改訂版 イラストでわかる空調設備のメンテナンス
内容紹介
やさしく学べる!空調設備と維持管理の基本
ビルメンテナンスの現場で読み継がれる入門書、待望のリニューアル!最新データや法規にもしっかり対応。今更人には聞けない“空調設備のキホン”から、日々の管理の落とし穴、現場で役立つ点検のコツまで総ざらい。見やすくなった2色イラストで、空気の通り道や器具の構造、重要語句も一目瞭然。時短でサクサク学びきろう!
体 裁 B5・208頁・定価 本体3000円+税
ISBN 978-4-7615-3283-3
発行日 2022-09-05
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
改訂にあたって
初版へのまえがき
1 章 保全管理のあらまし
1・1 保全管理方式のあらまし
1 保全の良し悪しが左右する! 室内環境やビル設備の寿命
2 保全管理の方法
3 スマートビルにおける保全管理の考え方
4 設備の故障と耐用寿命のはなし
5 正しい保全管理で設備の耐用寿命は延びる
2 章 快適な室内空気環境を維持するには
2・1 空気調和の意味をよく認識しよう
6 空気調和は室内の空気環境を快適にする
2・2 空気環境測定の要領
7 空気環境測定は定期的に実施しよう
8 手間と時間がかかる浮遊粉じん量の測定
9 一酸化炭素含有率と二酸化炭素含有率の測定要領
10 同時に行える温度と湿度の測定
11 気流測定とは、風速を測ること!
12 空気環境測定はだれでも行えるの?
2・3 スマートビルの汚染された空気
13 シックビルディング症候群
14 空気汚染防止には十分な換気が一番!
2・4 空気調和設備の構成と設計
15 空調設備は、どのような機器から構成されるのかな?
16 保全管理に配慮した設計・施工をしてほしい!
3 章 空気調和機保全管理のポイント
3・1 空気調和機の種類
17 空気調和機にもいろいろある!
18 空気調和機の主な故障とその原因
3・2 エアフィルターの点検整備
19 エアフィルターの種類
20 エアフィルターの性能に関する用語
21 エアフィルターは、こまめに洗浄しよう!
22 自動巻取り形フィルターの点検
23 電気集じん装置のはなし
24 エアフィルターがパンクする?
3・3 冷却器および加熱器の点検整備
25 加熱冷却器(コイル)はフィンの目詰まりに注意
26 コイルの内部も目詰まりが起きるの?
27 寒冷期はコイルがパンクしやすい!
3・4 加湿器はトラブルを生じやすい!
28 加湿器は泣いている!
29 加湿用水は水道水を!
30 いずれの加湿方式でも問題点があるんだね パートⅠ
31 いずれの加湿方式でも問題点があるんだね パートⅡ
32 エリミネータとドレンパンのはなし
3・5 送風機保全のポイント
33 送風機点検整備のポイントは3 ヶ所
34 V ベルトは定期的に交換しよう!
35 ベルトの交換作業は安全第一で
36 年1 回は、羽根車を清掃しよう!
37 軸受の整備不良は騒音発生のもと
4 章 熱運搬装置のメンテナンス
4・1 ダクト系の点検・保全要領
38 ダクト系点検のポイントは吹出し口と吸込み口
39 吹出し口と吸込み口は定期的に清掃しよう!
40 ダクト内にねずみの死骸!?
4・2 配管系の点検・整備
41 配管系の点検・保全のポイントは管継手部とバルブ
42 フランジ結合部の正しい取りはずし方
43 ガスケットの正しい用い方
44 フランジは正しく取り付けよう!
45 バルブの外部漏れはパッキン部から
46 バルブの病気(内部漏れ)は聴診器で診断(点検)!
47 バルブの分解清掃の要領
48 “ バルブのすり合せ” って難しそうだね
4・3 ポンプ保全管理のあらまし
49 ポンプ点検・保全の要かなめは、五感による日常監視
50 グランドパッキンの交換要領
51 振動や故障の原因となる軸継手の芯狂い
52 ポンプの事故に多い、キャビテーションと空運転
5 章 温熱源設備保全管理のポイント
5・1 ボイラーは厳しく法規制されている
53 ボイラー技士でなければボイラーの運転管理はできない
54 ボイラーの起動時はとくに注意しよう!
