本で人をつなぐ まちライブラリーのつくりかた

礒井純充 著

内容紹介

カフェやオフィス、個人宅から、病院にお寺、アウトドアまで、さまざまな場所にある本棚に人が集い、メッセージ付きの本を通じて自分を表現し、人と交流する、みんなでつくる図書館「まちライブラリー」。その提唱者が、まちライブラリーの誕生と広がり、個人の思いと本が織りなす交流の場の持つ無限の可能性をお伝えします。

体 裁 四六・184頁・定価 本体1800円+税
ISBN 978-4-7615-1345-0
発行日 2015/01/01
装 丁 森口 耕次


目次著者紹介まえがき
目次
まえがき

第1章 図書館でもない本屋でもない「本×人の世界」

1 地下室から生まれた私塾「アーク都市塾」
2 濃密な人間関係が社会を動かす――日本初、大学院サテライト
3 「天空の図書館」誕生
4 本×人の世界

第2章 「まちライブラリー」の誕生

1 事業化に邁進した5年間
2 失意の中で出会った、26歳の私の師匠
3 問題はタコつぼではなく、タコだった!?
4 ミクロの視点でスタートした「まち塾@まちライブラリー」
5 故郷・大阪に立ち上げた私のライブラリー「ISライブラリー」
6 病院からスカイプで参加した最初の「まち塾」
7 みんなで創る図書館の楽しみ――簡単、誰でも、どこでも、いつからでもやれる!

第3章 広がる「まちライブラリー」

1 都心の小さなオフィスに誕生した大きな「図書館家族」
2 カフェでつながる人と人の出会い
3 お寺をコンビニより身近に!―お寺のオープンマインド図書館
4 山の中で自然に触れる人と本―奥多摩でアウトドア読書&出会い
5 歯科医院をまちの文化拠点に
6 大学病院でも工夫が生まれる
7 地域でつながる人と人、本と本―まちライブラリーの集積
8 商店街やショッピングモールでのまちライブラリー
9 個人宅をまちライブラリーに
10 話して、話して、歌って、公共図書館をジャック―千代田区立日比谷図書文化館「〝人〟のライブハウス」

第4章 蔵書ゼロ冊からの図書館、誕生!―まちライブラリー@大阪府立大学

1 大阪府立大学との出会い
2 今までにない大学のサテライトを目指して
3 理解されにくい〝図書館〟を乗り越える工夫
4 大学の手を離れて、市民がつくる図書館
5 本を植えて本棚を育てる「植本祭」
6 市民参加を促進する「まちライブラリー@大阪府立大学」の仕組み
7 学生がつくったまちライブラリー@中百舌鳥キャンパス
8 大学「蔵元」、市民「酵母菌」、私「杜氏」

第5章 個人の力が突き抜けたマイクロ・ライブラリー

1 小さな私設図書館、集まれ!―マイクロ・ライブラリーサミット
2 亡き妻への思いをまちぐるみで支える図書館
3 森をつくり、本を集め、大震災を乗り越える図書館
4 幼いころに体験した児童図書館を引き継いだ姉妹
5 マイクロ・ライブラリーを始める動機と目的
6 世界につながるマイクロ・ライブラリーのネットワーク
7 個人の時代、世界は個から始まる

終章 まちライブラリーの「哲学」―ここから何が生まれつつあるのか?

1 小さい鍋と大きな鍋――〝発酵〟の文化を思い出そう!
2 あなたが変わるとまちが変わる
3 〝まちづくり〟ではなく〝まちを育む〟
4 人の声を聴くまちライブラリー
5 組織より個人の思いや力が抜きん出ている世界
6 私たちにも参加させて!
7 仲間と獲得した大きな賞
8 目標でなく、道草を楽しむまちライブラリー
9 あなたもまちライブラリーの世界へようこそ

あとがき

礒井純充(いそい よしみつ)

「まちライブラリー」提唱者。1981年、森ビル株式会社入社。社会人教育機関「アーク都市塾」、産学連携・会員制図書館「六本木アカデミーヒルズ」などを立ち上げる。2011年より「まちライブラリー」を提唱。全国にネットワークを広げ、2013年には「まちライブラリー@大阪府立大学」を開設。同年には全国の私設図書館を集めた「マイクロ・ライブラリーサミット」を開催している。

