中村好文 百戦錬磨の台所 vol.1

中村好文 百戦錬磨の台所 vol.1 
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内容紹介

食いしん坊で料理好きの建築家のつくる台所

これまで300軒以上の住宅を手がけてきた中村好文さん。食いしん坊で料理好きの建築家は、クライアントの多様な食生活に応える台所に知恵と工夫を注いできた。本書に登場する住まい手は、自慢の台所を生き生きと使いこなし、料理と食事を大切にする暮らしを楽しむ。そんな幸福な台所の日常を、豊かな文章、写真、図面で紹介。


中村好文 著
著者紹介

体裁B5判・128頁(オールカラー)
定価本体2700円+税
発行日2020-10-20
装丁大野リサ
ISBN9784761527532
GCODE2292
販売状況 在庫◎
関連コンテンツ 試し読みあり
ジャンル 建築家・歴史・様式
試し読み限定ポストカード付書籍購入紙面見本目次著者紹介まえがきあとがき刊行記念キャンペーン①刊行記念キャンペーン②関連イベント
計25ページ公開中!(まえがき、五つの台所―レミングハウス)
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まえがき

1 意中の台所

その1 ジョンの台所
その2 今井町の勾玉型の竈
その3 ヴェネツィア暮らしの台所
その4 Lemm Hutの七厘レンジ
その5 フィリップ・ジョンソンご自慢の台所

2 五つの台所

明月谷の家――小柄な主婦のためのコンパクトな台所
つのだ夫妻の家――夫婦が阿吽の呼吸で働く台所
休寛荘――料理好きが寄ってたかって働くための台所
Hanem Hut――七厘で料理する極小の台所
レミングハウス――食いしん坊ぞろいの設計事務所の台所

あとがき

中村好文(なかむら・よしふみ)

建築家。1948年千葉県生まれ。72年武蔵野美術大学建築学科卒業。設計事務所勤務を経て、東京都立品川職業訓練校木工科で家具製作を学ぶ。81年レミングハウス設立。87年「三谷さんの家」で第1回吉岡賞受賞。93年「諸職の技術を生かした住宅」で第18回吉田五十八賞特別賞受賞。1999~2018年日本大学生産工学部建築工学科教授。
主な著書に『住宅巡礼』『住宅読本』『意中の建築』(以上新潮社)、『普通の住宅、普通の別荘』『小屋から家へ』『集いの建築、円いの建築』(以上TOTO出版)、『食う寝る遊ぶ 小屋暮らし』(PHP研究所)、『湖畔の山荘設計図集』(エクスナレッジ)など多数。

事務所の壁に澄敬一さんが作った木箱の鳩時計が掛けてあります。その鳩時計の窓から白い鳩が飛び出して、ポポ、ポポ、ポポ……と正午を告げ始めると、部屋の雰囲気がざわついてきます。そして、スタッフは製図板やデスクトップの前を離れ、三々五々、打合せコーナーにある大テーブルのまわりに集まってきます。

「さぁ、今日は何を作って食べようか?」

これがぼくの事務所で毎日繰り返される昼餉の挨拶で、この一言で「設計事務所」は「賄い食堂」に早変わりします。

ランチのメニューは話合いで決めています。「賄いランチ」ですから、「手早く、美味しく、安上がり」の三拍子が揃っていなければなりません。その上で、その日の天候や、気温(暑さ、寒さ)や、季節感を念頭に置き、さらにみんなの気分や体調なども考え合わせて、合議の上でメニューを決めるのです。

もちろん、議論百出でなかなか決まらない日もあります。そんなとき、誰かが「今日はタイ式の辛いグリーンカレーが食べたい」とか「昨夜、飲みすぎたので、お腹にやさしい釜揚げうどんぐらいにしておきたい」というはっきりした意見(希望?)を述べたとたんに、「あ、それ、いいですね」と急転直下、満場一致でメニューが決まるときもあります。

そしてそれから、買い物係、料理係(2人)、デザート&コーヒー係、皿洗い係の役割を決める「くじ引き」です。このくじ引きは原則として、その日食事をする人は全員参加方式です。

こうして十年一日のごとく昼食を作っては食べてきたのですが、目新しいメニューができたときとか、美味しそうに盛りつけられたときなど、その時々に記録として写真を撮っていました。そして、その記録撮影が次第にエスカレートしてきて、10年ほど前から、毎日、その日の料理がテーブルに並んだ状態を撮影し、その写真をB4サイズのカレンダーの日付の枠に貼り付けることにしました。ついでにその日の買い物を人数で割った1人分の食材費も書き込んでおく習わしです。

あるとき、事務所を訪れた友人と雑談していた折、たまたま「賄いランチ」の話題になったので、さっそくそのカレンダーを見せたところ、たいそう面白がってくれて「これ、絶対本にしたらいいと思うな。本のタイトルは……そう、『オフィス・ランチ』なんていうのはどうだろう」と、思いがけない展開になりました。

先ほど書いたように、「賄いランチ」ですから凝った料理はできませんが、平均すると年間220~230回くらい作って食べていますから、料理のバラエティも豊富ですし、ちょっと目を閉じただけでも、定番メニューや人気メニュー、季節限定メニュー、事務所独自のメニュー(創作料理?)などがいくつも思い浮かぶので、『オフィス・ランチ』という本もあながち夢物語ではありませんでした。