5・2 ボイラーにまつわる事故災害
55 ボイラーに関する事故災害
56 ボイラーの過熱事故も恐ろしい!
57 危険をともなう吹出し作業
58 から釜事故防止は毎日の水面計の機能点検から!
59 ガラス水面計のガラス管は割れないように注意しよう
60 定期自主検査はボイラー技士が実施
61 ボイラーは1 年ごとに性能検査に合格しなければならない
5・3 鋳鉄ボイラーの留意点
62 鋳鉄ボイラーの特性と使用方法
63 鋳鉄ボイラー運転上の留意点
64 真空給水ポンプに起こりやすいトラブル
65 還水管内へ空気漏入する箇所を見つけるのは大変!
66 蒸気トラップの“ 糞詰まり”
67 メインは水圧試験! 鋳鉄ボイラーの性能検査
5・4 ボイラーの休止保存方法
68 ボイラーは運転中よりも休止中にトラブルを生じやすい
69 休止保存方法は満水保存法と乾燥保存法がある
5・5 ボイラーでない“ ボイラー” が温水ヒーター
70 温水ヒーターのメンテナンスはボイラーと同じ
71 温水ヒーター保全管理のポイントは給湯コイルにあり!
6 章 燃焼装置の安全管理
6・1 油燃焼装置保全管理のポイント
72 油燃焼装置保全の基本は法令順守
73 油燃焼装置は保全上、点検・整備項目が多い!
74 貯油タンクのドレン抜きを定期的に実施しよう!
6・2 ガス燃焼装置の安全ポイントはガス漏れ防止
75 遮断弁の通り抜けチェック
76 遮断弁の通り抜けチェックの要領
7 章 冷熱源設備保全管理の要点
7・1 往復動冷凍機点検整備のポイント
77 往復動冷凍機は厳しく法規制される
78 ビルの冷房方式は間接膨張方式(冷水方式)
79 凝縮器のチューブ掃除は定期的に
80 運転中は吐出し圧力と吸込み圧力の監視を!
81 不凝縮ガスは追い出せ!
82 冷媒の充てんおよび抜き取り、ポンプダウン
83 冷凍機油は定期的に交換しよう!
84 ポンプダウンって何?
7・2 ヒートポンプのはなし
85 四方弁の操作で冷房運転と暖房運転を切替え
7・3 ターボ冷凍機メンテナンスのポイント
86 ターボ冷凍機も日常の点検・運転管理が大切
87 ターボ冷凍機はサージングに注意
7・4 吸収冷凍機のメンテナンス
88 化学的プロセスで冷却作用される吸収冷凍機
89 自動結晶解除装置と希釈サイクル運転
90 冷温水発生機とは、直焚き二重効用吸収冷温水機のこと
8章 冷却塔メンテナンスのポイント
8・1 冷却水の水質管理
91 冷凍機を生かすも殺すも冷却水の水質管理次第!?
92 冷却水の水質管理に殺菌剤が必要!?
8・2 冷却塔は耐用寿命が短い
93 冷却塔の日常点検はとくに厳密に!
94 冷却塔の主な故障と原因および対策
95 運転休止期間中の冷却塔の保護
索引
初版へのあとがき
1995 年に発刊されました『イラストでわかる空調設備のメンテナンス』は、中井多喜雄先生の解りやすいユーモラスな説明と石田芳子先生の親しみやすいイラストで、これまで、大変多くの方に愛されて参りました。初心者にも大変わかりやすく、空調設備のメンテナンス業務実務者のみならず、設計・施工に携わる方々に活用されてきたことと思います。
本書は、好評につき、より一層、空調設備のメンテナンスにおける現場で活用していただけるように改訂するにあたって、(1)現行法令をはじめ、ウィズ・アフターコロナに対応した換気のあり方やコンプライアンスの強化等、時代の趨勢に合わせ、(2)使いやすさを重視した2 色刷とし、(3)関連資格の学習にも役立つように工夫することを主眼に編集いたしました。
ぜひ本書に触れていただき、空調設備のメンテナンス業務実務者のみならず、設計・施工に携わる方々に、より一層活用していただければ幸甚です。
最後に、本書の原著者であられました故・中井多喜雄先生、並びにイラストのご担当であられます石田芳子先生には、改めましてご功績の偉大さに敬意を表しますとともに、このたびの改訂に快く御了承いただき進めることができましたことを厚く御礼申し上げます。
2022年七夕
田中毅弘
初版へのまえがき
