推しの公園を育てる!

推しの公園を育てる! 公園ボランティアで楽しむ地域の庭づくり
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内容紹介

楽しみ方無限大、あなたも始めてみませんか

今、公園ボランティアの活動がアツイ!お掃除・お喋り・草取りゲーム・落ち葉プール・芝生ゴロン・菜園づくり・球根ばらまき・茶話会・お祭・鳥の巣箱作り・手作りフェス…楽しみ方は無限大だ。一人でも仲間とでも、ご近所で、学校で、職場で…始め方だって自由!人生を豊かにするまちの庭づくりを、あなたも始めませんか?


一般社団法人みんなの公園愛護会 著 椛田 里佳 著 跡部 徹 著
著者紹介

体裁四六判・192頁
定価本体2300円+税
発行日2024-05-01
装丁加藤賢策(LABORATORIES)
ISBN9784761528881
GCODE5685
販売状況 在庫◎
分野 自治体・自治・都市政策
目次著者紹介PROLOGUEEPILOGUEレクチャー動画関連イベント関連ニュース

PROLOGUE あなたのまちに「推しの公園」はありますか?

1章 公園から始める! まちの庭づくり ──皆でやるから楽しく気持ちいい、まちの庭の手入れ

自治会 》防災にもつながる地域コミュニティ ──松が丘第二公園(茅ヶ崎市)
ご近所さん 》公園を利用する子育て世代で愛護会を新設 ──高谷下公園(藤沢市)
学校 》高校生が地域とつながるボランティア ──城ノ腰公園(伊勢原市)
企業 》昼休みにサクッと花壇のお世話。10年以上続く企業の公園ボランティア ──宇喜田川公園(東京都江戸川区)
障がいのある人もそうでない人も一緒に 》みんなの居場所、地域のはらっぱ ──南長崎はらっぱ公園(東京都豊島区)
個人の日課として励む 》毎朝の活動で地域の笑顔を守る元刑事 ──山際公園(厚木市)
〈私の推し公園〉 「まちの景観づくり」を家族で楽しむ

2章 こんなこともできる! 公園を育てるパイオニアたち ──多様な公園育ての可能性

野菜も米も電気も作る地域のオアシス、自給自足公園 ──五郎兵衛コミュニティーパーク(茅ヶ崎市)
20年続く「親子で鳥の巣箱づくり」イベント ──鴨池公園(横浜市都築区)
都会で本格的に芝を育てるイクシバ!プロジェクト ──黎明橋公園(東京都中央区)
〈芝生のススメ〉 手がかかるほど愛しい。芝生のお世話の舞台裏
いろいろなワザを持ち寄って作る自然の草地「のはら」──谷津坂第一公園(横浜市金沢区)
外来種が繁殖し、真っ赤になった池を再生。約5000輪の蓮池に ──桜小路公園(藤沢市)
公園掃除とイベントで楽しく三世代交流 ──稲荷公園(東村山市)
〈私の推し公園〉 子どもの頃遊んだ公園で、遊びを提供する側に
わたしたちも活動しています!

3章 公園ボランティアのすすめ

安全・安心・楽しいまちの庭づくり
誰でもできる! 公園ボランティアの始め方
〈私の推し公園〉 息子のためが、今では自分の趣味に

4章 大人も子どもも面白がれる! ボランティア活動のコツ

Q1 公園のお手入れにはどんな道具が必要?
Q2 まずは何から始めよう?
Q3 雑草だらけ、どうしたらいい?
Q4 大量の落ち葉、有効活用できるかな?
Q5 どんな花を育てよう?
Q6 仲間をもっと増やしたい! いい方法はある?
Q7 ちょっとしたトラブル、どうしよう?
〈私の推し公園〉 子どもたちの優しい心を育てる愛護会活動

5章 毎日の一工夫。無理せず続けるためのアイデア集

1 時間を決める。作業が途中でもキッパリ終了
2 入会も退会も自由。時間がある時に気軽に参加できる雰囲気づくり
3 お知らせポスターで参加者募集、SNSでも告知
4 公園の近隣にもお知らせポスターで参加者募集
5 SNSで公園の外でも交流する
6 思い切って声をかける
7 作業がラクになる便利グッズを活用する
8 子どもでも参加しやすくなる小さなトングと小さなバケツ
9 誰でも使える掃除道具やジョウロを置いておく
10 子どもたちも一緒に参加できる工夫を取り入れよう
11 ゴミ入れは自立式にすると入れやすい
12 お揃いのグッズで気分アップ
13 植物の名札づくり
14 「花の里親」で地域の公園への愛着アップ
15 活動後のご褒美に「みんなのお茶タイム」
「無理せず、楽しく!」が公園ボランティアを長続きさせる合言葉
〈私の推し公園〉 「たかが公園、されど公園」。日々を楽しく

