低炭素都市
これからのまちづくり


大西 隆・小林 光 編著

内容紹介

二酸化炭素25%削減!都市がなすべきこと

低炭素都市の実現には、まちづくりの様々な政策が大きな転換を遂げて、まちの構成や基盤から人々の生活や移動の仕方に至るまで、低炭素型社会の思想と実践が貫かれる必要がある。では、その変換とは? 地球環境問題と都市行政の専門家と研究者が、建築、交通、暮らし、都市計画、都市政策について、事例を交えて明らかにする。

体 裁 A5・256.0頁・定価 本体2700円+税
ISBN 978-4-7615-2479-1
発行日 2010-01-30
装 丁 前田 俊平


目次著者紹介はじめにおわりに読者レビュー

はじめに

1章 低炭素社会に向けたまちづくり

大西 隆

1-1 地球環境問題と都市
1-2 都市における地球温暖化対策
1-3 持続可能な都市づくりにおける低炭素都市戦略
1-4 低炭素都市に向けた都市づくりの展開

2章 世界と日本の地球温暖化対策

竹本和彦

2-1 気候変動に関する科学的知見
2-2 気候変動問題に対する国際的動向
2-3 我が国の取り組み
2-4 諸外国における取り組み
2-5 今後の課題と方向

3章 温室効果ガス排出削減に向けた業務用建築物への対策

中上英俊

3-1 業務部門のエネルギー消費
3-2 省CO2建築物に向けた設計技術
3-3 BEMS(建物で消費するエネルギーを一元管理するシステム)
3-4 エネルギーの面的利用
3-5 既存建築物における省エネルギー対策としてのESCO
3-6 低炭素型建築物のさらなる普及に向けて

4章 運輸部門からのCO2排出量の中長期的削減に向けた対策

松橋啓介

4-1 環境的に持続可能な交通ビジョンの先行検討事例
4-2 2020年と2050年の交通シナリオ
4-3 低炭素交通ビジョン実現のためにいまできること

5章 温室効果ガス削減に向けた都市人の暮らし方

小林 光

5-1 住宅部門からの削減対策の可能性
5-2 住まい手の環境取り組みを成功させる仕掛け
5-3 住まい手の環境取り組みを成功させるまちづくりに向けた今後の方向

6章 温室効果ガス削減の都市間の協力

竹内恒夫

6-1 名古屋都市圏を対象としたCO2大幅削減長期的ロードマップ作成の試み
6-2 都市間協力のための広域的な地域での大幅CO2削減ロードマップ作成の試み
6-3 日独米の諸都市の気候政策の政策・措置の比較、有効な取り組み方法の共有化に向けた分析・考察

7章 持続可能な都市の計画づくりと低炭素都市戦略

―英国の持続可能性評価を用いた計画づくり―

松行美帆子

7-1 低炭素都市戦略と都市計画
7-2 英国の持続可能性評価を用いた持続可能な計画づくりと低炭素都市戦略
7-3 低炭素都市戦略を組み込んだ持続可能な都市計画マスタープランづくりに向けて

8章 低炭素都市への転換をめざす東京の取り組み

―日本初のキャップ&トレードプログラムの実現―

大野輝之

8-1 東京におけるキャップ&トレード導入の意義
8-2 東京における導入の経緯と教訓
8-3 東京のキャップ&トレードプログラムの内容
8-4 都市の役割、準国家政府の役割

9章 低炭素都市─内外の取り組み

9-1 福岡県北九州市
ゼロカーボンに向けた計画と取り組み

大西 隆・高橋輝一

9-2 富山市
路面電車を生かしたコンパクトなまちづくり

大西 隆・高橋輝一

9-3 高知県梼原町
森林管理とバイオマス利用によるカーボンマイナスの実現

高橋輝一・大西 隆

9-4 千代田区(丸の内・飯田橋・神田駿河台)
地区計画等の面的な取り組み

高橋輝一・大西 隆

9-5 群馬県太田市・岩手県葛巻村・愛媛県新居浜市
自然エネルギーの活用事例

菅 正史

9-6 EU・スウェーデン・英国
欧州における低炭素都市へ向けた動き

高橋輝一・大西 隆

9-7 ベルリン
都市エネルギーシステムの構造改革

竹内恒夫

おわりに
索引
シリーズ刊行にあたって

〈編著者〉

大西 隆(おおにし たかし)

1948年生まれ。東京大学大学院教授。
東京大学大学院博士課程修了、長岡技術科学大学助教授、AIT助教授、MIT客員研究員、東京大学助教授、同教授、同先端科学技術研究センター教授を経て、2008年4月から現職。
専門分野は、国土計画、都市計画。主たる著作は『欧米のまちづくり都市計画制度』(編著、ぎょうせい、2004年)、『逆都市化時代』(単著、学芸出版社、2004年)。環境省新地方公共団体実行計画策定マニュアル等改訂検討会座長、東大まちづくり大学院コース長。

