山崎義人、清野隆、柏崎梢、野田満 著

内容紹介

実践に向けて「自分事として学ぶ」入門書!

「まちづくり」にはじめて取り組む学生や市民に向けた入門的教科書。まちづくりとは何か?なぜ必要か。多様な人々との連携・協働、まちの構成要素や成り立ちや仕組み、まちづくりを進めていく流れやまちの居場所づくり等を、わかりやすく体系的に解説。15の事例やワークシートも収録。まちづくりを自分事として学べる一冊。

体 裁 B5変・172頁・定価 本体2700円+税
ISBN 978-4-7615-2781-5
発行日 2021-09-01
装 丁 松井和泉


紙面見本目次著者紹介はじめにおわりに
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「まちづくり」にはじめて取り組む人のため、わかりやすく体系的に解説

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実践に結びつくワークシート付き!

序 まちづくりとは

1 まちづくりとは何か
2 まちづくりと都市計画の違い

1章 私から始めるまちづくり ─個人と社会潮流─

1 まちづくりが必要なわけ
2 まちの課題
3 求められるこれからの担い手像
4 まちづくりへの第一歩
ワークシート① 校歌から育った地域を振り返ってみよう
ワークシート② 環境的自伝
ワークシート③ まちづくりへ向かう自分設定

2章 みんなと出会う ─参加・協働─

0 みんなと出会う前に
ワークシート① 身近にいる仲間を探してみよう
1 市民・行政・企業
2 まちづくりを担う主体
3 手助けが必要な人々
4 まちづくりを下支えする主体
5 外部の専門家やサポーター
6 参加と連携・協働のためのキーワード
7 みんなと出会うために
ワークシート② まちづくりの事例を読み込み、登場人物を読み取ろう

3章 まちに出会う─計画・デザイン─

1 まちを見出す
2 まちの構成要素
3 まちの成り立ち
4 まち独自の計画ルール
ワークシート① まちの聖なる場所
ワークシート② あなたのまちの過去の姿を調べよう

4章 まちをつくるプロセス ─運動・運営─

1 プロセス
2 リノベーション時代のまちの居場所
ワークシート① プロジェクトを立ち上げよう
ワークシート② まちの拠点をつくる

5章 まちづくり事例集(1970’s~2020’s)

1 玉川まちづくりハウス
2 羽根木プレーパーク
3 公益信託世田谷まちづくりファンド
4 グラウンドワーク三島
5 株式会社黒壁
6 真鶴まちづくり条例「美の基準」
7 あまみず社会研究会
8 神山プロジェクト(NPO法人グリーンバレー)
9 リノベーションまちづくり
10 ISHINOMAKI 2.0
11 尾道空き家再生プロジェクト
12 オガールプロジェクト
13 京都移住計画
14 ミズベリング
15 シェア金沢

6章 知っておきたい基礎知識

1 まちづくりの歴史
2 まちを語るキーワードと人物
ワークシート まちづくりビブリオバトル

山崎 義人

主な担当:全体の総括、および序、4章、5章(分担)、6章
東洋大学国際学部国際地域学科教授。博士(工学)。1972年鎌倉生まれ。早稲田大学在籍時に後藤春彦を師事。まちづくりや地域再生の研究・実践について学ぶ。1997年(株)地域総合計画研究所にて、主にマスタープランの市民参加業務を担当。流山の市民版マスタープランづくりなどに携わる。2000年早大博士後期課程復学とともに、小田原市政策総合研究所副主任研究員としてNPO法人小田原まちづくり応援団の立ち上げに至るまちづくり活動にかかわる。2002年早大助手、2004年神戸大学COE研究員(シャレット・ワークショップ長田再活性を企画実施)、2008年兵庫県立大学講師、2014年同大学院准教授。豊岡市寿町にシェアスペース「コトブキ荘」創設。2017年より現職。編著書に『住み継がれる集落をつくる』(学芸出版社、2017)、共著書に『いま、都市をつくる仕事』(学芸出版社、2011)、『無形学へ:かたちになる前の思考』(水曜社、2017)、『小さな空間から都市をプランニングする』(学芸出版社、2019)ほか。共訳書に『リジリエント・シティ』(クリエイツかもがわ、2014)。2011年日本建築学会奨励賞受賞。2020年日本建築学会賞(論文)受賞。