6章 頼れる味方はすぐそこに。自治体職員との連携プレー集

1 公園ボランティアを始めやすくする連携
2 自治体やボランティア同士のノウハウを共有しやすい連携
3 市民が公園でやりたい活動を実現するための連携

EPILOGUE 公園「で」遊ぶから、公園「を」育てる時代へ

一般社団法人みんなの公園愛護会

地域の小さな公園を支える公園愛護会や公園ボランティアをサポートするための団体として、2020年に設立。全国自治体および全国の公園ボランティアへのアンケート調査を定期的に実施。また公園ボランティアの活動を取材することで、現場での課題や工夫、活動の醍醐味を伝え、ノウハウやヒントになる情報発信を行なっている。公園ボランティアに関して、定量・定性両面の情報をもとに、国交省の分科会や公園運営者や自治体への勉強会などで公園ボランティアの実情と可能性を伝えることを行なっている。
https://park-friends.org/

椛田里佳

子どもの頃から公園好き。母になってからは、子どもたちの声であふれていた近所の公園に、仲間同士で公園愛護会をつくりました。もっと楽しく明るく居心地の良いみんなの公園になるよう、ゆるやかに実験中。一部上場企業を経験した後、上海暮らしや、社会人向けスクール「自由大学」の学長を経て、子どもたちと家族中心の暮らしにシフト。夫を難病で亡くし、公園に関わる仕事に。京都大学農学部卒、名古屋市生まれ。

跡部徹

自宅は公園の前。住民運動でできた公園のため「自分たちの公園感」が強く、お世話しながら遊び尽くす喜びに目覚めた一人。公園にはまだまだ伸び代がある!株式会社空気読み代表・メディアコンセプター(事業戦略から媒体制作・運用まで。リクルートでメディアプロデューサー、編集長、事業開発を経て独立)/手書き地図推進委員会(2020年GOOD DESIGN賞受賞)/一卵性双生男児の父/著書:「空気読み」企画術/前に進む力/顧客に愛される会社のソーシャル戦略/手書き地図のつくり方、等。仙台市生まれ、東京在住。

あなたのまちに「推しの公園」はありますか?

こんにちは、みんなの公園愛護会の椛田里佳です。私は近所の小さな公園で友人と一緒に公園ボランティア活動をしています。きっかけは、いつも仲間と遊んでいた公園が荒れ始めたこと。そこは児童館のようなレトロな施設が隣接した公園で、赤ちゃん連れの親子から、幼児・小学生・中学生といろいろな人が日々集っている場所でした。子どもたちも、お兄さんやお姉さんたちの遊びを隣で見ては、卓球や将棋遊びを知り、虫取りに喜び、大きな子たちも小さな子がいると自然と配慮する、優しい空間でした。外で遊び、室内で遊び、子どもを見守り合い、みんな自由でした。その雰囲気は、子どもだけでなく、大人である私にも多くの楽しみと学びをもたらしてくれていました。
そんなお気に入りの場所でしたが、ある日、耐震性を理由に、施設の閉鎖が決定。公園は残りましたが、毎日いた施設のスタッフがいなくなり、遊ぶ子どもも減ってくると、みるみるうちに公園が荒れていき、草が伸びすぎてジャングルのようになってしまいました。見かねた友人が「今度、公園の草取りをしようと思うんだよ」と話してくれました。誰もやらないなら、自分たちでやればいい。なるほど、その手がありました。日にちを決めて、いつも公園を使っているみんなで草むしりをしました。やってみると、お母さんたちだけでなく、子どもたちや、お父さんたちも大活躍。ジャングル化していた公園は、みるみるうちにスッキリして、雑草の森に隠れていた鉄棒やベンチも久しぶりに顔を出しました。何とも言えない達成感と、充実感、気持ち良い疲労感がありました。そこから、継続して活動するための支援が受けられる公園愛護会制度に登録し、活動を続けています。
地域の公園を守ってくれている人がいることは、子どもの頃から何となく知っていたものの、大人になって、いざ自分がやる側に回ってみると、とても学びが多く楽しいという発見がありました。
季節ごとに違った顔を見せる公園、落ち葉の落ち方や草の生い茂り具合もその年の天候によって全く変わってきます。よく見ると今まで見たこともない花が咲いていたり、自分たちで掘り起こすところから花壇を作ってみると、大きな石がゴロゴロ出てきて、公園や地域の歴史に思いを馳せたり。まるで、公園の新たな遊び方を開拓しているかのような新鮮さがあります。
何年もかけて、じっくり緑を育てたり、花壇で癒しの景色を作ったり、草や落ち葉で自然の循環を作ったり、地域の人たちが楽しく集まる仕掛けを作ったり。
公園ボランティアは、新たな公園遊びの開拓と探求の活動だなと、やっていてつくづく思います。万人に開かれた地域の庭である公園で、仲間と一緒に、ゆるく楽しく、地域密着。体を動かしてスッキリ爽快、達成感と気持ち良さも味わえる活動です。
この本では、公園を楽しみ尽くすための公園ボランティアをテーマに、「推しの公園」を持つ楽しみや、公園を育てていく喜びについて、先人の事例を参考にしながら、紐解いていきます。