近年における建築物の新設や更新はめざましいものがあり、とくにその高層化とともに、高度情報システム、ビル自動管理システムなどを導入し、情報機能が格段に向上し、またオフィスオートメーションに対応した高度な建築的環境と設備を備えたいわゆるインテリジェントビル化が顕著であります。それに伴い建築物の諸設備の占める位置の重要性も一段と増してきました。建築物と建築設備は車の両輪のようなもので、両者は不即不離の仲であり、端的にいって両者は一体のものとならなければ、いわば建築物として機能しません。そして、ここでとくに留意しなければならないのは、建築物本体は無論のこと、建築設備の保全管理、つまりメンテナンスを十分に施さなければならない点であります。
このためビルの設備管理には多くのビル管理技術者(ビルメン)が従事されているわけですが、従来はともすればメンテナンスが軽視される傾向にありましたが、インテリジェントビルとしての機能を維持し、かつ、安全衛生上快適な空間を確保するには、つねに質の高い保全管理を必要とし、もしメンテナンスを怠ればたちまち非衛生的な環境に陥り、ビルの寿命を著しく縮めるような事態に至ることは必定です。
とくに注目しなければならないのは、日本に限らず欧米のインテリジェントビルで、近年、ビル内の空気環境や衛生環境が悪化し、シックビル病やレジオネラ症が多発し、近代建築技術の粋を集めたインテリジェントビルが、不健康なビルの汚名であるシックビル化している点です。この原因は建築設備の設計、施工不良などもありますが、その主因はメンテナンス不良にあるといっても過言でないほどで、このことは換言すればインテリジェントビルとしての機能、環境を維持するには、つねに質の高い保全管理を実施しなければならないことを意味しているわけです。
アメリカのビル協会の標語のひとつに「適正に設備され、適正に使用され、そして良好に維持されるべきだ」(Properly installed, properly used and well maintained)というのがあります。すなわち、installing、using、maintaining の3 者のうち、ひとつでも欠落すると、快適な居住環境、建築空間が期待できなくなるわけです。using するのは居住者や利用者で素人ですが、installing を担当するのは設計者や施工技術者、maintaining に携わるのがビル管理技術者であります。
建築設備は、空気調和設備、給排水衛生設備、ガス設備、電気設備、防災・消防設備、昇降機設備に大別されますが、もちろん空気調和設備の運用、保全管理を正しく行うことは空気環境、衛生上きわめて重要なポイントとなるわけです。
そこで空気調和設備に関して、その正しい運用、質の高いメンテナンスを目指していただきたいとの願いを込めて浅学非才の身をも顧みず本書を執筆した次第ですが、なにしろメンテナンスの分野は広範囲で、かつ奥の深いものであるにもかかわらず、学問的に体系化されてはおらず、また理論的に解析されていないといった側面があり、メンテナンスは書物(理論)で理解するものではなく「身体で覚えるもの……」といった傾向が強く、本書の説明では個々のメンテナンスに関して完全に理解しにくい側面はあると思いますが、各現場で諸先輩方のよき指導を受けていただき、保全管理の技術、ノウハウをマスターされ、ビル管理技術者としてさらに飛躍されんことを願っている次第です。
最後になりましたが、素晴らしいイラストを描いて下さいました石田芳子先生のご尽力に対し厚く御礼申し上げます。
1994年6月
中井多喜雄
初版へのあとがき
空気調和設備の運用、保全管理の業務に従事されている方、そして参入を希望される初心者の方々に、その技術をスムーズに理解していただければとの思いを込めて、イラストレーターの石田(木村)芳子先生のご協力のもと、本書を執筆した次第ですが皆様方の実務書、参考書としてお役に立てたでしょうか。とくに設備の運用、保全管理の分野は学問的にも理論的にも体系化されておらず、現実の問題として「メンテナンスは身体で覚えなければならない」側面があり、本書は何か物足りない感は否めないと思いますが、この書で学んでいただいたことをバネにして、専門的な知識、高度の保全技術にチャレンジして下さることを念願してやみません。