小林 光(こばやし ひかる)

1949年生まれ。環境事務次官。
慶應義塾大学経済学部卒業、パリ12大学都市研究所(博士課程)満期退学。73年に環境庁(当時)に入庁した後、一貫して都市公害、地球温暖化問題などを中心に、環境経済政策、環境地域政策を担当。2009年から現職。
編著書には『日本の公害経験』(編著、合同出版、1991年)、『環境保全型企業論』(編著、合同出版、1994年)、『エコハウス私論』(単著、木楽舎、2007年)などがある。国民による適切な家庭経営が温暖化問題の解決の糸口になるとの観点で、日経新聞社のウェッブマガジン『日経エコロミー』に「エコハウスの自由研究」を連載中。

〈執筆者〉

竹本和彦(たけもと かずひこ)

1951年生まれ。環境省地球環境審議官。
東京大学工学部(都市工学)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際大学院卒業。世界銀行環境専門家、環境省参事官、廃棄物対策課長、大臣官房審議官(地球環境担当)、環境管理局長を経て、2008年7月より現職。1997年の温暖化防止京都会議(COP3)では議長補佐、2006年よりOECD環境政策委員会副議長を務める。
共著書に『持続可能な社会システム』(岩波書店、1998年)、『地球環境とアジア』(岩波書店、1999年)、『中国の経済発展と環境問題』(東北財務大学出版社、1995年)等。

中上英俊(なかがみ ひでとし)

1945年生まれ。㈱住環境計画研究所代表取締役所長。
1973年東京大学大学院工学系研究科建築学専門課程博士課程を単位取得退学。同年住環境計画研究所創設。2007年博士(工学)取得。2009年11月現在、日本学術会議連携会員、東京工業大学統合研究院特任教授、慶応義塾大学SDM研究科教授、日本エネルギー学会理事、経済産業省総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会部会長、環境省中央環境審議会臨時委員、国土交通省社会資本整備審議会臨時委員。
著書に『エネルギーの百科事典』(共著、丸善、2001年)、『地球時代の環境政策』(共著、ぎょうせい、1992年)など。^k松橋啓介(まつはし けいすけ)^t4章
1971年生まれ。(独)国立環境研究所社会環境システム研究領域交通・都市環境研究室主任研究員。1996年東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。国立環境研究所地域環境研究グループ研究員、西豪州マードック大学客員研究員を経て現職。2001年博士(工学)取得。2008年より筑波大学大学院システム情報工学研究科准教授(連携大学院)兼務。
著書に『日本低炭素社会のシナリオ』(共著、日刊工業新聞社、2008年)など。

竹内恒夫(たけうち つねお)

1954年生まれ。名古屋大学大学院環境学研究科社会環境学専攻教授。
名古屋大学経済学部経済学科卒業。環境庁・環境省を経て2006年4月より現職。
著書に『環境構造改革-ドイツの経験から』(リサイクル文化社、2004年)、『環境と福祉の統合』(共著、有斐閣、2008年)など。脱温暖化2050なごや戦略策定検討会、愛知県地球温暖化防止戦略検討委員会などの委員を務めるとともに、現在、「低炭素都市づくり施策とその評価に関する研究」「自立的地域経済・雇用のためのCO2大幅削減方策とその評価に関する研究」を実施中。

松行美帆子(まつゆき みほこ)

1974年生まれ。東京大学都市工学専攻特任准教授。
東京大学工学系研究科博士課程修了。明星大学アジア環境研究センター特別研究員、東京大学特任助教を経て現職。
主要論文に「土地利用計画に対するオランダ・イングランドの戦略的環境アセスメント制度及び事例の比較研究」『都市計画論文集』No. 43-3(2008年)、「イングランドにおける土地利用計画への戦略的環境アセスメントの適用に関する研究」『都市計画論文集』No. 41-3(2006年)

大野輝之(おおの てるゆき)

1953年生まれ。東京都環境局理事(地球環境担当)。
東京大学経済学部卒業。1979年東京都に入る。下水道局、港湾局、都市計画局、政策報道室等を経て、1998年より環境行政に携わる。「ディーゼル車NO作戦」の企画立案・実施を担当した後、気候変動対策を所管。2009年7月より現職。現在、2008年6月東京都環境確保条例の改正で導入されたわが国初のキャップ&トレード制度などの気候変動対策諸制度の施行準備などに取り組んでいる。
著書に『都市開発を考える』(共著、岩波書店、1992年)、『現代アメリカ都市計画』(学芸出版社1996年)など。

