テキスト建築計画


川﨑寧史・山田あすか 編著

内容紹介

生活のシーン、人の活動からとらえる計画学

建築計画学は、建築の諸課題に対して合理的な解決策を提示する知の体系であり、設計行為のベースである。本書は、プランタイプ別のオーソドックスな知識習得を基本としつつ、生活のシーンや、住まう、学ぶ、遊ぶ、集う、親しむなどの人が活動する動詞キーワードを切り口として、場と空間の組み立てかたを学ぶものである。

体 裁 B5変・224.0頁・定価 本体3200円+税
ISBN 978-4-7615-3183-6
発行日 2010-02-10
装 丁 KOTO DESIGN Inc.

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目次著者紹介まえがき

はじめに / 凡例

第1章 建築を計画する

1・1 人間・集団の活動と建築

1・1・1 建築計画と活動
人と建築/活動の想定/活動を分析的に見ること
1・1・2 活動フレームによる活動の記述
活動フレームの考えかた/記述された活動フレームの応用/活動フレームによる計画
1・1・3 活動フレームを描いてみよう
活動フレームの表現/活動する人の属性(誰が・誰と)/活動の目的(なぜ)/活動の内容(いつ,どのように,何を)/活動場所(どこで)─分解と再構築

1・2 計画すること・計画学を学ぶこと

1・2・1 計画の位置づけ
建築計画の定義/活動の受け皿としての空間
1・2・2 専門としての計画を学ぶ
建築計画学/実践にとっての計画学
1・2・3 計画に対するあらたなニーズ
計画学の留意点/使い手が関わる空間へのニーズ
1・2・4 計画と意匠・デザインの関係
設計・意匠(design)の定義/空間フレーミング・形態の多様性/活動とデザインの接点
◇1 1970年代のオランダ構造主義
◇2 ディスプログラミングの作品
図版出典・参考文献

第2章 住まう

2・1 独立住宅

2・1・1 活動フレーム
2・1・2 活動フレームに対応した場
団らんする・くつろぐ/場を「設える」/一人になる・寝る/調理する・食べる/しまう:収納空間
2・1・3 場と空間の組み立てかた
平面計画/断面計画^t/配置計画
2・1・4 建築類型への適用
伝統的な住まいと家族/モダンリビングから公私室分離型へ/公私室分離型以外の独立住宅のかたち/住まいの広がり
◇1 現代住宅が喪失したもてなす場

2・2 集合住宅

2・2・1 活動フレーム
2・2・2 活動フレームに対応した場
寝る・食べる/部屋を「設える」/くつろぐ/アプローチ空間で「知り合う」/住戸内と住戸外が互いに「見守る」関係・「アクセスの向き」と「生活の向き」
2・2・3 場と空間の組み立てかた
住棟計画/団地計画
2・2・4 建築類型への適用
事例1 パブリック─セミパブリック─プライベートの段階構成型,正面型アクセスを持った公共住宅の模範解答(熊本県営竜蛇平団地)
事例2 パブリック─プライベート─セミプライベート(コモン)の閾論的な構成(熊本県営保田窪第一団地)
図版出典・参考文献

第3章 老いて住まう

3・1 高齢者入居施設

3・1・1 活動フレーム
3・1・2 活動プログラムに対応した場
食べる・居合わせる/調理する・家事をする/くつろぐ・一人になる/排泄する/入浴する・整容する/寝る・くつろぐ:場所としての個室/ぶらぶらする/安全な外部環境/訪問者のための場/介護・看護スタッフが「休憩する・作業をする」
3・1・3 場と空間の組み立てかた
生活単位と介護単位/生活単位内の空間構成/複数の生活単位を持つ施設の空間構成
3・1・4 建築類型への適用
高齢者施設の体系/高齢者施設計画の歴史的経緯
事例1 新築のグループホーム(こもれびの家)
事例2 民家改修によるグループホーム(グループホームさんさん)
事例3 ユニットの独立性を高めた特別養護老人ホーム(真寿園)
事例4 連続したユニットをもつ特別養護老人ホーム(けま喜楽苑)
◇1 高齢者の姿と環境デザインの原則
◇2 共用空間の空間構成