たとえば、少人数の職場に住宅並みの台所があり、美味しい食事のためなら手間ヒマを惜しまない心意気さえあれば、「賄いランチ」はさほど難しいことではありません。そんなわけで単なる料理本としてだけでなく、職場でお昼ごはんを作って食べることの意義(効用?)と、それを実現するためのちょっとしたノウハウを伝授する本にしても面白いかもしれない、と乗り気になりかけていました。

……とそのとき、「住宅並みの台所」という言葉からの連想でしょうか、独立してからこれまでに手がけてきた300軒を超える住宅のクライアントの多くが、日々の暮らしの中でもとりわけ食事を大切にする人たちであり(ごくわかりやすくいえば食いしん坊ぞろいだったということです)、楽しみながら台所仕事をする人たちであったことが、突然、脳裏に浮かびました。

なかでも家が完成してからも友人同士や、家族同様に行き来しているクライアントが、ぼくの事務所で手がけた台所を身体の一部のように自由自在に使いこなし、日々、滋養豊富で心豊かな食生活を送っている様子をまざまざと思い出したのです。

以前、ぼくはある本の中に「美しく散乱する台所、あるいは多少の散乱ぐらいでへこたれない大らかな台所が私の理想です」と書き、続いて「台所は小さな戦場、あるいは修羅場だと考えておいたほうがよさそうだ、というのが経験から学んだ私の台所観です」と書きましたが、親しいクライアントたちは、その言葉通り、自分たちの台所をときには美しく散乱させつつ、思うさま活用してくれています。

そして、その生き生きとした台所の情景を、その家の普段の食事とともにぜひとも読者に紹介したいという気持ちが次第に膨らんできました。そんなことから『オフィス・ランチ』の本はまたの機会に譲って、台所に焦点をあてたこの本が誕生することになりました。

「食う寝るところ」という言葉は、住宅の機能を端的に表現した言葉だと思いますが、この本は、住まいの中でその「食う」を支える「台所」という場所を、設計する側からだけでなく、使い手の側からも紹介し、あわせて「台所」にまつわるとっておきの話も披露しよう、という欲張った趣向の本になりました。

さて、前置きはここまでにして、さっそく、料理の音と、匂いと、熱気の充満する活気に満ちた台所に足を踏み入れることにしましょう。

中村好文

40年ほど前、独立して住宅設計を手がけるようになってみて、あらためて気づかされることがいくつもありました。

そのうちの一つは、住宅の設計を依頼してくれる方(とそのご家族)の住まいに対する考え方、暮らし方は百人百様で、一人として、一家族として同じタイプはないということです。このことはちょっと考えればごく当たり前のことですが、独立したてのころはそんなことにもいちいち感心したりしていたのでした。そして、なかでもその違いがいちばん端的に表れるのが、それぞれの家庭の食生活だと気づいたときは、なんだか大きな発見をしたような気分になったりしました。

どこの家でもわりあい定番的な内容になる朝食でも、「ごはんと味噌汁」という家があり、「パンとコーヒー」という家があり、「お粥」という家があり、「蒸し野菜」という家があります。そして、メニューによって調理の道具も、食器の種類も、料理の時間も違ってきます。朝食ひとつとってもこれですから、夕食となったら、それこそ千差万別です。そして食生活が違えば、当然、台所もそれぞれの家庭に相応しい設えであることが望ましいということになります。

独立したころから「町の仕立屋」のような建築家になりたいと考えていたぼくは、仕立屋が顧客の体型や体格や姿勢などを念頭に置いて服を仕立てるように、依頼された家の台所をその家の家族と食生活に思いを巡らせながら仕立ててきました。

さて。「まえがき」でも触れましたが、当初、『オフィス・ランチ』という本の出版を考えていました。ちょうどそのとき、絶妙のタイミングで学芸出版社の編集者の宮本裕美さんからしばらくぶりに連絡がありました。宮本さんとは17年ほど前に進めていた小住宅の手描きの「図面集」の企画が、諸般の事情で頓挫した苦い思い出があります。ひょっとしたら、その雪辱を新刊書で果たせるかもしれません。打合せを重ねるうち、台所に焦点を当てた『百戦錬磨の台所』の企画に移行しましたが、なにはともあれ、このたび17年ぶりにめでたく宮本さんと本作りに取り組むことができたのです。

そうそう、めでたくといえば、今回、この本のすべての図面を描き下ろした須藤直美は、企画の流れた「図面集」の図面と、その小住宅の設計監理を担当したスタッフです。つまり「手描きの図面集」という企画も、趣向を変えてめでたくこの本で実を結ぶことになったのです。

この本が読者の皆さんが台所を考える際のヒントとなり、それぞれの家庭の台所仕事を愉しく、食生活を豊かにする新たなアイデアを生み出す端緒となってくれたら嬉しい限りです。

最後に、この本の意図に賛同し、ふたつ返事で取材に応じてくれて自慢の台所を見事に使いこなすと同時に料理の腕前を見せてくれたクライアントの方たちと、調理と盛りつけの決定的瞬間を見事にとらえてくれたカメラマンの石井宏明さんに心から友情と感謝の気持ちを捧げたいと思います。

中村好文

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