図説 日本建築のみかた

宮元健次 著

内容紹介

世界文化遺産への登録、寺社仏閣めぐりや歴史散歩のブームなど、古建築への興味が高まっている。一般には難解と思われている日本建築のみかた・見どころを平易な文章と500点に及ぶ図版を用いてわかりやすく説いた。神社・寺院・住宅・茶室・城郭を網羅するガイドブックで、入門書としてはもちろん、読み物としても面白い。

体 裁 四六・320頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-2251-3
発行日 2001/03/15
装 丁 尾崎 閑也


目次著者紹介まえがきあとがき紙面見本書評正誤情報(第1版)
はじめに―本書の特徴

第一章 神社 神のすむ家

神社の発生―自然崇拝
神社の種類―寺院の影響

神社の要素

鳥居と門/水盤舎/参道/狛犬・獅子/本殿/千木と堅魚木/垣・塀・廊下・注連縄/拝殿・祓殿・幣殿/本社・摂社・末社・別社・鎮守社/神厩舎・絵馬殿/神楽殿・楽屋・祝詞殿・直会殿/権殿・神輿庫・御旅所/神饌所・御饌殿・酒殿・神服殿/庁屋・預り屋・大炊所/社家・斎館・参篭所

1―本殿をもたない神社

神奈備・三諸・磐座(岩倉)・神籬

1.大神神社
2.諏訪大社上社前宮
3.諏訪大社上社本宮
4.諏訪大社下社春宮
5.諏訪大社下社秋宮
6.金鑚神社

2―仏教伝来以前の神社

住吉造・大鳥造・大社造・神明造

7.住吉大社
8.出雲大社
9.神魂神社
10.美保神社
11.伊勢神宮
12.仁科神明宮

3―仏教伝来以降の神社

春日造・流造・日吉造・八幡造

13.春日大社 14.賀茂別雷神社(上賀茂神社)
15.賀茂御祖神社(下鴨神社)
16.宇治上神社
17.園城寺新羅善神堂
18.吉備津神社
19.宇佐神宮
20.石清水八幡宮
21.日吉大社

4―宮寺(石の間造)

八棟造・祇園造・権現造・浅間造

22.北野天満宮
23.八坂神社
24.久能山東照宮
25.日光東照宮
26.大崎八幡神社
27.宝厳寺唐門・都久夫須麻神社

第二章 寺院 仏のすむ家

仏教伝来と寺院―新興宗教から国家宗教へ
古代寺院の伽藍―仏様の聖域

寺院の要素
仏堂の種類

本堂・金堂・中堂・仏殿・観音堂/開山堂・祖師堂・大師堂/講堂・法堂・潅頂堂・常行堂/八角円堂・六角円堂

仏塔の種類

多重塔/多宝塔・宝塔

門の種類

八脚門・四脚門・棟門・唐門/二重門・楼門

その他

鐘楼・鼓楼・経蔵/僧房・方丈・塔頭・庫裡・浴室・東司

1―和様

大斗肘木・三斗組・出組・三手先

2―大仏様(天竺様)

さし肘木

3―禅宗様(唐様)

詰組

4―折衷様

地震に強い和様を加えた新しい様式

28.法隆寺
29.栄山寺
30.法起寺
31.薬師寺
32.唐招提寺
33.東大寺
34.浄土寺
35.新薬師寺
36.醍醐寺
37.室生寺
38.興福寺
39.西明寺
40.金剛輪寺
41.清水寺
42.石山寺
43.蓮華王院(三十三間堂)
44.根来寺
45.延暦寺
46.金剛峯寺壇上伽藍
47.東寺(教王護国寺)
48.当麻寺
49.中尊寺
50.平等院
51.浄瑠璃寺
52.法界寺
53.元興寺
54.円覚寺
55.東福寺
56.鶴林寺
57.観心寺
58.大徳寺
59.南禅寺
60.妙心寺
61.万福寺
62.西本願寺
63.照蓮寺
64.善光寺

第三章 住宅 人々のくらしの場

住まいの発達―竪穴式・高床式・寝殿造・主殿造・書院造・民家・町屋

住宅の要素

入口/開口部/インテリアの変化/床/縁側と庇/台所と食堂/主室/寝室

1―原始時代の住居

竪穴式と高床式

65.高根木戸遺跡
66.登呂遺跡

2―寝殿造

貴族(公家)のすまい

67.京都御所紫宸殿・清涼殿
68.仁和寺金堂・御影堂(慶長度内裏紫宸殿・清涼殿)
69.園城寺(三井寺)円満院(慶長度内裏)
70.鹿苑寺(金閣寺)
71.厳島神社
72.修学院離宮