清野 隆

主な担当:3章、5章(分担)
國學院大學研究開発推進機構准教授。一般財団法人エコロジカル・デモクラシー財団理事。1978年山梨県南アルプス市生まれ。東京工業大学工学部社会工学科卒業、同大学院社会理工学研究科社会工学専攻修了。博士(工学)。在学時に土肥真人に師事、コミュニティ・デザインを学ぶ。2009年より立教大学観光学部でプログラム・コーディネーター、助教。2014年より江戸川大学社会学部現代社会学科で講師、准教授。この間、新潟県佐渡市宿根木集落などで大学生の力を活かした地域づくり活動に従事。2020年より現職。「地域を見つめ、地域を動かす」をスローガンに観光まちづくりの教育に従事。共著書に『住み継がれる集落をつくる』(学芸出版社、2017)、『山あいの小さなむらの未来 山古志を生きる人々』(博進堂、2013)、『地中海を旅する62章』(明石書店、2019)、『世界都市史辞典』(昭和堂、2019)、『復興のエンジンとしての観光』(創生社、2021)。

柏崎 梢

主な担当:1章、5章(分担)
東洋大学国際学部国際地域学科助教。1981年神奈川県横須賀市生まれ。東洋大学国際地域学部卒業、アジア工科大学院(Asian Institute of Technology)都市環境マネジメント専攻修了後、東京大学工学系研究科都市工学専攻修了。博士(工学)。複数校の非常勤講師や研究員を経て、2014年東京大学大学院工学系研究科特任助教、2015年東洋大学国際地域学部国際観光学科特任講師、2018年より現職。2002年よりタイ王国の首都バンコクを中心に、スラムと呼ばれる都市インフォーマル居住地のコミュニティ開発に関する調査研究および住環境改善活動に従事。編著書に『アジア・アフリカの都市コミュニティ:「手づくりのまち」の形成論理とエンパワメントの実践』(学芸出版社、2015)、共著書に『国際貢献とSDGsの実現:持続可能な開発フィールド』(朝倉書店、2019)、『Evidence-based knowledge to Achieve SDGs from Field Activities』(アスパラ、2021)。

野田 満

主な担当:2章、5章(分担)
東京都立大学都市環境学部観光科学科助教/兵庫県洲本市地域おこしマイスター(兵庫県版地域おこし協力隊)。1985年兵庫県神戸市生まれ。福井大学工学研究科博士前期課程修了(川上洋司に師事)、早稲田大学創造理工学研究科博士後期課程修了(後藤春彦に師事)。博士(工学)。2015年島根県中山間地域研究センター嘱託研究員、2016年福井大学産学官連携本部研究機関研究員を経て2017年より現職(旧:首都大学東京都市環境学部自然・文化ツーリズムコース)。学生時代より域学連携事業を通して関わってきた兵庫県洲本市より2019年に地域おこしマイスターの委嘱を受け、大学教員との兼任による継続的なまちづくりの現場支援に携わる。その他、高知県いの町におけるまちづくり組織の立ち上げと運営等に従事。2017年日本建築学会奨励賞受賞ほか。

本書は、「まちづくり」にかかわる都市や社会の事象をなるべく平易に噛み砕いて解説した体系的な入門書です。

これまで学生たちに「まちづくり」を伝えてくるなかで、いくつかの違和感が芽生えていました。1つは、これまでのまちづくりの教科書は少々難しすぎるのではないかということ。もう1つは、この10年ぐらいの現場の急速な展開のなかで教科書が追いついていないのではないか、ということ。さらにもう1つは、個別のプロジェクトをうまく取り組めても、「まちづくり」の大きな流れを描ける素養を学生は身につけてはいないのではないか、ということでした。まちづくりには長年かけて丹念につくりあげていく、そうしたニュアンスが込められていますが、近年薄れつつあるのではないでしょうか。

