藤井 聡・谷口綾子・松村暢彦 編著

内容紹介

交通渋滞、バスや鉄道の経営難、中心市街地の衰退、これは人間が引き起こした社会的な問題だ。そこで市民の意識や常識に働きかけ、クルマ依存からクルマをかしこく使う方向へ、人々の自発的な行動転換をはかるのがモビリティ・マネジメント(MM)だ。その考え方や手法を初めてMMを担当する人、戸惑いがある人へ説く。

体 裁 A5・192頁・定価 本体2300円+税
ISBN 978-4-7615-2601-6
発行日 2015/08/01
装 丁 齋藤 綾


目次著者紹介はじめにイベント

序章 モビリティ・マネジメント」とは何か

0.1 モビリティ・マネジメントの始め方/進め方
0.2 モビリティ・マネジメントの基礎知識
0.3 〈コラム〉JCOMM(日本モビリティ・マネジメント会議)

第1部 まち・地域とモビリティ

第1章 公共交通の活性化を通した「交通まちづくり」を進めたい(交通まちづくりMM)

1.1 交通まちづくりとMM
1.2 京都の交通まちづくりが「どう始められた」か?
1.3 京都の交通まちづくりが「どう進められた」か?
〈コラム〉エコ通勤優良事業所認証制度
〈コラム〉モビリティ・マネジメントに係る表彰制度
1.4 「歩くまち・京都」の実現に向けたMMの今後
〈コラム〉人と環境にやさしい交通によるまちづくりを目指して「交通まちづくりの広場」の取り組み
〈コラム〉不健康はまちのせい?! スマートウェルネスの取り組み

第2章 地方で「バス」を活性化したい(バス活性化MM)

2.1 「バス」の活性化のためのMM
2.2 バス利用者をV字回復させた帯広のバスMM
2.3 利用者100万人を達成した、明石市の Tacoバス

第3章 ローカル鉄道を活性化したい(鉄道活性化MM)

3.1 住民参加で鉄道運営 ―貴志川線の取り組み―
3.2 接遇は鉄道の命 ―江ノ島電鉄の取り組み―

第2部 多様なモビリティ・マネジメント実践

第4章 子どもたちに「交通」の大切さを教えたい(MM教育)

4.1 札幌でのモビリティ・マネジメント教育
4.2 秦野市交通スリム化教育:交通部署と教育部署の連携
〈コラム〉モビリティ・マネジメントに係る人材育成の取り組み

第5章 「道路の混雑」をなんとかしたい(TDMとしてのMM)

5.1 道路混雑の問題点
5.2 国や自治体、民間事業者がタッグを組んで推進した福山都市圏のMM
5.3 道路混雑を劇的に緩和させた地方都市、松江都市圏のMM
〈コラム〉免許更新時モビリティ・マネジメント

第6章 MMの色々な可能性

6.1 買物は近所のお店で
6.2 放置駐輪対策
6.3 街路景観の改善
6.4 災害避難行動の誘発:土砂災害避難のリスク・コミュニケーション
6.5 MMの展開可能性

編者

藤井聡

京都大学大学院工学研究科(都市社会工学)教授、京都大学レジリエンス研究ユニット長、ならびに第二次安倍内閣内閣官房参与(防災減災ニューディール担当)。
1968年生。京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学客員研究員、同大学助教授、東京工業大学教授等を経て現職。専門は都市計画、国土計画、経済政策等の公共政策論および実践的人文社会科学研究。著書に『大衆社会の処方箋』『巨大地震Xデー』『大阪都構想が日本を破壊する』等多数。
〈執筆担当 ─ 序章、1章、2章〉

谷口綾子

筑波大学大学院システム情報工学研究科准教授。
1973年生まれ。北海道大学工学部土木工学科卒業、工学博士。建設コンサルタント勤務、日本学術振興会特別研究員(PD・東京工業大学)等を経て現職。専門は都市交通計画。03年都市計画学会論文奨励賞、06年第一回米谷・佐佐木賞、09年第34回交通図書賞を受賞。著書に『モビリティ・マネジメント入門』(共著)、『都市のリスクとマネジメント』(共著)等。
〈執筆担当 ─ 3章、4章、6章、コラム「不健康はまちのせい?! スマートウェルネスの取り組み」〉

松村暢彦

愛媛大学大学院理工学研究科教授。
1968年生まれ。大阪大学工学部土木工学科卒業、博士(工学)。大阪大学工学部助手等を経て現職。専門は地域計画、土木計画。10年都市計画学会年間優秀論文賞、13年工学教育賞業績賞を受賞。著書に『モビリティ・マネジメントの手引き』(共著)等。
〈執筆担当 ─ 2章、3章、4章、コラム「JCOMM(日本モビリティ・マネジメント会議)」〉