3―書院造

武家のすまい

73.慈照寺(銀閣寺)
74.園城寺(三井寺)光浄院・勧学院
75.醍醐寺三宝院
76.西本願寺書院・黒書院
77.二条城二の丸
78.桂離宮
79.曼殊院

4―町屋と民家

庶民のくらし

80.合掌造り民家園・白川郷合掌造り集落
81.飛騨民俗村(飛騨の里)
82.日本民家集落博物館
84.日本民家園
84.吉村家
85.吉島家
86.今西家

第四章 茶室 一期一会の空間

茶ノ湯とは―茶道の発生と発展
露地―気分を高めるための道
茶亭と茶室―出会いの空間

茶室の要素

出入口/床/造作/壁/窓/水屋

1―三千家の茶室

草庵茶室

87.妙喜庵待庵
88.表千家不審庵
89.武者小路千家官休庵
90.高台寺傘亭・時雨亭
91.西芳寺湘南亭

2―大名家の茶室

書院風茶室

92.南禅寺金地院八窓席
93.桂離宮松琴亭
94.水無瀬神宮燈心亭
95.慈光院高林庵
96.仁和寺遼廓亭・飛涛亭
97.西本願寺飛雲閣憶昔席
98.大徳寺聚光院閑隠席・桝床席
99.大徳寺孤蓬庵忘筌
100.薮内家燕庵

第五章 城郭建築 戦う建築

城の発達―山城から平城へ

城郭の要素

縄張り/本丸・天守の種類/門の種類/狭間/城下町の形成

1―現存する天守

十二の例

101.丸岡城
102.犬山城
103.松本城
104.姫路城
105.彦根城

2―遺構として残る城郭

遺跡・再建

106.名古屋城跡
107.安土城跡
108.江戸城跡
109.大坂城跡

付録 日本建築のしくみ

1―架構

建物を支えるしくみ
基壇/柱/組物(斗きょう)/蟇股/虹梁/垂木/束/支輪/木鼻・手挟

2―外装

外観のしくみ
屋根・瓦/破風と懸魚/開口部

3―内装

内部のしくみ
開口部/天井/須弥壇/装飾金具
年表
参考文献・写真提供
おわりに

巻末資料

日本建築マップ
訪問ガイド
索引
西暦―元号対応表

エピソード

出雲大社が倒れた理由
京の都を守る三匹の猿
建築プロデューサーとしての秀吉
秀吉の眠る廟 東大寺の大仏
東照宮の色彩
遷都と風水
法隆寺論争
書院造とパースペクティヴ
桂離宮を科学する
茶の湯とキリスト教
二畳茶室待庵の意味
能舞台と歌舞伎小屋
桂離宮と源氏物語

こぼれ話

伊勢神宮と太一思想
大国主命と大黒様
神仏習合と本地垂迹説
法隆寺より古かった元興寺
塔頭とは
御所と内野
後水尾院自ら造営した修学院離宮
移建と現地保存について
日本と西洋の町並みの違い
日本と西洋の建築空間の違い
信長と安土城
秀吉の大坂城天守の謎
江戸城の人柱

宮元健次

龍谷大学国際文化学部講師

近年、京都や奈良の数多くの寺社、あるいは日光東照宮や厳島神社などが続々とユネスコの世界文化遺産に登録される等、日本建築への興味が急速に高まりつつあります。しかし、そのやや抽象的な難解さゆえに、現在それらを解読・鑑賞する術が必ずしも一般の方々に十分普及しているとはいえません。

そこで、本書は日本建築の見方、見どころを数多くの実例をあげて、平易な文章と多数の図版を用いてわかりやすくまとめたものです。読みものとしてもおもしろく、またガイドブックとしても使い易いものを意図しました。

本書を手にして傑作建築の数々を訪れ、春ならば匂いたつ花々、夏ならば青々とした新緑、秋には燃え上がるような紅葉、冬ならば純白の雪とともに愛で、また神や仏と語らい、地域の人々と人情あふれる触れ合いを通して、疲れた心を癒してみてはいかがでしょうか。