近所の公園を育てる4つの醍醐味

あなたが「公園」と言われて思い浮かべるのは、どんな場所ですか? 子どもの頃毎日のように遊んだ鉄棒やすべり台。友と語り合ったブランコ。お休みの日に散歩やピクニックをする広場。木陰が気持ち良いランニングコース。きっと皆さんそれぞれの中に、公園のイメージや思い出があることと思います。暮らしのそばにあり、子どもたちの日常の遊び場である公園は、大人たちにとっても都市の中の癒しの空間であり、遊び場であり、学びの場でもある、まさに地域みんなの庭。
公園は普通に遊んでも普通に楽しめますが、それだけじゃもったいない。サービスを受けるだけの利用者から、守り育てる側に一歩足を踏み入れてみると、世界は一気に広がります。
「推しの公園」を持つように公園を育てる醍醐味を、この本を通して知っていただけたら幸いです。

醍醐味①:目的を持って近所の人たちとおしゃべりしながら楽しくできる

ボランティアというと高尚なイメージで何だかハードルが高いという人もいるかもしれません。たしかに世の中にはいろいろなボランティア活動がありますが、公園ボランティアは、まちの庭である公園で遊び感覚で気軽にできるので、比較的カジュアルでとっつきやすい活動ではないでしょうか。さらに仲間と一緒になら楽しい時間に変わりやすいもの。そもそも公園は遊び場。公園での新たな遊び方を開拓する気持ちで、草木や落ち葉を使って面白いことを考えたり、土に触れて癒されたり、花を育てたりしながら、仲間と長い時間をかけて公園を育てていくのも、一興です。月1回など定期的に集まる場として、近所の人たちとおしゃべりしながら、心と身体の健康を保つ活動として楽しんでいる人たちも大勢います。

醍醐味②:カンタン作業で垣根が低い

公園ボランティアは、子どもたちも一緒にできる活動です。小さなゴミを見つける天才たち、草取りや落ち葉集めなど何でも楽しんでしまう遊びの天才たちは、いつでもどこでも大活躍。公園は出入口が限られているので、道路や水辺の清掃と比べても安全性が確保しやすく、複数の大人が見守りあいながら、小さな子連れの親も普段遊び慣れた公園で一緒に作業ができます。もちろん作業をせずに遊んでいることだってできます。
また、花壇など園芸の楽しみを公的な場所で、喜ばれながらできることも魅力の1つです。マンション住まいなどで庭がない人も庭しごとを楽しむことができますし、自宅に庭がある人も公園というパブリックペースでみんなとする庭しごとはまた違う喜びがあると言います。土に触れ、緑や花を育てて、まちの庭を季節の花で彩ることで、自分も楽しく、感謝もされるという好循環。作業をしながらだと自然な会話も生まれ、ご近所さん同士の距離も近くなるようです。
公園ボランティア活動は、地域に昔から住んでいる人たちと、新しく引っ越してきた子育て世代がお互いを知り交流する機会としても有効のようです。ご近所さんが気軽に知り合う多世代交流の場としてはもちろん、元気なシニア世代の社会活動と健康維持の場として、地域の子どもたちと一緒に育てる遊び場として、花や緑が好きな人たちのサークル活動として、多くの人たちに親しまれています。