執筆者

神田佑亮

京都大学大学院工学研究科准教授
〈執筆担当 ─ 5章、コラム「免許更新時モビリティ・マネジメント」〉

今岡和也

国土交通省総合政策局公共通政策部交通計画課地域振興室長
〈執筆担当 ─ コラム「エコ通勤優良事業所認定制度」〉

宮川愛由

京都大学大学院工学研究科助教
〈執筆担当 ─ コラム「モビリティ・マネジメントに係る表彰制度」、コラム「欧州におけるモビリティ・マネジメント」〉

宇都宮浄人

関西大学経済学部教授
〈執筆担当 ─ コラム「人と環境にやさしい交通によるまちづくりをめざして」〉

牧村和彦

一般財団法人計量計画研究所次長
〈執筆担当 ─ コラム「モビリティ・マネジメントに係る人材育成の取り組み」〉

鈴木春菜

山口大学大学院理工学研究科准教授
〈執筆担当 ─ コラム「モビリティ・マネジメントとデザイン」〉

鈴木文彦

交通ジャーナリスト
〈執筆担当 ─ コラム「バスマップの必要性と効果」〉

執筆協力

伊地知恭右

一般社団法人北海道開発技術センター地域政策研究所(東北事務所兼任) 研究員
〈執筆協力─ 2章〉〈執筆担当 ─ コラム「免許更新時モビリティ・マネジメント」〉

萩原剛

一般財団法人計量計画研究所道路・経済社会研究室 研究員
〈執筆協力 ─ 6章〉

この本は、「モビリティ・マネジメント」についての本です。
しばしば「MM」などとも約されたりするこのモビリティ・マネジメントとは、一言で言いますと、何らかの「交通(モビリティ)」を、試行錯誤しながら「改善(マネジメント)」していこう、とするものです。したがって、それを進めるうえでもっとも大切なことは、交通の問題を「技術」や「理屈」の問題として捉えるだけでなく、経営学を提唱したドラッカー博士が言うところの「マネジメント」の問題として捉えるという点にあります。

つまり、モビリティ・マネジメントでは、それぞれが抱えている交通にかかわる悩みや問題を解消するために、関係する人々と話し合い、コミュニケーションを図り、調整しながらあれこれ工夫を重ねつつ少しずつ前進していきます。

では、そんなマネジメントをどう始め、どう進めていけばいいのか――本書では、そういう疑問に答えるために、日本国内のさまざまな「成功事例」を紹介していきたいと思います。

たとえば、公共交通を活用して賑わいある「まち」をつくっていきたい、という「交通まちづくり」をやってみたいと考えている方々はぜひ、第一章をご覧ください。そもそも、交通まちづくりをやろうと思い立った途端、じつにさまざまな問題に悩まされるはずです。ですが、そんなさまざまな悩みも、公共交通の利用者が増えれば、少しずつ緩和、解決していくはずです。あるいは関係者とじっくりと話し合うことで、お互いの誤解が解け心が少しずつひとつになって、モビリティを皆と協力しながら少しずつ改善していくことが可能となるはずです。そんな、地道な改善作業をどう立ち上げ、何をしていけば良いのか――京都での「成功事例」を紹介した第1章をご一読いただけば、そうした諸点をご理解いただけるものと思います。

あるいは、地方での「バス」の活性化やローカル鉄道での活性化について悩んでおられる方は、ぜひ、第2章、第3章をご参照いただきたいと思います。とりわけ、年々乗客が少なくなり、事業の継続、会社の存続すら危うくなっているような事業者や自治体の方にはぜひ、これらの章にお目通しいただきたいと思います。利用者との適切なコミュニケーションを中心としつつ、小さなことからコツコツと、適切に進めることで、利用者減を食い止め、着実に利用者を増やしていくことに成功したいくつかの実例をご紹介します。

また、いろいろな「望ましい交通のあり方」を学校教育の現場で子どもたちに考えさせ、それを通して子どもたちの社会性を育むと同時に当該地域のモビリティを改善していくことを目指したいとお考えの方は、ぜひ第4章をご参照ください。こうした教育は、長期的には当該地域のモビリティの改善にきわめて本質的な影響を与えることになります。

一方、「交通渋滞の解消」にマネジメントの基本である「コミュニケーション」や「関係者間の調整」を適用し、新しいタイプのTDMを実施してみようとお考えの場合は第5章をご参照ください。さらにはそうしたマネジメントの考え方を中心市街地活性化、放置駐輪対策、景観改善、防災行動などのさまざまな問題に適用してみることにご関心の方は、第6章を参照いただければと思います。

――このように本書は、さまざまな「成功事例」を語ることを通して、「モビリティ」に関してさまざまな問題を抱えた方々お一人お一人に、その悩みを解決するヒントを提供しようとするものです。ぜひ、ご関心のところからだけでもご一読いただき、皆様のそれぞれの「現場」に本書のアイディやヒントをご活用いただければ、たいへんうれしく思います。

京都大学大学院教授・内閣官房参与・(一社)JCOMM代表理事 藤井聡

※終了しました

出版記念セミナー@京都

15年8月27日18時30分~20時30分頃まで/藤井聡 氏

日本モビリティ・マネジメント会議

JCOMM第10回大会(2015年7月24,25日)
(本書のお披露目&JCOMM10 周年記念特別セッション「成功例」から読み解くММ ~人々の想いが繋ぐ成功物語が行われます)

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