3・2 高齢者通所施設

3・2・1 活動フレーム
3・2・2 活動フレームに対応した場
調理する・食べる/入浴する/つくる・歌う・習う:趣味活動の場/運動する:大規模活動の場/話す・関わる・集まる^t/排泄する/過ごす
3・2・3 場と空間の組み立てかた
配置,地域とのつながり/空間の規模/多様性を保障する空間構成
3・2・4 建築類型への適用
高齢者通所施設の体系/歴史的経緯
事例1 特別養護老人ホームに併設されたデイサービスセンター(せんねん村)
事例2 古民家改修による宅老所(いいせ新宅)
◇1 在宅高齢者が抱える困難と支援
◇2 空間構成と生活展開
◇3 認知症の程度と滞在場所
図版出典・参考文献

第4章 学ぶ・遊ぶ

4・1 就学前乳幼児施設

4・1・1 活動フレーム
4・1・2 活動フレームに対応した場
食べる/寝る・休む/排泄する/遊ぶ
4・1・3 場と空間の組み立てかた
対象とするこどもと滞在時間/年齢段階が異なるこどもへの配慮/場どうしの関係―保育室の計画/場どうしの関係―施設全体の計画
4・1・4  建築類型への適用
建築種別と生活の流れ/就学前乳幼児施設の歴史的経緯
事例1 年齢ごとの室ではなく活動の場を設定している認定こども園(こどものもり)
事例2 半屋外空間が充実したアクセシビリティのある幼稚園(あんず幼稚園)
事例3 園内全体が見渡せる保育所(すぐり保育園)
事例4 ゆったりとしている北欧の就学前保育施設(フォーシュコーラ)
◇1 こどもの環境デザインの基本
◇2 コーナーの計画
◇3 こどもの施設での1日の生活
◇4 1日の園児数の変化

4・2 学校(小学校・中学校・高等学校)

4・2・1 活動フレーム
カリキュラム(教科)活動と非カリキュラム(生活)活動/活動集団
4・2・2 活動フレームに対応した場
一斉授業:受動的学習/調べる・試す・まとめる:能動的学習/つくる・育てる・採る/集まる・発表する/歌う・踊る・演じる・遊ぶ/食べる/働く
4・2・3 場と空間の組み立てかた
活動をどのようにまとめるか?/全体計画・機能のまとめかた/必要諸室を考える/「多様な活動」に対応する
4・2・4 建築類型への適用

学校建築のクラシック

事例1 高低分離の計画(吹田市立青山台小学校)
事例2 クラスター型ユニットの教科教室型学校(目黒区立第一中学校)

学校計画の展開

事例3 教科センター方式の学校(目黒区立目黒中央中学校)
事例4 空間をつくり込んだユニット(世田谷区立桜丘小学校)
事例5 ウッドデッキに囲まれた戸建教室ユニット(育英学院サレジオ小学校)
事例6 ホールを中心としたユニット構成(横浜市立本町小学校)
事例7 南側に多目的スペースを持つユニット(名古屋市立ほのか小学校)

新しい計画のテーマ

事例8 少子化による学校リニューアル(横浜市立吉田中学校)
事例9 校舎増築による小中一貫校校舎(郡山市立湖南小中学校)
事例10 多種類の施設を複合したまちづくり拠点(京都市立京都御池中学校)
事例11 図書館・公民館と複合した小学校(志木市立志木小学校・いろは遊学館)
◇1 学校の施設体系と基本用語
◇2 たたずむ(活動でない活動)
◇3 学校の運営方式
◇4 ユニットプラン
図版出典・参考文献

第5章 集う・親しむ

5・1 こどものための地域施設(児童館・学童保育所・子育て支援施設)