斯界での飛躍の糧となるメンテナンスに関する専門的な実務書、参考書は意外と少ないのが現実ですが、筆者が本書を執筆するに際して、参考にさせていただいた書籍をつぎに示しておきます。
(順不同)
①設備と管理編集部 編『ビル設備・衛生管理チェックリスト』オーム社
②設備と管理編集部 編『絵とき空調設備の保守と制御』オーム社
③設備と管理編集部 編『建築設備の水質保全実務読本』オーム社
④國見節郎・川口博 共著『絵ときビル設備管理ユニークメンテナンス』オーム社
⑤ 上田瑞男・小宮稔・萩本平・藤巻建夫 共著『空調設備メンテナンス入門:ビルメンのための空
調設備ABC』オーム社
⑥塩津忠義 著『新入社員のための実践ビル管理入門』オーム社
⑦塩津忠義 著『絵ときビル設備管理実務用語早わかり』オーム社
⑧ 塩津忠義・原力 共編『ビル設備機器のトラブル対策入門:事例に学ぶビルメンのための現場実務』オーム社
⑨ 後藤滋・田中辰明・日比俊二・田中毅弘・手塚升・林幸夫・山岸龍生 共著『ビル設備管理の技術』理工図書
⑩石渡憲治 著『冷凍空調実務読本』オーム社
⑪建築設備トラブル研究会 著『空調設備のトラブル50』学芸出版社
⑫日本建築設備士協会 編『空調設備トラブル事例対策集』日本工業出版
⑬宗孝 著『プロの教えるシールのごくい』技術評論社
⑭濱田吉樓 著『機械保全作業活用ブック』技術評論社
⑮中井多喜雄 著『ガスだきボイラーの実務』日刊工業新聞社
⑯中井多喜雄 著『ボイラーの運転実務読本』オーム社
⑰中井多喜雄 著『ボイラーの事故保全実務読本』オーム社
⑱中井多喜雄 著『ボイラ技士のための自動ボイラ読本』明現社
⑲中井多喜雄 著『ボイラ一問一答:取扱い編』明現社
⑳中井多喜雄 著『ボイラの水処理入門』燃焼社
㉑中井多喜雄 著『鋳鉄製ボイラと真空式温水ヒータ:基礎と実務』燃焼社
㉒中井多喜雄 著『スチーム・トラップ入門:スチーム・トラップで出来る省エネルギー』燃焼社
㉓中井多喜雄 著『ボイラの燃料・燃焼工学入門』燃焼社
㉔ボイラー用語研究会(中井多喜雄)編『図解ボイラー用語辞典』日刊工業新聞社
㉕配管用語研究会(中井多喜雄) 編『図解配管用語辞典』日刊工業新聞社
㉖空調技術用語研究会(中井多喜雄) 編『図解空調技術用語辞典』日刊工業新聞社
以上の他、イラスト作成のために下記の書籍も参考にさせていただきました。
㉗大庭孝雄 著『空気調和・暖房設備の設計法』学芸出版社
㉘大庭孝雄 著『建築設備の設計法』学芸出版社
㉙技能士の友編集部 編著『技能ブックス20 金属材料のマニュアル』大河出版
㉚技能士の友編集部 編著『技能ブックス19 作業工具のツカイカタ』大河出版
㉛『工場管理6 月号』日刊工業新聞社
㉜吉田文二 著『船の科学』講談社ブルーバックス
㉝商船大学学生 編『海洋文庫20 日本丸航海記』舵社
㉞杉山裕ほか 共著『空気調和設備』啓学出版
㉟小原淳平 編『100 万人の空気調和』オーム社
㊱小原淳平 編『続・100 万人の空気調和』オーム社
㊲ 木村宏 監修・ビル環境保全研究会 編著『ビル環境経営のための設計・施工べからず集1・2・3』オーム社
㊳日本建築学会 編著『構造用教材』丸善
㊴日本建築学会 編著『建築環境工学用教材 設備編』丸善
㊵日本建築学会 編著『建築環境工学用教材 環境編』丸善
㊶宮脇毅・南部武 著『新建築と設備の接点』学芸出版社
㊷ 建築技術教育普及センター 監修・日本建築士連合会 編『建設大臣・知事指定 建築士のための
指定講習会テキスト共通編 一般(B)オフィス建築編』
㊸森村武雄 監修・森村協同設計事務所 著『図解建築設備工事の進め方』市ケ谷出版社
いずれにしましても、本書をマスターされた後、斯界における専門家をめざして、チャレンジされることを祈っております。
1994年9月
中井多喜雄