本書が皆様の魅力発見の助けとなり、日本建築がより一層愛されるようになれば、著者として無上の喜びです。

本書は、龍谷大学コミュニティカレッジ「日本建築入門―みかた・楽しみ方―」(1999年)及び、龍谷大学国際文化学部開講講義「日本の建築美術」(1997年~2000年)の講義録をもとに、多数の取材を加えて新たに書き起こしたものです。講義の間、受講者の数多くから激励を受けましたが、最後まで、それが本書執筆の原動力となりました。一言お礼を申し上げます。

著者を含めた日本建築の研究者の多くは、京都、奈良に憧れているといわれます。それは、京都、奈良周辺が第二次世界大戦で唯一空爆を免れ、私たちの研究テーマである古建築のメッカとなったためでしょう。5年前、願いかなって憧れの京都に職を得た際、まず夢見たのが、日本建築を網羅するガイドブックの構想でした。100以上の古建築を丹念に取材することは、近畿以外の研究者にとっては、まさに至難の業であったに違いありません。5年間の気の遠くなるような作業の連続の末、その夢が現実となって出版にこぎつけられた喜びは何者にも代え難いものです。関係者の方々の献身的努力をおそらく一生忘れる事はないでしょう。

本書の図版を担当したのは、これまでほとんどの著書の図版を担当してくれた小保方貴之、鶴田真理子両君であり、また大量の写真と図版を整理してくれたのは松永智美君です。また、本書の出版を快諾していただいた学芸出版社編集部の吉田隆氏、さらに実際の編集作業でお手を煩わせたのは同編集部越智和子氏、そして取材を受け入れて下さった数多くの建築の所有者の方々に心より感謝の意をあらわします。

2001年2月 三井寺の見える書斎にて
宮元健次

本書には、ぜひ訪ねたい建築の全体像がわかる鳥瞰図をはじめ、平面図、断面図、日本建築を構成するディテールを示す詳細図等が300点あまり、また著者が5年にわたり丹念に取材した建築の写真が200点以上、計500点を超える図版の数々で日本建築のみかた・みどころを平易に解説しています。

全体解説

ガイド

日本建築のしくみ

『庭』
(龍居庭園研究所発行) 2001.9

日光東照宮の極彩色には周到な色彩計画があり、使われている色を分析すれば陽明門が人間世界と神域の「結界」であることが見えてくる。桂離宮の建築や庭園の造形には、『源氏物語』の場面が再現されている。大黒様の本来の姿は暗黒神であり、日本では財宝のシンボルとされている姿は、ブラックホールを象徴している……。などなど、この本には興味深い「エピソード」や「こぼれ話」が、たくさん挿入されている。

しかし、実はこれは「おまけ」の部分。本文は、日本建築鑑賞の手引である。パラパラとめくったら、囲み記事の方に目が行って、先に拾い読みをしてしまった次第。そして本文に戻ると、そこには日本建築の見方や見どころが、細密な図版、写真とともに解説されている。

「神社」「寺院」「住宅」「茶室」「城郭建築」の5章から成り、109の建築を収録するが、その中にも、たとえば神社建築には「住吉造」「大鳥造」「大社造」「神明造」という様式があるように、各様式のルーツや歴史的、思想的背景は多岐にわたり、また、建物の配置、屋根の形、組物の種類、間取りなど、計画から細部の技法にいたるまで、見るべきポイントが盛り沢山。

「太一(北極星のこと)思想」「鬼門封じ」「パースペクティヴの手法」「間合い」「月との関係」など、日本建築を読み解くキー・ワードに注目。


『建築士事務所』
((社)日本建築士事務所協会連合会発行) 2001.6

京都、奈良の寺社や日光東照宮、厳島神社などユネスコの世界文化遺産に登録される建築遺産は数多いが、その見方、見所となるとやや専門的で難解とされるのが一般的だ。本書は数多くの実例をあげて、平易な文章と500点に及ぶ図版を用いてわかりやすくまとめたもの。登場する実例は大崎八幡神社、仁科神明宮、諏訪大社上社前宮・本宮など27神社、浄土寺、蓮華王院(三十三間堂)など37寺院、丸岡城、安土城跡など9城跡、表千家不審庵、慈光院高林庵、水無瀬神宮燈心亭など14茶室、高根木戸遺跡、桂離宮、醍醐寺三宝院、登呂遺跡、日本民家園など22住宅。読み物、ガイドブックとして便利。

第1版に関するお詫びと訂正

2005年2月 学芸出版社

本書の文章及び図版に、誤りがございました。ここに訂正させていただきます。多数の誤記がございましたことを関係諸社をはじめ、読者の皆様に深くお詫び申し上げます。

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