まちづくりや地域づくりを扱う文理融合の学際的な学部学科が増え、多くの学生が「まちづくり」を学び社会に出て行きます。こうした状況を頼もしく思います。その一方で、その入り口としての教科書は、ほとんどが従来の土木・建築・造園や都市工学など、理工系の学びを出発点としてきました。特に、まちづくりは都市計画から派生してきたこともあり、高度に専門化した内容を教える傾向にありました。それでは、20歳前後でまちづくりを学ぶ学生には、なかなか接点を見出しづらいように思うのです。
学生や著者にとっても身近なまちづくりの現場として挙げられるのは、2010年代以降に展開しはじめた、空き家・空き地のリノベーションや、それにまつわるコミュニティづくり、子ども食堂やコミュニティ・カフェといった取り組みです。しかし従来の教科書ではあまり触れられてはいません。

考えをもう少し先に進めてみると、これまでのまちづくり教育で育てようとしていた人材像と、これから世の中に求められている人材像が異なってきているのではないか?という問いに至りました。要するに専門家養成以前の学びを充実する必要があるのではという問いです。人口減少、リーマンショック、東日本大震災などなど、次々に困難に晒されるまちの現場で、もう一度、改めて必要なのは「市民が主役」のまちづくりではないでしょうか。地域に暮らす人々にとって、まちづくりはますます身近な営為になってきています。いわゆるアフターコロナにおいても、そうした傾向はより強くなっていくことでしょう。まちづくりには幅広い教養が求められます。まちづくりを自分事として学び、市民としての主体性を醸成し、まちの個性を読み取り、まちの中で実践する。そんな意欲的でイノベーティブな市民を育てる、まちづくりの教科書が必要だと考えるようになりました。本書はこうした問いや想いを共有した著者らの新たな試みです。学生のみならず、まちづくりに興味・関心があり、これからまちづくりを始めようとする市民の方々にも手に取ってもらえればとも思います。

まちに暮らす人々の眼差しから、まちづくりを考えられるように、各章は構成されています。

1章「私から始めるまちづくり──個人と社会潮流」では、若い読者に地元のまちを読み直してもらうことから始まり、地域や社会課題を自分事として捉える補助線となることを狙っています。

2章「みんなと出会う──参加・協働」では、まちがそこに暮らす「人」から立ち上がるものであり、あらゆる主体の営みが複層的に絡まり合う多様さをもっていることを伝えることを目的としています。年齢も職業も異なる人々の存在を知り、共に助け合うことが、これからのまちづくりにはいっそう欠かせない視点になるだろうと考えています。

3章「まちに出会う──計画・デザイン」では、人々の営みによって形づくられてきた環境としてのまちへと展開します。構成要素としての歴史、環境、構造物や、まちの個性を発見する方法を学び、環境の特徴を捉える目を養います。同時に、まちづくり計画やまちづくり協定、都市計画、建築基準法などへの理解を促し、そのうえで個性を活かした計画・デザインにつなげていきます。

4章「まちをつくるプロセス──運動・運営」では、読者が実際にまちづくり活動を起こすことを想定し、順を追って手順を解説していきます。様々な人々やまちとの関係を取り結び、その動きを拡げ、いかに多様な主体と連携を図るのか?そのプロセスを辿ります。

5章「まちづくり事例集(1970’s~2020’s)」は、社会背景や主体、計画や構成、プロセスなど異なる特徴的な15の事例をシンプルに紹介しています。個々の事例の理解だけでなく、これまで学んできた知識をもとに、それぞれの成功要因や今後の展望について主体的に探り、学ぶ力をつけてもらうことを狙いとしています。

6章「知っておきたい基礎知識」は、まちづくりの背景を補填する章です。1960年前後から50年ほどの時間を振りかえり、15年単位で区切りながら、どのようにまちづくりが捉えられてきたか、その変遷について概観します。さらにまちづくりの歴史と併走して、大きく影響を与えたと思われる10名の海外の人物たちと彼らの提唱した概念を手短に紹介しています。自身の興味関心に近いものを見つけ、それぞれの学びを深めるきっかけとなれば幸いです。

さらに、各章の導入や振り返りとして、書き込み式の「ワークシート」を収録しています。読者がより自分事としてまちづくりを実感することを促すこれらのワークシートでは、知識の活用というよりは、読者自らの経験や感性、価値観を掘り下げ表現することを狙っています。自分自身を客観的に理解するとともに、まちとのつながりを再認識・再発見する機会でもあります。本書を用いた学びをあなたの実践へとつなげる作業でもあり、これらのワークが一歩を踏み出す足掛かりとなることを期待しています。

