イラストでわかる建築電気設備のメンテナンス
内容紹介
電気設備の正しい使い方と質の高い保全管理
電気設備の保全管理を怠ると停電・感電による死傷事故や電気火災などのトラブルから、ビルの機能に障害を生じるだけでなく、自家用受変電設備の事故が原因となって電力会社への波及事故につながる恐れもある。本書は初心者でも電気設備の正しい運用と質の高いメンテナンスが習得できるよう、イラストと共に易しく解説した。
体 裁 B5・208頁・定価 本体3000円+税
ISBN 978-4-7615-3054-9
発行日 1995-12-10
装 丁
1 保全管理のあらまし
1・1 保全管理法式のあらまし
1. 保全管理の方法
2. インテリジェントビルにおける保全管理の考え方
1・2 保全管理と耐用寿命の関係
3. 設備の故障と耐用寿命のはなし
4. 正しい保全管理で設備の耐用寿命は延びる
2 電気設備の保全管理のあり方
2・1 電気設備の保安体制
5. 電気設備の故障と事故
6. 電気設備の自主保安体制
7. 電気主任技術者の職責は重い!
8. 保安規程は電気設備保全のバイブル
2・2 保守・点検における基本的留意事項
9. 点検作業は安全第一で!
10. 日常点検(月次点検)における基本的留意事項
11. 定期点検における基本的留意事項
3 電気設備保全管理に必要な測定機器および測定法
3・1 電気測定の基礎は回路計で学ぶ
12. 簡易に現場測定が行える回路計
13. 回路計使用上の基本的留意事項
14. 回路計による電圧の測定方法
15. 回路計による抵抗測定方法
3・2 検電器のはなし
16. 安全点検に必要不可欠な検電器
17. 検電器取扱い上の基本的留意事項 パートⅠ
18. 検電器取扱い上の基本的留意事項 パートⅡ
3・3 クランプ式電流計で手軽に電力管理
19. 交流回路の電流、電圧、抵抗が簡便に測定できるクランプ式電流計
20. クランプ式電流計使用上の基本的注意事項
21. クランプ式電流計の使い方
3・4 照明設備の管理に必要な照度計
22. 広く用いられる光電池照度計
23. 平均照度の求め方
3・5 絶縁抵抗測定は電気設備の予防保全の基本
24. 絶縁抵抗測定の重要性
25. 絶縁抵抗測定前の点検・準備事項
26. 電路の絶縁抵抗測定の要領 パートⅠ
27. 電路の絶縁抵抗測定の要領 パートⅡ
28. 電気機器(電動機)の絶縁抵抗測定のポイント
29. 各種電気機器の絶縁抵抗測定の要領
30. 絶縁抵抗値の判定
3・6 接地抵抗測定も重要だ
31. 接地抵抗測定の重要性
32. 接地抵抗の測定方法
3・7 絶縁耐力試験のはなし
33. 高圧電気設備の新・増設時には必ず行う絶縁耐力試験
34. 絶縁耐力試験のポイント
3・8 高調波の測定
35. 高調波障害のはなし
3・9 定期的に行う保護継電器試験
36. 波及事故防止にきわめて重要な保護継電器試験
37. 過電流継電器と遮断器の連動試験のポイント パートⅠ
38. 過電流継電器と遮断器の連動試験のポイント パートⅡ
39. 地絡継電器と遮断器の連動試験のポイント
3・10 漏電遮断器も定期的に試験しよう
40. 漏電遮断器の試験には2つの方法がある パートⅠ
41. 漏電遮断器の試験には2つの方法がある パートⅡ
4 受変電設備の保全管理のポイント
4・1 受変電設備の点検作業における基本的注意事項
42. 受変電設備の点検・保全はきわめて重要!
43. 停電操作は慎重に!
