図説 わかる環境工学
内容紹介
基礎知識と最新事項を図と例題で学ぶ入門書
「水処理」「排ガス処理」「廃棄物処理」等、従来どおりの項目に加え、「環境化学物質」「リスク」「エネルギーと資源」といった今日的な論点を新たに解説・整理した。巻末には各内容を定量的に取扱う為の単位系・データベース等、近年統一された基礎事項を掲載。図版と例題を通して基礎知識と最新事項を学ぶ大学テキスト。
体 裁 B5変・192頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2444-9
発行日 2008/11/10
装 丁 KOTO DESIGN Inc.
1 水の利用と循環を理解する
1・1 資源としての水
1・2 水中での物質の変化
1・3 水の汚れと富栄養化
1・4 水の利用・再生システム
1・5 高度処理技術
2 大気汚染物質を制御する
2・1 物質が燃えること―燃えて発生するガスと大気汚染
2・2 大気汚染防止対策
2・3 固形物の燃焼形態と装置
2・4 大気汚染を防止する技術―(1)集じん技術
2・5 大気汚染を防止する技術―(2)汚染物質の除去技術
3 廃棄物を適正処理から資源循環へ導く
3・1 廃棄物対策の歴史
3・2 廃棄物処理の基本事項
3・3 廃棄物の解体・破砕―適正処理と資源化の第一段階
3・4 廃棄物と資源の選別プロセス
3・5 ごみの熱処理
3・6 熱利用という名の資源化―サーマルリサイクル
3・7 プラスチックリサイクル
3・8 バイオマス廃棄物のリサイクル
3・9 廃棄物の最終処分(埋立処分)
4 環境化学物質の環境運命を予測する
4・1 化学物質の規制
4・2 コンパートメントモデル
4・3 分配係数と濃度
4・4 分解と相間移動
4・5 モデルの線形性
5 リスクを考える──比較と受容
5・1 リスクの大きさの表現方法
5・2 リスク係数の使用
5・3 天然起源のリスク
6 エネルギーをマクロにとらえる
6・1 熱工学の基礎
6・2 燃焼エネルギー
6・3 熱エネルギーと動力エネルギーの変換
6・4 エネルギーの持続可能性
資料編
7 環境システム解析の基礎
7・1 物質収支の考え方
7・2 環境システム解析法とその応用
7・3 物質の移動―移流と拡散
7・4 物質の生成・消失―生成項
8 熱力学的方法
8・1 環境分野の熱力学とは
8・2 pHの計算方法
8・3 金属水酸化物の沈殿と溶解
8・4 雰囲気の概念
8・5 データの入手方法
環境工学の入門書は数多くあります。どれもひととおりの「環境分野の社会常識」を身につけるのに適した構成になっています。たしかに、どんな分野でも、入門の段階では、知識を頭に詰め込まなければならないので、まずは、知識の獲得が大切です。本書でも、まずは入門者がこの分野になじみを持つように、解説をつけながら、専門用語を盛り込みました。最初は、「詰め込み」を楽しんでください。
しかし工学は、知識を身につけることが目的なのではなくて、その「知識の使い方」を身につけてこそ、目標に到達したことになります。昨今、「大学の教育力」が問われていますが、これは教育の内容が「知識の使い方」にまで至っていないことに原因があります。この認識に基づけば、本書は「知識の使い方」を例示する義務を負うことになり、本書の執筆にあたっては、例題を設けて「課題と解決」の構図をとるように工夫しました。
一方、今日、わが国の大学で「環境工学分野」の授業科目として教えられている内容は、現代的な問題としての環境問題と少々ずれているように思います。これは、時代とともに、中身の変革が求められているということです。実際、著者らが学生時代に受けた教育は、水や排ガスの処理を中心としたものでした。一方で、化学物質による健康リスクなどは、刻々と評価が変わる最先端分野ですから、授業科目にはなじまないものと思われてきたのです。しかし現在、これらの最新の問題は、環境工学の守備範囲として見なされています。いまでも、確立された学問分野であるとは言い難いですが、本書は、最新の問題への足がかりを提供しているつもりです。
新しい事項は、いささか、トピック的な内容になりがちです。すなわち、今日の環境工学分野が抱える問題「キーワードは知っているけれど、中身が薄い」の原因は、大学教員が新規の研究に夢中になるあまり、基礎部分の教育がおろそかになる点にあります。また、あまり大きな声では言えませんが、基礎部分の素養が十分でない教員が増えたことも、遠因です。そこで著者らは、もう一つのこだわり「環境工学の学理とも言うべき内容が必要」から、本書の第7章、第8章に、「環境システム解析の基礎」と「熱力学的方法」を著しました。これらの内容は、いつの時代にも、環境工学分野の技術者が修めておくべきものです。
本書を作成するにあたって、ご尽力いただいた学芸出版社 井口夏実氏に謝意を表します。学者仲間が集まって、専門馬鹿の自己満足で作る本では、入門者に受け入れられるはずもなく、素人的でありながら高い社会常識を備えた氏の素朴な質問が、本書を教科書たるものに仕上げるのに、必要不可欠であったことは言うまでもありません。
2008年10月
渡辺信久
岸本直之
石垣智基
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