5・1・1 活動フレーム
5・1・2 活動フレームに対応した場
集まる/さわる・投げる・使う:玩具遊び/這う・走る・登る・跳ぶ:身体を大きく使って遊ぶ/つくる/読む・読み聞かせをする/食べる/排泄する/居る・話す:こどもたちの自由な滞在
5・1・3 場と空間の組み立てかた
5・1・4 建築類型への適用
こどものための地域施設の体系/歴史的経緯と展望
事例1 動静スペースのメリハリがある子育て支援施設(0123 吉祥寺)
事例2 コミュニティセンターと一体になった児童館(トムハウス)
事例3 自然豊かな湖畔に立地する大型児童館(びわ湖こどもの国)
◇1 トイレ
◇2 年齢段階による活動場所の設定

5・2 コミュニティ施設

5・2・1  活動フレーム
5・2・2 活動フレームに対応した場
集まる/学ぶ・励む・運動する/休む・親しむ・交わる・佇む・居る/貸す・借りる
5・2・3 場と空間の組み立てかた
利用者像の想定/空間構成
5・2・4 建築類型への適用
コミュニティ施設の体系/「コミュニティ施設」の歴史的経緯
事例1 [複合・ターミナル型]オフィス・商業施設・市立図書館・公民館による複合駅前ビル(ベルブ永山 多摩ニュータウン)
事例2 [複合・近隣型]ケアプラザとコミュニティ施設の複合施設(横浜市篠原地区センター)
事例3 [単独・近隣型]民家改修による小規模な集会施設(吉祥寺東コミュニティセンター)
◇1 配置計画・立地計画

5・3 研修・保養施設

5・3・1 活動フレーム
5・3・2 活動フレームに対応した場
入館する/くつろぐ・休憩する/修める・集まる・ともに学ぶ/食べる・親しむ/入浴する・養う/泊まる・養う・親しむ/楽しむ・遊ぶ・憩う/自然に触れる・修める・養う/管理・運営する
5・3・3 場と空間の組み立てかた
立地条件/部門とこれを構成する諸室/配置形式
5・3・4 建築類型への適用
研修・保養施設の体系
事例1 高原に建つ大学の研修施設(金沢工業大学池の平セミナーハウス)
事例2 国定公園にある民間企業労働組合の研修・保養施設(I&Iランド)
◇1 宿泊室の規模と構造計画
図版出典・参考文献

第6章 知る・観る・聴く

6・1 図書館

6・1・1 活動フレーム
6・1・2 活動フレームに対応した場
入館する/軽読書する・閲覧する・立ち寄る/図書を探す・読む/児童書を読む・お話を聴く/情報検索する・相談する/視聴する/集う/管理・運営する/利用サービスする/図書・資料を整理する/図書や資料を収納する/移動サービスをする
6・1・3 場と空間の組み立てかた
主階(メインフロアー)/出納方式/部門とこれを構成する諸室/部門配置と動線計画
6・1・4 建築類型への適用
日本の近代的図書館/図書館の体系
事例1 ランドスケープと一体にデザインされた庭園図書館(福井県立図書館・文書館)
事例2 公共施設のプログラムを再構築したメディアセンター(せんだいメディアテーク)
◇1 出納方式
◇2 書庫の配置形式と拡張性
◇3 建築デザインの特徴と魅力
◇4 計画・設計へのアドバイス

6・2 博物館・美術館

6・2・1 活動フレーム
6・2・2 活動フレームに対応した場
接近する・入館する/観る/集まる/調べる・閲覧する/憩う・楽しむ/管理・運営する/調査・研究する/収蔵する/収蔵に関連する作業の場
6・2・3 場と空間の組み立てかた
企画と展示/敷地や周辺環境の特性/部門構成/部門を構成する諸室/展示室の配置形式
6・2・4 建築類型への適用
博物館・美術館の歴史/博物館・美術館の体系/建築デザインの特徴と魅力
事例1 アプローチを中心とした明快な施設配置の博物館(島根県立古代出雲歴史博物館)
事例2 まちに開かれた公園のような美術館(金沢21 世紀美術館)
◇1 展示室の配置形式
◇2 計画・設計へのアドバイス