まちライブラリーとは、メッセージを付けた本を持ち寄り、まちのあちこちに小さな図書館をつくり、人と出会おうという活動です。

この活動を始めてすでに3年の月日が経ちました。その間、全国で120ヶ所以上誕生し、仲間もどんどん増えています。

「本で人をつなぐまちライブラリーというのはどういうこと?」

「本好きの集まりですか? 本が好きでもない私でもやれるの?」

「まちライブラリーを始めるにはどうしたらいいの?」

たくさんのご質問やお問い合わせをいただきます。

関心を持っておられる人に、これまでのまちライブラリーの歩みや全国各地にあるまちライブラリーをご紹介しながら、私の思いや願いを共有したいと思い、この本を作りました。
第1章では、まちライブラリーについて話す前に、私自身がなぜ図書館の活動に出会ったか、その道筋を語るとともに、私自身、若い頃にとても感化された学びの場をご紹介します。森ビルという企業に入り、社会人人生の最初に出会った「アーク都市塾」と、それが発展して生まれた「アカデミーヒルズ」です。

そして、六本木ヒルズで文化事業を手掛けた中で生まれた会員制図書館「六本木アカデミーヒルズ」をご紹介します。この成功と私自身の失敗が、まちライブラリー誕生の背景にあるのです。
第2章では、まちライブラリーがどのようにして形作られたのかを書いています。

私の若き師匠となった友廣裕一さん、友廣さんの師匠である友成真一さんとの出会いを通して自分自身を見つめ直し気づいたことや、多くの人たちに支えられて、だんだんと出来上がっていくまちライブラリーの誕生までをご紹介します。

私は、会社の仕事の中で多くの挫折を経験しました。挫折の中でもがきながら、立ち上がろうとしていた時に出会った人たちが、私の背中を押して、支えてくれました。みなさんにも、きっと背中を押してくれる仲間が現れ、新しいチャレンジに向かって一歩を踏み出せるということを感じてくださればうれしく思います。

第3章は、まちライブラリーの事例です。それぞれどういうきっかけで始まったのか、それを始めた人の想いやねらいは何かをご紹介しています。

オフィス、カフェ、お寺、歯科医院、病院、個人宅など大小問わず、それぞれのスタート時における意図がわかるようにご紹介するとともに、社会的にどのような意義があるのかを、私なりにコメントしてあります。これからまちライブラリーをやろうと思っておられる方、また、今やりながらもさらに他の参考事例から情報を得たい方にもお役に立てれば幸いです。

第4章は、まちライブラリー@大阪府立大学についてです。

日本でも世界でも珍しい「蔵書ゼロ冊からの図書館」が、どのように生まれてきたのかを書きました。特にユニークな運営方式は、これからの公共とプライベートがどのように対応していけば良いかを考えるヒントにもなるかと思っています。そしてこの場所でまちライブラリーができたことが、その後のまちライブラリーにも大きな影響を与えていると考えています。

第5章は、まちライブラリーの世界を少し離れて、私設図書館の世界「マイクロ・ライブラリー」についてです。

「個人」の力がどれだけ大きな力に変化していくか。まちライブラリーは、いまや120ヶ所を超えて広がり、組織がなければ、お金がなければ何もできないと考えていた私自身が驚いているくらいです。いや、むしろ、お金も組織もないほうが、個人の思いだけで歩ける。その思いをみなさんと共有したくて始めた活動が「マイクロ・ライブラリーサミット」であり、『マイクロ・ライブラリー図鑑』の発行でした。

終章は、この本を通じて私が申し上げたい視点です。ここをご理解いただくと、案外すんなりとまちライブラリーが始められ、またさらにやるのが楽しくなると思います。

ちょっと概念的になっているかもしれませんが、こんな見方もあるのかとさらっと読むもよし、深く考えて反論していただくもよし、お好きなように読み解いてください。

以上、まちライブラリー誕生の背景からその事例、そしてこの活動で私がみなさんと共有したいことを、つらつら書きました。どこの章から読んでいただいてもかまいません。

まだ始めて3年と少ししかたたないまちライブラリーですが、多くの気づきを私は得ました。そして、仲間の応援も得て、まちライブラリーがグッドデザイン賞に選ばれ、ライブラリー・オブ・ザ・イヤー2013の優秀賞にもなり、各方面から取り組みをご評価いただけるようになりました。ありがたいことです。

ただ、すべてのまちライブラリーは、始める人や場所に一つ一つ違いがあります。それぞれが、個別のやり方や思いで始められています。小さなものがあれば、大きなものもあります。それぞれが、独自色を出しながら、全国各地に広がってきたのです。

まちライブラリーは、何が楽しいのか、どうして仲間が増えているのか。誰かのお役に立ちたいと、おせっかいを始める中で出会いを楽しみたいというのが、今の私の気持ちです。

まちライブラリー誕生の背景、出会った人、各地のまちライブラリーの様子を読者のみなさんとゆっくり振り返りながら、探訪してみましょう。

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