醍醐味③:赤ちゃんから80代まで多世代が参加、生涯を通じて楽しめる

横浜市港北区にある師岡打越第三公園では、30年続く公園愛護会を子育て世代にバトンタッチし、子どもからシニアまで多世代で楽しく公園ボランティア活動をしています。
一年草中心で植え替えとメンテナンスが大変だった大きな花壇を、多年草や宿根草、球根などを多用したナチュラリスティックガーデンにし、お手入れがラクで、季節の移り変わりの美しさも楽しめる花壇にリニューアル。楽しさが伝わるデザインのお知らせや、写真やイラストつきの活動報告を公園内に掲示したり、Facebookでオープンに活動を告知したりするなど、時代に合わせて運営方法も工夫をしながら、楽しんで活動されています。
寺田大地さん・有梨さんご夫妻は、地域とつながったきっかけが公園愛護会活動だったことを話してくださいました。「ご近所の方に今度ここの公園でお掃除があるの、楽しいからよかったらいらっしゃいと言われたのがきっかけでした。参加してみたら、汗かきながらしゃべりながらで楽しくて。最初に参加した時、みんなで集合写真を撮ったのですが、後日、当時の会長さんがそこに写っている人の名前を書いて持って来てくださって。そのおかげで、引っ越して早々にご近所さんの顔と名前が一致したので、とてもありがたかったですね」。
きれいな花壇を作りたいけど、みんな子育てに忙しいし共働きの家庭も多いので、あまり労力はかけられないよね、と若いメンバー同士で話していたところ、近所の園芸屋さんにローメンテナンスでも素敵に見える植栽のスタイルがあることを教えてもらい、これを公園に応用できないかと新しい花壇のプランを考えたそうです。それは、ナチュラリスティックガーデンと呼ばれる多年草や球根を使った花壇で、季節による変化や枯れゆく姿も楽しめるもの。寺田さんたちは、それまであったものをすべてゼロにして作り直すのではなく、前の会長さんにいろいろ話を聞きながら、すでにある植物の良いところは残して、特性に合わせて植物の配置を換えるように公園全体のプランを考え、相談し賛同を得ながら、花壇のリニューアルを進めたそうです。
「みんなで話し合えるのが楽しみになっています。植物の成長もあるけれど、誰かと楽しくおしゃべりしたり、子どもたちが遊んだりもできる自由な場であることがモチベーションにつながっていると思います」と話す有梨さん。平日在宅で仕事をしている人にとっても体を動かす貴重な機会になっているようです。「黙々と作業してもいいし、おしゃべりしてもいい、子どもは遊び走り回っていてもいい、そんな空間なので、気兼ねなく参加できていいですよね.」と気軽に参加できることに感謝されていました。
「公園を育てていく」という生涯を通じて楽しめる趣味を見つけたという寺田さんご夫妻。愛護会の活動が家族の行事になり、花壇や公園が共通の趣味になっているのでご近所の方とも話題が絶えないそうです。その影響か、子どもたちも花遊びに慣れて、今では花壇づくりの立派な戦力になっているとのことです。

醍醐味④:行政の公認をもらうとぐっと活動しやすくなる

このような「推しの公園」を育てる活動は、公園を管理する行政との協力関係があって初めて成り立ちます。まちの小さな公園は市区町村で設置・管理されていますが、住民が公園の維持管理に参画することを歓迎している自治体は多く、様々なボランティア制度が用意されています。公園ボランティアは、行政から公的に認められた存在。行政公認の「推しの公園」活動とも言えるでしょう。行政の公認をもらうことで、公園での活動が公式なものとなり、活動しやすさも、できることの幅もぐっと広がります。