6・3 劇場・ホール

6・3・1 活動フレーム
6・3・2 活動フレームに対応した場
ホール建築のさまざまな形式/接近する・入館する/休憩する・交歓する/観賞する/練習する/憩う・楽しむ/演じる/準備する・待機する/練習する/搬入・組み立て・収納する/打ち合わせをする・人やものの出入を管理する/施設を管理・運営する/機械室
6・3・3 場と空間の組み立てかた
立地条件/部門構成とゾーニング・動線計画/部門を構成する諸室
6・3・4 建築類型への適用
劇場の歴史/劇場・ホールの体系/建築デザインの特徴と魅力
事例1 演劇・音楽・講演など様々な演目に対応する多目的ホール(三原市芸術文化センター)
事例2 式典・講演・国際会議などに対応する集会系専用ホール(富山国際会議場)
◇1 複数の演目に対応できる多目的ホール
◇2 計画・設計へのアドバイス
図版出典・参考文献

第7章 働く・利用する

7・1 オフィスビル

7・1・1 活動フレーム
7・1・2 活動フレームに対応した場
働く/集まる・話し合う/くつろぐ・休息する/商談する・接客する/迎える・案内する/調べる/移動する
7・1・3 場と空間の組み立てかた
周辺環境への配慮/配置計画/部門構成/平面計画
7・1・4 建築類型への適用
オフィス建築の歴史/これからの時代に求められるオフィス
事例1 コミュニケーションとアメニティを重視したオフィス環境(鹿島建設KIビル)
事例2 地球環境時代のサステナブル・オフィスビル(竹中工務店東京本店)
◇1 空間単位とレイアウト
◇2 コアタイプとレンタブル比
◇3 オフィスビルの種類
◇4 ファサードデザインとペリメータゾーンの熱負荷制御
◇5 ライフサイクル評価と耐用計画
◇6 計画・設計へのアドバイス

7・2 庁舎

7・2・1 活動フレーム
7・2・2 活動フレームに対応した場
来庁する・集まる/利用する・相談する/働く・提供する/審議する・議論する/憩う・くつろぐ
7・2・3 場と空間の組み立てかた
立地/配置計画/部門構成
7・2・4 建築類型への適用
庁舎建築の歴史/これからの時代に求められる庁舎
事例1 地場産のブロックが生み出す風土に根付いた伝統的デザイン(名護市庁舎)
事例2 公園と一体化した庁舎(福生市庁舎)
事例3 地域複合施設の核としての区役所(戸畑区役所)
◇1 庁舎の種類
◇2 「住民参加型」による庁舎建設
◇3 地球環境問題への積極的な取り組み
◇4 持続可能な庁舎
◇5 計画・設計へのアドバイス
図版出典・参考文献

第8章 診る・治す

8・1 クリニック

8・1・1 活動フレーム
8・1・2 活動フレームに対応した場
診る:スタッフと患者のインタラクションの場/看る:患者にとって生活のすべての場/観る:点滴など安静の場/採る・録る・撮る:医療機器があふれる場/待つ:人によっては最も長時間過ごす場/相談する:高度なプライバシーが要求される場/保存する:絶えずものが増え続ける場/訪ねる:建物を越える診療の場
8・1・3 場と空間の組み立てかた
ウラとオモテ:スタッフと患者の分離/待合室の重要性:クリニックを構成する空間の要/クリニックの集合:連携の必要性
8・1・4 建築類型への適用
住宅か,公共建築か/病院に組み込まれるクリニック
事例1 郊外に建つクリニック(八木クリニック)
事例2 地域施設に併設されたクリニック(ひらたタウンセンター)

8・2 病院

8・2・1 活動フレーム
8・2・2 活動フレームに対応した場
診察する・検査する・治療する/療養する:病室,病棟/予防する・学習する
8・2・3 場と空間の組み立てかた
部門間のつながり/成長と変化への対応
事例1 複数の行政地域をカバーする地域医療施設の中核(公立阿伎留医療センター)
◇1 病院における「役割」(人々の活動を規定する要因)
◇2 病棟内の所要室構成
◇3 病棟の種類と配慮するべきポイント
◇4 医療を支える検査・治療機器
図版出典・参考文献