44. 電気作業において誤解を招く表現は禁止
4・2 変圧器点検保全のポイント
45. 変圧器の日常巡視点検のポイント
46. 乾式変圧器の保全管理
47. 乾式変圧器における異常時の対応
48. 油入変圧器の保全管理 パートⅠ
49. 油入変圧器の保全管理 パートⅡ
4・3 絶縁油の試験
50. 絶縁油の保全管理は大切
51. 絶縁油の絶縁破壊電圧試験の要領
52. 絶縁油の酸価度測定の簡易的方法
4・4 遮断器・電力ヒューズ点検保全のポイント
53. 高圧遮断器は電力供給系統の中枢部
54. 油遮断器のチェックポイント
55. 真空遮断器のチェックポイント
56. 電力ヒューズのチェックポイント
4・5 負荷開閉器、断路器点検保全のポイント
57. 負荷開閉器、断路器のチェックポイント
4・6 電力用コンデンサ点検保全のポイント
58. 力率改善の主役は電力用コンデンサ
4・7 計器用変成器点検保全のポイント
59. 計器用変成器のチェックポイント
4・8 保護継電器および母線点検保全のポイント
60. 保護継電器の点検ポイントは遮断器との連動試験
4・9 避雷器点検保全のポイント
61. 避雷器の点検ポイント
5 負荷設備の保全管理のポイント
5・1 配線設備点検保全のポイント
62. 低圧電路のチェックポイント
63. 配線用遮断器のチェックポイント
64. 漏電遮断器のチェックポイント
65. 電磁開閉器のチェックポイント
5・2 動力設備のメンテナンスのポイント
66. 電動機の保全管理のポイントは日常巡視点検
67. 電動機に生じやすいトラブル
68. 転がり軸受の保全技術 パートⅠ
69. 転がり軸受の保全技術 パートⅡ
70. 転がり軸受の保全技術 パートⅢ
71. 転がり軸受の交換方法
72. ブラシまわりのトラブルとチェック
5・3 照明設備メンテナンスのポイント
73. 適切な照明の条件
74. ビルで主に用いられる光源は蛍光灯
75. 照明設備保全の基本は照度低下を防ぐこと
76. ランプの寿命とランプ交換方式
77. 照明灯および照明器具の清掃
78. 照明設備の故障対策
79. 照明設備からの発熱による問題点
80. コンセントがトラッキング火災!?
6 予備電源設備の保全監理のポイント
6・1 自家発電設備点検保全のポイント
81. いつでも確実に発電できる状態に維持しなければならない
82. 自家発電設備保全の要は保守運転
83. 自家発電設備の保守運転(無負荷運転)の要領
84. 自家発電設備の負荷運転要領
85. 自家発電設備のチェックポイント
86. 自家発電設備にはいろいろな資格が必要
87. ディーゼル発電装置の主な故障とその対策
6・2 蓄電池設備点検保全のポイント
88. 負荷設備に対して無停電電源となれる蓄電池設備
89. 蓄電池の充電方法とその留意点
90. 蓄電池取扱い上の一般的注意事項
91. 蓄電池のチェックポイント
92. 電解液の保全管理 パートⅠ
93. 電解液の保全管理 パートⅡ
94. 蓄電池の電圧測定
95. 蓄電池の主な異常現象と対策
◎索引
近年における建築物の新設や更新はめざましいものがあり、とくにその高層化とともに、高度情報システム、ビル自動管理システムなどを導入し、情報機能が格段に向上し、またオフィスオートメーションに対応した高度な建築的環境と設備を備えたいわゆるインテリジェントビル化が顕著であります。それにともない建築物の諸設備の占める位置の重要性も一段と増してきました。建築物と建築設備は車の車輪のようなもので、両者は不即不離の仲であり、端的にいって両者は一体のものとならなければ、いわば建築物として機能しません。そして、ここでとくに留意しなければならないのは、建築物本体は無論のこと、建築設備の保全管理、つまりメンテナンスを十分に施さなければならない点であります。 建築諸設備のなかでも、電気設備の重要性はきわめて大きく、電気は電気設備だけでなく、空気調和設備、給排水衛生設備、昇降機設備、防災・消防設備、防犯警備設備などを含め、建築設備のすべてが電気の力を借りなければまったく機能しません。インテリジェントビルの普及により今後ますます電気の重要性は増すでしょう。
このような情勢下の斯界において、電気設備の設計、施工および保全管理に多くの方が従事され、また斯界での活躍を希望される方も多くおられます。
いずれにしても現代社会では、良質の電気が安全供給されなければ生活が成りたたないのであり、もちろんビルにおいても高品質の電気が安定供給されなければインテリジェントビルとして機能しないことになり、このためにはつねに電気設備における質の高い保全管理を必要とし、多くの電気技術者が活躍しておられるわけです。
電気設備のメンテナンスを怠れば、停電、感電による死傷事故、電気火災などのトラブルをきたし自社ビル内の機能に障害を生じるだけではなく、自社ビルの自家用受変電設備で発生した事故が原因となって、電力会社の系統に波及して、他の需要家まで停電させて迷惑を及ぼすというような、高圧配電線に対する波及事故にもつながることになり兼ねません。
