図説 わかる水理学

この書籍には後継版があります

『改訂版 図説 わかる水理学』井上和也 編

井上和也 編
綾史郎・石垣泰輔・澤井健二・戸田圭一・後野正雄 著

内容紹介

水の性質、流れの状態、構造物に与える力など水の運動を力学的に扱う土木工学系学科の必須科目。さまざまな水の現象と、水理学が実際に役立つダムや堰、川など身近な事例を多数の写真・図版・イラストで視覚的に理解できるよう工夫。また数式はなるべく丁寧に導いた。例題を通して基本を確実に学べる、初学者のための入門書。

体 裁 B5変・144頁・定価 本体2600円+税
ISBN 978-4-7615-2441-8
発行日 2008/09/10
装 丁 KOTO DESIGN Inc.

目次著者紹介はじめに
はじめに

1 水理学の生かされる現場

1・1 水理学とは

1・2 水の性質とふるまい

(1)密度と単位体積重量
(2)圧縮性
(3)粘性
(4)表面張力

1・3 次元と単位

(1)次元
(2)SI単位と接頭語

1・4 精度と有効数字

1・5 相似律

2 静水力学―静止した水の原理を学ぶ

2・1 静水圧の性質

(1)圧力と圧力による力
(2)水平方向の静水圧の変化
(3)鉛直方向の静水圧の変化
(4)絶対圧とゲージ圧

2・2 平面に作用する静水圧

(1)座標系と圧力の分布図
(2)静水圧による力の大きさ
(3)静水圧による力の作用点位置
(4)断面2次モーメント

2・3 曲面に作用する静水圧

(1)曲面に働く水圧の分布と水圧の合力の成分
(2)水圧の合力の水平方向成分と作用点位置zc
(3)静水圧による力の鉛直方向成分と作用点位置xc
(4)曲面が円または円弧の場合

2・4 浮力と浮体の安定

(1)浮力―水中にある物体に働く静水圧による力
(2)浮力の作用点位置
(3)浮体とその釣合い
(4)浮体の安定
(5)浮体の安定計算

2・5 相対的静止流体中の圧力

3 流れの基礎―さまざまな流れの性質を学ぶ

3・1 基本的な考え方と重要な用語
3・2 流れる水の運動を表す式

(1)連続式─質量保存則
(2)エネルギー式(ベルヌーイ式)─流れる水のエネルギー
(3)運動量式―流れる水の運動量

3・3 基礎式の適用

(1)連続式で流量、流速、流水断面積を計算する
(2)ベルヌーイ式を使って圧力を計算する
(3)ベルヌーイ式を使って流速を計算する─トリチェリーの定理
(4)ベルヌーイ式を使って流速を測る―ピトー管の原理
(5)連続式およびベルヌーイ式を使って流量を測る─ベンチュリーメーターの原理
(6)連続式、ベルヌーイ式および運動量式を使って板に作用する力を計算する

3・4 さまざまな流れ

(1)定常流と非定常流
(2)層流と乱流

4 管路の流れ―流れの解き方を学ぶ

4・1 管路流と基礎式

(1)管路流の特徴
(2)管路の定常流の基礎式

4・2 エネルギー損失

(1)摩擦損失
(2)形状損失

4・3 単一管路の解析

(1)2つの池を結ぶ管路
(2)サイフォン

4・4 複雑な管路の解析

(1)並列管
(2)分岐管

5 開水路の流れ―河川や水路の流れを解く

5・1 基本的な用語とその定義
5・2 開水路流れの連続式
5・3 等流とその計算

(1)等流の定義
(2)等流における力の釣合いとエネルギーの釣合い
(3)平均流速公式(抵抗則)
(4)等流の計算

5・4 エネルギーの保存則とその応用

(1)開水路流れにおける全水頭HEと比エネルギーH0
(2)比エネルギー図と限界水深
(3)常流、射流と限界水深、フルード数
(4)開水路流れのエネルギー保存則

5・5 運動量の保存則とその応用

(1)開水路流れにおける運動量とその保存則
(2)比力M0とその保存則
(3)比力図と限界水深、共役水深
(4)流れの遷移と跳水

5・6 水面形方程式と水面形の追跡

(1)限界こう配と水路の分類
(2)エネルギー方程式と水面形方程式
(3)広長方形断面水路における水面形曲線の分類と概形
(4)支配断面
(5)定性的追跡法
(6)簡単な水面形の追跡の例