高橋輝一(たかはし きいち)

1985年生まれ。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修士課程在学。

菅 正史(すが まさし)

1977年生まれ。土地総合研究所研究員。
2005年東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程修了。東京大学先端科学技術研究センターを経て、2008年より現職。

本書は、東大まちづくり大学院シリーズとして刊行する現代の都市問題とまちづくりのあり方を解明する一連の本のひとつである。東大まちづくり大学院は、2007年に発足した社会人を主体とした正規の修士課程で、火曜から金曜までの夜間と土曜日午後に講義や演習を行って、就業の場で生まれる問題意識を、学習と研究に直結しようとしている新しい試みの大学院である。そこで取り上げるテーマの中でも、現在最も重要なもののひとつである低炭素都市を論じたのが本書である。

都市人口を含めた人口の減少期を迎えて、日本の都市は大きく変化しようとしている。郊外開発、新都市建設、都市再開発、施設整備等、都市化時代に膨張する都市をより快適な空間とするために実施された様々な都市計画や都市開発は、都市人口が、増大から停滞、さらに減少へと向かおうとする今日、大きな転換期を迎えている。日本政府の予測でも、日本の人口はすでにピークを過ぎ、2030年には現在より1,250万人、2050年には2,500万人減少すると予想され、都市人口もこれに応じて、間もなくピークに達して減少に転ずるとされる。したがって、都市の拡張に対応した都市計画や都市開発から、都市の縮小を導く都市計画や都市整備が求められるようになる。編著者のひとりはこれを「逆都市化時代のまちづくり」と表現し、都市における自然の保全や回復、低密度都市空間の活用・維持・管理等が重要な課題になるととらえてきた。

一方で、日本における人口減少社会が、ちょうど地球温暖化防止に向けた世界的な取り組みが強化される時期と重なったために、これからのまちづくりに低炭素都市の実現という新たな課題が生じた。低炭素都市とは、あらゆる都市活動に伴う温室効果ガスの排出量が現状よりも大幅に減少した都市であり、そこでは、エネルギーの供給と利用の両面において、現在と異なる考え方や方法が必要となる。すなわち、資源やエネルギーの大量消費は文明発展の象徴ではなくなり、化石燃料によるエネルギーではなく再生可能エネルギーの供給量を増やし、循環型社会の進展によって資源の浪費を防ぎ、社会活動のあらゆる機会で資源・エネルギーの消費を大幅に削減することが課題となる。もちろん、低炭素都市の実現には、まちづくりの様々な政策が大きな転換を遂げて、人々の生活の仕方だけではなく、まちの構成や基盤から移動の仕方に至るまで、低炭素都市の思想と実践が貫かれる必要がある。編著者のひとりは、環境行政の専門家として、低炭素都市の実現には環境行政と都市行政が一つになって市民とともに進むことが必要と考えてきた。

本書はこのように、都市人口の減少と温室効果ガスの削減という日本が直面している二つの大きな課題に応えるべく、まとめられたものである。

1章では、低炭素都市の意味とその基本的な方向を論じた。2章は、温室効果ガス削減のための国際的な枠組みと日本政府のスタンスについて、最新の動向を網羅しつつわかりやすく解説した。3章、4章、5章では、都市における低炭素社会に向けた取り組みを、それぞれ業務、運輸、家庭の切り口で捉え、基本となる考え方と最新の対応策について論じた。6章は、都市の広域的な協力、内外の協力によって低炭素化を図る道を論じた。7章では、低炭素化を都市の計画に盛り込む手法を取り上げた。8章は、国際的にみても最先端の政策を実施している東京都の低炭素都市政策を紹介した。

そして、9章では、内外の事例を取り上げた。国内では、温室効果ガスの抑制に意欲的な試みを行っているとして環境モデル都市に選ばれた都市から、北九州市、富山市、梼原町、千代田区、さらに自然エネルギーを活用した事例として、太田市、葛巻村、新居浜市を紹介している。海外では、この分野で世界をリードしている感がある欧州諸国に焦点をあて、EU、さらにスウェーデン、英国、ドイツの事例を取り上げた。これらの事例を通して、低炭素都市に向けてすぐに取り組める施策、準備を要するが大きな効果を発揮できる施策がどのようなものかが見えてくる。
本書は、地球環境問題と都市の行政専門家と研究者が、低炭素都市の実現という国際的な広がりをもつ地域的なテーマに応じて執筆したものである。日本の都市の在り方に方向転換を促す一石となれば幸いである。