そこで、とくに電気設備の保全管理という斯界での活躍を希望される多くの初心者の方に、その正しい運用、質の高いメンテナンスを目指していただきたいとの願いを込めて浅学非才の身をも顧みず本書を執筆した次第ですが、なにしろメンテナンスの分野は広範囲で、かつ奥の深いものであり、理論よりは「身体で覚えるもの……」といった傾向が強く、本書の説明では個々のメンテナンスに関して完全に理解しにくい側面はあると思いますが、各現場で諸先輩方のよき指導を受けていただき、保全管理の技術、ノウハウをマスターされ、ビル電気設備管理技術者として活躍されんことを願っている次第です。
最後になりましたが、執筆に際して多面に亘りこせ指導を賜りました(株)関西電力に対し、また、素晴らしいイラストを描いて下さいました木村芳子先生のご尽力に対し厚く御礼申し上げます。
1995年9月
中井多喜雄
建築電気設備の運用、保全管理の業務に従事されている方、そして参入を希望される初心者の方々に、その技術をスムースに理解していただければとの思いを込めて、イラストレーターの木村芳子先生のご協力のもと、本書を執筆した次第ですが皆様方の実務書、参考書としてお役に立てたでしょうか。とくに設備の運用、保全管理の分野は学問的にも理論的にも体系化されておらず、現実の問題として「メンテナンスは身体で覚えなければならない」側面があり、本書は何か物足りない感は否めないと思いますが、この書で学んでいただいたことをバネにして、専門的な知識、高度の保全技術にチャレンジして下さることを念願してやみません。斯界での飛躍の糧となるメンテナンスに関する専門的な実務書、参考書は多種ありますが、筆者が本書を執筆するに際して、参考にさせていただいた書籍、文献をつぎに示しておきます。(順不同)
1.中部電気保安協会編「電気設備の保守点検と現場試験入門「オーム社
2.中部電気保安協会編「電気設備の測定実務とトラブル対策入門」オーム社
3.國見節郎・川口博光著「ビル設備管理ユニークメンテナンス」オーム社
4.設備と管理編集部編「ビル設備・衛生管理チェックリスト」オーム社
5.大浜庄司著「自家用電気技術者実務読本」オーム社
6.大浜庄司、松永三男共著「ビル電気設備の運転制御マニュアル」オーム社
7.大浜庄司・安東治共著「自家用電気設備メンテナンス読本」オーム社
8.広瀬義男・落合誠吾、小熊修蔵共著「自家用電気設備保守・点検・試験マニュアル」オーム社
9.森村武雄、落合誠吾、田中定二、山崎三郎、柳瀬駿監修 「ビル管理マニュアル」オーム社
10.斉藤丈彦著「ビル用電気設備の設計と運転」(上下巻)電気書院
11.日本プラントメンテナンス協会編「機械保全技能ハンドブック」(電気・計装編)
日本プラントメンテナンス協会
12.田尻陸夫「Q&A建築電気設備」井上書院
13.中村守保、岡本徹、田中友衛、中川康彦、中川紘共著「建築電気設備一問一答」明現社
14.日本プラントメンテナンス協会編「電気保安作業べからず集」
日本プラントメンテナンス協会
15.日本建築センター編「建築設備検査資格者講習テキスト」(下巻)日本建築センター
16.相原良治論文「絶縁抵抗の測定と良否判定の考え方」設備と管理、昭和50年8月号
17.坂東〓静・千歳隆論文「乾式変圧器と油入変圧器の特徴と保守管理」設備と管理、昭和54年6月号
18.向井〓二論文「蓄電池設備の点検・整備の手順」設備と管理、昭和53年9月号
19.消防実務研究会編著「消防用設備等点検実務」近代消防社
以上の他、イラスト作成のために下記の書籍も参考にさせていただきました。
20.緒方興助・小賀由章・新井芳明・多田正美共著「図説電気・電子用語事典」実教出版
21.電気と工事編集部編「電気設備の実務マニュアル」オーム社
22.電気と工事編集部編「絵とき高圧電気設備の工事・保守の実務知識」オーム社
23.塩澤忠義著「絵ときビル設備管理事務用語早わかり(改訂版)」オーム社
24.森村武雄監修「《図解》建築設備工事の進め方」市ヶ谷出版社
25.技能士の友編集部編著「電気のハヤワカリ」大河出版
26.技能士の友編集部編著「作業工具のツカイカタ」大河出版
27.日本電設工業協会編「電気設備工事 施工要領」オーム社
28.日本建築学会編著「建築環境工学用教材 設備編」丸善
29.日本建築学会編著「建築環境工学用教材 環境編」丸善
30.日本建築学会編著「構造用教材」丸善
31.内藤勝次著「電気・設備工事の安全衛生管理」オーム社
32.労働基準調査会編「建設業の安全作業標準集」労働基準調査会
33.電気と工事編集部編「自家用電気設備事故事例集」オーム社
34.小原幸雄著「やさしく学ぶ電気安全NOW」オーム社
35.ケルビン・ゴズネル著「原子力発電所」福武書店
いずれにしても、本書をマスターされた後、斯界における専門家をめざして、チャレンジされますことを祈っております。
1995年12月
中井多喜雄
メディア掲載情報
公開され次第、お伝えします。
開催が決まり次第、お知らせします。