第9章 外部空間を計画する

9・1 建築と都市空間

9・1・1 活動フレームの広がりと都市空間
建築に関連する都市空間/建築に関連しない都市空間
9・1・2 建築に関連する都市空間での場のつくりかた
ゾーンの計画/経路の計画/外構の計画
9・1・3 建築に関連しない都市空間での場のつくりかた
建物と空地の関係/隣接する建物群と空地の関係/分散する建物群と空地の関係
事例1 施設群をつなぐ都市空間(ゲートウェイ・スポーツ施設開発 周辺広場)
事例2 居間のような都市空間(COREDO 日本橋アネックス広場リニューアル)
◇1 ゾーン/経路/外構
◇2 フレーム効果/借景
図版出典・参考文献

第10章 計画の基礎と手順

10・1 人間の行動特性

10・1・1 はじめに
10・1・2 人間の行動特性
パーソナルスペース/人間どうしの距離(相互距離)/いすのかたちと滞在/アフォーダンス/物理的環境と心理的環境/居方(場面としてとらえる)/ウェイファインディングデザイン/その他の行動特性

10・2 計画の基礎

10・2・1 寸法・規模
寸法/規模
10・2・2 利便・動線
機能性を重視した室配置/動線計画
10・2・3 快適・健康
明るさ/音の大きさと騒音/換気と防湿/有害物質と健康被害
10・2・4 安全・防災
防火対策/避難計画
10・2・5 弱者・高齢者
バリアフリーの実施/バリアフリーの法的規制
10・2・6 環境・建築
持続可能性/ライフサイクル/用途変更(コンバージョン)
10・2・7  都市・建築
良好な都市形成に対する建築の規制/住区の計画
◇20世紀の三巨匠とその建築(現代建築の計画・設計に影響を与えた思想と作品)

10・3 計画・設計の手順

10・3・1 計画・設計のプロセス
計画アプローチによるバリエーション/フィードバックとスパイラル
10・3・2 プロセスモデルの例
実務タイプのプロセスモデル/思考タイプのプロセスモデル
10・3・3 具体的な作業の流れ
各種調査・データの収集/設計条件の設定・建築プログラミング/機能図・動線図/部門とゾーニング/施設配置計画(敷地利用計画)/平面計画・断面計画

図版出典・参考文献

索引

著者略歴

〈編著者〉

川﨑寧史(かわさき・やすし)

金沢工業大学環境・建築学部建築都市デザイン学科准教授
1963年生まれ,大阪大学工学部環境工学科卒業,大阪大学大学院修了,京都大学大学院博士後期課程中退,大阪大学工学部助手,京都大学大学院助手,ハーバード大学大学院客員研究員を経て現職.博士(工学).2009年度グッドデザイン賞受賞.共著に『かたちの事典』(丸善)等.
執筆担当:5章(3節),6章(1節・2節),10章(2節)

山田あすか(やまだ・あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科准教授
1979年生まれ,東京都立大学工学部建築学科卒業,東京都立大学大学院博士課程修了.日本学術振興会特別研究員,立命館大学理工学部建築都市デザイン学科講師を経て現職.博士(工学),一級建築士.2009年日本建築学会奨励賞受賞.著書に『ひとは,なぜ,そこにいるのか─「固有の居場所」の環境行動学』(青弓社)等.
執筆担当:1章(1節),3章,4章(1節),5章(1節),10章(1節)


〈執筆者〉

伊藤俊介(いとう・しゅんすけ)

東京電機大学情報環境学部情報環境学科准教授
1969年生まれ,東京大学工学部建築学科卒業,東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了.デンマーク国立建築研究所客員研究員 を経て現職.博士(工学).共著に『建築地理学─新しい建築計画の試み』(東京大学出版会)等,訳書に『エコロジーのかたち―持続可能なデザインへの北欧的哲学』(共訳,新評論).
執筆担当:4章(2節)

岩田伸一郎(いわた・しんいちろう)

日本大学生産工学部建築工学科准教授
1971年生まれ,京都大学工学部建築学科卒業,京都大学大学院工学研究科修了.鹿島建設建築設計部,京都大学大学院工学研究科助手を経て現職.博士(工学).一級建築士.
執筆担当:7章

遠藤 新(えんどう・あらた)