まちづくりの担い手は、まちに住み、働き、訪れ、集うすべての人々です。多様な主体が連携・協働することで豊かなまちはつくられます。本書を読み終えたあらゆる読者が、小さくとも自分たちなりのまちづくりを実践する「主体的な市民」となり、それぞれの立場でそれぞれのまちをより良くして行ってくれることを願ってやみません。

2021年7月

著者一同

一見シンプルでわかりやすい『はじめてのまちづくり学』というタイトルには、様々な思いが込められています。

まず、「まちづくり学」という言葉です。果たしてまちづくりは「学」たり得ているのか?そんな想いまで生まれてきます。学とは体系のことですので、辞書のようなものではなく体系を組む必要がありました。少なくとも筆者らにとっては、大きな挑戦でした。入門書という前提に立つならば、基本的な事柄を体系的に示すことで「まちづくり学」なる重みに、少しは応えられたのではないでしょうか。また、学問としてはまだ歴史の浅い“まちづくり”という分野に、自分たちなりの考えを重ねてみることで、まちづくりを学として発展させていくことにも少しは貢献できたのではないでしょうか。

次に、「はじめての」という言葉です。普通に考えれば「初学者向け」のといった意味です。少々、内容が希薄であるという指摘もあろうかとは思いますが、それは初学者向けにシンプルにすることを目指した結果です。適宜資料などを加えて、授業を行ったり、自らの学習を深めていただければと思います。ところで、執筆を進めるなかでもう1つの意味もあるなと思うようになりました。それは「全く新しい」という意味です。いささか大袈裟ではありますが、これまでにない新しい切り口で、まちづくりを捉え直すことができたと私たちは考えています。私たちのキュレーションによって、ある程度定評のあるものを整理して編集して噛み砕いて解説することで見えてくるまちづくりの世界が、本書には描かれていると思います。この評価もまた、読者にお任せすることにします。

様々な先達の方々がおられるなか誠に恐れ多いことですが、胸を張って本書『はじめてのまちづくり学』を世に送り出したいと思います。

出版にあたり、学芸出版社の岩切江津子さんには、編集に限らず多大な労をとっていただきました。にこやかな笑顔から飛び出してくる鋭い指摘に、身が引き締まる思いを何度もしました。また、神谷彬大さんには丹念にきめこまやかに校正と制作にあたっていただきました。さらに社長の前田裕資さんにも、時折重要なご指摘をいただきました。そして、デザイナーの松井和泉さんには、私たちが描いたまちづくりの世界をみごとに装丁として表現していただきました。本書の製作に関わったすべてのみなさまに、ここに謝意を表します。

教科書づくりを進めていく過程において、2人の方々から深く意見をいただきました。まず、この4月より國學院大学にて教鞭をとっておられる嵩和雄さんです。まちづくりや地方創生の現場に関する幅広い知識や豊富な経験を踏まえて、様々な角度からアドバイスをいただきました。次に、武蔵野市役所嘱託職員の神村美里さんには、学生に近い若い感性で、プロジェクトを実際に展開している経験から鋭い意見・指摘をいただきました。ここに記して深く感謝の意を表したいと思います。

教科書づくりの企画に賛同してくれた仲間たちと1年ほど勉強会を重ねて議論し、会食をしながら信頼関係を築いていきました。企画を出版社に持ち込み、一緒に仕事をすることになった頃に、新型コロナウイルスが次第に世間へと蔓延していきました。執筆陣と編集者がリアルにはほとんど顔を合わせることもなく画面越しに意見交換し、本書は出版されます。なにか不思議な気もしますが、これがいわゆるニューノーマルなのかもしれません。私たちの暮らし方や働き方は大きな転換点を迎えていて、もしかするとまちづくりもそうなのかもしれません。

本書が、全国の津々浦々のまちに暮らし働く人々や、そこを往来し交流し集う人々の手に届き、まちづくりや地方創生に取り組もうとしている方々に少しでも参考になり、まちづくりの実践へと誘うことができ、さらに、それらが息の長い取り組みへと発展していくのであれば、こんなに幸せなことはありません。

2021年7月 緊急事態宣言下のコロナ疎開先、鎌倉の外れにて。

執筆者を代表して 山崎義人

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