井上和也

(いのうえ かずや/編者、担当:p.13, 20, 66, 95のコラム)

河川環境管理財団大阪研究所長。京都大学名誉教授
1941年生まれ。1968年京都大学大学院工学研究科土木工学専攻博士課程中途退学。工学博士

澤井健二

(さわい けんじ/担当:1章)

摂南大学工学部都市環境システム工学科教授
1948年生まれ。1976年京都大学大学院工学研究科土木工学専攻博士課程修了。工学博士

後野正雄

(のちの まさお/担当:2章)

大阪工業大学工学部都市デザイン工学科教授 1955年生まれ。1978年大阪大学工学部土木工学科卒業。工学博士

石垣泰輔

(いしがき たいすけ/担当:3章)

関西大学環境都市工学部教授 1953年生まれ。1977年京都大学大学院工学研究科土木工学専攻修士課程修了。博士(工学)

戸田圭一

(とだ けいいち/担当:4章)

京都大学防災研究所流域災害研究センター教授 1956年生まれ。1986年米国アイオワ大学大学院工学研究科土木環境工学専攻博士課程修了。Ph.D.

綾 史郎

(あや しろう/担当:5章)

大阪工業大学工学部都市デザイン工学科教授 1949年生まれ。1974年京都大学大学院工学研究科土木工学専攻修士課程修了。博士(工学)

大学において、社会基盤や都市や環境などを対象とする土木系のコースでは、「水理学は難しい」という評判が学生間で少なからずあると聞きます。その理由を自らの経験に照らし推測してみますと、1つには微積分を用いた数式での表現が他の科目に比べて比較的多く、数式のもつ水理学的な意味がすぐには分かりにくいことがあります。端的にいえば数式に振り回される難しさといってもよいでしょう。いま1つは、水理学という体系の基礎原理がつかみにくいことではないかと思います。その具体的な例を挙げますと連続式の表現があります。水理学における重要な基礎原理の1つが保存性であり、そのうち質量の保存性を示すのが連続式にほかなりません。しかし連続式は、対象とする流れが管路かあるいは開水路か、空間の次元数がいくらか、流れが時間的に変化するかどうかなどによって、見かけでは全く異なった表現になります。このために、異なる表現の連続式が実は質量の保存性という共通する基礎原理から導かれていることを、はじめは理解しにくいことがあります。

この本は、大学において水理学を初級から講じておられる先生方が執筆されています。いま挙げたような難しさを乗り越えるために、講義、演習、実験、観測にいつも創意と工夫をこらされ、一人でも多くの学生に水理学の面白さと大切さを知ってもらおうと努力されている先生方です。同時に、どこでどうして学生がつまづきやすいかも経験からよく知っておられます。本書では、そうした努力や経験をいたるところで活かされるとともに、視覚的に理解しやすくするため図表を数多く取り入れられ、順を追って考えていけば理解できるようにわかりやすく記述されています。

水理学は、河川、水資源、港湾・海岸、上下水道、水環境など水に関わる科目の基礎となっています。これらの科目は、洪水や高潮などの災害から私たちを守り、物流・人流という運輸や安定した量と質の水の供給などを通じて産業と生活に貢献し、そして清潔で快適な潤いのある日々を実現するという役割を担っています。さらに拡げれば、地球規模の重要な課題となっている温暖化や環境問題に共通しているのが、物質や運動量やエネルギー(熱)などが流体(水や空気)の運動によって運ばれる輸送現象ですから、水理学の学習はこうした差し迫った課題を考えることにもつながっているといえます。

水理学は上に挙げた広い範囲の科目の前提となる基礎科目 の1つですが、最初に述べたようにややとっつきにくいかもしれません。分かったと思っても、分かったつもりに過ぎないことはよくあることです。そのようなときには、もとに戻って繰り返し考え理解を深めることをお勧めします。本書がそのために少しでも役立つことを願ってやみません。

最後に、編集作業に尽力された学芸出版社の井口夏実さんに厚く感謝いたします。

2008年8月
井上和也

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