15分都市の実践 世界に学ぶ地球規模の課題解決

15分都市の実践 世界に学ぶ地球規模の課題解決
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内容紹介

先駆例を提唱者が解説した好著、待望の邦訳

徒歩・自転車・公共交通により15分でアクセスできる範囲に生活機能を集める「15分都市」構想。孤立から気候変動まで地球規模の課題に挑むアイデアを先駆けて実践する、パリ、ミラノ、ポートランド、メルボルン、釜山などの都市政策について、提唱者自らが解説した『The 15-Minute City』待望の邦訳。


カルロス・モレノ 他著 矢作 弘 訳 大谷 悠 訳

15分というと、自転車で通っていた高校までの通学時間がちょうどそれくらいでした。日本において「15分都市」はどういう意味を持ち、一体どう実現できるのかーー原著者カルロス・モレノ氏本人の寄稿による邦訳独自コンテンツ「日本語版に寄せて」も手掛かりに、ぜひ本書を議論の素材にしていただけると嬉しいです。
編集担当M
編集担当M
体裁A5判・264頁
定価本体2700円+税
発行日2025-06-20
装丁加藤賢策(LABORATORIES)
ISBN9784761529284
GCODE5708
販売状況 予約受付中 (店頭発売:2025年6月18日頃)
関連コンテンツ 試し読みあり
ジャンル 都市・地域の計画
試し読み目次著者紹介序文[ヤン・ゲール]レクチャー動画関連イベント関連ニュース
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序文[ヤン・ゲール]
日本語版に寄せて
はじめに
1章 私たちは、今、ここで変わらなければならない
2章 分断された都市を旅する
3章 都市時間の歴史
4章 時間の地理学
5章 将来を再興するために過去を探索する
6章 都市の「かたち」「リズム」そして「時間」
7章 都市の変化、その50年を読み解く
8章 15分都市の創成期
9章 15分都市:近接革命
10章 ポルト・ド・パリ計画と15分都市の出現
11章 パリと15分圏都市のグローバル展開
12章 ミラノ:近接して暮らす
13章 ポートランドの持続可能性への道
14章 クリーブランドと自動車産業
15章 ブエノスアイレスの未来――近接性と持続可能性
16章 スース:都市圏レベルで近接性を実現する
17章 メルボルン――20分都市のパイオニア
18章 釜山――豊かな近接性に向かうテクノロジー・スマートシティ
19章 小さな町も触発されている
20章 スコットランド/イル・ド・フランス:明日の20分圏都市
21章 デジタルテクノロジーと人々の受け止め方
おわりに 明日の都市を慈しむ――豊かな近接性が要になる
あとがき 都市と私たちの未来をもたらすものとは?[マーサ・ソーン]
訳者あとがき
索引

著者

Carlos Moreno (カルロス・モレノ)

コロンビア生まれのフランス人科学者。パリIAE – ソルボンヌ大学(パンチオン)・ビジネススクール准教授。ETI ラボ(Entrepreneurship-Territory-Innovation Chair)の共同設立者兼科学ディレクター。インテリジェント制御による複雑系システムのモデリングに根ざした学際的な国際研究者であり、都市と生活の質の向上の分野で先駆的な貢献をしてきたことで著名である。

序文 寄稿

Jan Gehl(ヤン・ゲール)

あとがき 寄稿

Martha Thorne(マーサ・ソーン)

訳者

矢作 弘(やはぎ・ひろし)

龍谷大学名誉教授。博士(社会環境科学)。著書に『コロナで都市は変わるか』(単著、学芸出版社、2020年)、『都市危機のアメリカ』(単著、岩波書店、2020年)、『トリノの奇跡』(共編著、藤原書店、2017年)『中心市街地活性化三法改正とまちづくり』(共編著、学芸出版社、2006年)、『大型店とまちづくり』(単著、岩波書店、2005年)、『ロサンゼルス』(単著、中央公論新社、1995年)。翻訳書に、ニューヨークタイムズ編『ダウンサイジング オブ アメリカ』(単訳、日本経済新聞社、1996年)。

大谷 悠(おおたに・ゆう)

まちづくり活動家・研究者。1984年東京生まれ。2010年単身渡独、2011年ライプツィヒの空き家にて仲間とともにNPO「日本の家」を立ち上げ、以来日独で数々のまちづくり・アートプロジェクトに携わる。2019年東京大学新領域創成科学研究科博士後期課程修了、博士(環境学)。主な著書に、『都市の〈隙間〉からまちをつくろう』(単著、学芸出版社、2020年)、『CREATIVE LOCAL-エリアリノベーション海外編』(共著、学芸出版社、2017年)など。

「古き良き時代」は1933 年に、突然、終わった。端的に指摘すれば、1933 年のアテネ都市計画憲章(Athens Charter of City Planning)が、都市の〈古き良き時代〉の真の終焉につながった。