工学院大学工学部建築都市デザイン学科准教授
1973年生まれ,東京大学工学部都市工学科卒業,東京大学大学院修了,東京大学大学院博士課程中退.東京大学工学部助手,金沢工業大学講師を経て現職.博士(工学).2005年グッドデザイン賞受賞.2005年日本都市計画学会論文奨励賞受賞.著書に『米国の中心市街地再生』,共著書に『住民主体の都市計画』(以上,学芸出版社)等
執筆担当:9章

岡本和彦(おかもと・かずひこ)

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻助教
1970年生まれ,東京大学工学部建築学科卒業,東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了.岡田新一設計事務所,テキサスA&M大学客員研究員を経て現職.博士(工学),一級建築士.共著に『建築地理学─新しい建築計画の試み』(東京大学出版会)等.
執筆担当:8章(1節)

倉斗綾子(くらかず・りょうこ)

首都大学東京大学院都市環境科学研究科・客員研究員
1973年生まれ,東京都立大学工学部建築学科卒業,東京都立大学大学院博士課程修了.コクヨ株式会社勤務,首都大学東京大学院COE研究員等を経て現在に至る.博士(工学).共著に『人間環境学─よりよい環境デザインへ 』(朝倉書店),『学校を変えなくちゃ!!─学校の再編成がはじまった』(ボイックス)等.
執筆担当:4章(2節),5章(2節)

小林健一(こばやし・けんいち)

国立保健医療科学院施設科学部主任研究官
1969年生まれ,東京大学工学部建築学科卒業,東京大学大学院工学系研究科修士課程修了.国立医療・病院管理研究所研究員を経て現職.博士(工学).
執筆担当:8章(2節)

佐藤将之(さとう・まさゆき)

早稲田大学人間科学学術院助教
1975年生まれ,新潟大学工学部建設学科卒業,東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了.江戸東京博物館こども居場所づくりコーディネーター,湘北短期大学・日本大学非常勤講師等を経て現職.博士(工学).共著に『卒業設計の進め方』(井上書院)等.
執筆担当:4章(1節)

平尾和洋(ひらお・かずひろ)

立命館大学理工学部建築都市デザイン学科教授
1966年生まれ,京都大学工学部建築学科卒業,京都大学大学院修了.京都大学工学研究科助手を経て現職ならびにVIDZヴィズ建築設計事務所パートナー.博士(工学),一級建築士.編著に『テキスト建築意匠』『建築デザイン発想法』(学芸出版社),共著に『日本の住宅戦後50年』(彰国社).
執筆担当:1章(2節),10章(3節)

蜂谷俊雄(はちや・としお)

金沢工業大学環境・建築学部建築都市デザイン学科教授
1956年生まれ,早稲田大学理工学部建築学科卒業,東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了.槇総合計画事務所(1983~2003年)を経て,現職.一級建築士,日本建築家協会登録建築家.
執筆担当:6章(1・2節の一部,3節)

山本直彦(やまもと・なおひこ)

奈良女子大学生活環境学部住環境学科准教授
1969年生まれ,京都大学工学部建築第二学科卒業,京都大学大学院博士課程修了.デンマーク王立オーフス建築大学助手,立命館大学理工学部建築都市デザイン学科専任講師を経て,現職.博士(工学).2004年日本建築学会奨励賞受賞.共著に『テキスト建築意匠』(学芸出版社)等.
執筆担当:2章

これからの建築計画に際しては,「安全」や「快適」「合理性」といった空間性能の前提として,その建物を使うであろう人々の活動を捉えなおすことが重要だと考える.なぜなら,現代に生きる人々の年齢別構成や家族の概念,ライフスタイルや社会価値は大きな変化の途上にあり,これに対する“建築のありよう”をもう一度位置づけなおす必要が出てきたからである.そして,「建築計画」という枠組みのなかで,これを伝える方法や表現もまた変わらなければならないと考えた.それでは,これからの建物をよりよく計画するにはどのような知識や視点が必要だろうか.本書はそうした疑問に対して,これまでの建築計画の教科書の多くとは若干違った切り口で答えようとしている.