多様な個性や経験を持ち寄って運営する、みんなの公園愛護会

いざ活動を始めると、知りたいことがどんどん出てきます。どんな道具が便利なのか、使い方や手入れの仕方、草取りの効果的な方法や時期、パブリックスペースであり家の庭ほど頻繁にお手入れもできない公園ならではの緑の管理方法、やればやるほど、聞きたいことが出てきます。全国でやっている人は大勢いるはずなのに、活動のヒントやノウハウのような情報は手に入りにくいのが現状です。そこで生まれたのが「みんなの公園愛護会」です。みんなの公園愛護会は、地域の公園を守り育てている公園ボランティアの人々を応援しサポートする非営利型一般社団法人。地域を超えて、公園ボランティアがつながり、知恵やノウハウを共有していくことで、地域の公園がより豊かに、いい感じになっていくことを願って、担い手の視点や感覚を持って調査や情報発信の活動をしています。
みんなの公園愛護会は、自らも公園愛護会を立ち上げ暮らしの中で小さな挑戦や実験を繰り返す椛田里佳と、100年以上続く老舗公園製品メーカーのコトブキをはじめ公園情報アプリ開発や遊具の点検修繕などを行うパークグループの代表である深澤幸郎、公園の目の前に住みまちやオープンスペースを面白がる活動を多角的な視点で行う編集者の跡部徹を主要メンバーに活動。公園大好き元国土交通省職員の一言太郎も仲間に加わり、それぞれのメンバーがそれぞれの知見や経験を持ち寄って運営しています。その他にも各地の公園ボランティアの取材や、自分たちの公園での活動を紹介するレポーター仲間もいます。このような仲間たち、そして活動に共感し取材や調査に協力してくださった多くの皆さんのおかげで、この本を執筆することができています。

小さな公園こそ大きな可能性を秘めている

公園は誰もが自由に過ごすことができるオープンスペース。公園のベンチに座るとなんだかホッとするじゃないですか。シートを敷いてゴロンと寝転がって空を見上げてみるのもいいですね。そこに居ていいよと包まれるような温かい感覚になるのは、公園の力です。
最近はPark-PFI(公園に施設を設置して運営する民間事業者を公募により選定する制度。公募設置管理制度とも言う)などで大きな公園は民間企業の手やアイデアが入り、充実した維持管理システムの構築とともに面白い取り組みも増えていますが、身近にある小さな公園がその対象になることは少なく、注目されることもあまりありません。むしろ少子高齢化や自治体の予算縮小により、維持管理は後回しにされ、ほったらかしになってしまう恐れすらあります。しかし、各地に点在する小さな公園は、子どもたちの日常の遊び場であり、まちに緑や癒しをもたらす大切な存在。ウェルビーイングが注目される今、公園は人々が心身ともに健康的に暮らし、地域コミュニティを育むには最高の場所の1つだと私たちは考えます。
公園が気持ち良いみんなの居場所であり続けてきた背景には、地域の人々が長年公園を守り育ててきたことがあります。特に子どもたちの日常の遊び場である小さな公園は、地域の人々の協力なくしては成り立ってこなかったでしょうし、これからもそれは変わらないでしょう。小さな公園が豊かであり続けるために、公園を守り育てる活動を応援し、現代や未来に向けてのアップデートをサポートする目的で、私たちは2020年にみんなの公園愛護会を立ち上げました。

こだわり①:自治体の枠を超えて情報でつながる

一般社団法人みんなの公園愛護会の主な活用内容は、公園ボランティアに関するアンケート調査、取材活動、情報発信です。公園ボランティア実態調査は、公園を管理する自治体と公園ボランティアの担い手の両方を対象にアンケートを行ってきました。2020年は神奈川県下全33市町村への自治体調査と、8自治体内で活動する1175の公園ボランティア団体へ。翌2021年にはエリアを全国に広げ、公園のある全国47都道府県内の1346市区町村への自治体調査と、全国37自治体2292の公園ボランティア団体を対象に活動の概要調査を、2022年は公園ボランティア制度のある全国の310市区町への自治体調査と、全国36自治体2559の公園ボランティア団体を対象に、活動の工夫やノウハウとなる情報を集める調査を行いました。調査結果は、すべての内容をウェブサイトでレポートしている他、冊子にして配布したり、公園ボランティアの支援に役立ててもらうべく協力自治体や国土交通省へデータを提供してきました。

こだわり②:すべての活動をリスペクト

マクロの視点で見るアンケート調査と並行して、ミクロの視点で個別の活動の取材も行っています。どんな公園で、どんな人たちが、どんな活動をしているのか?、どんな工夫をしながら、どんな楽しみを持っているのか?など、皆さんの様子を見せてもらい「みんなの公園愛護活動」として記事にしてウェブで公開しています。取材活動は、地域による文化の違いや個性も感じられ、毎回とても学びの多い時間になっています。取材活動を通して感じることは、どの活動もそれぞれがとても素晴らしいということ。それぞれに歴史や思いがあり、内容や関わり方に優劣はありません。毎回リスペクトを持って、すべての活動が尊いという思いで話を聞き、できるだけその良さが伝わるように記事を書いています。

