101).
Haase, A., Athanasopolou, A., Rink, D. (2016): Urban shrinkage as an emerging concern for European policymaking, In: European Urban and Regional Studies 23 (1), 103-107 (2013 Online first; DOI: 10.1177/0969776413481371).

Marco Bontje

アムステルダム大学地理・計画・国際開発研究学科助教。
1973年生まれ。アムステルダム大学でPh.D、同大学研究員を経て2009年より現職。主な著作に、
Grossmann, K., Bontje, M., Haase A., Mykhnenko, V. (2013)Shrinking cities: notes for the further research agenda. Cities 35: 221-225.
Bontje, M., Musterd, S. (2012)Understanding shrinkage in European regions. Built Environment 38(2): 153-161.

Peter Lee

バーミンガム大学地理・地球及び環境科学学部上級講師。
1962年生まれ。バーミンガム大学でPh.D、同大学都市地域研究センター研究員、講師等を経て2011年より現職。主な著作に、
Urban Resilience: Planning for Risk, Crisis and Uncertainty, Coaffee, J., Lee, P. May 2016 London: Palgrave Macmillan.
Building Sustainable Housing Markets, Ferrari, E., Lee, P., Jan. 2010 Chartered Institute of Housing, London.

大塚 紀子(おおつか のりこ)

英国在住のフリーランスコンサルタント。
専門分野は都市デザインと交通計画。現在ドイツの都市計画研究所、ILS(地域都市開発調査研究所)の客員研究員として、EU出資の研究プロジェクトを主導し、オランダ、ドイツおよびイタリアの鉄道駅のデザインを調査中。大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻の招聘研究員として、日英のブラウンフィールド比較研究に携わる。1985年から1995年まで竹中工務店勤務、退社後渡英しオックスフォード・ブルックス大学でPh.D(都市デザイン)を取得。TRL Limited(英国交通研究所)や ETH Zurich(スイス連邦工科大学チューリッヒ校)での勤務などを経て現職、一級建築士。

Karsten Rusche

ILS(地域都市開発調査研究所)上級研究員。
1980年生まれ。ミュンスター大学大学院でPh.D、同大学空間・住宅経済研究所研究員を経て、2009年より現職。主な著作に、
Reimer, M., Rusche, K.(2016): Green Infrastructure – an Important Element in Strategic Urban Planning. In: IGLUS(Hrsg.): GIPC – Governance, Innovation and Performance in Cities. Jg. 2, H. 2, S. 6-9.
Rusche, K., Wilker, J.(2015): Social, Economic and Ecological Benefits of Landscape Park Projects: Using Benefit Transfer to Assess Green Infrastructure Projects. In: Woltjer, J., Alexander, E., Hull, A., Ruth, M.(Hrsg.): Place-Based Evaluation for Integrated Land-Use Management, Farnham, UK, S. 57-74.

Jost Wilker

ノルトライン=ヴェストファーレン州気候保護・環境・農業・保全・消費者保護省研究員。
1983年生まれ。ドルトムント工科大学大学院修士課程修了、ILS(地域都市開発調査研究所)研究員を経て、2016年より現職。
主な著作に、
Mell, I., Allin, S., Reimer, M., Wilker, J.(2017): Strategic Green Infrastructure planning in Germany and the UK: A transnational evaluation of the evolution of urban greening policy and practice. In: International Planning Studies, published online 15 February 2017.
Wilker, J., Gruehn, D.(2017): The Potential of Contingent Valuation for Planning Practice. The Example of Dortmund Westpark. In: Raumforschung und Raumordnung – Spatial Research and Planning, Vol. 1, p. 1-15.

藤井 康幸(ふじい やすゆき)

民間シンクタンク勤務。
1962年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)建築都市計画スクール修士課程修了、東京大学大学院博士課程単位満期取得退学。博士(工学)、AICP(米国認定都市プランナー)。専門分野は都市・地域政策、人口減少都市問題。主な著書に、『日本の街を美しくする』(共著、学芸出版社、2006年)、訳書に、『カリフォルニアのまちづくり』(共訳、技報堂出版、1994年)。

超高齢化社会を迎える日本において、死亡率が出生率を上回ることによる人口動態要因が人口減少や都市縮小の大きな要因であることに替わりはないが、東京の一極集中による地方の一種の疲弊は、日本に特有の様相と言える。東京(及びその他の大都市圏)に経済的資本や知的資源、あるいは政治的権限等が集中することによる弊害は、漠然と地方には働き場所がないと認識されることで一層若い人材が離れることであり、人材の枯渇は地方再生に対して、少なからず大都市圏に縁のある人材が関わらないと、その達成を困難にしつつある。このことは地方都市のオリジナリティや固有性をさらに弱めることに繋がるだろう。かくいう我々、都市計画の分野でも皮肉なことが起こっている。大学は大都市圏に集中しているのであるが、研究対象としての最前線課題である都市縮小は地方ほど深刻であるという事実である。よって、大都市圏に生活し、地方の生活感に疎い研究者がこの課題に取り組むということになるのである。

このような中で、都市縮小問題を論じるシンポジウム等で、必ずといってよいほど発せされる問いかけがある。それは「都市の集約化はいかに可能か」というものである。人口が減るから都市の器も小さくてよいはずだ。だとすれば、それはコンパクトな形態が環境負荷も小さく、財政的負担も少なく、高齢者にも優しいだろう、と。確かに合理的な論理ではある。が、そこには、かつて石川栄耀が強調したような、都市の娯楽性や余暇の充実といったアメニティ的な視点は見えにくく、集約化という言葉がもつ後退的な印象はぬぐえないのも事実である。また、この問いかけを地方の生活感に疎い研究者が捉えた場合、地方都市の多様性を無視した、金太郎飴的な集約型都市構造の適用も懸念されるのである。
本書では、各執筆者が自らの地方都市(や首都圏の人口減少地域)の関わりを基に各章を書いている。ある章では問題提起がなされ、ある章ではその先の提案までが具体的に示された。各章が出揃い、一通り読んだ上で我々が議論したことは、各章を演繹的にとりまとめ、一つの論として包括化するというよりも、各章のリアリティを地方の生活感に裏打ちされた各論として理解しながら、「都市の集約化」の問いかけに関わる違和感に関してであった。つまり、計画的な都市縮小の必要性とは、新たな都市空間を創造する重要な機会ではないか、ということである。「都市の集約化」はその一側面にすぎない。その機会をものにするためには何が必要であるのか? 本書のサブタイトルを「多様な都市空間の創出に向けて」とした理由はここにあり、そのことを結章にまとめている。もちろん、多様な都市空間の具体や実態と、これを必要とする新しい生活像は今後生まれてくるものも多かろう。本書がこうした視点を提供し、新しい議論を開示できたのだとすれば、幸いである。

本書をとりまとめるにあたり、多くの方々のご協力を賜った。まず、執筆者の多くが委員を務める日本建築学会土地利用問題小委員会の現地視察に対して、快く我々を受け入れて下さり、詳しい情報提供と密な意見交換の場を設けて下さった自治体関係者の方々に御礼を申し上げる。また、研究助成に関しては、大幸財団と科学研究費補助金基盤研究B(課題番号16H04472)の助成を受けている。この場を借りて感謝を申し上げる。最後に、企画の段階から適切なアドバイスと、草稿の読み手として貴重なご意見をいただいた学芸出版社の前田裕資氏と、編集と構成に丁寧にご対応いただいた古都デザインの山本剛史氏と萩野克美氏にこの場を借りて御礼を申し上げたい。

2017年2月  編者