2010年1月

大西隆・小林光

2009年12月19日15時過ぎ(現地時刻)、気候変動枠組み条約の第15回締約国会議(COP15)は2週間の会期を1日延長してようやく閉会した。1997年に採択された京都議定書の後継となる国際約束を結ぶことが、この締約国会議に当初は期待されていた。しかし、アフリカなどを中心に、いくつかの途上国の根強い反対があった。会議開催に先立って、約束自体の採択は延期することにしていたものの、20ヶ国以上の首脳の直々の協議の結果、「締約国会議は、コペンハーゲン合意(コペンハーゲン・アコード)に留意する」ことを、その全体会合の決定として採択することができた。2010年からは、新たな国際約束に向け、このコペンハーゲン合意を土台とした肉付け作業が始まる。

コペンハーゲン合意の持つ歴史的意義は、欧州や日本などで支えてきた世界の温暖化対策を、いよいよ米国や中国などが参加したものへとステップアップさせることにある。米中両国だけに絞っても、世界のCO2排出量の40%以上を占める。この2国に京都議定書傘下の先進国分を合わせると、カバー率は70%近くにもなる。CO2の削減取り組みが、世界の政治や経済市場の共通アジェンダとなるのである。
インプリケーションは、排出の多い発電所や、世界に流通する製品を作る製造業だけにとどまらない。まちづくりや都市経営、金融、そして人々の日常生活など広範な分野に影響が及ぶ。

コペンハーゲン合意が参照しているIPCC(気候変動に関する政府間パネル)レポートでは様々な科学的知見を収めているが、これに基づくと、温暖化を止めるには世界のCO2等の排出量を2050年には1990年比で50%以上削減する必要がある。先進国に限れば、20年には25%、50年には80%以上の削減が必要となる。このような大幅な削減には、国土や都市の構造、社会のルールにまで及ぶ根本的な変革が避けて通れない。まさに国難ともいえる試練であるが、その変革の結果が、世界各国に役に立つ、という意味では、大きな国際貢献でもあり、ビジネスチャンスでもある。本書が、読者諸賢に活用され、人類にチャンスを呼び込むことに役立つよう期待したい。

小林光・大西隆

たとえ、それにデータ的、理論的裏付けがなくとも、国のトップがその政策目標を公に発すれば大きな影響力を発揮する。それは、政策運営のあり方に対してだけではなく、国民意識に対してでもある。「マイナス25%」という目標設定には、多くの国民がその達成に懐疑的な目を向けながらも、その反面「何かしなければ」という気持ちがより強くなったのも事実だろう。

昨今、国際社会におけるわが国のプレゼンスが弱くなっているなかで、本当にこの目標を達成できたなら、その技術はいっきょにわが国の国際的プレゼンスを押し上げることになる。だから、何とかしなければ、と感じた国民がそんな技術の確立に期待を寄せても不思議ではない。

ここにおいて温室効果ガスの多くは、都市域から排出されるわけだから都市における取り組みが重要なのであり、まず都市で「何とかしなければ」その期待には応えられず、都市計画の果たすべき役割は大きい。

このような情勢のなか、低炭素都市づくりを実現していくための基本的な方向と最新かつ具体の対応策を体系的に整理して、それぞれの内容を各地での先進的取り組み事例とともに提示してくれるのが本書である。特に、「低炭素都市の実現には環境行政と都市行政が一つになって市民とともに進むことが必要」との認識に立ち、地球環境問題と都市行政の専門家、研究者が幅広い視点から現状、考え方、対策を提示してくれていることは、都市計画関係者に広く大きく複雑なこのテーマにより正確な進路を示してくれるだろう。このような本書は、低炭素都市づくりという都市計画における今後の重要テーマに取り組んでいこうとする都市計画関係者にとってかっこうの教科書となる。したがって、本書の内容を読み進めば、本書の帯に掲げられた小宮山宏氏の推薦のことば「できることは、たくさんある!」ということが実感できるにちがいない。

しかし同時に、「やらなければならないこと」もまだたくさんあることにも気づく。特に、本書で取り上げられたようないろいろな施策を総合的に全体調和させ、展開していくための基盤となる都市全体の構造とそれを実現する土地利用のあり方を理論化していくことは、本書の読者がこれから取り組んでいくべき大きな課題なのではないだろうか。

(兵庫県立淡路景観園芸学校/平田富士男)

担当編集者より

CO2の削減はしなければならないことは分かる。地球温暖化防止だけではなく、エネルギー危機に備えるためにも本気にならなければ明日はない。

では、どうすれば良いのか。

もちろん個人として、消費者としてできることも多々あるだろうし、最先端技術、巨大技術の革新にも期待したいところだが、建築・都市計画には、専門家として、技術者として、できることが幸いにもいっぱいある。寄せられている期待も大きい。

もう一度、建築・都市計画が社会の夢を担えるようになってほしい。

そのためのヒントがこの本にはいっぱい詰まっていると思う。

(Ma)

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