モダニストは、近代都市を生活のための機械と定義してきた。この機械が効率的に満足に稼働するためには、都市の機能をそれぞれの地区に分離することが不可欠であった──すなわち、食住遊の分離である。そして交通回廊が単一用途地区の間を結ぶ。それぞれの機能、それぞれの人々は、違った地域に、違った建物に配置されなければならなくなった。それまでの都市は、常に空間──暮らしの、あるいは人々のための空間で構成されていた。ノッリの有名なローマ地図(1748 年)では、都市を空間で定義していた。しかし、1933 年以降は、都市の関心は、〈空間の都市〉から〈モノの都市〉に転換してしまった。その結果、都市の暮らしは、公共空間や公共生活から切り離され、古い都市には当然だった歩行者主義と袂を分かたせてしまった。古い都市は、人間を第一に考え、造られていた。しかし、1933 年以降は、広範囲に点在する別々の地区を結ぶために、高速の移動手段が必要になった。

そして自動車の到来、と言うより自動車の侵略が始まった。第二次世界大戦前は、自動車産業は新興の、限定的なものだったが、60 年代以降、自動車の侵略が津波のよう押し寄せてきた。車交通、および駐車する車両が古い都市を隅々まで埋め尽くしてしまった。また、都市に広範囲に広がった単一用途地区を結ぶために、とてつもないインフラが必要になった。都市は爆発的に発展し、人々はあらゆる方向に散らばってしまった。そしておよそ60 年間、〈移動(mobility)〉が、都市計画の重要なキーワードとなった。世界中で自動車で走ることが愉快になるように、それこそあらゆるものがそのために造られた。それは、大方の場所でかなり上手くいっていた。つまり、モダニズムの都市計画と自動車の侵略は、互いに完璧に補完し合ったのである。昔の〈スローシティ〉が 〈ファストシティ〉になってしまった。そこでは、公共的な生活や魅力的な都市空間、親しみやすい近隣住区への配慮は、置き去りにされた。当然、歩くことや自転車での移動も考慮されなくなった(自転車は徒歩の親愛なる従兄弟だったが──つまりある種の早歩きと見做されていたのだが)。

世界の都市で起きた都市と生活の質をめぐるこうした劇的な変容を背景に、それに対抗する運動が始まった。対抗運動はおよそ60 年を経てますます強くなった。

私たちが提唱する「15 分都市」は、この対抗運動の文脈の中にある。今日、最も強力な反モダニズム運動の1つである。
ニューヨークのグリニッジビレッジから発したジェイン・ジェイコブズの強力な訴えが、最初の反モダニズムの声になった。彼女の運動のメッセージは──モダニストと車主義者が未来の都市を計画するようなことになれば、その行き着く先は偉大な都市ではなく、都市の死になる、というものだった。別のメディアを通して表現されたもう1 つの抗議は、ジャック・タティ(フランスの映画監督)だった──示唆に富む映画「モン・オンクル(Mon Oncle)」を撮っているが、そこでは近代都市を、人間的な15 分都市に対比して描いていた。

クリストファー・アレグサンダーをはじめとするカリフォルニア大学バークレー校の卓越した研究者は、近代都市計画の欠点に立ち向かってきた。ニューヨークのウィリアム・H・ホワイティや「プレイス・メイキング」チームも、こうした課題に対峙してきた。コペンハーゲンで取り組まれた公共生活に関する広範な研究は、コペンハーゲンの卓越した人々に大きな影響を及ぼし、その研究は、他の多くの都市にもインパクトを与えた。コペンハーゲンは世界に先駆け、2009年に「コペンハーゲンは人間にとって世界で最良な都市になる」と宣言する都市政策を発表した。実際のところコペンハーゲンは、この種の都市ランキングを掲載するさまざまな雑誌で「世界で最も住みやすい都市」に幾度も選ばれた。また、ヨーロッパの都市計画家は1998 年にアテネで再び会議を開催し、第2 次アテネ都市計画憲章に署名した。この憲章は、人間と都市機能が分離されるべきではない、ということをはっきりと述べている。それは、モダニズムとの65 年ぶりの決別宣言になった。残念なことだが、このメッセージを受け入れない多くの地域、たくさんの専門家がいる。もっと悔やまれることは、モダニストと交通のロビイストは、1933 年以来、65 年間に非人間的で持続不可能な市街地を際限なくつくり上げてきたことである。その難点は、いまだに解消されていない。

以上が「15 分都市」をめぐる斬新なアイデアが生まれ育った背景である。15分都市の発想と手法は、簡単に思い描くことができるし、適用するのも簡単である。結局、A 地点、あるいはB 地点の質に関心を払うことなく、これまで長い間、A 地点からB 地点への移動ばかりに焦点が当てられてきたこととは逆に、いよいよ関心が近隣住区に──暮らし働く場所に改めて向かうようになったのである。15 分都市は、新しい、よく鍛錬された都市論である。〈古き良き時代〉には、規模にかかわらず、すべての都市が15 分都市だった。よく観察すればわかるが、世界の大方の都市の中心は、1㎢(1,000 × 1,000 m)ほどの大きさである。市民が毎日の通勤で歩ける範囲である。この範囲を歩きながら腕時計を見ると驚くだろうが、およそ15 分都市である。

散歩、自転車での移動、すなわち「15 分都市」の活気を楽しむべし。

ヤン・ゲール
コペンハーゲンにて、2023 年9 月

開催が決まり次第、お知らせします。

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公開され次第、お伝えします。