こだわり③:未来志向で仲間を増やすチームづくり

私たちは、民間の非営利型一般社団法人であり、行政の視点で何かを指導する立場でもなければ、公園ボランティアの担い手団体を束ねて上に立つ組織でもありません。公園ボランティア活動をする人はもちろん、その活動を支える人たちもまるごと、立場や地域を超えて、未来志向で横につながり、情報を共有していこうとしています。そのため、組織を大きくせず、有機的につながる仲間を各地に増やすというチームづくりをしています。
アンケート調査や取材活動で得た情報や知見をもとに、寄稿や講演をする機会をいただくことも増えてきました。今後はさらに多くの地域で、公園ボランティア活動に関わる仲間を増やしていきたいと考えています。

みんなの公園愛護会 代表 椛田里佳

公園「で」遊ぶから、公園「を」育てる時代へ

非営利型一般社団法人みんなの公園愛護会を立ち上げたのが、2020年6月です。コロナ禍で自宅テレワークと近所を散歩する日々。この時期に多くのことがリセットされ、何が大事なのかを考えた人は多かったのではないでしょうか。その中で公園というパブリックスペースの価値と、その公園を支えてくださっている方へ湧き上がってきた感謝の念から「みんなの公園愛護会」は生まれました。
コロナ禍で生まれた大きな価値観の変化があります。家に籠らなければならない環境で、料理をしたり、植物を育てたり、インテリアを工夫したりと、私たちはそれぞれが生活の潤いとなる行動を始めました。そのことで、作ったり育てたりする活動こそが、最大の楽しみだということを多くの人が発見したようです。そして再び人と会える今、自分が作ったものや料理、場所で交流することの喜びもそこに加わりました。
プロデューサー(生産者)とコンシューマー(消費者)を合わせた「プロシューマー」という言葉があるように、消費者が生産活動をともなう活動はかなり定着してきました。我々はコロナ禍を経て、消費するだけでは満足できず、生産に関与し、発信していく方が何倍も面白いことに気がついてしまいました。「推し」という言葉が一般化した時期とも重なります。公園という公共空間も、ただ活用するよりも、育てる方が何倍も面白い時代が訪れているのだと思います。
ボランティアというと、誰かのために、社会のために身を粉にして尽くすというニュアンスがまだあります。しかし、公園ボランティアは、もはや公園を育てる活動自体が楽しみであり、それでいて社会の役にも立っているという新しい「趣味」になっています。ボランティアだからこそ、誰かに決められたことをするのではなく、「公園をどう育てたいのか?」「仲間とどう活動していきたいのか?」という欲求を大事にして活動していいはずです。それが多様な公園のあり方につながっています。
この本では、公園ボランティア=推しの公園育ての事例をできる限り多く紹介しました。公園ボランティアの皆さんの姿を伝えることが、一番説得力があると思ったからです。公園を育てる可能性はまだまだあります。これからも先進的な取り組みが増えていくことでしょう。我々「みんなの公園愛護会」でも皆さんの活動事例を伝え、運営のコツや行政との橋渡しをすることで、公園ボランティアのサポートをしていきます。近いうちに「趣味は公園推しです。一緒に推しませんか?」という会話が当たり前に語られる日が来るように。
この本は、学芸出版社の岩切江津子さんによる企画立案、井口夏実さんによる編集執筆伴走、森國洋行さんに整えていただき生み出すことができました。公園で使う道具やメンテナンス手法に関して専門的なアドバイスをいただいた植栽デザイナー/ガーデナーの平工詠子さん、イラストや図版を描いていただいた江村康子さん、そして表紙を含めてデザインをしていただいた加藤賢策さん、皆さんの専門力に助けられました。また、みんなの公園愛護会で一緒に活動している深澤幸郎・一言太郎・高村南美、各地域のレポーターの仲間の日々の尽力に感謝しています。最後に、全国の公園ボランティアの皆さん、そしてボランティアの活動を支える自治体職員の方々のおかげです。あらためて感謝いたします。
みんなの公園愛護会では、これからも公園を支えるボランティア活動をされている皆さんの活動事例をウェブサイトで紹介していきます。記事を更新したときのお知らせなど、LINE公式アカウントで発信していきます。ぜひ、みんなの公園愛護会を友だち追加してください。

地域の小さな公園が、公園ボランティアの皆さんの活動によってすくすく育ち進化し、次の世代へバトンをつなげていく姿を思い描きながら。

みんなの公園愛護会 理事 跡部徹

開催が決まり次第、お知らせします。

終了済みのイベント

編集部より

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