その一つの答えは,“活動フレーム”という説明概念の提唱である.“活動フレーム”とは,人が活動する様子をその周囲の状況を含めてとらえ,そこに生じている建築空間と人との関係を解釈することで,計画のありかたを考えようという提案である.そして,建築空間とはこの活動フレームの受け皿となる空間(場)の総体として位置づけることにした.この概念を整理するにあたっては,これからの建築計画分野に責任を負う中堅・若手の研究者や教育者,設計者が熱心な意見交換を行い,多様な立場からの考えを収斂するかたちで活動フレームという説明軸にたどり着いた.第1章にはこれらの考えかたが詳細に説明されている.

本書でのもう一つの答えは,章と節の構成である.2章から8章まではさまざまな建築に対する具体的な計画説明を行っているが,この部分は,いわゆる建築種別ごとに説明をしている従来の多くの教科書と比べ,紙面体裁や説明手順が大きく異なる.各節の冒頭には建築空間で行われるさまざまな活動を大きな写真イメージとして掲載し,続く本文では「活動フレームに対応した場」として,これらの活動フレームが展開するための場のありかたを写真イメージと活動フレームを併用して説明している.さらに,「場と空間の組み立てかた」として,活動の総体が円滑に実現するために場と空間どうしがどのような関係にあればよいか,その組み立てかた(全体計画)について説明している.最後に「建築類型への適用」として,こうした活動フレームや活動の総体(活動フレーム群)が既往の建築種別の枠組みではどのように制度づけられているかといった内容について,歴史的経緯や今後のありようなども含めて説明している.このような方針で編集・執筆した結果,意図したわけではないが,従来の多くの教科書とは全く逆の説明手順となった.文末には建築事例を紹介しているが,これは本文を理解するに最も適した事例の掲載としており,本文中の説明にも積極的に引用されている.また設計資料としての活用も視野にいれ,設計事務所や関係各所のご協力をいただき,できるだけ鮮明な図面の掲載を心がけた.

なお,それぞれの建築が持つ多義性や多様性についてできるだけ説明していくことを共通の方針とし,それらの積極的な記述は執筆者の専門的な判断に委ねている.本文中のコラムや傍注には,執筆者が特筆したいテーマや語句の説明を記述した.この部分には専門家としての執筆者の強いメッセージが込められており,建築計画・設計に関する“専門への扉”が隠されているといっても過言ではない.例えばその建築の魅力や最新の課題,あるいは計画・設計へのアドバイスなどのトピックが多彩に記されているので,この部分も是非一読していただきたい.なお,2~8章については少子高齢化の現代を前提として,高齢者やこどもの活動をテーマにした建築に多くの紙面を割いている点も本書の特徴として付け加えておく.

9章と10章についても従来の教科書には例を見ない内容構成としている.9章は都市空間と建築の関係について説明しているが,ここでは建築空間から拡がっていく活動の受け皿として,外部空間の計画方法を説明している.つまり建築の内部と外部を連続する活動という視点でとらえ,その観点から外部空間のありかたや具体的な計画方法を説明している.続く10章は計画の基礎知識の確認として位置づけた.この章では,1~9章にある関連事項との対応を双方の注釈で明示することで,基礎知識がさまざまな建築の場面と関連づけて理解できるよう,また読者の必要に応じて適宜参照できるように工夫している.

本書は当初,初学者を対象とした内容レベルに設定されていたが,最終的にはその域を十分超えた出来上がりとなった.これは,限られた紙面に建築計画の魅力や奥深さをできるだけ盛り込みたいという執筆者の熱い思いがあったからに他ならない.このようにして生まれた本書が,建築計画や設計を学ぶ学生の一助となるならば,執筆者一同これにかわる喜びはない.

最後に,本書の企画・執筆にあたって適切かつ貴重なご意見をいただきました工学院大学の山下哲郎教授に深く感謝申し上げます.また建築取材,図面提供,図版作成,掲載許可などについて多くのみなさまにご協力をいただきました.この場をかりまして深く感謝の意を表する次第であります.

平成22年1月

執筆者を代表して

川﨑 寧史

山田あすか