建築造形のスタディ

内容紹介
感覚ではないロジカルな設計力を身につける
建築のすべての構成要素の基本となる「かたち」についての入門書。かたちの図形的特徴やプロポーションの扱い、かたちの組み合わせ方や配置と変形技法、それらをひとつの建物としてみた時の空間の効果を、古代~近代・現代の豊富な実例とともに図解する。建築的な考え方が身につき、感覚に頼らないロジカルな設計を促す。
平尾和洋 編著/木村智・寶珍宏元・三木勲 著/カサハラシオリ イラスト
体裁 | B5変判・128頁(2色刷) |
---|---|
定価 | 本体2400円+税 |
発行日 | 2025-09-15 |
装丁 | 松井和泉 |
ISBN | 9784761529390 |
GCODE | 2367 |
販売状況 | 予約受付中 (店頭発売:2025年9月13日頃) |
ジャンル | 設計手法・建築計画・住居学 |
教科書分野 | 建築製図・パース・色彩 |
はじめに 「デザイナーの頭をつくろう! かたちのシンタックス」
1部 かたちの基本構成
01 線
1-1 かたちの基本要素
1-2 直線・柱の集合体
1-3 懸垂曲線/カテナリー/サイクロイド
1-4 曲線・円錐曲線・放物線
02 面
2-1 空間を仕切るもの
2-2 平面
2-3 曲面
2-4 円錐曲面・双曲面
2-5 シェル
03 ヴォリューム
3-1 プラトン立体
3-2 立方体のフレームと表層
3-3 立方体/キューブ
3-4 球体
3-5 錐体
3-6 円柱・シリンダー(円筒)・ヴォールト
3-7 家型
04 単体のかたち
4-1 円/サークル
4-2 断面的な円弧
4-3 円弧とその組み合わせ(自由曲線)
4-4 楕円/オーバル
4-5 ロの字形/コートハウス
4-6 多角形
4-7 らせん形/スパイラル
4-8 パラレル
4-9 コの字形
4-10 L 字形
4-11 放射形
4-12 風車形
4-13 門型/ゲート
05 比例するかたち
5-1 黄金矩形・黄金分割・黄金比
5-2 人体寸法システム「モデュロール」
5-3 ル・コルビュジエの分割比「8,5,3」
5-4 ルート矩形・白銀比
2部 かたちを操作する
06 かたちの基本操作
6-1 分割する
6-2 引き算・足し算
6-3 回転する
6-4 内包する
6-5 重ね合わせる=重合
6-6 重層する/オーバーレイ
6-7 平行を崩す/パースペクティブ(遠近法)
6-8 さし込む=貫入・挿入
6-9 孔をあける=穿孔
6-10 宙に浮かせる=浮遊
6-11 掘削する
6-12 積み重ねる=スタッキング
6-13 折り曲げる・ひねる=ベンディング
6-14 ずらす
6-15 ちりばめる=パラパラ
6-16 模倣する/アナロジー
6-17 ヴォリュームを変える
07 かたちの組織化
7-1 直交グリッド
7-2 斜交グリッド
7-3 放射グリッド
7-4 反復
7-5 並置と対比
7-6 対称(シンメトリー)と非対称(アシンメトリー)
7-7 軸線の関係性
7-8 近接・雁行・連結
7-9 入れ子= Box in box
3部 かたちから空間への展開
08 部分の集まり方
8-1 単一中心の建築
8-2 外なる囲い
8-3 内なる囲い
8-4 リニアな配列
8-5 ストライプ
8-6 立体パズル
8-7 群としてのクラスター
8-8 ヴォリュームの解体
8-9 部分と全体の相補性
8-10 建築の内と外/中間領域
09 分節化
9-1 分節の定義/面と線の分節
9-2 ヴォリュームの分節/プログラム別の分節
9-3 構造の分節/スキンとボーン
9-4 表面・ファサードの分節/スキニング
9-5 力の流れの分節
9-6 明暗・高低による内部空間の分節
9-7 コア(タテ動線設備)の分節
10 都市と建築の見え方
10-1 都市のかたち
10-2 図と地
10-3 景観と距離
10-4 風景の切り取り
10-5 アプローチとエントランス
10-6 空間の開閉性= D/H
10-7 基壇による高さ効果
問題集
デザイナーの頭をつくろう! かたちのシンタックス
この本は建築設計・デザインの初学者にむけて、「かたちの基本」とその「操作・配置」「空間展開」を伝えるために編まれたものです。彫刻とならんで3 次元芸術である「建築」は、最終的に「立体」として人間の様々な要求に応える実用物ではありますが、その製作過程では「紙の上にスケッチ・図面を書き、模型をつくり、それを見て評価し、コンセプトをまとめる」など、3 次元のみならず、2 次元ツールやことばも使って試行錯誤(スタディ)することが一般的です。ただし、プロのデザイナーともなれば、どの段階で、どのツールを使おうとも、頭の中では常に3 次元を中心とした「かたち」がイメージされています。
1部/
つまり建築の設計思考には、「思考の道具」としての「かたち」が必ず存在するということです。必然、かたちを数多く、きちんと整理・イメージして設計思考できる人は、様々な組み合せを試すことで、柔軟に建築をつくっていくことができるようになります。まだたくさんのことばを知らない赤ちゃんよりも、たくさんのことばを身に着けた詩人の方が、巧みな構文を紡ぐことができるのと同じことです。
2部/
他方、仮に「かたち」をたくさん知ったとしても、時に複雑な要求に応える必要のある建築では、それを自在に「組織化する」「変形する」「組み合わせる」ことが求められることがしばしばです。こうした「操作」する力を養うために、デザイン教育の現場では、課題を与えて設計をする練習、つまり「演習」が行われます。そこでは学生のエスキス(esquisse:スケッチ、素描、建築分野では設計の構想を進めるためのスケッチ。あるいはその構想を意味する)に先生が批評やアドバイスを加え、様々な操作や配列法を伝えていきます。言葉としての「かたち」をどう加工し、どう配列すればいいのか? つまり「シンタックス」と呼ばれる統辞・修辞技法(syntax:人間の自然言語において文が構成される仕組み)の感覚を学ぶのです。
3部/
もちろん、エスキスは他者から評価されるものでもあります。たくさん描いたスケッチを組み合わせ、統合化して、案の全体像(プレゼン・ボードや模型)へと「展開」するのが最終段階です。自分ひとりなら、クライアントになった気分で「空間効果や状態・見え方」を確認します。ダメだと思ったところは修正して、発展・代替案を作ってみます。この時に、集まったかたちの状態や見え方についての基本フレームも知っておくと有効でしょう。
不思議なことに、現在の教育現場では「かたち」も「操作」のやり方も、特に初学者に対して、体系的に伝えることは行われていないようです。むしろ演習の現場で、先生の経験的な知識が、「暗黙知」として、時間をかけながら学生に伝授されている、といったところでしょうか。
この本はその暗黙知を「形式知」に置き換える試みです。かたちにせよ、操作にせよ、これが全てではありません。この本を手に取るみなさんが、自ら作品研究を通して「あれもあるし、これもあるよ」と本のスキマにスケッチや写真・図面を加えて頂ければ、貴方だけのスクラップ・ブックが出来上がることでしょう。
読者の編集作業はこれからも続くものであることを期待しつつ、本書の編集では、紙面構成を含め学芸出版社 安井葉日花さんにお世話になりました。この場を借りて著者を代表し謝意を表したいと思います。
2025年9月 編著者 平尾和洋
開催が決まり次第、お知らせします。
メディア掲載情報
公開され次第、お伝えします。